クレジットカード撤退後のロシアが中国「銀聯」に接近

中露金融協力の姿が少しずつ見えてきました。SWIFTから主要銀行が排除され、VISAやマスターカードといった国際的なクレジットカードブランドが撤退してしまったロシアが、中国の「銀聯」(ユニオンペイ)ブランドのクレジットカードとの連携を模索しています。また、外貨準備の大半が凍結されてしまったロシアにとって、人民元建ての外貨準備は貴重な外貨資産でもあります。もっとも、金融分野における中露連携はすんなりいくものでしょうか?

中国がロシア支援で最大1000億ドル負担?

当ウェブサイトでは2ヵ月前の『西側の対ロシア金融制裁で中国に1000億ドル負担も』で、ロシアに対する西側諸国の経済・金融制裁の影響で、中国がロシアに対し、何らかの形で1000億ドル前後の負担を余儀なくされる可能性がある、などと述べました。

その根拠は、3月初旬の時点で手に入る最新データをもとに、ロシアが外貨準備のうち、少なくとも700~800億ドル程度を人民元で保有していることに加え、中露両国が1500億元・1.75兆ルーブルの通貨スワップ協定を締結していることにあります。

1500億元といえば、1ドル=6.67元で換算すれば225億ドルですので、外貨準備とあわせ、中国当局としてはロシアに対し、だいたい1000億ドル前後の(場合によってはドルでの)資金を提供しなければならない、という計算です。

現実にはもう少し人民元の割合が高い

ただ、『開戦準備の証拠?ロシア外貨準備でドルが急減していた』などでも述べたとおり、その後4月に発表された最新のデータによれば、ロシアが保有している人民元建ての外貨準備は800億ドルではなく、実際には1000億ドルを超えていることが判明しました(図表)。

図表 ロシアの外貨準備の通貨別内訳・試算値
通貨2022年1月末1年間の変化
ユーロ2037億ドル+349億ドル
金(マネタリー・ゴールド)1292億ドル▲55億ドル
米ドル655億ドル▲571億ドル
人民元1028億ドル+287億ドル
英ポンド373億ドル+8億ドル
その他625億ドル+209億ドル
合計6009億ドル+227億ドル

(【出所】IMFデータ、ロシア中央銀行の下院向け年次レポートなどをもとに著者作成)

つまり、ロシアがここ1年で、米ドル建ての資産を猛烈な勢いで圧縮し、人民元と交換しているのです(※もっとも、人民元自体が米ドルを裏付けにしているフシがあるという点を踏まえるならば、ロシアが本当の意味で米ドルからフリーになっているといえるかは微妙ですが…)。

このように考えていくと、少なくともロシア側は、中国と「一蓮托生」の関係を築こうとしているようにも見受けられます。

ちなみにロシアといえば、『ロシアで「ルーブルを金とペッグさせよう」とする提案』などでも取り上げたとおり、一説によると、苦し紛れに「金本位制」を復活させようとしている、といった報道もありましたが、これについてはかなり非現実的でしょう。

19世紀までの世の中ならともかく、21世紀の現在、物理的な金塊を国際社会において決済手段として使用することは非現実的だからです。

中露接近に関する「続報」

これに加え、『SWIFT決済データで突如ランク外に消えたルーブル』でも取り上げたとおり、決済の世界でルーブルが3月、突如として「SWIFTランキング」から消えてしまいました。

こうした状況自体、西側諸国による金融制裁の影響が強く出ていることの裏返しでもあるのです。

いずれにせよ、金融面での中露接近については、ウクライナ戦争のかなり早い段階で十分に予想されたことではありますが、こうした「金融」「決済」の話題に関連し、昨日はこんな「続報」もありました。

中露中銀、決済で協力 米撤退で銀聯利用拡大

―――2022年5月6日 21:50付 日本経済新聞電子版より

中露中銀、決済で協力 米撤退で銀聯利用拡大

―――2022/5/6 22:13付 産経ニュースより【※共同通信配信】

日経新聞や共同通信などの報道によると、在露中国大使館は6日、中国人民銀行とロシア中央銀行が決済システムで協力することを表明した、というのです。あわせて、ビザ、マスターカードなどのブランドがロシアでの事業を事実上縮小したことを受け、中国の決済大手「銀聯」の決済網の使用でも合意したのだとか。

なぜ2ヵ月もタイムラグがあったのか

こうした動きは、当然に予想された話ではあります。

ただ、これらの記事に対し、個人的にひっかかりを覚えるとしたら、なぜ「今」なのか、という点です。

ビザ、マスターはすでに3月初旬時点でロシアでの事業の大部分を停止する方針を明らかにしていましたが、銀聯の決済網使用はその当時から話題に上っていたのに、具体化するのにどうして2ヵ月もかかったのか、非常に気になるところです。

あえて可能性を述べるならば、中国にしたって、ロシアの決済事業に協力することで、米国などから「セカンダリー・サンクション」を喰らうことを恐れていたのではないでしょうか。その意味では、「中露が決済協力を決定」という話題が今さら出て来るというのも不思議な気がするのです。

もしも中露金融協力がさらに進展するならば、たとえば「ロシアの政府や企業が債券を人民元で発行する」、といった話題でも出て来そうなものです。それなのに、現時点において表に出てきている「中露金融協力」といえば、せいぜい「銀聯」くらいなものでしょう。

いずれにせよ、これを「人民元自体が国際的に強い通貨ではないことの裏返し」と見るのか、それとも「中露金融協力」は停滞していると見るのかについては、もう少し観察してみても面白いかもしれない、と思う次第です。

読者コメント一覧

  1. カズ より:

    2か月間のタイムラグは、経済植民地化へのためらいだったのかな・・?

    見えます! 習近平に集金ペイされる未来が・・。

  2. みけにゃん より:

    中露国境には20か所程度の自由貿易港制度に指定された都市があります。そのひとつ、ブラゴヴェシチェンスクに滞在していて見聞きしたことは、貿易の決算は元、もしくはルーブルのみ使用可能で、ロシア人もしくは中国人はビザ免除でした。けっこうみんな気軽に越境してましたし、街中で元の使用もできていたのを思い出しました。

  3. 伊江太 より:

    2ヶ月のタイムラグの謎。

    泥縄式に導入を始めたんだったら、準備にこれくらいの期間はかかるんでしょう。

    プーチンさんは、カードでお買い物なんかしたことなかった?(笑)

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