台湾総統訪米に中国反発:緊張と対立は産業にまで拡大

米中の緊張関係の高まりに、否応なく日本も巻き込まれていきます。台湾の蔡英文(さい・えいぶん)総統が米LAを訪問し、ケビン・マッカーシー下院議長と会談したことに、中国政府は直ちに反応。強い報復などを示唆していますが、それだけではありません。先月中旬に発生した日本人ビジネスマン拘束事件が解決していないなか、日本政府は中国を念頭に、半導体製造装置の輸出管理の強化を発表。中国も米国向けなどの磁石技術の禁輸を検討していると伝えられているからです。

蔡英文氏が米下院議長と会談=今度は米本土で

米中の緊張関係が高まってきたようです。

台湾の蔡英文(さい・えいぶん)は米国西部時間5日午前、米ロサンゼルス郊外のロナルド・レーガン大統領図書館でケビン・マッカーシー米下院議長(共和党)を含めた超党派議員団と会談しました。

蔡総統「台湾は孤独でない」 マッカーシー米下院議長と会談

―――2023/04/06 05:54:29付 中央通訊日本語版より

台湾メディア『中央通訊』の日本語版(フォーカス台湾)の記事によると、蔡英文氏は会談後、「孤立されておらず孤独でもないことを台湾の人々に分かってもらった」などとする談話を発表し、あわせて議員らへの会談出席と台湾への固い支持に謝意を示した、などとしています。

記事によると1979年の米台断交以来、台湾の総統が米下院議長と会うのは3度目で、「米本土での会談は初めて」だそうです。

ちなみに蔡英文氏は昨年8月、台湾を訪問した当時のナンシー・ペロシ下院議長(民主党)と台北市の総統府で会談していますが(『蔡英文氏、ペロシ氏に「台湾は民主主義の防衛線守る」』等参照)、今回のLA訪問は中米2ヵ国歴訪の復路で立ち寄ったものです。

また、蔡英文氏自身はこれについて、自らツイートを発信しています。

蔡英文氏は以前からツイッターを積極的に活用して情報発信していることでも知られるリーダーのひとりですが、ツイートではマッカーシー議長に対し、「温かく迎えてくださったこと」に対する謝意とともに、「米台のきずなを深める」などと発言しています。

中国は直ちに反発

もっとも、中国は直ちにこれに反応したようです。

中国、蔡英文氏と米下院議長会談に対抗措置の構え 「国家主権を守り抜く」

―――2023/4/6 10:13付 産経ニュースより

産経によると両者の会談を受け、中国政府は6日、外交部が「断固とした反対と強烈な非難」を表明する報道官談話を、国防部が「中国人民解放軍は高度な警戒を保ち、国家主権と領土の保全を断固として守り抜く」とする報道官談話をそれぞれ発表。「報復措置に出る構え」を示したそうです。

とくに外交部は米国が蔡英文氏に「『台湾独立』の分裂に関する言論」を発表する場を提供した、などとしつつ、台湾問題については「中国の核心的利益の中の核心で、中米関係において第一の越えてはならないレッドラインだ」、などと述べたそうです。

このあたり、最近の「気球問題」(『中国外交部「米国こそ無許可で中国に気球を飛ばした」』等参照)も相まって、これから米中間の緊張が再び強まってくる可能性はあるでしょう。

日本人ビジネスマン拘束と半導体製造装置輸出管理強化

そして、こうした緊張関係と、日本も無縁ではいられません。

中国の側では3月中旬、アステラス製薬の現地法人幹部の日本人男性を、当局が突如として拘束するという事件も発生しています。これについて中国外交部側は「国内の刑法や反スパイ法などに違反した疑いがある」などと述べていますが、おそらく真相は「別のところ」にあるのでしょう。

その可能性があるのが、半導体です。

おりしも日本は先週、中国を念頭に、「極めて先端的な半導体製造装置」のうちの23品目を、新たに輸出管理の対象にする措置を発表しました(『【韓国にも流れ弾?】半導体製造装置の輸出管理厳格化』等参照)。

この措置により、日本政府は半導体製造装置のうち、最先端のものについて、中国に対する輸出をいつでもコントロールすることができるようになります。品目によっては個別許可の対象とすることで、事実上、輸出を難しくすることもできるからです。

時系列として見れば、日本における半導体製造装置の対中輸出管理強化という情報を察知した中国が、日本人ビジネスマンを拘束することで日本政府に揺さぶりをかけようとした、というストーリーが成り立ちます。

(※余談ですが、西村康稔・経済産業相は予定通り、先週金曜日に省令・通達改正案を公表しましたが、これは林芳正外相の訪中の直前というタイミングでもありました。このあたり、岸田文雄内閣の内部でも、林氏に対する牽制が行われたということなのかもしれません。)

中国は磁石技術の禁輸を検討

そのうえ、今度は中国側は磁石技術の禁輸を検討している、という話題も出てきました。

中国、磁石技術禁輸へ/EV部品 レアアースで主導権

―――2023年4月6日 2:00付 日本経済新聞電子版より

中国、磁石技術の禁輸を検討 レアアースで主導権

―――2023年4月5日 20:31付 日本経済新聞電子版より

中国、レアアース磁石の加工技術を禁輸へ 松野官房長官「影響を注視する」

―――2023/04/06 10:18付 Yahoo!ニュースより【※ABEMA TIMES配信】

報道等によると、中国政府は現在、2008年に公表された「輸出禁止・制限技術のリスト」の改定作業を行っており、新たにレアアース磁石の加工技術の輸出禁止や、太陽光パネルのシリコン製造技術の輸出を許可制にすることなどが検討されているのだそうです。

ちなみにレアアース磁石自体は電気自動車などに必要な素材とされており、テレ朝系のANNニュースは松野博一官房長官が「影響を注視する」と述べた、などとも伝えています。

いずれにせよ、米中対立や台湾海峡を巡る緊張の高まりは、間違いなく、日本の産業、経済、安全保障にも大きな影響を与えます。数年以内にも台湾有事が現実のものとなってくれば、状況はもっと切迫してくるでしょう。

「これからは中国の時代だ」などとさんざん中国進出を煽った某経済新聞の主張が正しかったのかどうか、今後は日本で国を挙げて検証していくべきでしょうし、また、安倍政権時代から本格化した、日本企業の中国からの工場移転促進という流れが定着するのかどうかは、興味深いところでもあります。

個人的には日本人ビジネスマンの拘束事件などが多発し、産業に必要な素材などの禁輸をチラつかせてくる時点で、そのような相手国を信頼することは「あり得ない」話だと思いますし、それでも中国進出に拘る経営者の経営センスを疑うべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

    素朴な感想ですけど、日本企業のサラリーマン経営陣のなかで、米中対立で先行き不透明のなかで、(見た目だけでも)堂々と決断できる人が、どれだけいるのでしょうか。(「先行き不透明時代のなかでの決断力」という本が売れそうですね)

  2. めがねのおやじ より:

    中国はなんとしても米国支配による民主主義陣営を否定し、中国こそナンバーワンと喧伝し、欧州米州豪州日本らの「環」を切り捨て、弱いところから孤立させ、中国寄りへと版図拡大を狙っています。

    中でも台湾は元はと言えば、中華本流の「国民党」でもある。中国共産党としては、絶対に認めたくない政権でしょう。きっと軍事挑発はエスカレートして行きますよ。中国は台湾攻撃と日本攻撃の同時二方面作戦が可能かどうか、シュミレーションしているでしょう。しかし、どんなに習に良い顔をしたい部下と言っても、今の現代戦で2方面同時は無理です。下手したら、国が崩壊する中国、習始め高官がいつ、何処で消されるかも知れない。

    米中はキナ臭いどころか、いつ攻撃が始まるか不安が普通です。だから3月中旬、アステラス製薬の現地法人幹部の日本人男性を、突然拘束した。まだたくさんいらっしゃるようで。罪状などどうでもいい。米国人ならややこしくなるけど、日本人ぐらいが丁度良い、という事。半導体でしょうね。「先端的な半導体製造装置」の23品目を、新たに輸出管理の対象にしましたから。日本企業の社長さん、即日本人社員、家族に帰還命令を出しなさい。

  3. 引っ掛かったオタク@また国内向け面子??? より:

    レアアース関連で…?
    中共が持ってそうなのは環境負荷を考慮しない低コスト採掘精製技術とかソレに依る物量に頼った低コスト製品くらい??
    希土類磁石を素材から製品化するのにコアになりそうな独自技術占有してましたっけ???

    1. 攻撃型原潜#$%&〇X より:

      2014年頃に日本メーカーが中国に合弁会社として進出したために、技術が既に流出してしまっています。

      1. 引っ掛かったオタク より:

        >技術が既に流出

        元は日本の技術だから中共が技術輸出を規制しても西側諸国べつに困らんスよネ?

  4. 匿名z より:

    無事祈る声・捜索活動に全力…陸自ヘリ不明、師団長は着任したばかり(読売)。  SOSもなく天候不良もない状況下を考えると 嫌な考えが頭をよぎる。

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