日本の金融機関の対ロシア与信は1兆円少々にとどまる

国際決済銀行(BIS)統計のうち、国際与信統計の日本集計分が公表されています。これによると2021年12月末時点における日本の金融機関のロシアに対する与信額は98億1600万ドルで、1ドル=120円と仮定すれば、1兆1779億円に相当します。ただ、日本の金融機関の対外与信合計4兆9064億ドル(≒588兆7733億円)と比べれば、極めて少額でもあります。

BISのCBS統計

当ウェブサイトでは国際決済銀行(BIS)が公表している国際与信統計(CBS)という統計データをもとに、世界の金融機関における資金の流れを「定点観測」しています。

この統計は、BISのウェブサイトに四半期ごとに更新されるもので、多少のタイムラグを伴うにせよ、主要国の金融機関がどこの国に対していくらのおカネを貸しているのか、といった情報を、かなり網羅的に知ることができるという特徴があります。

直近だと、『国際与信統計で読み解く各国の「金融パワー」と力関係』で、外国の金融機関がロシアの企業などに対し、2021年9月末時点において、総額で1000億ドルを少し超える与信を有していて、このうちフランス、イタリア、オーストリアの欧州3ヵ国だけで全体の60%を超える、といった話題も取り上げています。

図表のみ、再掲しておきましょう(図表1)。

図表1 2021年9月末時点におけるロシアに対する債権国(最終リスクベース)
金額割合
1位:フランス236億ドル22.57%
2位:イタリア232億ドル22.14%
3位:オーストリア171億ドル16.31%
4位:米国145億ドル13.84%
5位:日本92億ドル8.80%
6位:ドイツ52億ドル4.92%
7位:オランダ47億ドル4.51%
8位:英国31億ドル2.93%
9位:韓国14億ドル1.35%
10位:フィンランド9億ドル0.89%
その他18億ドル1.73%
合計1047億ドル100.00%

(【出所】the Bank for International Settlements, Consolidated Banking Statistics Full Dataより著者作成)

ついでに申し上げれば、『共同通信、国際決済銀行の統計資料をかなり遅れて報道』でも紹介したとおり、「大手メディア」であるはずの共同通信が、当ウェブサイトよりもかなり遅れて、このCBSの統計データを取り上げた、といった「ちょっとした事件」もありました。

昨年末の日本集計分はすでに公表されている

それはともかくとして、このCBS、各国がBISに対してデータを報告し、それをBISが取りまとめ、データベースに格納するまでに、最大3ヵ月ほどの時間を要しているようです。

ただ、各国はBISのデータよりも早い段階でデータを公表しているらしく、日本の場合も日銀が2021年12月末時点における国際与信統計のデータを、すでに3月23日の時点で公表しています。

これによると、日本の金融機関の2021年12月末時点における与信状況は、次の図表2のとおりです。

図表2 日本の金融機関の国際与信状況(最終リスクベース、2021年12月末時点)
相手国金額(前四半期比増減)構成割合
1位:米国2兆1043億ドル(+416億ドル)42.89%
2位:ケイマン諸島6752億ドル(▲39億ドル)13.76%
3位:英国2351億ドル(+53億ドル)4.79%
4位:フランス2002億ドル(▲88億ドル)4.08%
5位:オーストラリア1410億ドル(+3億ドル)2.87%
6位:ルクセンブルク1309億ドル(+22億ドル)2.67%
7位:ドイツ1275億ドル(▲15億ドル)2.60%
8位:中国1060億ドル(+56億ドル)2.16%
9位:タイ986億ドル(▲75億ドル)2.01%
10位:カナダ969億ドル(+56億ドル)1.98%
その他9907億ドル(+77億ドル)20.19%
合計4兆9064億ドル(+467億ドル)100.00%

(【出所】日本銀行『物価、資金循環、短観、国際収支、BIS関連統計データの一括ダウンロード』データより著者作成)

…。

それにしても、凄い金額です。

日本の金融機関は4兆9064億ドル(9月末と比べて+467億ドル)という巨額の資金を外国に貸しているということであり、これは1ドル=120円換算で588兆7733億円にも達します。年間GDP以上の金額を外国に貸しているというのも凄い話です(※良い意味とは限りません)。

また、上位10位の各国に関する2021年9月末時点との変化でいえば、タイに対する与信が75億ドル減少し、中国に対する与信が56億ドル増えた結果、8位と9位の順序が入れ替わっていますが、そのほかの国に顕著な変化はありません。

アジアに対する与信、ロシアに対する与信

いずれにせよ、アジアに対する与信は相変わらず少ない、ということです。ついでに、11位以下のアジアの主要国についても確認しておきましょう。

11位:シンガポール…810億ドル(+37億ドル)

14位:香港…624億ドル(▲37億ドル)

16位:韓国…514億ドル(+16億ドル)

17位:インドネシア…483億ドル(▲7億ドル)

19位:台湾…418億ドル(+22億ドル)

20位:インド…416億ドル(▲1億ドル)

こうしたなか、もうひとつ個人的に気になるのは、ロシアやベラルーシに対する与信でしょう。

このうち、ロシアについては98.16億ドルで、前四半期と比べて6億ドル増えていますが、順序でいえば37位であり、日本の金融機関の対外与信に占めるシェアは引き続き0.20%に過ぎません。

もちろん、この98.16億ドルを1ドル=120円のレートで円換算すれば、1兆1779億円と、決して小さくない金額になりますが、そもそも論として日本の金融機関の対外与信全体が4兆9064億ドル(≒588兆7733億円)に達しているという事実を踏まえれば、対露融資の割合は非常に少ないのが実情でしょう。

また、ウクライナに関しては1億0930万ドル、ベラルーシに至ってはわずか220万ドルに過ぎず、正直、日本の金融機関全体における与信額としては本当に僅少です。

ウクライナ戦争の動向に関しては予断を許さないところですが、少なくとも日本の金融機関の与信に与える影響という観点であれば、非常に少ない、と考えていて良いと思う次第です。

読者コメント一覧

  1. 元ジェネラリスト より:

    同じロシア・ウクライナニュースということで。日本語は機械翻訳です。
    日本のニュースでは流れていないようですが。

    イギリスが、35カ国の支援国防衛相会合の後に、ウクライナに対して長距離砲を供給すると発表しました。今まではジャベリンなどの携帯型短距離兵器の供給に絞っていましたが、より長射程の兵器も供与することを決めたそうです。

    進軍してくるロシア軍の迎撃に加えて、撃退(追い払い)も焦点になってくると思います。
    ロシアは西側諸国からのより高度な兵器支援を戦争行為とみなすなど恫喝していましたが、西側は支援の中身を一歩エスカレーションさせたことを意味します。
    恫喝に対してベタ降りはしません。

    ロイター
    イギリスと同盟国はウクライナに殺傷能力の高い援助を送ることにした
    https://www.reuters.com/business/aerospace-defense/britain-allies-send-more-lethal-aid-ukraine-uk-defence-minister-2022-03-31/
    英国のベン・ウォレス国防相は31日、ロシアの侵攻からウクライナを守るため、英国とその同盟国は殺傷力の高い軍事支援をさらに送ることで合意したと発表した。
    この援助には、防空・沿岸防衛システム、長距離砲、対砲撃能力、装甲車、さらに幅広い訓練と後方支援が含まれる予定である。

    支援国会議には韓国も出席していたようで、韓国の自走砲K-9が・・・送られることは無いだろうな。

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