原爆投下の非人道性と、筋が違う朝鮮人被爆者救済問題

原爆投下から73年が経過しましたが、原爆の非人道性が薄れるものではありませんし、記憶を風化させるべきでもありません。ただ、原爆被害について語り継いでいくことが大事だという点についてはまったく同意しますし、朝鮮半島出身者である原爆被害者に対して人道上、一定の支援が行われることに合理性があるにしても、そこにさりげなくウソを混ぜ込むということがあってはなりません。

広島と長崎の原爆の非人道性

広島と長崎に原爆が投下され、今年で73年が経過します。

年々、被爆者の方々は高齢化され、原爆の記憶も「過去の歴史」となりつつありますが、それでも原爆の恐ろしさについては語り継いでいく必要があります。

私自身、今年は、広島原爆忌には『米国の戦争犯罪、なぜ原爆は広島市に投下されたのか?』、長崎原爆忌には『長崎原爆忌に思う』という記事をそれぞれ執筆し、当ウェブサイトに掲載していますので、どうかあわせてご参照ください。

米国の戦争犯罪、なぜ原爆は広島市に投下されたのか?

長崎原爆忌に思う

簡単にいえば、米国が原爆を投下した理由は「戦争を終わらせるため」ではなくて「単なる人体実験」であり、また、広島と長崎の2箇所に原爆を投下した理由は、タイプの違う2種類の原爆を実戦使用するためだった、というのが私の仮説です。

ただ、光栄なことに、私がこの記事を執筆後、『チャンネル桜』の水島聡社長を含め、複数の識者の方がこれと似たような仮説に言及されています。このことからも、私自身の仮説は、別に突拍子なものではなく、むしろ国を愛する人間であれば誰でもわかることである、ということの裏付けではないかと思うのです。

謝罪を求める相手が違う!

韓国で被爆者団体が抗議行動

ところで、広島と長崎で原爆被害に遭ったのは、私たち日本国民の同胞だけではありません。当時は大日本帝国の臣民だった朝鮮出身の方々をはじめ、複数の国の人々も、原爆被害に遭っています。「原爆の被害者」という意味では、国境はありません。

こうしたなか、韓国に在住する被爆者らで作る市民団体が、長崎原爆投下から73年目となる9日、個人賠償を求めて集会を開いたそうです。

日米に謝罪、賠償求め集会 ソウルで在韓被爆者ら(2018.8.9 22:49付 産経ニュースより)

産経ニュース(※共同通信配信記事)「によると、韓国外務省(※「外交部」の誤り?)の前で集会を開いたのは「韓国原爆被害者協会」で、「被爆者らが生きている間に日米両政府からの謝罪と賠償を引き出すため、外交努力を行うよう要求した」そうです。

同会の李圭烈(り・けいれつ)会長は、「韓国政府が韓国人被爆者らの個人賠償請求権に関連し、日本に協議を求めるなどの具体的な措置を取らなかったことは違憲だ」と断じた2011年の韓国憲法裁判所の判決を引用し、「韓国外務省は努力を怠ってきた」と批判したとされています。

もっとも、記事のタイトルでは「日米に対して謝罪、賠償を求める」とありますが、記事本文をよく読むと、彼らが努力を求めた相手はあくまでも韓国政府・外交部であって、日米両国政府ではありません。記事は正確に書いてほしいと思います。

敢えて冷たいことを申し上げれば、韓国人被爆者らはすでに日本国民ではない以上、日本政府が日本国民の税金を使って日本人と同等の救済をする義務はないはずです。万国公法に従えば、自国民を保護し、必要な福祉を与える義務は、その国の政府にあります。

すなわち、その被爆者が所属する国籍に応じて、南朝鮮(大韓民国)、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が、第一義的に彼らを救済する責任を負っているのです。

また、人道上、謝罪と損害賠償を行う責任があるのは日本ではありません。原爆を投下した米国です。

日本政府は在日被爆者に便宜を図ってきた

ただ、よく調べてみると、日本政府は在日韓国・朝鮮人の被爆問題に関しては、人道上の観点から、それなりの努力をしてきたことがわかります。その証拠が、次の韓国メディア『中央日報』(日本語版)の報道です。

大阪地裁、死後20年過ぎた韓国人被爆者の遺族の賠償請求を棄却(2018年02月01日09時41分付 中央日報日本語版より)

中央日報によれば、

日本は1974年から「出国すると被爆者の地位を失う」という内容の旧厚生省の指針を根拠に、この指針が廃止される2003年まで、海外出国被爆者に対しては健康管理手当(月3万4000円)を支給しなかった。

とありますが、言い換えれば、日本を出国していない限り、被爆者に対して日本人と同等の健康管理手当を支給してきた、ということです。実際、韓国人被爆者31人の賠償請求も、「損害賠償請求権は死後20年で時効消滅した」ことが棄却理由であり、国籍による差別ではありません。

もちろん、被爆者に対する各種手当は、私たち日本国民の税金から支弁されるものであり、本来ならば救済の対象は日本国籍保持者に限られると考えるのが妥当です。しかし、わが国は日本を出国するなどの事情がない限り、韓国人・朝鮮人被爆者に対しても一定の支援を行ってきたのです。

被爆者援護対策の概要(厚生労働省HPより)

厚生労働省によれば、在外被爆者とは、「日本国外に居住する被爆者」のことであるとしつつ、「戦時に広島、長崎にいて被爆し、戦後帰国された韓国の方や、戦後米国等の海外に移住した日系人の方」が大半を占めているとしています。

また、厚労省は、「海外に居住する被爆者に対しても、国籍を問わず、被爆者健康手帳を交付」するという取扱いを行っており、国内居住者とまったく同等とは言えないまでも、かなりの水準の支援が行われているのが現状です。

この点については賛否両論あるとは思いますが、原爆被害に国籍の違いがないことに思いを致すならば、政策的な配慮として外国人に対しても被爆者としての支援を行ってきたこと自体は、責められるべきではないと思うのです。

ウソをついて良いという話ではない

朝鮮半島出身者の被爆者数はよくわからない

ただ、先ほど紹介した産経ニュースによれば、韓国原爆被害者協会は「日本に徴用された多数の朝鮮半島出身者が原爆被害に遭った」と述べていますが、これは事実なのでしょうか?

ウェブサイトを検索してみると、「広島市で7万人、長崎市で2万人の朝鮮人が被爆した」といった情報も出て来ます。しかし、実際のところ、厚生労働省や広島市、長崎市などのウェブサイトを調べても、、朝鮮半島出身者が何人被爆したのかについて、信頼できる正確な数字は掲載されていません。

広島市のホームページによると、1945年8月6日時点で広島市内には約35万人の市民・軍人がいたと見られ、原爆による死者数は正確につかめていないものの、1945年12月末までの推定死亡者数は14万人だそうです。

また、長崎市のホームページによれば、長崎原爆による死者は73,884人、重軽傷者は74,909人で、被害者数は合わせて148,793人に達している、という記載もあります。

長崎市の被害者数は広島市と比べてやけに具体的ですが、しかし、この人数についても国籍別の内訳が示されておらず、朝鮮半島出身者の犠牲者数については、やはり、「よくわからない」というのが実態なのです。

ただ、本当に広島市で7万人、長崎市で2万人もの人々が被爆していたのであれば、これはかなりの比率です。広島については被爆者全体の約20%、長崎については被爆者全体の約15%が、それぞれ朝鮮半島出身者だった計算になるからです。

また、先ほど紹介した産経ニュースの記事によれば、

大韓赤十字社の推定によると、広島と長崎で朝鮮半島出身者計約7万人が被爆し、うち約4万人が直後に死亡した。生存者のうち約2万3千人が朝鮮半島へ戻ったとみられる。

とありますが、これは先ほどの「広島で7万人、長崎で2万人」よりは少ないものの、それでも推計値を出してきたのはあくまでも韓国側であって、日本側ではありません。

肝心の韓国でも、実態の把握は進んでいない

こうしたなか、最近、さらに呆れた報道がありました。朝日新聞デジタル(日本語版)は7日、韓国政府が韓国国内の原爆被爆者について、初の実態調査を行うと報じています。

国内の韓国人被爆者 韓国政府が初の実態調査へ(2018年8月7日14時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より)

言い換えれば、韓国人・朝鮮人原爆被爆者は、本国政府からは、戦後70年以上も放置されていたのです。朝日新聞は、韓国に在住する被爆者は2300人としたうえで、

韓国在住の被爆者は戦後長い間、日本政府からも韓国政府からも支援を受けられず、健康不安に苦しんできた

と報じていますが、この下りには事実誤認があります。少なくとも日本政府はかなり早い段階で、本来支援する必要がないにも関わらず、人道上の観点から、国籍を問わず被爆者の支援に取り組んでいたからです。このように、さりげなく事実関係にウソを混ぜるのは朝日新聞の常套手段なので注意が必要です。

しかし、肝心の韓国政府は、支援すら行っていなかったということでもあります。今から調査を行うということですが、韓国のことですから、「自称被爆者」、あるいは「自称被爆者二世」、「自称被爆者三世」が出現する可能性は排除できません。

「朝鮮人被害者」は膨れ上がる?

あと10年も経てば、生存している被爆者の数も激減します。そうなると、あまり考えたくはありませんが、韓国で「自称被爆者の子孫」を名乗る連中が、「日本による強制連行によって原爆被害に遭った」などと言い出し、それを全世界で喧伝し始める可能性もあります。

まさに昨日も触れた、『邪悪な「旭日旗根絶計画」に、私たちはどう立ち向かうべきか』とまったく同じ構造ですね。

邪悪な「旭日旗根絶計画」に、私たちはどう立ち向かうべきか

そもそも論ですが、広島市のホームページなどを見ても、「朝鮮人が強制連行により日本に連れてこられた」と読める下りなどが含まれており、こうした記述には公正性の観点から大きな問題があると言わざるを得ません。

私自身、朝鮮人原爆被害者問題については、人道上の観点から適切な支援がなされることには反対しませんが、もしそのようにするのであれば、少なくともその人が、「被爆当時、いかなる動機で日本にやってきたのか」については明らかにする必要があるはずだと思います。

「なぜ朝鮮半島出身者が原爆被害に遭ったのか」といえば、多くの朝鮮半島出身者が出稼ぎで日本にやって来ていたからであり、彼らの多くは「強制徴用」の被害者ではありません。また、本当に10万人近くの朝鮮半島出身者が原爆被害に遭ったのか、その検証もままならない状況にあります。

いずれにせよ、時間が経過したことを奇貨として、証拠もないのに「10万人が強制徴用され、原爆被害に遭った」といった捏造が広まることには警戒が必要でしょう。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

    < 更新ありがとうございます。

    < 始めにお断りしますが、原爆による死者が広島と長崎で2倍ほどの差があるのは、爆弾の殺傷力に差があるものではありません。人口差も大きな要因ではありません。
    広島市は米軍計画通り、市中のど真ん中の上空で炸裂し、2km四方は完全に無くなり、4km四方で(比治山方面は至近距離だが山がある為、東側、北側という裏手は被害が少ない)多くの焼死者、爆風による全身損傷と、『ほぼこれぐらいの人が住んで居た、学校があった』等と推定し、時間をかけて調査の精度を上げてきました。

    < ところが長崎市は、爆撃機のナビゲーター、もしくは爆撃手が目標を見誤り、市内中心部から離れた場所の空中で炸裂しています。その為、影も形も無い消滅した遺体は少ないようです。逆に酷い火傷、一部断裂、破裂など重傷者(後に死亡も含む)と、広島も同じだが白血病や癌に冒された方が多いです。

    < 広島、長崎市両方の資料館を以前訪れましたが、どちらがどうなどと軽々には申し上げれません。全く何の罪も無いのに、とお悔やみとお祈りを捧げるだけでした。

    < ただ、発言を許されるなら、炸裂点付近は何も無い、蒸発してしまった広島市中の写真、映像は、ほぼ何も写っていませんし、少し離れた学校、銀行、家屋内で被災死されたり、川に飛び込んだ溺死写真が大量に遺されてます。

    < 長崎市は、蒸発死が少ない為、死者重傷者でも生身を晒したものが多く、比率として、見るに耐えない写真が多いと感じました。

    < 韓国原爆被害者協会なる団体が、『広島市で7万人、長崎市で2万人の被害を受けた』という声明はでっち上げですね。

    < 私の住む都市も当時から巨大な造船所が2つ、中小も有り、航空機製造工場が1つ、大規模な製鉄所が2つ、ゴム工場が3つ、石油精製所もありました。

    < 当時の広島市の人口規模で『7万人』なんてあり得ない。それなら、商店の看板にも漢字、ハングル併用がゼロなのはナゼだ。識字率が低かったのかな。それに広島市内にも軍需産業はあったが、むしろ呉市が大拠点ですよ。話が合わない。呉市には今でもJR沿線から見られないよう、巨大な壁があります。自衛隊(旧日本海軍)造船所、工場を民間人や諜報員に見られたくないからです。

    < 先週、古い郷土史を読んでいると、私の都市の当時の朝鮮人の居住者数があり、およそ4万人でした。郊外も含めて。

    < このうち、職を求め半島から来た者が50%、日本に憧れて来た者が10%、一家離散した為、学校に行く為と理由が書かれてます。中には『徴用で』も10%程度居ますが、在日本に居た人が中心です。当時は日本人ですから、日本人でも遥かに多く徴用工は居ます。

    < なんやかやと日本を貶める事、実りの無い事に心血注いでますが、文句あるなら原爆落としたルーズベルトかトルーマンの子孫と、トランプ大統領に言え。逆に訴訟になるぞ。『この猿がッ』と内心思いながら(笑)。長々と失礼しました。 以上。

  2. 蜜柑の箱 より:

    はじめまして、勉強させてもらっています、蜜柑の箱です。
    常に情報元をはっきりさせているブログは貴重ですので、更新楽しみにしております。
    早速本題ですが、
    「広島市で7万人、長崎市で2万人・・・の記述において、当時の広島市の人口からしても
    荒唐無稽な話に思えたので、管理人様を疑ってるわけではないのですが、ソースを調べてみました。
    すると、この記述をしている方を発見できました。
    この方は日本の国立大学の教員の方のようですが、ここでソースを示さなかったのは、
    ウェブサイトポリシーに抵触するからでしょうか。
    こちらのサイトではソースを示すことを重要視されているようでしたので、
    ソースを示されてはいかがでしょうか、と思った次第です。
    読者が警戒するにも、「新聞記者の植村氏」などの対象を覚えておく必要性を感じているので、
    提案させていただきました。
    今後もコメントを寄せるかもしれません、宜しくお願い致します。

  3. 非国民 より:

    韓国は不確かな根拠で日本に賠償請求してばかりだ。これでは自立した国家は作れないだろう。韓国は長く中国の属国であったが、現在もそれを引きずっている。そして困ると日本に支援を要求する。通貨スワップなんてのもそう。外貨がなくて困っている国は他にもある。でも日本にいいがかりをつけて要求してくる国は韓国以外にはない。いつまでも自立できない国が韓国だ。この点、北朝鮮の方がまだよい。

  4. りょうちん より:

    実のところ、日本の戦災者は太平洋戦争全体で五十万人ですからねえ。
    ヨーロッパの東部戦線やベルリン攻囲戦などの会戦ひとつ分くらいなんですよ。
    沖縄戦や東京大空襲、広島・長崎も、満州北朝鮮からの引き揚げが個人体験として悲惨極まりないものであっても数字にしてしまうとソ連やベルリン市民が被った物量の前には見劣りしてしまうのですな。
    これは被害者ビジネスをするには都合が悪いので、韓国人は盛るわけですね。
    逆に少ない数字を出している日本がバカ正直なんでしょうけど。
    Wikipediaでは朝鮮半島での太平洋戦争の死者は推定二十万人なんだそうですが、統計のある朝鮮人日本軍人の戦死者が二万人なのにどうやって軍属や強制労働で十八万人も死ぬんでしょうねえ。

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