「中国・カナダと通貨スワップ」さりげなくウソつく韓銀総裁

韓国メディア『中央日報』(日本語版)に、韓国銀行の李総裁の発言が掲載されていました。これによると、「昨年の中国、カナダとの通貨スワップに続き、今年はスイスと通貨スワップを締結した」とする下りがあるそうですが、私は記事を読んで、思わず「ウソをつくな!」と叫びそうになってしまいました。ただ、それと同時に、李総裁は「今年に入ってから(韓国の)対外不確実性がさらに高まった状況だ」などと述べたそうですが、中央銀行総裁という重責を担っている立場の方が、あまり迂闊に自国の危機を強調しない方が良いのではないかとも思うのです。

2018/12/19 21:22付 お詫びと訂正

本文中、「日韓関係、日米関係がともに急速に悪化していることなどにより」とある部分は、「日韓関係、米韓関係がともに急速に悪化していることなどにより」、の誤りでした。本文は修正済みです。読者の皆さまにご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。また、ご指摘をくださいました「神田友紀」様、大変ありがとうございました。

韓国銀行・李総裁の発言

本日、韓国メディア『中央日報』に、こんな記事が掲載されていました。

韓銀総裁「今年最も記憶に残るのは中国・カナダ・スイスとの通貨スワップ」(2018年12月19日10時45分付 中央日報日本語版より)

これは、韓国の中央銀行にあたる韓国銀行の李柱烈(り・ちゅうれつ)総裁が18日、韓国銀行本部で開かれた担当記者団との夕食会で、「今年1年間で最も記憶に残っていることは、昨年の中国、カナダとの通貨スワップに続き、今年はスイスと通貨スワップを締結したこと」と述べたという話題です。

この短い文章の中にも、いろいろとツッコミどころがたくさんありますが、その点はさておき、李総裁はもう1つ、さりげなくとんでもない発言をしました。

今年に入って対外不確実性がさらに高まった状況であり、こうした重層的な為替安全網を拡充することが韓国経済の対外支払い能力や衝撃吸収力補強の面で持つ意味が平常時とは違う

この「対外不確実性」が何を指しているかについて具体的な説明はありませんが、おそらく、米FRBによる利上げが相次いでいること、日韓関係、米韓関係がともに急速に悪化していることなどにより、韓国の対外債務償還能力に疑義が生じていることなどを意味しているのでしょう。

韓国が保持している4本の通貨スワップ

ちなみに、韓国が保持している通貨スワップについて、現時点において相手国の中央銀行の報道発表から確認できるものは、次の4つです(図表)。

図表 韓国が保持している通貨スワップ
相手国と金額米ドル換算額提供通貨
オーストラリア(100億豪ドル)約71.81億ドル9兆ウォン
スイス(100億スイスフラン)約100.76億ドル11.2兆ウォン
マレーシア(150億リンギット)約35.76億ドル5兆ウォン
インドネシア(115兆ルピア)約79.31億ドル11兆ウォン
合計約287.64億ドル36.2兆ウォン

(【出所】相手国中央銀行ウェブサイトなどから著者作成。なお、米ドル換算額は2018/12/19時点)

韓国銀行の総裁が言及していたのは、このうち、今年2月に締結されたスイスとの通貨スワップ協定のことでしょう。この金額は100億スイスフランで、米ドルに換算すれば、約100.76億ドルです。

100億ドル少々といえば、それなりに巨額ではありますが、それと同時に、「いざというときに韓国が1200億ドル以上の外貨不足に直面するのではないか」との観測と照らし合わせれば、やはり心もとない金額です。

中国やカナダとの「通貨スワップ」は存在しない!

ただ、先ほどの李総裁が「中国、カナダとの通貨スワップ」と述べていますが、昨年10月から11月にかけて当ウェブサイトでも相次いで報告したとおり、実際には、中国やカナダの中央銀行のウェブサイトを調べても、「韓国との通貨スワップ」なる情報は、掲載されていません。

まず、中国とのスワップに関しては、中国人民銀行側の報道発表だと、「更新した」という報道は一切なされていません(『人民元 狂喜乱舞も落ち着いて 日本に擦り寄る韓国哀し』参照)し、この状況は現在でも変わりません。

もっとも、「3600億人民元(約503.47億ドル)と64兆ウォンを交換する協定」とやらが今でも存在していたとしても、実際に韓国が通貨危機に陥った際、中国がこのスワップの発動に同意するという保証もありませんし、万が一人民元を入手したとしても、それを米ドルに両替するのは非常に困難です。

一方、カナダとのスワップについては、通貨スワップではありません。「為替スワップ」です(ただし、通貨スワップと為替スワップの違いについては『総論:通貨スワップと為替スワップとは?』や『通貨スワップと為替スワップについて、改めて確認してみる』あたりで触れていますので、本稿では繰り返しません)。

通貨スワップと為替スワップについて、改めて確認してみる

つまり、通貨危機が再来した際に、相手国からおカネを引き出して通貨防衛に使うことができるという意味で、韓国が保持している通貨スワップは、先ほどの図表に示した4ヵ国とのスワップのみである、ということです。

あまり危機を強調し過ぎない方が良いと思いますが…

もっとも、現在のところ、確かに米国の利上げやユーロ圏の量的緩和終了など、世界の金融政策は「正常化」を志向していることは事実ですが、だからといって、油断はできません。

韓国のように通貨ポジションが弱い国がその典型例ですが、投機筋はちょっとした金融市場の矛盾、脆弱性を突こうと、虎視眈々と狙っていますし、中央銀行総裁という重責を担っている立場の人物が「韓国の通貨ポジションは脆弱だ」などとうっかり述べてしまえば、そのことが通貨危機の引き金になりかねません。

これに加えて、やはり調べれば調べるほど、韓国の通貨ポジション(外貨準備統計など)にはウソが混じっているように思えてならないという証拠が積み上がって来ます。

おりしも、当ウェブサイトを訪れてくださる方が最近、再び増えているという事情もあります。

近いうちに(早ければ明日)、韓国の通貨ポジションについて、もう少し詳しく触れてみたいと思いますので、どうかご期待ください。

読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

     独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。

     韓国銀行の総裁としては、韓国社会に余計な不安を与えないようにした
    (でも、分かる人には注意喚起を促す)苦肉の策の発言のような気がしま
    す。(どこの国でも、その国の政府が問題を起こしてばかりなら、同じ国
    の中央銀行の総裁は苦労するようです)

     駄文にて失礼しました。

  2. めがねのおやじ より:

    < 更新ありがとうございます。

    < 李総裁『今年1年最も記憶に残っている事は、スイスと通貨スワップを締結出来た事だろう』→嘘つき!

    < 本音は『今年1年最も悔いの残る事は、日本と通貨スワップを締結出来なかった事だろう』次いで、『日本から結びたいと言わす方法はないものか、、』だろ?(笑)

    < 中国とのスワップ締結発言って、アレ確か会議の昼食時に席を出た高官が、立ち話で記者に喋った事だよね?そんな大切な事を、韓国の一大関心事なのに、立ち話で済むかッ。どこまでも嘘ツキまくりの隣国。憐れ。

  3. とらじろう より:

    英米系の経済紙は発表された数字をそのまま受け取る傾向があります。
    中国や韓国が公表した数字だけを見て賞賛しますが、実態は見ていない。
    まあこれは日本の経済紙も同じですが。

  4. 神田友紀 より:

    お疲れさまです。

    細かい点ですが、
    >日韓関係、日米関係がともに急速に悪化していることなどにより、
    この部分、「日米関係」ではなく、「米韓関係」ではないでしょうか?

    ご確認頂けますと幸いです。

    1. 新宿会計士 より:

      神田友紀 様

      いつもコメントありがとうございます。
      また、貴重なご指摘を賜り、大変ありがとうございました。心より感謝申し上げます。

      引き続きのご愛読並びにお気軽なコメントを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

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