「減税より対決が大事」な立憲民主党が自公国から埋没

「年収103万円の壁」問題で立憲民主党が埋没気味なのだそうです。その理由について読売新聞は、「『年収の壁』対策の必要性は認めるものの、来夏の参院選をにらみ、与党との対決姿勢を明確にする必要があり、3党協議には距離を置かざるを得ないためだ」と述べますが、控え目に申し上げて意味がわかりません。これだけ国民の関心が高まっているにも関わらず、立憲民主党はなぜ、この問題に積極的に関与する意思を示さないのでしょうか?

すでに国民民主党の手を離れつつある「年収の壁」問題

先日の『「年収の壁問題」は国民民主党の「専売特許」にあらず』でも指摘しましたが、例の「年収103万円の壁」問題は、国民民主党の「専売特許」ではありません。

もちろん、これを是正すべきであると最初に言い出したという意味では、国民民主党の功績は大変に大きいものですし、また、選挙が終わってから1ヵ月も経たないうちに、与党である自公側と減税の方向を盛り込んだことは、非常に大きな意義があります。

ただ、あくまでも著者自身の私見に基づけば、そもそも選挙前に衆院でたった7議席しか持っていなかった国民民主党が、選挙後に議席を一気に4倍に拡大させたのは、それだけ多くの人が「減税」を望んでいた証拠でもあります。

著者自身は本件について、国民民主党の貢献は大きく、また、今後も期待したいところだという意見を持ちつつも、すでにこの問題は、なかば国民民主党の手を離れてしまったと考えています。

いわば、国民民主党の役割は、「パンドラの箱」を開けることだったからです(『国民民主が開いたパンドラの箱…国民対財務省の戦い?』等参照)。

もし国民民主党が中途半端なところで妥協したら、国民の怒りは財務省や自民党、公明党などを越えて、国民民主党に直接向かいかねません。国民民主党にとっても「引くに引けない」ところに来ていると考えて差し支えないでしょう。

他党はいったいなにをやっているのか?

ただ、先般より指摘している通り、減税自体はべつに国民民主党の「専売特許」などではないのですから、どの政党がこの問題を議論したって良いはずです。とりわけ、れいわ新選組や日本共産党、日本保守党といった政党にとっても、消費税の減税は公約に盛り込んでいたものであったはずです。

  • 「消費税は廃止する。最低でも5%への減税を実現する」(れいわ新選組『基本政策』)
  • 「消費税を5%に緊急減税し、インボイス導入を中止します」(日本共産党『政策』→『税制』)
  • 「消費税減税……まずは8%に、そして5%へ」(日本保守党『日本保守党の重点政策項目』)

それなのに、選挙公約で「減税」を謳っていたはずのこれら各党が、表立って国民民主党に加勢すると表明しているフシはありません。彼らにとっても、せっかく政策を実現できるチャンスであるはずなのに、これはいったいどうしたことでしょうか?

もしもこれらの政党が国民民主党と歩調を合わせ、減税圧力を高めようとすれば、自民党にとっても相応のプレッシャーとなりますし、また、これらの政党に対する在野の応援団も増えるに違いありません。SNSなどでこれらの政党への支持を表明する人も出てくるかもしれません。

本当に滑稽であり、本当に残念な話です。

正直、これらの政党が次回の国政選挙で(間違って多少議席を伸ばすことはあるかもしれませんが)国政に対する何らかの影響力を獲得できるとも思えないのですが、いかがでしょうか。

立憲民主党「減税より自民との対決が大事」

さて、こうしたなかで目に付いたのが、読売新聞オンラインが21日に配信した、こんな記事です。

「103万円の壁」合意、立憲民主は存在感の発揮に苦慮…党幹部「協議に加われずもどかしい」

―――2024/11/21 09:21付 Yahoo!ニュースより【読売新聞オンライン配信】

読売によると、20日の3党合意を受け、立憲民主党が「存在感の発揮に苦慮している」のだそうです。

なぜ、対応に苦慮しているのでしょうか?

これがわかるのが、次の一文です。

『年収の壁』対策の必要性は認めるものの、来夏の参院選をにらみ、与党との対決姿勢を明確にする必要があり、3党協議には距離を置かざるを得ないためだ」。

…。

控え目に申し上げて、意味がわかりません。

年収の壁対策が必要だと認めているのであれば、是々非々で協力し、解決に向けて努力すれば良いだけではないでしょうか?それともあれでしょうか?「減税より自民との対決が大事」、とでもいいたいのでしょうか?

どうして主導権を取ろうとしないのか

ただ、立憲民主党がこの問題で、頑なに主導権を取ろうとしないのも謎です。

極端な話、立憲民主党は最大野党なのですから、減税プロジェクト・チームを立ち上げて、国民民主党に加え、先ほど挙げた減税を公約に掲げる政党、さらには日本維新の会や参政党、無所属の議員などに呼び掛けて、野党で減税法案を作ってしまったって良いはずです。

もちろん、衆院で可決されても参院で否決される可能性が高いため、野党提出法案が日の目を見る可能性は高くありませんが、有権者に対する強いアピールにはなるはずですし、やり方によっては来夏の参院選で、むしろ立憲民主党が躍進できる可能性だって出てきます。

それなのに、こうした主導権を発揮すべく、立憲民主党が努力しているようには見えません。

ちなみに読売によると、立憲民主党の大西健介・党税制調査会長は20日の党会合で、自公が国民民主とのみ協議を進めていることについて、次のように発言し、不快感を示したそうです。

一部の野党とコソコソ話すのではなく、野党第1党に正面から協力を求めるのが筋ではないか」。

そのような不快感を示すくらいなら、自分たちの政党として、この「年収の壁」問題の解決に向けてどのような努力をしているというのでしょうか?

この点、読売の記事にもある通り、立憲民主党は「社会保険料負担が生じる『130万円の壁』」(※原文ママ)の見直しを提案している、とあります(※どうでも良い話ですが、「130万円の壁」は「社保の壁」ではなく「国保の壁」です)。

ただ、当ウェブサイトでは『減税を拒む立憲民主党の「取って配る」式緊急総合対策』などでも取り上げましたが、立憲民主党の案だと、「多くの勤労者の手取りを増やす」という意味では、まったくもって不十分です。

いずれにせよ、せっかく国民の目が「年収の壁」問題に注がれているなかで、この問題に積極的に関与する意欲を示さない時点で、立憲民主党という政党は本当に残念だ指摘せざるを得ません。

その意味では、来夏の参院選が今から楽しみだ、という言い方もできるのかもしれない、などと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 元雑用係 より:

    >国民民主党にとっても「引くに引けない」
    これ、他の国民民主議員が執行部を裏切らない圧力にもなると思うんですよね。4年前の再編で(森Y子氏、原○氏等の)妙なスタンドプレー議員がいなくなって純化が進んだとはいえ、いろんな人がいるみたいですからね。

    >立憲民主党が「存在感の発揮に苦慮している」
    「よし、やってやろう。先駆者の国民民主から主導権を奪うためにも2倍働くぞ!」
    という前向きで建設的な発想はなく、こんな感じではないか。
    「国民民主の下になんか入れるもんか。元々あいつら立憲より下なんだよ。向こうが頭下げてきたら聞いてやらんでもない。」(憶測)

    固定客の支持者が所得税減税に乗り気でない(らしい)ってのも大きいかもですね。
    そういえば今日、八十代の親類との会話で出てきた言葉。
    「103万円の壁は自分には関係ない。そんなことより政策活動費の無駄遣いを減らしたら金は出てくるだろう。」
    あー、はいはい。

  2. 農民 より:

    >一部の野党とコソコソ話すのではなく、野党第1党に正面から協力を求めるのが筋ではないか

     そんな筋とやらがあるのなら、必要な協力を惜しまぬのもまた筋です。立憲はさぞかし自民党に協力してきたんでしょうねぇ?

     協力を求めて”もらえない”事を恥じたほうが良いですよ。

  3. はるちゃん より:

    自民党と立憲民主党の関係は、韓国と北朝鮮のような関係ではないでしょうか?
    互いに相手を必要としているのです。
    しかし、時代遅れになりつつある互いの芸風は、国民からは見放されつつあることが明らかになりましたが。
    時代の流れは、対決より解決、政局より政策です。
    自民党内の心ある議員さんは今のところ様子見を決め込んでいるようですが、そろそろ党内改革に向けて動き出さないと、来年の参議院選挙では今回の衆議院選挙と同じく、石破政権の道連れという結果になりますね。
    未だに、与党過半数割れに加えて国民の側に立った政策中心の保守系野党出現という事態を甘く見ている議員さんが自民党内に多いのかも知れません。

  4. Masuo より:

    > 「一部の野党とコソコソ話すのではなく、
    > 野党第1党に正面から協力を求めるのが筋ではないか」

    話し合いに立憲を呼ぶわけないでしょう。
    反対しかしないで話し合いの足を引っ張るだけなのに。
    せめて建設的な議論が出来るようになってから出直せ、って感じです。

    そんなに拗ねてないで、立憲は立憲でコソコソ話せばいいのに。
    (無理でしょうけど)

  5. 元雑用係 より:

    昨日のコメ欄に貼りましたが再度。
    三党共同声明の記者会見時に、公明の代表が「他の野党にも声がけをしている」と述べています。

    11月20日 自民党・公明党との政調会長会談後 共同記者会見
    https://youtu.be/Ugg_czgMFWs

    11:30あたりから。
    「自公は他の野党にも声がけしている」
    「今後も国民以外の政党にも声がけして、様々な議論の土俵の中でアドバイスいただきたい」

  6. ただのおやじ より:

    立憲民主党の前党首が「なんでも反対するのが野党だ!」とか言ってました。愕然するとともに、この人たち国民の生活なんて関係ないんだろうなと思いました。
    今立憲民主党には絶対いれないな・・・・しかし、選挙で大躍進!オイラが間違っていたのか?と思うこの頃です。

  7. CRUSH より:

    ラブコメ文法でいうなら、立憲民主党は学園のクリスマスパーティーに呼んでもらえず、やきもきしてる悪役令嬢、ですかね。

    生徒会長(自民党)が頭を下げて頼むなら、同行参加してやらんでもない。
    ····ところが!気がつけば彼はソバカス鼻ペチャなあの娘(国民民主党)と夢中で話し込んでる。

    ぐぬぬ、悔しい。
    これでは単なるモブキャラの負けヒロインではないか!

    …こういう流れでよくある展開では、靴に画鋲を入れたり食事に下剤を混ぜたり、そんでもって自分で仕掛けた罠に自分で引っ掛かったり、いろんなパターンが待ち受けていそうでたのしみですね。

    1. 匿名 より:

      昨今は悪役令嬢が(転生者に中身が入れ替わって)活躍するのが流行りなんだから、リツミンも心をガラッと入れ替えたらよろしいのに。

  8. 裏縦貫線 より:

    国鉄の労使交渉で、従来は最大労組との交渉がまとまるまで他労組を待たせていたのを、小さくても話ができる労組と先に交渉するようになったというのが思い浮かびました。

  9. 匿名 より:

    穿った見方をすれば
    財務省ブックのプロレスやってるだけだから
    減税の話になるとガチで首を突っ込まないのかも

  10. 雪だんご より:

    「一部の野党とコソコソ話すのではなく、野党第1党に正面から協力を求めるのが筋ではないか」

    う~ん、分かってはいたけど酷い。
    立憲民主党としては、自分達が自民党や国民党に”頭を下げる”のは支持者が激怒する
    リスクを恐れてできないって事ですかね?
    あくまでも自民党が自分達に”頭を下げる”形でないといけない、と。

  11. 匿名198x より:

    私は理にかなった効果の見込める減税であれば、賛成です。
    役人は、新しいことを苦手としているところがあります。
    彼等にしてみたら、突然劇薬を飲まされそうになって抵抗しているように見えなくもない。
    しかし、それらを上手く調整するのが、政治家の役割だったはずです。
    翻って、石破総理は、故田中角栄元総理を師と仰ぎながら(本当かよ)、まだ足元にも及んでいないような気がします。
    特定野党方々のほとんどは、出来ないことを平気で約束します論外です。
    嘘つきは泥棒のはじまりという言葉は学ばなかったのでしょうか?

  12. 引っ掛かったオタク より:

    ナベツネ新聞社は野党第一党が「税制改革の進展より党勢拡大を重視しておる」とノタマイよるンですナ
    垂れ流しとるダケならナベツネ新聞社も異論は無いっつーコトかいな?

  13. sqsq より:

    その昔社会党から民社党が出ていき、最近では立憲民主から国民民主が出て行ったのはこれが原因じゃないの?
    要するにイデオロギー政党なんだね。
    何のために政治家やってるのか。

  14. カズ より:

    りつみんは、永遠のイヤイヤ期。
    真意はポリノグラフのみぞ知る。

    *すべての質問にNO!と答えて下さい。

    本気で政権を執りたいんですか?→NO!(・・)
    国民生活より自身が大事ですか?→NO!(⤴⤴⤴⤴⤴)

  15. たそがれ より:

    立憲民主党内に数多の調査チームを立ち上げてきたが、結果報告というのを見たことがないなぁ。
    減税プロジェクトチームを出来ても、他の調査チーム同様霧散するだけじゃないだろうか

    1. 裏縦貫線 より:

      たしかに…..当該政党には「プロジェクトチーム結末調査プロジェクトチーム」を立ち上げてもらいましょう。

    2. 元雑用係 より:

      その後には、
      「「プロジェクトチーム結末調査プロジェクトチーム」の結末調査プロジェクトチーム」」
      を立ち上げてもらわなければ・・・

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