ゼレンスキー大統領「ロシア軍は家に帰れ」と呼び掛け
ゼレンスキー大統領がロシア軍に「家に帰れ」と呼び掛けました。ロイターによると、ウクライナ側はロシア占領下にある南部の都市・ヘルソンへの攻勢を強めており、同市へのロシア軍による輸送手段である船舶を集中的に攻撃しているのだそうです。こうした情報を信じて良いかどうかは少し留保は必要ですが、いずれにせよ、ウクライナ戦争はロシアにとって泥沼化していることは間違いないでしょう。
当てが外れたロシア軍
早いもので、今月24日時点でロシアによるウクライナ侵攻の開始から半年が経過しています。
一部の「軍事評論家」らによる当初の見立てだと、ロシアの軍事侵攻によりウクライナ全土が数時間、あるいは遅くとも数日のうちに制圧され、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は排除され、ロシアがウクライナを併合するか、もしくは傀儡政権を打ち立てるのではないか、といった分析もありました。
実際、『ロシアのウクライナ侵攻の目的は「キエフ公国回復」?』などでも触れたとおり、ウクライナ侵攻からちょうど48時間目にロシアの国営メディアに「誤配信」された記事を読むと、ロシア側がの今回の軍事侵攻の目的が、彼らの公式見解である「ウクライナの非ナチ化」などではないことは明らかだ、といった分析もあります。
ただ、ウクライナ側の抵抗を受け、軍事的に見て圧倒的な優位にあったはずのロシアは、早期のウクライナ全土の掌握には失敗。
それどころか西側諸国はいち早く団結してロシアに対する外貨準備の凍結を筆頭とするさまざまな制裁を繰り出し、ウクライナに対しても武器を供与するなどした結果、ロシア軍は首都・キーウ近郊などから撤収し、現在は東部・ドンバス地方や南部のヘルソン、マリウポルなどの地域の占領作戦に注力しています。
戦略面ですでに敗北したロシア
こうしたなか、ロシア側は局地的にはそれなりの勝利を収めつつあるものの、西側諸国の制裁に加え、西側企業がロシア事業の中止や撤退などを次々と決定するなか、ロシアの経済は現在、大混乱に陥っているのが実情でしょう。
クレジットカードの国際ブランド(ビザ、マスターなど)はいうに及ばず、マクド社を含めた西側諸国企業が続々と事業停止ないし事業撤退に踏み切っているのは、そのほんの一例です。
さらには、西側諸国がロシアに対する航空機のリース契約を解除するなどしたこともあり、現在、ロシアの航空機は「共食い整備」を余儀なくされ始めているようです(『対ロシア制裁:見えてきた航空機「共食い整備」の影響』)が、こうした報道も「ロシア経済混乱」の氷山の一角でしょう。
まさにロシアは「戦略面で敗北」した(『英軍制服組トップ「ロシアはすでに戦略的に敗北した」』等参照)といえるでしょう。
HIMARSというゲームチェンジャー
さて、こうしたなか、ちょっと前から膠着していた戦線にも変化の兆しが出始めているようだ、とする話題を取り上げてきました。たとえば、『クリミア爆発事件とHIMARSで見るウクライナ戦況』でも取り上げた、クリミア半島にある空軍基地の爆発事件などが、その典型例でしょう。
この「ハイマース」とは “High Mobility Artillery Rocket System” の略で、「高い機動性を備えた砲兵ロケット・システム」を指すのだそうですが、一部の軍事評論家は、「夏ごろからウクライナ戦争の戦況が明らかに様変わりしている」、などと指摘してきました。
いうのも、このHIMARS、高い機動性に加えて高い命中率を誇っていることから、ロシア側の後方支援部隊を攻撃し、侵略軍を苦戦させている、というのです。
ゼレンスキー「ロシア軍は家に帰れ」
これに関連するのでしょうか、少し気になる報道も出てきました。
Zelenskiy urges Russians to ‘go home’ as Ukraine presses offensive in south
―――2022/08/30 14:03 GMT+9付 ロイターより
ロイターによると、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は月曜日深夜、テレビに出演し、ロシア軍を「国境まで追いかける」と宣言したうえで、次のように述べたのだそうです。
「もし生き残りたいと思うのなら、ロシア軍は逃げるときだ。家に帰れ」。
いったいなぜ、ゼレンスキー氏はここまで強気なのでしょうか。
ロイターによると、ゼレンスキー大統領の上級顧問でもあるオレクシー・アレストビッチ氏は、現在、ウクライナ軍が南部・ヘルソンへの攻勢を強めており、ロシアの防衛網が「数時間で突破された」、などと述べたのだとか。
このあたり、ドニプル川にかかる「アントノフスキー橋」がウクライナ側の攻撃によって損傷し、大型車両の通行に支障を来しているらしい、などとする英国防衛省の『インテリジェンス・アップデート』の情報については、当ウェブサイトでもこれまで取り上げてきたとおりです。
つまり、この情報が正しければ、ロシア軍がヘルソン市の拠点に軍需物資を届けようとしても、アントノフスキー橋を使用することができず、フェリーを使って渡河するしかない、という状況ですが、アレストビッチ氏によると、そのフェリーがウクライナ軍の攻撃の格好の標的になっているのだとか。
ロシアにとって泥沼化するウクライナ戦争
このあたり、ウクライナ側の発表をそのまま信じて良いのか、という問題は残ります。
ただ、少なくともロシア軍が半年以上の間、かなりの兵力を費やして東部・南部などの占領作戦を実行しているにも関わらず、ロシア占領地域、あるいはそこからかなり離れたクリミア半島などでも爆発が報告されるなど、戦争は泥沼状態となっていることは間違いなさそうです。
いずれにせよ、1979年に発生したアフガニスタン戦争が旧ソ連崩壊の一因となったと伝えられるとおり、今回のウクライナ戦争はロシアにとって国力をかなり疲弊させる原因となる可能性は濃厚です。
これに加え、ロシア軍が「意外と弱かった」こと、西側諸国が武器供与等を通じ、ロシア軍の戦い方などに関する実戦データを収集しているであろうことは、ロシアに大きな負担となるに違いありません。
いずれにせよ、ひとりでも多くのウクライナの人々の無事とウクライナの勝利を願う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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今回の侵略は欧米によって意図的に引き起こされたもの。
去年12月、米英の特殊部隊がウクライナに入り大統領の脱出口を確保。
だがロシア軍があまりに弱く、急遽目標を「ロシア弱体化」に変更する。
よってこの戦争の特徴は「米英により管理された戦争」となる。
・ロシアが勝ち過ぎず負け過ぎず
・進み過ぎず撤退せず
・核兵器を使用させず
米英は適度に力を管理してこの戦争をコントロールしている。
ゼレンスキーが最初から強く要求したが提供されなかった2つの兵器。
それはハイマース300kmロケットと新型攻撃機。
ロシアのキーウ撤退後にこの2つを提供、習熟させる。
ならば今頃はクリミアまで奪還できていただろう。
そうしないであえて「飛車角抜き」で戦わせている。
それはこの戦争の目的が勝ちではなくロシア弱体化だから。
・ウクライナ前線2400kmでの消耗戦
・ウ国ロシア支配地域での要人、施設の破壊
・ロシアへの経済制裁での経済、金融の破壊
・ロシア国内での要人、施設の破壊
この4正面作戦にてロシアは急速に衰退している。
現在、戦争の落としどころはまだ見えない。
クリミア、東部を奪還するか? 朝鮮半島状態になるか?
だが今年の冬さえ越せれば光明が見えると考える。
いずれにせよ日本はウクライナの勝利に「オールイン」するしかない。
前提となされている
>>今回の侵略は欧米によって意図的に引き起こされたもの。
は、過激派中核派さんや、韓流方面で、
『諸悪の根源は米帝の世界支配なのです』?
的によく唱えられているものです
ただ、公園の花壇に穴掘るネズミやモグラじゃあるまいし
『諸悪の根源』?とやらを無駄に見当違いに掘って見ても
長芋と違って美味しいトロロ飯にはならしまへん(笑)
そんなしょもない前提から、
>>よってこの戦争の特徴は・・・
などと演繹される以下のくだりは、
何ら意味を持たないものだとお気づきになられることを
お勧めします。
私は今の時点での
ウクライナのクリミア奪還までは望まないので、
平和派であり和平派となります。
ただそれは、武力侵略したロシアの主張する不当な権利などは
一切相手にしない停戦です。
私が今速やかな停戦を希求するのは
プーチンの蛮行から日々多くの命が
失われていくのを止めたいという一心です。
しかもその失われていく命というのは
プーチンの侵略支持してしまう怠け者のモスクワ国民が
ミサイルの脅威にさらされることなくのうのうと生きていて
ロシア国内ではウクライナ侵略主張した思い上がり狂人の娘が
爆死したぐらいであり、それと比べて遥かに多く尊い
平和な暮らしを奪われたウクライナの人々の命が
失われるというあまりにナンセンスな構図の悲劇だからです。
クリミアは今の時点で奪還しなくても
国際社会に楯突いてこの先衰退の道を進むロシアですから
いずれ困窮する思い上がりモスクワ市民が
目先のパン欲しさにクリミア差し出してくるよう
国際制裁を維持して行って平和裏に取り返すのが
上策と考えます。
そのためには、プーチンの蛮行の肩を持つ
国際社会では
北朝鮮・ベラルーシ・シリアなどのならず者国家、
日本国内においては、
ならず者国家とは友愛結ぶ鳩ぽっぽさんなどなど、
横着なそんなこんなの少数の人たちを
相手にしないことが肝要なのでしょう。
>『諸悪の根源は米帝の世界支配なのです』?
別にそこまで言うつもりはありません。
ただゼレンスキーはNATO加盟を訴え東部で親ロ派にドローン攻撃。
ロシアは去年12月、欧州の安全保障体制を欧米ロで話し合いで構築するよう要求。
これを無視したのは欧米なんですよね。
さらにバイデンは「米軍は派兵しない」とお墨付きを与えました。
そして米英の特殊部隊がウクライナに入り脱出口を確保。
これではロシアに侵攻してくれと言ってるようなものでしょう。
いや英米インテリジェンスがプーチンの性格を理解してこう仕向けたと言えます。
トランプ「私が大統領ならロシアの侵略は絶対なかった」が裏付けとなります。
>私が今速やかな停戦を希求するのは
プーチンの蛮行から日々多くの命が
失われていくのを止めたいという一心です。
残念ですがこれもまったくの逆。
ゼレンスキーがはっきりと断言するのは
「ロシアは停戦しても体制を整え数年して侵略する」
「侵略と停戦を繰り返してウクライナ全土を征服するまで続ける」
これは完全にその通りでしょう。
ここで半端に停戦するのではなくロシアの弱体化を完成させることが肝要です。
現在はその絶好の機会なのですから皆でウクライナを応援すべきでしょう。
トシさま
あっ そうでしたか
これは失礼お許しください。
なんせ最近、
アウェイの猪野先生のブログで
遠くのウクライナは関心なく
もっともらしくネタにするだけで
アベガあ~や日本ディスリ目的の韓流さん
だらけの中にいるので、
間違った理解で反応してしまいすいませんでした。
横から口をはさみ失礼します。
米英管理戦争?意図的に引き起こされたもの?その根拠は?
表現の自由はあるものの、お粗末。根拠はもっと稚拙。
ネットで多く蔓延している説程度のイメージのようなものでしょう。
周囲によくいる正義の好漢たちの談義。
前Uk大統領の打倒クーデターはスイスでほぼ明らかにされているように、一般に認められているところまでいっていないが、米主導・英関与に間違いないでしょう。
仏独と一部の米報道によっても、居眠り大統領が、長年にわたってUk工作を重ねていた。
米ネオコンの対露対ユーロ対Uk政策もかなり信憑性がある。
これらに加えて、イラク戦争の米中東政策からアナロジー。
さらに、我が国では、無知なUk大統領の失言や、腐ってるUk財閥と汚職天国による支援横流し。
推理すれば、おおよそ当たらずとも遠からず。
勘違いしていけないのは、では、Ukが、露に攻め込んだのか。世界が認めていない、自称独立国の2州、露に合併されたクリミアのUk領土・Uk国民がいるのに、何もしないUk政府などだれが認めるというのでしょう。万が一北海道を占領された日本は、おもてなしでもするのですか。沖縄を占領されて独立国だからと言われて、黙っていますか。道民・県民は見殺しですか。
陰謀論に愕かされてはいけません。
侵略に、たじろいでしまうことそのものが、多くの辛苦をうみだします。
誰が、何時、何処で、何を、如何にしているのか。判断のミスは致命的なエラーです。
露はその行いの罪を贖わなければなりません。蛮行は許してはいけません。
Bella Ciao for Ukraine