中東の雄・サウジアラビアとインフラ金融大国の日本

本日2本目の配信は、派手な使節団を引き連れて訪日中のサウジアラビア国王に関しての雑感です。

派手なサウジ国王訪日

エスカレーター型タラップに高級リムジン…

サウジアラビアのサルマン・ビン・アブドルアジーズ・アール・サウード国王が来日しています。

報道によれば、今回の訪日は国王として46年ぶりであり、事前に日本に持ち込んだ「エスカレーター式のタラップ」で羽田空港に降り立ち、わが国は皇太子殿下が出迎えました。

今回のサウード国王の訪日には、王族をはじめとする1000人もの随行員がおり、実に10機もの専用機に分乗して到着したそうですが、実に異様です。

しかも、羽田空港には高級リムジンが大量に乗り付けており、東京都内のハイヤーだけでは足らず、近隣県からもリムジンを調達したとの報道もあるようです。

では、このやたらと長い名前の国王、今回の訪日の目的は何でしょうか?

石油王、「脱石油」を表明

今回の訪日の目的は、ずばり、経済協力の深化にあります。日経電子版は本日の朝刊で、『日・サウジ、経済協力を深化 企業進出へ特区新設』と報じています。

「誤報体質」で知られる日経の報道なので、どこまでが事実かはわかりませんが、日経の記事をそのまま信じるならば、具体的に次の企業が「協力企業」として列挙されています。

  • トヨタ自動車
  • JXグループ
  • 3メガバンク
  • 東京証券取引所

ただし、国王は本日、安倍晋三総理大臣と会談を持つため、しばらく待てば正確な情報が官邸のウェブサイトに掲載されると思います。

これを、どう考えるべきでしょうか?

メッカ守護者と石油王

サウジアラビア王国の特徴は、「メッカの守護者」にして「石油王」です。

メッカはいうまでもなく、イスラム教最大の聖地であり、イスラム教徒であれば、一生に一度はメッカへの巡礼を希望するといわれています。その「聖地」を守護しているのが、サウード王家なのです。また、世界最大の産油国でもあり、原油の輸出により莫大な富がもたらされており、さらには産油国の「同盟」であるOPECに対しても、極めて強い影響力を持っている国でもあります。

ただ、サウジアラビアは極端な男尊女卑の国でもあり、たとえば女性が自動車を運転すること自体が、法律により禁止されています。しかも、外国人の入国は厳格に規制されているため、

  • 女性の労働力が期待できない
  • 外国人企業が自由に工場を設立することが難しい

などの事情もあり、産業構造は極端に石油に偏っているのです(図表1図表2)。

図表1 サウジアラビア 基礎データ①日本との比較
項目サウジアラビア日本
人口27,137千人(※)127,095千人
面積2,206,714㎢377,971㎢
名目GDP653,219百万ドル4,383,584百万ドル
一人当たりGDP20,711ドル34,522ドル
GDP実質成長率3.4%1.2%

(【出所】総務省統計局『世界の統計2017』より著者作成。ただし、外務省ウェブサイトによると、外国人を含めた人口は3154万人(自国民73%、外国人27%)とされている)

図表2 産業構造
項目概要
主要産業石油(原油生産量1,030.0万B/D(2015年3月、石油鉱物資源省))/LPG/石油化学
主要輸出品目鉱物資源(原油等)・化学製品・石油製品
主要輸入品目機械・電子機器・輸送機器(自動車等)・食料品・化学製品・金属製品
主要輸出相手国(金額単位:百万ドル)輸出総額201,492
UAE6,742
中国5,607
インド3,001
シンガポール2,354
エジプト1,966
主要輸入相手国(金額単位:百万ドル)輸入総額163,821
中国23,968
米国21,980
ドイツ11,759
日本9,713
韓国9,646

(【出所】外務省『サウジアラビア』および総務省統計局『世界の統計2017』より著者作成)

日本とは:ワンストップですべてが揃う国

今回のサウジ国王の派手さを見ると、「サウジアラビアは大金持ちだ」という印象を抱くかもしれません。しかし、3000万人弱の人口を抱え、一人当たりGDPで見ると、意外と日本よりも少ないのが実情です。

考えてみれば、国土を掘れば石油が出てくる国ですから、掘削の技術さえあれば、莫大な富が外国からもたらされてしまうのです。昨今、米国の「シェール革命」により、産油技術が極端に向上する中で、原油価格の低迷がサウジ経済を直撃しているのは、同国にとって非常に重大な悩みどころです。

これに対して日本は、「資源のない国だ」と言われており、実際、国土を掘っても、出てくるのは水か温泉くらいなものです。しかし、その日本の通貨・円が「世界最強の通貨」とされるのは、ひとえに日本国民の勤勉さと高い技術力、そして資本の蓄積にあります。

日経の報道が事実なのかはわかりませんが、少なくとも「G-SIBs」(FSBが指定する最大30の巨大金融機関)が3つも存在しており、かつ、世界を代表する自動車会社などの輸送用機器・インフラ産業・最新技術産業などが集積している国は、「脱石油」を志すサウジにとって、最も手っ取り早い提携相手なのかもしれません。

しかも、キリスト教国ではないため、変な宗教上の縛りもありません。

日本にとってのメリットは?

もちろん、サウジとの提携において、日本にとってのメリットは重要です。

特に、サウジが世界最大の産油国であることは事実であるとしても、サウジは石油という「モノカルチャー国家」でもあり、同国と連携することで、日本に具体的なメリットが見えないと勘違いする人もいるかもしれません。

しかし、それと同時にサウジは中東の要衝にある国家でもあり、イスラム圏全体の「正統な後継者」という位置付けを自称しています。その意味で、日本がサウジと連携することには、非常に大きな意味があります。

もちろん、日本の「虎の子」の技術や資本を一方的に取られておしまい、では困ります。しかし、日本企業も「失われた20年」におけるグローバル展開を通じ、相当にしたたかな交渉力を身に着けていることも事実でしょう。

是非、中東の強国・サウジアラビアとの「Win-Win」の友好関係を構築したいものです。

悔しがる隣国?

ところで、隣国のメディアがサウジ国王の訪日を、恨めしげに眺めています。

46年ぶりに日本訪問したサウジ国王、安倍首相との会談で協力を協議(2017年03月13日14時02分付 中央日報日本語版より)

韓国メディア『中央日報』の日本語版は、日経の報道を引用する形で、サウジ国王の訪日を報じているようです。

正直、日本と韓国は、「単に地理的に隣国関係にある」という以外、ほとんど何の関係もない国です。なぜこの国は、いちいち日本のことを見て来るのでしょうか?謎ですね。

ただ、韓国は形だけ日本を真似て、輸出産業では相当に日本と競合する関係にありますが、韓国が絶対に日本に敵わない点があります。それは、金融と通貨です。

サウジ国王が日本を選んだ最大の理由は、なんといっても「インフラ金融」にあります。インフラと金融はセットなのです。

日本は、中国が主導する国際開発銀行である「アジアインフラ開発銀行」(AIIB)にいまだに参加していませんが、諸外国からは中国や韓国を無視して、日本を訪問する外国首脳が後を絶たないのは、AIIBも中国も韓国も、インフラ金融という世界からは日本の足元にも及ばない証拠でしょう。

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