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「韓国に対する経済制裁」のうち、「ヒトの流れの制限」とは?

先日から「もし、韓国に対して何らかの経済制裁を発動するとしたら、どのような方法が考えられるか」に関して、「ヒト・モノ・カネ」という観点からの思考実験を行っています。『外為法第48条の研究:韓国に対するモノの流れの制限とは?』ではモノの流れを、『外為法第16条の研究:韓国に対するカネの流れの制限とは?』ではカネの流れを制限する法的根拠について触れたのですが、本日はもう1つ、ヒトの往来について取り上げてみたいと思います。また、くどいようですが、何らかの経済制裁を日本が韓国に対して発動するにしても、「伝家の宝刀」を抜くためには、その名目やタイミングが大切である、という点についても確認しておきます。

「安倍万能論」!

本論に入る前に、話のマクラとして、まずはこんな軽い(?)話題から紹介しましょう。

「日本が気がかり」…鄭東泳代表、米朝会談決裂の裏として安倍首相名指し(2019年03月03日11時23分付 中央日報日本語版より)

すでに読んだという方も多いと思いますが、リンク先の記事は韓国メディア『中央日報』(日本語版)に昨日掲載されたもので、第2回目の米朝首脳会談が決裂したことを巡り、韓国の民主平和党の鄭東泳(てい・とうえい)代表が自身のフェイスブックに「日本の妨害工作のせいだ」と書いた、とするものです。

何でもかんでも安倍総理のせいにする人を、私は「アベノセイダーズ」と呼んでいますが、まさか外国にも「アベノセイダーズ」がいらっしゃるとは、恐れ入りました(笑)。

中央日報によると、鄭氏は「日本の妨害工作」の具体的証拠として、昨年、シンガポールで行われた第1回目の米朝首脳会談以降、安倍総理が「終戦宣言NO、制裁緩和NO、経済支援NO」という「3つのNO」を叫んでいたと指摘。

今年2月に議員外交の一環として訪米した際にも、米議会議員が韓国側議員に対して「ピリピリした雰囲気」があったことを指摘したうえで、

  • 日本はワシントンでのロビーに注ぐ人的・物的資源総量が韓国の60倍に達する
  • ハノイでの外交惨事が安倍政権の快哉につながる北東アジアの現実こそ冷厳な国際政治の隠れた実状だ

と述べており、いわば、日本がワシントンでロビー活動を繰り広げたことで、米朝首脳会談が失敗に終わった、とする見解を示唆した格好です。

極めつけは、鄭氏が

韓国内部にも安倍首相のように快哉を呼んだ勢力が少なくないのが悲劇」(※下線部は引用者による加工)

と述べていることですが、鄭氏が米朝首脳会談の決裂を心の底から悔やんでいる、ということがよくわかる一文です。

韓国への「対抗措置」

ヒト・モノ・カネの往来の制限とは?

さて、軽いネタはこんなところとして、本稿の本題に入りましょう。

昨年10月30日に韓国大法院(※最高裁に相当)が下した「徴用工判決」を巡って、当ウェブサイトではずいぶん前から、「韓国に対する具体的な対抗措置(あるいは経済制裁)」をテーマに考察を続けています。

その際の具体的な経済制裁の方法についてはさまざまな考え方があるのですが、私が好む議論のアプローチは、「ヒト・モノ・カネの往来の制限」にあります。つまり、

  • ①日本から韓国への「ヒト」の流れの制限
  • ②日本から韓国への「モノ」の流れの制限
  • ③日本から韓国への「カネ」の流れの制限
  • ④韓国から日本への「ヒト」の流れの制限
  • ⑤韓国から日本への「モノ」の流れの制限
  • ⑥韓国から日本への「カネ」の流れの制限

という6つのパターンを基礎として、「それぞれの制限をかけるとすれば、具体的にどのような法的根拠が一番使いやすく、また、具体的にどのような効果が得られるのか」、ということを、細かく考えていく、というものです。

もちろん、韓国に対する「何らかの対抗措置」を講じる方法としては、流れを制限する対象として「ヒト・モノ・カネ」以外に「情報」を加えるやり方もあるかもしれませんし、韓国の官民が日本に保有しているさまざまな資産の凍結措置、日韓基本条約の破棄など、考え始めればいくらでもパターンはあります。

ただし、私自身は「相手が違法行為を仕掛けて来ている」からといって、「日本も違法行為により対抗する」、ということは適切ではないと考えています。このため、「日本が日韓断交を突きつける」といった、インターネットで見られる一部の極論については、当ウェブサイトでは最初から排除しています。

(※「日本の対抗措置は合法的なものに限られるべきだ」という私自身の主張を巡っては、一部の読者の方からは「物足りない」、「韓国に対しては法律を無視して徹底的に叩くべきだ」といったご不満の意見もあるようですが、私はこの主張を変えるつもりはまったくありません。)

「日→韓へのヒトの往来の制限」は?

いずれにせよ、当ウェブサイトでは、「ヒト・モノ・カネ」という3つの項目と、「日本から韓国」、「韓国から日本」という2つの流れを組み合わせた6つのパターンのなかから、具体的にどんな措置を講じることが可能で、どのような副作用があるのか、という議論を続けています。

このうち、措置の②(韓国に対するモノの流れの制限)と③(韓国に対するカネの流れの制限)については、次のような記事で詳細に解説しています。

外為法第48条の研究:韓国に対するモノの流れの制限とは?(2019/02/19 05:00付 当ウェブサイトより)
外為法第16条の研究:韓国に対するカネの流れの制限とは?(2019/02/26 05:00付 当ウェブサイトより)

簡単にいえば、外為法上、「カネの流れ」を制限するにはややハードルが高く、現実的に対抗措置を講じるならば、「モノの流れ」を制限する方が容易である、ということです。

一方、上記①~⑥のパターンのなかには、「韓国に対する対抗措置、あるいは経済制裁」として有効ではない項目や、そもそも実行できない項目もあります。

たとえば、①については、現行の法制上、日本人の海外渡航を「禁止」するルールは存在していません。北朝鮮に対しては渡航「自粛」勧告が出ていますが、これはあくまでも「自粛するように呼びかけている」だけのことであり、「禁止」はしていません(というか、法的根拠がないのに禁止もできません)。

以前、外務省が「三・一独立節」にあわせて、直前に日本国民に対して注意喚起を発表したという話題を紹介しましたが(『「韓国渡航者への注意喚起」は外務省の単なるアリバイ作り?』参照)、わが国では外務省が「注意喚起」はできたとしても、特定国・地域への「渡航禁止」を「命じる」ことは困難です。

つまり、「日本から韓国へのヒト・モノ・カネの流れの制限」については、とりあえずは

  • ①日本から韓国への「ヒト」の流れの制限⇒事実上、困難
  • ②日本から韓国への「モノ」の流れの制限⇒外為法第48条などで規制可能
  • ③日本から韓国への「カネ」の流れの制限⇒外為法第16条などで規制可能

と結論付けることができるのです。

(※ただし、外為法第48条のなかに、日本人技術者の相手国への渡航を制限する、という項目が含まれていて、これがパターン①に当てはまるのは事実です。ただし、現実に対抗措置の発動としてどの程度の効果があるのかは微妙です。)

ヒトの往来

韓国に入国した外国人

では、残された選択肢のうち、「④韓国から日本への「ヒト」の流れの制限」について考えてみましょう。

その前に、現実に日韓両国のヒトの往来は、どうなっているのでしょうか?

まず、韓国観光公社が公表する『韓国観光統計』(※韓国語)のデータから、「韓国に入国した外国人」の人数を見ておきましょう(図表1図表2)。

図表1 韓国観光統計データ(グラフ化)

(【出所】韓国観光公社データより著者作成)

図表2 韓国観光統計データ(実数と全体に占める割合)
入国者数全体 中国人入国者と割合 日本人入国者と割合
2018年:15,095,806人 4,789,512人(31.73%) 2,948,527人(19.53%)
2017年:13,066,901人 4,169,353人(31.91%) 2,311,447人(17.69%)
2016年:16,965,284人 8,067,722人(47.55%) 2,297,893人(13.54%)
2015年:12,961,458人 5,984,170人(46.17%) 1,837,782人(14.18%)
2014年:13,908,927人 6,126,865人(44.05%) 2,280,434人(16.40%)
2013年:11,866,055人 4,326,869人(36.46%) 2,747,750人(23.16%)
2012年:10,810,470人 2,836,892人(26.24%) 3,518,792人(32.55%)
2011年:9,467,536人 2,220,196人(23.45%) 3,289,051人(34.74%)
2010年:8,478,164人 1,875,157人(22.12%) 3,023,009人(35.66%)
2009年:7,583,113人 1,342,317人(17.70%) 3,053,311人(40.26%)
2008年:6,583,290人 1,167,891人(17.74%) 2,378,102人(36.12%)
2007年:6,154,179人 1,068,925人(17.37%) 2,235,963人(36.33%)
2006年:5,928,345人 896,969人(15.13%) 2,338,921人(39.45%)
2005年:5,742,288人 710,243人(12.37%) 2,440,139人(42.49%)
2004年:5,518,243人 627,264人(11.37%) 2,443,070人(44.27%)
2003年:4,465,231人 512,768人(11.48%) 1,802,542人(40.37%)

(【出所】韓国観光公社データより著者作成)

ちなみに、韓国の観光統計は、「日本人入国者」と「中国人入国者」の動向を見ていれば、だいたい説明が付きます。

韓国入国者数は、2012年に1000万人を突破し、2016年には1700万人近くに達しました(2015年に前年割れとなっている理由は、中東呼吸器症候群(MERS)による一時的な影響と考えられます)。

この伸び率を維持すれば、韓国入国外国人数は2018年にも2000万人を突破するかと思われたのですが、現実には2017年にガクンと落ち込んでいます。その理由は、2016年に50%近くを占めていた中国人入国者数が、2017年にいきなり半減したことにあります。

その一方、日本人入国者数は2012年に350万人を突破しましたが、翌・2013年にはいきなり300万人を割り込み、2014年には200万人少々、2015年には200万人割れの状況にまで低迷します(※ただし2015年の減少はMRESによる一時要因もあると思います)。

その後、日本人の韓国入国者数は、2015年で底を打ち、昨年(2018年)を通じて、再び300万人近くにまで増加しました。

すなわち、観光統計上は、昨年は韓国に入国した日本人数が大きく持ち直す一方、韓国に入国した中国人数はピーク時(つまり2016年の約807万人)にはまったく届かない状況が続いているといえます。

日本に入国した外国人

韓国観光公社のデータと対比するために、日本側の日本政府観光局(JNTO)による統計も確認しておきましょう(図表3図表4)。

図表3 JNTOデータ(グラフ化)

(【出所】日本政府観光局(JNTO)による統計より著者作成)

図表4 JNTOデータ(実数)
入国者数全体 中国人入国者と割合 韓国人入国者と割合
2018年:31,191,880人 8,380,048人(26.87%) 7,538,986人(24.17%)
2017年:28,691,073人 7,355,818人(25.64%) 7,140,165人(24.89%)
2016年:24,039,700人 6,373,564人(26.51%) 5,090,302人(21.17%)
2015年:19,737,409人 4,993,689人(25.30%) 4,002,095人(20.28%)
2014年:13,413,467人 2,409,158人(17.96%) 2,755,313人(20.54%)
2013年:10,363,904人 1,314,437人(12.68%) 2,456,165人(23.70%)
2012年:8,358,105人 1,425,100人(17.05%) 2,042,775人(24.44%)
2011年:6,218,752人 1,043,246人(16.78%) 1,658,073人(26.66%)
2010年:8,611,175人 1,412,875人(16.41%) 2,439,816人(28.33%)
2009年:6,789,658人 1,006,085人(14.82%) 1,586,772人(23.37%)
2008年:8,350,835人 1,000,416人(11.98%) 2,382,397人(28.53%)
2007年:8,346,969人 942,439人(11.29%) 2,600,694人(31.16%)
2006年:7,334,077人 811,675人(11.07%) 2,117,325人(28.87%)
2005年:6,727,926人 652,820人(9.70%) 1,747,171人(25.97%)
2004年:6,137,905人 616,009人(10.04%) 1,588,472人(25.88%)
2003年:5,211,725人 448,782人(8.61%) 1,459,333人(28.00%)

(【出所】日本政府観光局(JNTO)による統計より著者作成)

日本の場合、2013年に初めて入国者数が1000万人を突破し、その後は中国人と韓国人の旺盛な旅行需要などに支えられる形で、2016年に2000万人を突破。2017年以降はやや伸び率が鈍化しているものの、2018年には史上初めて3000万人の大台に達しました。

もっとも、日本への入国者を国籍別にみると、中国と韓国の2ヵ国だけで50%を超えているのが実情です(図表5)。

図表5 日本への入国者の国籍別割合

(【出所】日本政府観光局(JNTO)による統計より著者作成)

つまり、「韓国に入国する外国人の約半数が中国人と日本人である」、「日本に入国する外国人の約半数が中国人と韓国人である」という意味で、図らずも日韓両国がほぼ同じような状態となっているといえるかもしれません。

つまり、両国の観光統計だけを見ると、入国者数に占める割合から見て、「中国人がいちばんの上顧客」、「日韓両国はお互いの国民が2番目の上顧客」であり、この状態だけで見れば、仮に日本が韓国人の日本への入国を制限すれば、結果的に日本入国者数が激減する可能性が示唆されているのです。

そもそも「訪日客4000万人目標」が正しいのか

もっとも、私個人的には、かなり以前から、安倍政権が掲げる「2020年までに訪日旅客4000万人を達成する」という政策目標については、その意義自体、きわめて懐疑的です。

まず、「外国人観光客の質」は非常に大事です。

韓国の場合、日本から近すぎるためでしょうか、せっかく日本にやって来ても、日本国内で使うおカネ(消費単価)の額は、他の国の観光客と比べて際立って少ないという特徴があります(図表6)。

図表6 日本滞在中の消費単価(1人あたり、2018年10-12月期)
国・地域 消費単価(円) 平均泊数(日)
全国籍・地域 133,501 8
韓国 72,078 5
台湾 108,070 7
香港 140,941 6
中国 190,575 9
タイ 110,807 7
シンガポール 156,470 7
マレーシア 120,364 9
インドネシア 117,534 9
フィリピン 125,396 23
ベトナム 154,916 30
インド 133,770 14
英国 179,332 11
ドイツ 179,298 13
フランス 172,029 14
イタリア 206,964 11
スペイン 188,999 16
ロシア 210,583 18
米国 174,974 12
カナダ 157,038 11
オーストラリア 183,880 12
その他 179,110 15

(【出所】観光庁『訪日外国人消費動向調査』図表3-1、図表4-1より著者作成。調査対象はトランジット、乗員、1年以上の滞在者等を除く日本を出国する訪日外国人旅行者。なお、「消費単価」は「旅行中支出」の平均値であり、パッケージツアー参加費に含まれる日本国内支出や日本の航空会社及び船舶会社に支払われる国際旅客運賃を含まない。また、「平均泊数」は0泊(日帰り)を含めた平均値を示す。)

もちろん、平均宿泊日数が少ないという事情もあるため、1人あたり平均単価が少なくなることは、やむを得ない話です。

しかし、「訪日観光客目標4000万人」の達成自体が自己目的化すれば、「単価が低くても良いから、とにかく外国人を日本に呼ぶ」ということ自体が独り歩きしかねませんし、観光客を招くという本来の目標以外に、「好ましからざる人物」が日本に入国するリスクは非常に高いといえるのです。

(※もっとも、別にこれは韓国人に限った話ではありません。とくに、日本に入国後、ただちに「難民申請」する人もいるようですので、観光ビザ免除については、もう少し厳密に考えるべきでしょう。)

現実的解決策

観光ビザ免除プログラムの変更とは?

若干余談が過ぎましたが、私が申し上げたいのは、「ヒト・モノ・カネ」の往来に制限を掛ければ、韓国経済にとっても重大な打撃を与えることは可能である一方、方法を間違えれば、日本経済にも少なからぬ悪影響が出る、ということです。

ただ、逆に言えば、韓国人の圧倒的多数は、極めて善良な観光客です。

現状、韓国人に対しては、観光ビザの免除措置が導入されており、商用、会議、観光、親族・知人訪問などを目的として日本に入国する場合、入国に際してビザを取得する必要はありません(※ただし日本で報酬を受ける活動に従事する場合などには別途ビザが必要です)。

外務省のホームページの説明によると、上陸許可の際に付与される在留期間は90日間だそうですが、よく読むと、ビザ免除制度を利用して日本に入国しても、滞在期間が短いという国もあります(たとえば、アラブ首長国連邦については30日、インドネシア、タイ、ブルネイは15日です)。

このことから、韓国に対する観光ビザ免除プログラムについては、基本的には現在のものを維持するとしながらも、在留期間を90日間から15日間にまで短縮すれば、大多数の善良な韓国人観光客の慣行活動にはまったく影響を生じさせずに、「ヒトの交流の制限」を加えることが可能です。

先ほどの図表6を再確認してみればわかりますが、韓国人観光客の平均滞在日数は5日間であり、「滞在可能期間15日」といえば、その平均滞在日数の3倍だからです。

基本的にはこれで十分でしょう。

ほかの3つのパターン

さて、冒頭で提示した、「ヒト・モノ・カネ」の流れのうち、「韓国から日本への流れ」については、次の3つのパターンがあります。

  • ④韓国から日本への「ヒト」の流れの制限
  • ⑤韓国から日本への「モノ」の流れの制限
  • ⑥韓国から日本への「カネ」の流れの制限

このうち④については、本稿で検討したとおり、圧倒的多数の善良な韓国人観光客の観光活動にまったく影響を与えず、かつ、「好ましからざる人物」の入国を防ぐという意味で、私はとりあえず、「観光ビザによる上陸者に対する在留期間を90日から15日に短縮すること」を直ちに実行してほしいと思います。

一方、⑤については、そもそも論として韓国は日本に対する貿易赤字国であり、また、韓国の輸出額に占める日本に対する輸出比率は高くありません(図表7)。

図表7 韓国の貿易額と相手先別内訳と比率(2016年、一般貿易方式)
相手国 金額(百万ドル) 比率
輸出総額 495,418 100.00%
中国 124,433 25.12%
米国 66,748 13.47%
香港 32,779 6.62%
ベトナム 32,630 6.59%
日本 24,354 4.92%
輸入総額 406,182 100.00%
中国 86,979 21.41%
日本 47,466 11.69%
米国 43,398 10.68%
ドイツ 18,917 4.66%
サウジアラビア 15,742 3.88%

(【出所】総務省統計局『世界の統計2018』より著者作成)

つまり、日韓貿易は一方的に日本から韓国に対する貿易黒字状態となっており、いわば、半導体製造などの基幹となる製品を高値で韓国に販売している、という関係です。これに対して韓国から日本への輸出額は、韓国経済全体の5%弱に過ぎません。

ということは、「モノの流れの制限」を加えるにしても、「外為法第48条の規定に基づく日本から韓国へのモノの流れの制限」と比べると、どうしても制裁、対抗措置としては弱いのです。

(※もっとも、通関手続を厳格化し、たとえば韓国のナンバープレートの自動車が日本の公道上を走れるという状況を改善することは必要かもしれませんが…。)

なお、経済制裁のうち⑥(韓国から日本へのカネの流れの制限)については、あまり議論する意味がないと私は考えているため、本稿ではとくに取り上げません。

「経済制裁」はあるのか?

どういう名目で制裁を発動するか?

さて、当ウェブサイトでは、仮に日本が韓国に対して経済面での何らかの制裁を発動するとしたら、一番手っ取り早いのは「②日本から韓国に対するモノの流れの制限・遮断」であり、次いで「③日本から韓国に対するカネの流れの制限・遮断」、あるいは韓国人に対するビザ免除プログラムの変更だと考えています。

ほかにも、日本から能動的に韓国に対して何らかの制裁アクションを加えるのではなく、「韓国が困っているときにわざと助けない」という意味での「消極的制裁」も、非常に重要だと考えています。

あるいは、以前『日韓スワップ「持ち上げて、落とす」のも立派な「経済制裁」』のなかで、韓国に対してわざと「通貨スワップ協定の締結」を匂わせて、韓国政府を期待させ、土壇場になって交渉を打ち切る、という、非常に陰険な制裁方法を提案したこともあります。

さらには、日本が実質的に意味のない制裁をわざと韓国に対して発動し、韓国側から日本に対する対抗措置を取らせることで、結果的に「セルフ経済制裁」状態を実現する、という選択肢もあるかもしれません(『韓国が「セルフ経済制裁」を喰らう?ソウル市の条例案に思う』参照)。

いずれにせよ、制裁にはさまざまな手段がありますし、日本は制裁手段を豊富に持っているわけですが、あとは「どういう名目で」制裁を発動するか、そしてそのタイミングが、非常に重要です。

そういえば、以前、「昨年12月のレーダー照射事件を巡り、韓国側が1月中に誠意ある回答を示さなければ、日本は韓国に対する経済制裁を発動する」、という論説を紹介したことがあります(『韓国側の主張に呆れるが、「月内に制裁発動」の可能性は低い』参照)。

結論的には、私が主張した「レーダー照射事件をきっかけとする、2019年1月中の韓国に対する経済制裁発動は、考え辛い」という説が正しかった格好ですが、やはり、日本が韓国に対する何らかの制裁に乗り出すとすれば、それは「感情的なもの」ではなく、あくまでも「国益に沿ったもの」であるべきです。

「官邸の情報」?まさか!

さて、先日、当ウェブサイトでは『韓国に対する対抗措置の発動が「遅れている」本当の理由とは?』のなかで、韓国に対する何らかの対抗措置(あるいは制裁)の本当の目的は、北朝鮮の核開発に絡む、一種の「セカンダリー・サンクション」ではないか、と申し上げました。

この記事に対しては、読者の皆さまからは「さすがに陰謀論ではないか」、といったご指摘も頂いたのですが、それと同時に、当ウェブサイトのメールアドレス宛てに、なぜか複数の方から、「官邸の情報を得たのか?」などとする問い合わせメールも頂戴しました。

ただ、残念ながら、私自身は首相官邸の内部に個人的な知り合いはいませんし、万が一、そのような知り合いがいて、情報を入手していたとしたら、こんなウェブサイトにそんな重要な情報を開示するはずなどありません。

先日の記事は、あくまでも、客観的に誰でも入手できる情報をベースに、「可能性として考えられる」と思ったことを書き綴っただけのものであり、何らかの秘密情報を得たものではないということは明らかにしておきたいと思います。

また、「近日中に日本が国連安保理に働きかけ、対韓制裁を可決させる」、「日米両国が近日中に対韓制裁に乗り出す」、といった情報を送って下さった方もいらっしゃいます(コメント、メールを含めて)。

ただ、情報の真偽はさておき、残念ながら、当ウェブサイトは「秘密情報を暴露するサイト」ではありません。あくまでも「知的好奇心の視点から思考を楽しむサイト」です。

本当に官邸の情報をご存知なのであれば、こんなところにそういう情報を書き込むべきではありませんし、単に目立ちたいだけでいい加減な情報を書いたのだとしても、当ウェブサイトの読者の皆さまの知的好奇心を満足させることはできないのではないか、とだけ申し上げておきたいと思います。

新宿会計士:

View Comments (13)

  • 経済的損失を考えていたら制裁など出来ないのですが、韓国に効く制裁はしたい、損失は最小限にしたいという二律背反を解決する策を考えてみましょう。
    まず日本が制裁を実施したとして他国からとやかく言われるのは避けたいですね。特に韓国は火病を起こし太鼓を敲いて喚きまわりますから、これは避けねばなりません(鬱陶しい)。
    国際的な理解が得られ、韓国に致命的に効くが、国内産業全体から見ればさほどでもなく、当該企業だけに補助金等を支給すれば済む程度が望ましい。
    尤も、韓国経済が制裁を受けて萎めば、日本の輸出企業も影響を受けるでしょうが、それを言い出せば制裁なんて出来ません。

    と書いてくるとアレしかありません。フッ化水素ですね。ピンポイントで禁輸しましょう。
    前提として安保理で韓国に二次制裁を科すことにお墨付きをもらう必要がありますが。

    • 人の流れの制限と言うテーマから外れてしまいました。申し訳ありません。

  • 更新ありがとうございます。

    韓国だけをターゲットにした制裁、成果があり、あまりコトを荒だてずに粛々と出来るのは、渡航者の制限でしょうね。

    日本政府も2020年4,000万人なんて、官僚や学者や観光事業者が放った花火に汲々とせず、不逞不明瞭反日の輩を阻止するべきです。犯罪おかされる。

    だいたい国別でも韓国など70,000円しか消費せず、コンビニや集合住宅に闖入して宿泊費も浮かす、街は徘徊する、汚す民族にはビザ免除するべきではない。ゼロが理想だが、5日平均が実勢なら7日で十分でしょう。不法ビジネスもそれだけ減ります。

    方やアジア、西欧では1人あたり15万円〜20万円以上使ってくれるのが普通。人数が三分の一になって額はおなじ。税関の無駄な労力は省きましょう。

    これは文政権にも国民の非難が高まる。是非、タイミングなどといわず、すぐにやって欲しいですね。

    • めがねのおやじさん、

      可能な対韓制裁策としてビザ免除廃止に反対するわけではありませんが、韓国人観光客の質を過小評価するのも判断を誤りますよ。

      >もちろん、平均宿泊日数が少ないという事情もあるため、1人あたり平均単価が少なくなることは、やむを得ない話です。

      とあるように客の質を考えるときは1日当たりの消費額を考慮することも重要です。
      観光庁『訪日外国人消費動向調査』には「2018年全国調査結果(速報)」 という暦年統計があり、それから1日当たりの消費額を割り算すれば、全国籍平均額が16,769円、韓国は18,037で20カ国中の6位で欧米よりも多額です。
      宿泊費は全国籍平均は5,035円に対し、韓国は5,788円で9位です。
      コンビニ飯だと揶揄されがちですが、飲食費も一日当たりなら全国籍平均が3,699円なのに対し4,613円で3位なのです。
      中国は1日当たり総額では2位ですが、買い物以外の項目では韓国の方が多額です。

      それから警察庁がまとめた刑法犯の統計では、ほとんどの国籍では検挙者数は来日外国人の方が多いのですが、韓国籍だけは来日韓国人の検挙人数がずっと少ないのです。まあすぐに逃げ帰るということもあるのでしょうが。
      平成29年の外国人検挙人員は総数10,580人うち来日外国人は6,113人で韓国・朝鮮籍は2,512人ですが来日韓国・朝鮮籍は391人です。

  • いつも知的好奇心を刺激する記事の配信ありがとうございます。

    ヒトの制限の観点で「在留特別許可の持つ半島の人間への法律を公平な運用を」とコメントを考えていたのですけど、Wikipediaで入管法を調べますとビックリです。

    国会の審議を得た法律ではありません。そして出自は日本でありません。GHQです。

    常々G無省は日本の国益を守っていない様に感じていましたが、納得いきました。

    まずは外国人の管理について国会の審議を得た法律の作成から必要ではないでしょうか。在日特権の根は深いです。

    以上です。駄文失礼しました。

  • 会計士さんの述べられているとおりだと思います。先週のプライムニュースを視ていて気になったのは、松川るい氏など保守派の論客までもが、付言的に、大多数の韓国人は特別反日を意識しているわけではない、多くの韓国人が来日しており日本の良いところもわかっているのだ、といった趣旨の話をしておられたことです。あまりにも善意解釈すぎて楽観(韓(^^;))的ではないでしょうか。徹底した反日教育による性根は何ら変わることはなく、そういった際(来日旅行などの)には、言わば用日的思考に切り替えているだけだと思います。心からの親日とまではいかなくとも、自国の本当の歴史を真剣に考察しようとする人は皆無でしょう、すでに粛正、抹殺されていますから。北朝鮮に劣らず韓国も危険きわまりない国家です。

  • 米朝会談が決裂に終わったことで、韓国は仲介者としての
    責任を問われる立場になりました。米国からは完全非核化へ
    北朝鮮を説得することを、北朝鮮からは独自支援を求める圧力
    が高まるでしょう。春窮の季節ですしね。

    支援しなければ、南北の緊張は高まらざるを得ない。
    支援すれば、制裁の引き金を引くことになりかねない。

    韓国がどうするか見ものですね。

  • >韓国人の圧倒的多数は、極めて善良な観光客です。

    ホンマかいな。

    ま、こんだけの人気サイトやからコトバ選んでるんやろうけども、今の日本人はそう思ってへんで。

    最近福岡とか大阪でパチンコやっとる連中とか見てみい。

    あと安国神社に邦貨した奴もおったやろうが。

    もっかいゆうで。

    >韓国人の圧倒的多数は、極めて善良な観光客です。

    ホンマかいなwwwww

    新宿はん、余計な気遣いは不要やで。

    • 犯罪統計からみれば来日外国人の犯罪検挙人員は中国とベトナムだけで約半分を占めますが、来日韓国人の割合は6.4%です。
      来日人数は全体の1/4で滞在日数が短いことを考慮しても来日韓国人に限ればかなり善良と言えます。

  • 日韓が、相互主義で90日間のビザ免除を実施してるのなら、単に日本からの一方的な期間短縮措置では、国際社会から「対抗措置ではなく報復」だと、とられかねません。

    例えば、昨年の「在日米軍基地への韓国人来訪厳格化〔北の工作員対策?〕」に絡めたり、「治安維持のため」との名目が必要なんだと思います。

    https://www.sankei.com/world/news/181016/wor1810160015-n1.html

    • 相互主義になったのは最近のことで訪韓日本人に対する観光ビザ免除は90年代に始まっています。

  • 日本国内で、韓国系の政府金融機関が、資金調達をできなくするという対抗措置もありうると
    思っています。

    日本との合意(請求権協定/慰安婦合意)の違反や、WTO違反等の違法行為を繰り返す
    韓国政府に、日本での資金調達を認めるのは、コンプライアンスとして問題です。

    日本証券業協会に対する金融庁からの要請文等を通じて、そういう資金調達の引受行為を、証券会社が事実上できないようにすべきです。(日本証券業協会の規則の解釈の厳格化をすれば、問題は解決します。違法行為を繰り返す発行体の債券発行を日本の証券会社が手助けすべきではありません。)

    また、韓国の政府系金融機関は、日本での活動/取引もしているはずですが、日本の銀行法や、貸金業法等の規制を、韓国の政府系金融機関は守っていないと思いますので、そういう所を、銀行法違反、貸金業法違反で金融庁が摘発することも考えられます。

    韓国の政府系金融機関の日本での資金調達を日本でさせなかったり、日本での行動を違法として
    摘発すれば、韓国の政府系金融機関は、立ち行かなくなり、韓国経済も、破綻するのではないでしょうか。

    日本の支援/関与なしに、韓国経済が成り立たないことを、知らしめるべきです。

    昨年のように、1200億円のサムライ債の発行を韓国系の政府金融機関に日本でさせたりするということでは、日本政府は、韓国政府からなめられ続けます。