東証時価総額は再び一千兆円割れ

日本取引所(JPX)グループが1日に公表したデータによれば、4月の東証時価総額は1000兆円を少し割り込んでしまいましたが、それでも史上2番目の高値水準状態にあります。ただし、これをドル建てに換算すると、過去最高値水準とはいえません。いずれにせよ、株価で経済のすべてがわかるわけではありませんが、時価総額についてはしばらく注目する価値がありそうです。

先月は1000兆円の大台に乗せた東証時価総額

最近、当ウェブサイトでは東証時価総額について言及することが増えています。

たとえば、先月の『【速報】3月末時点で東証時価総額が「一千兆円」突破』では、日本取引所(JPX)グループが公表した2024年3月末時点の東証時価総額(プライム、スタンダード、グロース、プロの4区分合計))が史上初の「1000兆円台」に達した、とする話題を取り上げました。

2024年3月末時点において、東証時価総額は1007兆7050億円、日経平均株価は40,369円44銭。バブル期のピークだった1989年12月末では、東証時価総額は611兆1519億円、日経平均株価は38,915円87銭でしたので、もう「バブル期の最高値」はとうの昔に突破している格好です。

ただし、株価というものは、上昇もすれば下落もします。

4月末は1000兆円を少し割り込む

とりわけ以前から指摘してきたとおり、株価の伸びはやや急激でもありましたので、個人的にはどこかで足踏みが入るのではないか、などと見ていたのですが、予想通り、時価総額が1000兆円を割り込んでしまったようです。

JPXが1日に発表した『市場別時価総額』によると、時価総額は合計で990兆円余りで、1000兆円の大台を10兆円ほど割り込んでしまいました(図表1)。

図表1 東証時価総額と日経平均
区分2024/4/30増減
時価総額990兆2784億円▲17兆4265億円(▲1.73%)
 うちプライム954兆9646億円▲15兆1525億円(▲1.56%)
 うちスタンダード28兆0227億円▲1兆5257億円(▲5.16%)
 その他7兆2912億円▲7483億円(▲10.26%)
日経平均38,405円66銭▲1,963円78銭(▲5.11%)

(【出所】時価総額はJPXグループウェブサイト、日経平均はWSJダウンロードデータ)

このまま株価が低迷状態に陥るのか、それとも再び史上最高値を目指して力強く伸び始めるのかについては、現時点では断言するのを控えたいと思います。とはいえ、日経平均株価はバブル期の最高値を少し割り込んでしまっていますが、時価総額に関しては月末時価総額ベースで過去2番目に高い水準を維持しています。

これをグラフ化しておくと、図表2のとおりです。

図表2 日経平均vs東証時価総額

(【出所】時価総額はJPXグループウェブサイト、日経平均はWSJダウンロードデータ)

ドル建てで見るとまた違った姿

こうやって眺めていると、株価だけで見たら日本はずいぶんと長い期間、停滞していたということを痛感せざるを得ません。

また、とりわけ時価総額に関しては、ここ1年あまりの上昇が急激である、という印象を持つ方も多いでしょう。

ただし、これをドル建てにしてみると、また違った風景が見えるかもしれません(図表3)。

図表3 時価総額(円建てとドル建て)

(【出所】時価総額はJPXグループウェブサイト、為替レートはThe Bank for International Settlements, Bilateral exchange rates time series  データをもとに作成)

これなど、(為替ヘッジ付の投資を別とすれば)ドル建てなどで投資評価を行うであろう外国人投資家から見て、現在の日本の株価水準がどう見えているか、という話でもあります。

いずれにせよ、株価で経済のすべてが読めると申し上げるつもりはありませんが、時価総額ベースで見て依然として日本の株価は史上最高値水準にあることは間違いありません。

とりわけ「GDP600兆円、日経平均4万円、時価総額1000兆円」のうち、後者2つはすでに先月達成されています。

もしこれからの日本で経済成長が常態化するなら、さらなる高み(たとえばGDP1000兆円、日経平均10万円、東証時価総額2000兆円、など)を目指せるのかどうか、注目したいと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 七味 より:

    新宿会計士様

    図表2と3が入れ替わってませんか?
    3のタイトルが「時価総額(円建てとドル建て)」なのに、両軸とも円で示されてるのです

    1. 新宿会計士 より:

      おおっと!入れ替わっとる!
      ご指摘ありがとうございました、修正しました

  2. やるお より:

    素晴らしい記事いつもありがとうございます!

  3. 通りすがり より:

    「東証時価総額」は,広義の通貨供給量(海外を含む)から,預金・債券などの他の金融商品の時価総額や,海外投資総額を引いた額に大体比例しています。コロナの3年間に世界中の政府が大量にばらまいたお金が,最終的にここにたまってしまった訳です。実体経済のほうは,機械化・ロボット化・AI化などで生産性が向上して,多くの商品は供給過剰な状態で,そちらで回っているお金は,それほど増えていないと思います。結局,一部の投資家に使い切れない程のお金が回っていって,仕方がないので,金融商品に再投資することになります。
    ただし,株価自体は,ブラックショールズ方程式が教えるように変動します。金融商品の間でお金が移動しているだけでしょうが。
    金融経済の規模が拡大しすぎて,政府が数兆円規模の為替介入をしても,為替相場を操作するうのが難しくなってきてしまいました。たぶん,金融経済が膨張しすぎると,実体経済がそのおもちゃにされて,庶民の生活は苦しくなります。

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