日本の原発再稼働はロシア「ガス停止」影響を緩和する
ロシアの欧州2ヵ国に対するガス供給停止措置は、ロシアによる欧州分断という狙いがあるのかもしれません。一部の国のみのガス供給を絞ることで、欧州の足並みの乱れが生じることを狙っている、という仮説です。こうしたなか、欧州委員長は昨日、この措置に対し、「影響を最小化すべく努力する」とも発言していますが、具体的には日本などが原発を再稼働すれば、手っ取り早くその影響を最小化することができるかもしれません。
非友好国に対するガス供給
昨日の『ロシアが欧州2国のガス供給停止:日本は原発再稼働を』で「速報」的に触れたとおり、ロシアの「ガスプロム」は自身が指定する「非友好国」のうちポーランドとブルガリアの2国に対し、ルーブル決済に応じなかったとして、ガスの供給を停止する措置を発動しました。
これに関し、いくつかの続報が出ています。
英メディア『BBC』によると、この措置に対し、ウルスラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長が「ロシアは天然ガスを恐喝手段として使用している」などとしてロシアに反発。ロシアの要求するルーブル決済に応じれば、そのこと自体が欧州連合(EU)による対ロシア制裁条項に違反する、とも述べたそうです。
EU accuses Russia of blackmail over gas
―――2022/04/27付 BBC NEWSより
影響の最小かはなかなか難しいが…
ちなみにBBCによれば、このガスプロムの決定を巡り、フォンデアライエン氏は「欧州の消費者にとって、影響を最小化すること」を約束したそうですが、なかなか容易ではない話でしょう。欧州ではロシア産のガスの輸入を前提に、パイプライン網が構築されているからです。
「ユーロガス」が公表するレポート “STATSITICAL REPORT 2015” (※電子書籍)の12ページ目に掲載されている地図によれば、パイプラインはロシアから欧州全域、さらにはキプロス、アフリカに至るまで張り巡らされていることがわかります。
ただし、今回の措置が発動されている相手国は、あくまでもポーランド、ブルガリアの2ヵ国に留まっており、最大の供給先であるドイツなどについては供給が続いているようです。
同じ記事に掲載されている “Russia’s gas exports” という図表によれば、2020年におけるロシアからの天然ガス供給量は、ドイツが426億㎥で欧州最大の輸入国であり、続いてイタリア(292億㎥)、ベラルーシ(188億㎥)、トルコ(162億㎥)、オランダ(157億㎥)などが続きます。
(※余談ですが、BBCの記事によれば、日本のロシアからのガス輸入量は88億㎥だったそうです。また、『広島ホームテレビの4月4日付『広島ガス ロシアからのエネルギー調達を継続』という記事によれば、広島ガスの場合、都市ガスの原料に使われる液化天然ガスの約5割を樺太から調達しているのだそうです。)
BBCによると、ロシアが今回、ポーランドとブルガリアの両国を狙い撃ちにした目的のひとつは、ロシアによる「欧州分断」にあるとしており、これに加えて「ロシア国内に銀行口座を保有している」という条件を満たしている国については、依然として事実上、米ドルやユーロでの支払いが可能だという事情もありそうだ、としています。
やっぱり「日本の原発再稼働」を!
もっとも、当ウェブサイトとしては、やはり日本が原発の再稼働などを通じ、安定的な電力を復活させることは、世界のためにも必要だと考えている次第です。というのも、日本の貿易赤字を削減するだけでなく、対ロシア制裁をさらに有効化する効果も期待できるからです。
貿易統計を見れば、日本は2011年以降、断続的に貿易赤字を計上するようになってしまったことがわかりますが、「鉱物性燃料(石油+石炭+天然ガス)」の輸入高を貿易収支の額と重ね合わせてみると、鉱物性燃料の輸入額が日本の貿易赤字の主要因ではないか、との仮説が成り立ちます(図表)。
図表 鉱物性燃料の輸入額と貿易収支
(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)
このように考えていくと、やはり原発を再稼働すれば、日本経済にとっては鉱物性燃料の輸入高を減らすことができるはずですし、そうなれば、現在のような円安局面のメリットを大いに享受し、日本経済が輸出主導で強い復活を遂げるというシナリオも夢ではなくなります。
それだけではありません。
日本の輸入が得ることにより、世界的な石油需要が後退し、エネルギー価格が下がり、欧州諸国などにも間接的な恩恵をもたらします。具体的には、日本への輸出が減少する中東諸国などが欧州に向けた輸出を増やせば、結果的に欧州全体におけるロシア産エネルギーへの依存度合いが減るかもしれません。
これなど、フォンデアライエン氏のいう「市民生活への影響の最小化」の具体的な事例ではないでしょうか。
このように考えていくならば、やはり日本の原発再稼働は日本経済復活のためだけでなく、対ロシア制裁という側面からも、非常に有効な政策であるとの仮説が成り立つのだといえるでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
原発再稼働加速と石炭火力の削減計画見直しだと思います。
岸田氏が数日前になってようやく「原発再稼働は重要」と言及を始めましたが、さすがに遅すぎると思います。審査体制の拡充とか、エネルギー基本計画の見直しの検討指示とか、もうなんかやってろよ、と思います。
(少し前は「我慢しろ」と言っていたと思います)
ウクライナの侵攻開始後1週間後くらいには、厳しい経済制裁が実現しドイツがエネルギー政策の大転換の表明をしましたが、この時点で世界でロシア以外のエネルギーの取り合いになることは予想できました。
電気料金の明細に(見てない人がほとんどと思いますが)「燃料調整単価」という項目が今年に入って急上昇しています。
現在東電EPで約+3円/kWh弱です。https://www.tepco.co.jp/ep/private/fuelcost2/new/index-j.html
電力自由化で参入した電力小売などは、東電レベルの料金を維持できずサービスをやめたり、+24円/kWhという(料金換算で倍近く)になるところも現れています。
エネルギーの異常事態は既に一般人の生活にも影響が出始めています。
先日の日曜日、朝のフジテレビの番組で「敵基地を攻撃する能力を持つべきか否か」について視聴者アンケートをとった結果、なんと90%以上の方々が賛意をしましました。その結果を見た立憲民主の小川氏は絶句していましたが・・・。
出来れば原発再稼働についてもやって貰いたいものです。既に多くの国民に意識変化が起きているんじゃないでしょうか。
余談ですが、神宮外苑や神田の再開発で銀杏並木の伐採に強硬に反対されている方々がおられる様なのですが、是非その方々に山を削って森林を伐採し太陽光パネルを敷き詰めることに賛成か反対かを聞いてみたいものです。きっと賛成でしょうけど・・・。
元一般市民さま
>神宮外苑や神田の再開発で銀杏並木の伐採に強硬に反対されている方々がおられる様なのですが
彼らにとって重要なのは、「自分が他人を批判するのはよいが、他人が自分を批判するのはけしからん」ということです。ですから、言っている内容が、前と矛盾があっても問題ないのです。
安全を確保した上での原発再稼働に賛成です。
結論 原発を電力供給の柱の一つに復活させるのが政府の使命。国民は協力を。
・日本の原発は18ヶ所57基、運転中5基、停止中28基、廃炉措置中24基
・原発新設計画無し(全部中止)
・全電力中火力発電は76%、原子力は4%
・福島第1原発事故前は石炭、LNG、原子力主導だったが事故後は石炭、LNG主導
・火力発電所は古いプラントもフル稼働していて余裕が無い。最近の地震の影響で東電が停電危機に陥った。
・原子力の原料のウランは他の化石燃料が政情不安な中東やロシアのような無法国家が主要産出国なのと違い、政情がすこぶる安定している豪州、カナダ、米国で50%以上が産出されており供給の不安は無い。
・脱炭素、化石燃料輸入量増加による経済への悪影響回避になる。
・唯一最大の問題は原子力の安全。福島第1原発事故の反省で新規制基準で原発再稼働への取り組みが進められているが、ハードルが高く再稼働にこぎつけた原発は僅かしかない。
・岸田首相のテレ東発言「原子力規制委員会の審査の合理化・効率化を図り、審査体制も強化しながら、できるだけ可能な原発は動かしていきたい」
安全を確保しての原発再稼働加速は“新宿会計士”様が仰る
・鉱物性燃料の輸入削減(数兆円)による日本の貿易赤字黒字化
・玉突きによるロシア産ガス・原油輸入削減による対ロシア制裁有効化。
・世界経済活性化
等のメリットの他加え、輸入原油価格高騰を抑えることによる輸送コスト低減、電力価格高騰を抑えて製造業などの原価低減等、日本の景気浮揚効果もかなりあると思います。
ガソリン価格維持に無駄な金を使うより、原発再稼働加速(工事資金融資援助、避難計画&施設建設援助等)にお金を使った方が費用対効果は高いと思うが、バラマキが好きな自民党に出来るだろうか?
“公益経済”よりは即効性が高いのだから、参院選前に岸田さんには進めて欲しい。
貿易黒字は必ずしも良くはありません。トントンがベストとおもいます。
石油の輸入コストで円安になって、その分が輸出産業にプラスになる、ついでに密入国も減る。(蛇頭なんか最近聞きませんよね。今はアメリカがメインらしいですが)
まあ、日銀が指値オペなんかすれば、その代金は国内の投資先に回らない分はドルに代わってアメリカ国債にまわり円安が進むんでしょうが。
日本には米国債の利子という大量の円に換えられないドルがあり、しかも米国債の利上がりで急速に増えることが予定されているので、それをもって石油の輸入商社に代金の一部補填として使えば輸入原料の値上がりのある程度は吸収できるんじゃないでしょうか。