当ウェブサイトで継続的に追いかけているテーマのひとつが、通貨スワップや為替スワップ、CMIMといった国際金融協力の仕組みです。数日前の『韓国経済副首相「中韓通貨スワップの延長目指す」』で予告したのですが、またしても「スワップの季節」がやって来たようです。こうしたなか、前回のスワップ関連の記事から少し時間が経ってしまいましたので、改めてスワップに関する議論を基礎的な部分から振り返っておきたいと思います。
2020/01/22 11:55 追記
本文中の『図表3』において、「150億シンガポールドル」と記載すべきところ、「億」が抜けて「150シンガポールドル」になっている箇所がありましたので、訂正しております。「みったぁ」様、コメント欄でのご指摘を賜り、大変ありがとうございました。
目次
スワップ論
(※最初にお断りがあります。この節については本論とかな~り無関係なので、ご興味がなければ、是非、読み飛ばしてください。)
「通貨スワップ」は、「為替スワップ」と並んで、当ウェブサイトが著名になるきっかけとなった単語のひとつです。
ただ、当ウェブサイトで通貨スワップと為替スワップの議論をすると、ときどき、「金融機関の人間だ」と自称する(しかもマージン規制やISDAマスター/CSAについてまったく理解していない)人からのやたら上から目線のコメントが付くので、いちおうお断りしておきますが、本稿はデリバティブの話ではありません。
最初に本論と無関係な、とてもマニアックな話をします(※興味のない方は丸ごと読み飛ばしてください)。金融機関・機関投資家の世界では、通貨スワップや為替スワップは、「デリバティブ」(金融派生商品)と呼ばれる、非常に広く利用されている金融商品です。
厳密なことを言えば、日本法の場合、通貨スワップ(cross currency swap, CCS)は金商法第2条第22項に規定される「店頭デリバティブ取引」であり、機関投資家同士がCCSを利用する場合には、たいていの場合、ISDA(※)が定めるマスター契約が必要です。
(※ISDAとは、International Swaps and Derivatives Associationの略。)
一方、為替スワップ(foreign exchange swap, 本稿では「FXS」とでも略します)は「為替取引」の一種であり、金商法上はデリバティブ取引ではありませんが(※意外と知らない人は多いと思います)、法人税法上はデリバティブに指定されています(法人税法施行規則第27条の7第1項第6号)。
- 通貨スワップ(CCS)…金商法第2条第22項に規定されるISDAベースの店頭デリバティブ
- 為替スワップ(FXS)…金商法上はデリバティブではないが法人税法上のデリバティブに該当
通貨スワップ(CCS)と為替スワップ(FXS)の両者を比べると、とくに期間が短い取引については経済的な性質はそっくりですが、両者は基本的にマージン規制の取扱いなどがまったく異なっており、また、「直先差額」の会計上の取扱いなどもまったく異なります。
ただし、「直先差額」や「ネガティブ・ベーシス」などの議論、あるいは日本公認会計士協会の『業種別委員会報告第25号』を筆頭とする会計基準、監査基準などの話題については、現在のところ、当ウェブサイトで言及する予定はありません。あしからずご了承ください。
もしどうしても知りたいのであれば、個別にメールをください(当たり前ですがこれは当ウェブサイトの活動の範囲ではないため、有料です)。
※なお、本節を設けた理由は簡単で、国際金融協力の世界の通貨スワップや為替スワップの話題を提供すると、必ずと言って良いほど、「金融機関関係者」を名乗る方から、かなり「上から目線」で「貴ウェブサイトの説明は間違っています」と指摘するコメントが付くからです。あまり詳しく申し上げるつもりはありませんが、たいていの「金融機関関係者」とやらはマーケット関係者ではなく、専門家を名乗るわりにはISDAデリバティブとFXスワップの違いもわかっていないような人たちです。これらの違いをいちいち説明してあげないといけないのが面倒くさいので、煩雑でも冒頭に記載することにしているのです。
スワップあれこれ
BSAとBLAの違いとは?
さて、デリバティブについては正直、どうでも良いです。本稿で議論するのは、国際金融協力の世界における通貨スワップと為替スワップです。
国によって微妙に呼び方は違うのですが、通貨スワップとは、正式には「二ヵ国間通貨スワップ」と呼ばれ、英語では “Bilateral Currency Swap Agreement” などと表現されることが多いのですが、わが国の財務省はこれを「BSA」と略しているようですので、本稿もこれに倣い「BSA」と称します。
一方、為替スワップについても「二ヵ国間為替スワップ」ですので、英語では “Bilateral Liquidity Swap Agreement” などと称することが多いのですが、先ほどの「BSA」に対してアルファベット3文字だとすわりが良いので、本稿では「BLA」と称することにしたいと思います。
それはともかくとして、通貨スワップ(BSA)とは、通貨当局同士が通貨を交換するための協定であり、一般に交換により調達した通貨は通貨防衛などに使うことができますが、これに対して為替スワップ(BLA)は「流動性供給」、つまり自国の金融機関に相手国の通貨を提供することに使います。
- 通貨スワップ(BSA)…通貨当局同士が通貨を交換する協定
- 為替スワップ(BLA)…中央銀行が自国金融機関に相手国通貨を供給するための協定
(※くどいようですが、本稿の通貨スワップ、為替スワップはCCSとFXSの議論ではありません。BSAとBLAの議論です。CCSとFXSの議論ではありません。CCSとFXSの違いがもたらす会計上、税務上、金融規制上の扱いなどについて詳しく知りたい方は、当ウェブサイトではなく、市販のデリバティブに関するテキストなどをご参照ください。)
多国間通貨スワップ協定
さて、通貨スワップの「BSA」、為替スワップの「BLA」には、それぞれ「B」、つまり「二ヵ国間の」(Bilateral)という単語が付きますが、これの意味は「あくまでも二ヵ国間の協定である」という意味であり、「多国間の仕組み」ではありません。
もともとアジア諸国間の通貨スワップ(BSA)は、1997年のアジア通貨危機に対する反省として、日本が主導権を取る形で、「チェンマイイニシアティブ」(CMI)における網の目のようなスワップとして成立した、という経緯があります。具体的には、
「日本、中国、韓国、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ」
の8ヵ国が、相互にBSAを結び合う、という形です。
日本の立場に立てば、これは、
- 日中通貨スワップ
- 日韓通貨スワップ
- 日尼通貨スワップ
- 日馬通貨スワップ
- 日比通貨スワップ
- 日星通貨スワップ
- 日泰通貨スワップ
という7本のBSAが並びますが、ほかの7ヵ国についても同様であるため、最大で28本もの協定(=7+6+5+4+3+2+1)が成立してしまいます(なぜ8ヵ国で28本になるのかという点については、nCr = n!÷{r!(n-r)!}のnに8、rに2を代入していただければ求まると思います)。
ただ、8ヵ国だとまだスワップの本数は28本で済みますが、これが9ヵ国だと36本、10ヵ国だと45本、「ASEAN+3+香港」(14ヵ国)だとじつに91本に増えてしまい、大変に煩雑なことになってしまいます。
そこで、現在は、このCMIは「CMIM」にマルチ化されており、具体的にはASEAN10ヵ国と日中韓港の4ヵ国・地域をあわせた14ヵ国・地域が1本の協定で済むようになっています。
図表1 CMIM(チェンマイ・イニシアティブ・マルチ化協定)
国 | 拠出額 | 引出可能額 |
---|---|---|
日本 | 768億ドル | 384億ドル |
中国(※) | 768億ドル | 405億ドル |
韓国 | 384億ドル | 384億ドル |
インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピン | 各 91.04億ドル | 各 227.6億ドル |
ベトナム | 20億ドル | 100億ドル |
カンボジア | 2.4億ドル | 12億ドル |
ミャンマー | 1.2億ドル | 6億ドル |
ブルネイ、ラオス | 各0.6億ドル | 各3億ドル |
合計 | 2400億ドル | 2400億ドル |
(【出所】財務省『CMIM 貢献額、買入乗数、引出可能総額、投票権率』。ただし、中国については香港との合算値。中国以外のIMFとの「デリンク」割合は30%。また、香港はIMFに加盟していないため、中国の引出可能額に占める「IMFデリンク」割合は他の国と異なる)
もっとも、ここで示した「引出可能額」の全額を引き出そうとしたら、国際通貨基金(IMF)が介入して来ます。香港との合算値である中国の場合は、香港がIMFに加盟していないため、デリンク割合はほかと異なりますが、中国以外の各国のデリンク割合は30%です。
このため、たとえばベトナムに関しては、限度額(100億ドル)に対して30%、すなわち30億ドルまでIMFの介入なしに引き出すことができる、という仕組みです。
日本の通貨スワップと為替スワップの状況
少し順番が前後しましたが、日本が結んでいる通貨スワップ(BSA)、為替スワップ(BLA)、多国間通貨スワップの状況は、次のとおりです。
- BSA…東南アジア4ヵ国(インドネシア、タイ、シンガポール、フィリピン)とインドの5ヵ国
- BLA…米・欧・英・スイス・カナダの5ヵ国と無制限のスワップ、中国、豪州、シンガポールの3ヵ国と限度額付きのスワップ
- 多国間通貨スワップ…CMIM
そのうえで、図表1に示したCMIMを除いて、それぞれのスワップの状況を図表化しておくと、図表2~図表4のとおりです。
図表2 日本銀行が締結している為替スワップ(常設のもの)
相手 | 金額 | 満了日 |
---|---|---|
米FRB | 無制限 | 無期限 |
欧州中央銀行(ECB) | 無制限 | 無期限 |
イングランド銀行(BOE) | 無制限 | 無期限 |
カナダ銀行(BOC) | 無制限 | 無期限 |
スイス国民銀行(SNB) | 無制限 | 無期限 |
合計 | 無制限 |
(【出所】日銀『海外中銀との協力』のページを参考に著者作成)
図表3 日本銀行が締結している為替スワップ(有期のもの)
相手 | 金額 | 満了日 |
---|---|---|
中国人民銀行 | 3.4兆円/2000億人民元 | 2021年10月25日 |
豪州準備銀行(RBA) | 1.5兆円/200億豪ドル | 2022年3月17日 |
シンガポール通貨庁(MAS) | 1.1兆円/150億シンガポールドル | 2022年11月29日 |
合計 | (日本円)6.0兆円 |
(【出所】日銀『海外中銀との協力』のページを参考に著者作成)
図表4 日本が外国と締結する二国間通貨スワップ(BSA)
相手国 | 日本から相手国へ | 相手国から日本へ |
---|---|---|
インドネシア | 227.6億ドル | なし |
フィリピン | 120億ドル | 5億ドル |
シンガポール | 30億ドル | 10億ドル |
タイ | 30億ドル | 30億ドル |
インド | 750億ドル | 750億ドル |
合計額 | 1157.6億ドル | 795億ドル |
(【出所】財務省『アジア諸国との二国間通貨スワップ取極』および日本銀行HPより著者作成。なお、いずれも日本が提供する通貨は米ドルか日本円)
ちなみに日本の通貨・円は世界の外為市場(OTC)では3番目の売買シェアを占め、世界の外貨準備に占める割合も3番目ですが(『人民元の台頭の本当のリスクは米国の金融制裁の無効化』参照)、これは日本円自体が世界で深く信頼されていることの証拠です。
ただ、それだけでなく、日本政府(財務省の外為特会)には、昨年12月末時点で132兆3750億円(!)という非常識に巨額の外貨準備が蓄えられていて、これらを保有するために約73兆円の短期国債を調達しているのですが、本来、日本にこんな巨額の外貨準備など必要ありません。
そのため、日本政府は今すぐ、外為特会で保有する外貨準備を日銀に付け替えるべきでしょう(※ちなみにそれだけで剰余金が少なくとも40兆円以上発生しますので、ついでに消費税は財源として不要ですので、廃止してしまうべきでしょう)。
韓国のスワップ
日本の通貨ポジションは世界最強、対して韓国は…
さて、久しぶりに日本の外貨準備、通貨スワップ(BSA)、為替スワップ(BLA)、CMIMなどの状況をチェックしたのには、理由があります。
またしても隣国が日本に「熱い視線」を送り始めているフシがあるからです。
先日の『韓国経済副首相「中韓通貨スワップの延長目指す」』で紹介したのですが、韓国の洪楠基(こう・なんき)韓国副首相兼企画財政部長官は20日の会議で「通貨スワップ」に言及し、「協定を延長し、外貨の流動性を確保する」と述べたようです。
このときに引用した、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)の2020年1月20日付の『日本との輸出管理政策対話 早期にソウルで開催へ=韓国政府』と題する記事によれば、洪楠基氏は
「今年はマレーシア、オーストラリア、インドネシア、中国との二国間通貨スワップ協定が満期を迎える」
と述べたらしいのですが、これについて改めて事実関係を確認しておきましょう。
各国中央銀行の報道発表等を参考に、韓国が現在保有している外国との通貨スワップ、多国間スワップ等の状況を調べてみると、たしかにインドネシア(3月)、マレーシア(1月)、オーストラリア(2月)の3ヵ国との通貨スワップについては今年、期限を迎えます(図表)。
図表5 韓国が保有するスワップ等
相手国と失効日 | 金額とドル換算額 | 韓国ウォン |
---|---|---|
インドネシア(2020/3/5) | 115兆ルピア(84.2億ドル) | 10.7兆ウォン(91.7億ドル) |
マレーシア(2020/1/24) | 150億リンギット(36.9億ドル) | 5兆ウォン(42.9億ドル) |
スイス(2021/2/20) | 100億フラン(103.3億ドル) | 11.2兆ウォン(96.0億ドル) |
オーストラリア(2020/2/22) | 100億豪ドル(68.6億ドル) | 9兆ウォン(77.2億ドル) |
UAE(2022/4/13) | 200億ディルハム(54.4億ドル) | 6.1兆ウォン(52.3億ドル) |
中国(2020/10/13?) | 3600億元(521.5億ドル) | 64兆ウォン(548.7億ドル) |
二国間スワップ小計 | 869.0億ドル | 106兆ウォン(908.8億ドル) |
CMIM | 384.0億ドル | |
合計 | 1,253.0億ドル |
(【出所】各種報道等より著者調べ。米ドル換算額については昨日時点のWSJの終値を参考に試算。なお、韓国の通貨当局はこれら以外にもカナダとの間で締結した為替スワップ(BLA)を「通貨スワップ(BSA)」と称している模様)
韓国が「ある」と自称する外貨準備高は4000億ドル少々だそうですが、総額1253億ドルというのは、その4000億ドル少々の外貨準備の3分の1にも満たない金額です。
正直、韓国の企業などが外国の金融機関から借りている金額は3000億ドル少々ですので(『「GSOMIA後」、大量格下げと金融不安も焦点に』等参照)、本当に4000億ドルも外貨準備があるのなら、通貨スワップなどなくとも、韓国は通貨危機に直面することはあり得ません。
ただし、『韓国の外貨準備における不整合と「本質的な問題点」』でも報告したとおり、そもそも論として韓国が「存在する」と主張する4000億ドルの外貨準備とやらには実在性が怪しい項目もあり、実際に「いつでも換金できる額」は2000億ドル、いや、下手をするとそれ以下ではないかとの可能性もあります。
だからこそ、韓国は「外国と1253億ドルものスワップがある」と強調しているのではないでしょうか。
中国とのスワップがBSA全体の60%を占める
ただし、図表1と図表5を改めて眺めて見て気付くのは、韓国が外国と締結しているスワップのうち、通貨スワップ(BSA)とCMIMをあわせた金額は1253億ドルですが、このうちCMIMが384億ドルを締めていて、通貨スワップ(BSA)については869億ドルしか存在しません。
ちかも、CMIMについてはデリンク割合が30%ですので、384億ドルのうちの30%(つまり115.2億ドル)を超えてドルを引き出そうとしたら、またしてもIMFが介入して来てしまう、ということです。
次に、通貨スワップ(BSA)の869億ドル部分に限定してみると、521.5億ドル、つまり全体の6割が中国とのスワップです。ただし、そもそも論として中韓スワップは2017年10月10日に失効したままであり、韓国政府が「わが国は中国との間で口頭で延長に合意した」と自称しているに過ぎません。
よしんば、韓国政府が自称する「延長で合意した」というのが事実だったとしても、人民元自体はいまだに国際的には「ハード・カレンシー」と呼べる代物ではありませんし、もし韓国が通貨危機に陥ったとしても、「人民元を中国から借りて来て、それをドルに換える」、ということは非常に難しそうです。
さらには、インドネシアやマレーシアとのスワップについては、それぞれの通貨は国際的な市場で自由に換金することが難しく、115兆ルピア、150億リンギットを一気に米ドルと両替すれば、韓国の通貨危機がインドネシアやマレーシアにも波及してしまう、というリスクがあります。
要するに「弱いもの同士」の通貨スワップには、金融危機を防ぐ力などないどころか、危機がさらに波及するというリスクもはらんでいるのです(ちなみにインドネシアは日本ともBSAを締結していますので、韓国がインドネシアからルピアを引き出せば、インドネシアは日本からドルか円を引き出すでしょう)。
つまり、韓国が保有する通貨スワップには、次のような問題点があるのです。
- そもそもCMIMについてはデリンク割合が30%であり、IMFの介入なしに全額引き出すことはできない
- BSA全体に占める中韓スワップの金額割合は60%であるが、そもそも中韓通貨スワップ自体契約書が存在せず、韓国が通貨危機に陥っても中国がスワップ引出に応じてくれるかわからないし、また、引き出した人民元をドルに換金するのは難しい
- BSAの相手国のうちインドネシアやマレーシアの通貨は国際的な市場で通用力が弱い「ソフトカレンシー」であり、もし韓国がこれらの通貨を引き出してドルに換金しようとすれば、韓国の通貨危機がインドネシアやマレーシアに波及しかねない
さしあたってはマレーシアだが…
ただし、あくまでも個人的な印象で恐縮ですが、韓国が「外貨準備もこんなにたくさんある」、「わが国はこんなにたくさんの国とスワップを結んでいる」、などと述べているのは、おそらく、「ハリボテ」を作るためでしょう(※そういえば38度線の北側にも「ハリボテ」が大好きな国がありますね)。
つまり、韓国が重視しているのは、「実際に危機が発生したときに役立つかどうか」ではなく、「国際的な投機筋に対し、わが国は通貨危機への備えがこんなにあるよ」という「見栄え」なのではないでしょうか。
それはさておき、図表5で見ていただければわかりますが、さしあたって韓国銀行が更新しようとするのは1月に期限を迎えるマレーシアとのスワップ、ついで2月に期限を迎える豪州とのスワップ、3月に期限を迎えるインドネシアとのスワップでしょう。
このうちマレーシア、インドネシアとのスワップについては、更新に成功すればしたで、韓国メディアが狂喜乱舞して報じるものと思いますが、更新できなかったとしても、「ソフトカレンシーだから更新できなくてもわが国には実害はない」といった報道が流れるのかもしれません。
一方、豪州との通貨スワップ(BSA)は、スイスとの通貨スワップ(BSA)、CMIMなどと並んで、韓国にとっては貴重な「ハード・カレンシー」との通貨スワップです。もし豪韓通貨スワップの更新が成立しなかった場合は、それだけで韓国メディアは大騒ぎするのかもしれませんね。
日本を見る韓国
この期に及んで「韓日通貨スワップ」、懲りない韓国メディア
ただ、洪楠基氏の発言から1日遅れて、韓国メディア『中央日報』(日本語版)は昨日、こんな記事を掲載しています。
韓国、中国・豪州などと通貨スワップ延長推進…終了から5年経過した韓日通貨スワップ(2020.01.21 14:37付 中央日報日本語版より)
なぜここで「韓日通貨スワップ」という単語が出て来るのかはわかりません。
中央日報は日韓両国間では2015年2月末で通貨スワップ協定が失効して以来、韓国側が2016年8月に日本側に通貨スワップ再開を提案したとしつつ、
「2017年1月に日本政府は釜山(プサン)在韓日本総領事館前の少女像設置を理由に一方的に交渉を中断した。」
と、あたかも日本政府が一方的に不当な措置をとったかのように表現しているのはご愛嬌でしょうか。
いちおう、事実関係を確認しておくと、過去に日韓間では、米ドル建ての通貨スワップ(BSA)、円建ての通貨スワップ(BSA)が存在していました(図表6、図表7)。
図表6 米ドル建て日韓通貨スワップ
時点 | 概要 | 日→韓の上限額 |
---|---|---|
2001年7月4日 | CMIに基づく日韓通貨スワップ開始 | 20億ドル |
2006年2月24日 | CMIスワップの増額 | 100億ドル |
2011年10月19日 | 「野田佳彦スワップ」開始 | 400億ドル |
2012年10月19日 | 「野田佳彦スワップ」終了 | 100億ドル |
2015年2月16日 | CMIスワップが失効 | 0 |
(【出所】日銀、財務省、国立国会図書館アーカイブ等より著者作成。なお、日銀、財務省が一部過去データを抹消しており、国立国会図書館アーカイブも不完全であるため、誤っている可能性もある)
図表7 日本円建て日韓通貨スワップ
時点 | 概要 | 日→韓の上限額 |
---|---|---|
2005年5月27日 | 円建て通貨スワップ開始 | 30億ドル |
2008年12月12日 | リーマン・ショック後のスワップ増額 | 200億ドル |
2010年4月30日 | リーマン増額措置終了 | 30億ドル |
2011年10月19日 | 「野田佳彦スワップ」開始 | 300億ドル |
2012年10月31日 | 「野田佳彦スワップ」終了 | 30億ドル |
2013年7月3日 | 円建て通貨スワップ終了 | 0 |
(【出所】日銀、財務省、国立国会図書館アーカイブ等より著者作成。なお、日銀、財務省が一部過去データを抹消しており、国立国会図書館アーカイブも不完全であるため、誤っている可能性もある)
(※なお、図表2に示した「日本円建ての通貨スワップ」については、厳密には「為替スワップ」ではないかという気もするのですが、確認する限り、日銀の過去資料など「為替スワップ」という用語は用いられていないため、当ウェブサイトでは、一応は「通貨スワップ」として取り扱っています。)
逆恨みされますよ
ついでに申し上げると、日韓通貨スワップは韓国が危機に陥るたびに増額されたという経緯があるのですが、野田佳彦前首相が総額700億ドル(米ドル建て400億ドル+日本円建て300億ドル)の野田スワップを締結してやったところ、翌年8月には李明博大統領(※当時)が、
- 日本領である島根県竹島に不法上陸した
- 天皇陛下(現在の上皇陛下)を侮辱した
という、二重の意味での不法行為を働き、日韓関係が急速に悪化したという経緯もあります。
いずれにせよ、自称元徴用工問題、レーダー照射事件、慰安婦財団解散など、さまざまな事件を起こして来ている韓国に対するわが国の国民感情が好転するとは思えないなか、もうひとつだけ強調しておきますと、韓国は助けても逆恨みされるという事実を忘れてはなりません。
とくに2008年の金融危機の際、韓国は日米両国から緊急のスワップラインを付けてもらい、危機を乗り切ったのですが、個人的には日本国民のひとりとして、その直後の2009年7月に中央日報が掲載した次の記事については絶対に許すことができません。
「韓国が厳しい時、日本が最も遅く外貨融通」(2009年07月07日08時07分付 中央日報日本語版より)
助けてやって「日本の助けが最も遅い」という恨み言を言われるのなら、最初から手を出さないのが正解ではないでしょうか。
View Comments (28)
>なぜここで「韓日通貨スワップ」という単語が出て来るのかはわかりません。
記事中の他の記述と関係するわけでもないので、スワップ延長にかこつけた、日本下げのための記事なんじゃないでしょうか♪
七味 様
「日韓スワップが欲しくてたまらない」という本音が出てしまったのでしょう。
これだけ関係悪化しても「スワップ結んでもらえるかも?」と期待する心理は正直理解できませんが。
韓国としては、日本は韓国を助ける為の存在だからなんでしょうね。
しかも、ただ助けるのではなく、日本が倒れようとも韓国が助けて欲しい内容で韓国を助けるのが当然である、って感じの。
世界最凶の乞食民族だと常々考えてます。
貴重な情報、ありがとうございます。
「デリンク」については初めて知りました。
マレーシア、オーストラリア、インドネシアには、「かかわっちゃダメ」と一声かけてあげるのがいいかもしれませんね。通常ならこっそり伝えることですが、麻生閣下なら公然と口を滑らせるかも。
折しも、過度のリスクオンが改まり、為替市場の流れも変わってきています。
日本は円高。一方ウォンは 1% 近い大幅安。
安いだけが取柄の輸出大国韓国さんは、嬉しい悲鳴を上げていらっしゃることでしょう。
関わる国に悉くマイナスをもたらしますね。会計士様もお考えのとおり、距離を置くのが一番と思います。
そもそもですが中韓スワップはBLAだったのではないかと思っています。契約はBLAなのに韓国が勝手にBSA的な宣伝をして国の外貨準備の「マイナス通帳」に使えるとか言って中国に不興を買った。そんな理解です。
そもそものスワップの存在意義ですが、「信用力は十分あるのに外貨が調達出来ずに決済不能に陥り、それが連鎖して金融不安になるのを防ぐ」だと考えます。であればBSAだろうとBLAだろうとあまり関係なく、その差異は単なる技術論なのかなと。
元来スワップはBSAだったのですが、韓国みたいに外貨準備のマイナス通帳だとか言い出す国やCMIMや日本の東南アジア向けみたいに明確に国の金融危機支援を目的にしたスワップへの対策に、外貨準備への流用への監視のついたBLAが一般化した。BLAは改良型スワップなのかなと。
個人的にはアメリカFRBがBSAをどれだけ他国と結んでるのか興味あります。予想ですけどもうほとんど存在しないんじゃないかと。
スワップの存在意義の所主語が抜けてたので追加です。
「輸出入を行う業者(一般企業)や金融機関が…」です。
国自身じゃなく外為に参加する企業がというのがミソです。
偉そうな乞食が「日韓関係を改善したければ、スワップを締結いてあげても良いニダ」と言ってます。
今の日韓関係で、スワップが締結される可能性は、有りませんので気にする事は、有りません。
韓国が、発表する外貨保有高の内訳には、CMIMが全額入っている様な、気がするんですよね。
クロワッサンさま
もう韓国を助けるという発想に、無理があると思います。
> スワップを締結いてあげても良いニダ
いえいえ、韓国人がそんなに謙虚なはずがありません。
イルボンは「韓日」関係を改善したいんでしょ?
どうしてもっていうなら、ウリとスワップを締結させて あ・げ・る(はぁと)
ですよ。
更新お疲れ様です。
>ちなみにインドネシアは日本ともBSAを締結していますので、韓国がインドネシアからルピアを引き出せば、インドネシアは日本からドルか円を引き出すでしょう
つまり、韓国がインドネシアなどに迷惑を掛けても日本が尻拭いをするから構わない、と韓国なら考えそうですね。
で、尻拭いをした日本が韓国に文句を言うと「俺は当然の権利を行使しただけだ!」と開き直り、日本がそんな韓国を嫌うと「差別だ!」と逆ギレする、と。
・・・ああ、在日コリアンで被害者コスプレしてる連中ってやっぱ本国人と同じなんですね。
>助けてやって「日本の助けが最も遅い」という恨み言を言われるのなら、最初から手を出さないのが正解ではないでしょうか。
日帝統治も日本としては「恩に着せる」つもりは無い訳ですが、恩を感じるどころか恨みを抱くところ、こんな連中は半島以外の何処に行っても地域社会の人達から忌避されるんだろなって思います。
で、恩を感じるどころか恨みを抱くのが当然として通用する半島は、やはり穢れた地なのだなぁと。
インドネシアは拒否しますよ、韓民国へのスワップを。
何故なら実行したら韓民国に忽ち全額 ドル買/ルピア売 される。
市場では紙屑ウォン同様の紙屑ルピアを大量に買ってくれる超大金持ちはいないでしょうが、
大
量のルピア売りが出ただけで、確実にルピア暴落となるから。
基本的なメンタルが「助けさせてあげる」なんですよね。(アリエナイ・・
関わっても関わらなくても恨み言を聞かされるのならば、関わらないに越したことはないのが「自明の理」なのだと思います。
ウリは偉いし、イルボンは劣位だから、助けさせてあげる、で正しいニダよ。
細かいことですが図表3、シンガポール通貨庁との締結額に億が抜けていますね。
150S$ → 150億S$
みったぁ 様
ご指摘大変ありがとうございます。誤植ですので早速修正します。ご指摘大変ありがとうございました。
今後とも当ウェブサイトのご愛読とコメントを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
CMIMの拠出金額は、韓国は日本同様に基本的に片務的に経済的弱国を救済する役割を期待されていると考えるのが常識的な感性なんですが、実際どう考えているんでしょうねw。
CMIMで韓国一国の経済崩壊が他のアジア諸国に波及するような事態は、大災害としか表現できないのですが。
あと気になるのは、CMIMが発動する場合、拠出金というのはどういう基準で分配されるのでしょうか。
最初からデポジットされていて、どこの国のお金かわからない状態で貸し出されとか、拠出額比率で均等に割り振られるならいいのですが、まず日本の拠出金額から貸し出されていって・・・なんて構造ならかなりの不公平感です。
りようちんさま
韓国が引き出せるのは、自国の出資金と同額までですのて、この懸念はあたらないと思います。
元の投稿に関しては、多分外貨保有高の内訳に入っている所から、自分が使えるお金だと考えていると思います。
韓国:スワップ
日本:却下。以上
日本国民の多数が、「潰れぬなら、潰してしまおうホトトギス(韓国経済)」のメンタルだと思っておりますのに、スワップって何(怒)。
>助けてやって「日本の助けが最も遅い」という恨み言を言われるのなら
生ぬるいことをおっしゃる。Web主様。温和なご性格も相手によります。
日本に対する敵対行為の真っ最中に、ダメもとですかしら、借金の申し出。他の民族ではありえない発想です。韓国の皆さん。消えて頂けません?塩撒きますよ。