台湾が9月も貿易額「3番目」に

第4位の国とは肉迫しているが、トレンドとしては台湾の重要性は上昇へ

財務省税関は本日、2021年9月分の貿易統計を発表しました。これによれば、台湾は第4位の国に肉迫されながらも、引き続き、日本にとって第3番目の貿易相手国であり続けています。ただ、短期的に台湾が日本にとって第4位に再び転落する可能性はあるかもしれませんが、価値と利益を共有する大切な友人である台湾とは、ワクチン協力など、現実的に協力できる分野で、少しずつ協力関係を積み重ねていくのが良いのかもしれません。

貿易統計:中国、米国に続き台湾と

財務省税関は本日、2021年9月分の貿易統計(速報値)を公表しました。

これによると、今月も先月に引き続き、貿易額では中国が最大で、これに米国、台湾、韓国などが続く、という状況でした(図表1)。

図表1 日本の貿易(2021年9月、貿易額上位順10ヵ国)
相手国輸出額/輸入額貿易額/貿易収支
中国1兆4793億円/1兆7721億円3兆2514億円/▲2928億円
米国1兆1553億円/7628億円1兆9181億円/+3925億円
台湾5163億円/3387億円8550億円/+1776億円
韓国4963億円/3075億円8038億円/+1888億円
豪州1082億円/5436億円6518億円/▲4353億円
タイ3060億円/2435億円5495億円/+625億円
ドイツ2023億円/2304億円4327億円/▲281億円
UAE495億円/3170億円3665億円/▲2674億円
ベトナム1683億円/1940億円3623億円/▲257億円
香港3483億円/94億円3577億円/+3390億円
その他1兆8688億円/2兆5598億円4兆4286億円/6909億円
合計6兆8410億円/7兆4650億円14兆3060億円/6241億円

(【出所】財務省税関『財務省貿易統計』より著者作成。なお、「貿易額」は「輸出額+輸入額」、「貿易収支」は「輸出額-輸入額」を意味する)

以前からしばしば報告してきたとおり、台湾と韓国は貿易相手国としては肉迫していますが、それでも徐々に両者の差は縮まっています。すなわち、日本にとっては最大の貿易相手国が中国、その次が米国、という構図は変わらないのですが、3番目の貿易相手国として、台湾が浮上し始めているのです。

僅差で競り合う台湾と韓国

ただし、2021年9月時点において、台湾と韓国の貿易相手国としての地位は、「僅差」でもあります。

たとえば、輸出額に関していえば、台湾が5163億円であるのに対し韓国は4963億円で、両者の差は200億円に過ぎず、また、毎月の統計で見ても両者は本当に近接していることがわかります(図表2)。

図表2 月次輸出額(台湾・韓国の比較)

(【出所】総務省統計サイト『普通貿易統計』より著者作成)

また、輸入額に関しても、台湾が3387億円、韓国が3075億円で、両者の差額は500億円少々であり、やはり毎月の統計で見ても、両者がかなり肉迫していることがわかります(図表3)。

図表3 月次輸入額(台湾・韓国の比較)

(【出所】総務省統計サイト『普通貿易統計』より著者作成)

結果的に、貿易額(輸出額+輸入額)で見ても、両者はかなり近いのが実情です(図表4)。

図表4 月次貿易額(台湾・韓国の比較)

(【出所】総務省統計サイト『普通貿易統計』より著者作成)

もっとも、数年前は台湾と韓国にはそこそこの開きがありましたが、この1年あまりは、日本にとっての貿易相手としての台湾の重要性が浮上していることがわかりますので、一時的に韓国に再逆転されることがあったとしても、傾向としては「台湾>韓国」といった流れが続くのかについては要注意、といったところでしょう。

台湾のTPP参加を日本が後押しすべき

さて、先月からの繰り返しですが、以前の『大事な友人・台湾のTPP参加を日本が支援すべき理由』でも触れた、台湾がTPPへの参加意思を表明したことについては、日本にとっては間違いなく歓迎すべき話です。

台湾自身が中国との関係をどう整理するのかがいまひとつ見えない点、台湾が国際的な法や約束をどの程度守ってくれるのかという点については見極めが必要であるという点などはありますが、いまや台湾は、日本にとって、経済・産業上も重要な相手「国」に浮上しつつあることもまた事実でしょう。

もちろん、中国との関係もあり、また、TPPの新規加入は全会一致を原則としているという事情もあるため、台湾のTPP参加は難しいかもしれません。

しかし、それと同時に、『外交青書:基本的価値の共有相手は韓国ではなく台湾だ』などでも触れたとおり、今年の外交青書上、日本は台湾を次のように位置付けています。

台湾は、日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人である」(同P55)。

つまり、日本政府は少なくとも台湾について、「国」という表現は慎重に避けつつも、事実上、ともに手を携え、未来に向けて発展して行くべき相手「国」とみなしているようなものです。

つまり、日本としては「台湾のTPP参加表明」については「歓迎する」と述べつつも、TPP以外に現実的に実行可能な日台協力(たとえばワクチン協力)については着実に実績を積み重ね、日台関係を強化するという方策を取ることも可能でしょう。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ちなみに『日本は7割が接種完了:ワクチン機に日台関係も深化へ』でも触れましたが、日本は先日、台湾に対し6回目、累計420万回分のワクチン提供を実施しました。

これに対し、台湾は蔡英文(さい・えいぶん)総統本人がこんなツイートを発信しています。

相手に対して支援を実施したら、相手「国」のトップから、日本に対して直接、「日本語で」謝意が述べられるというのも、なかなかに新鮮な体験でもあります。

個人的にはぜひ、そういう誠実な相手国との関係を深めていくべきではないかと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. sqsq より:

    私は表中のタイ+ベトナムの貿易額がアメリカに次いで3位になっているのに注目したい。
    タイもベトナムもASEANです。日本の製造業の中にはASEAN内でサプライチェーンを構築している企業があるはずです。ベトナム、インドネシア、マレーシアで作った部品をタイに集めて組み立て、日本に輸出している製品があると聞いたことがあります。
    韓国は法を守らないので、日本企業の重要なサプライチェーンに入れるべきではないでしょう。
    中国は突然「共同富裕」などと言い出す国です。そのうち「新文革」と言い出すのでは?
    あぶないのでつかず離れずでいきたい。

    1. ちょろんぼ より:

      sqsq様

      中共に対しては、「つかず離れず」より「敬して遠ざく」の方が、
      よろしいのではないかと思います。
      日本の歴史を学ぶと、シナに入れ込むと日本が悪化し、離れて細々と
      貿易(朱印船・南蛮船・倭寇とか)している時の方が、日本全体として
      うまくいっているような気がします。

    2. サムライアベンジャー より:

       Asean諸国ももちろん、サプライチェーンに入っているでしょうね。タイは10年くらい前は、直接投資国で日本が50%以上を占めていました↓
      https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2012/2012honbun/html/i2350000.html
       一回日本からの投資も下落して、(シンガポール経由)中国に抜かれていました。最近は日本からの投資も戻して(!?)るようですが。。。。↓
      https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/02/4da9dc84c9800206.html

       タイは確か近年まで、日本の特許の海外での利用率(というのかな?)が1位の国です。ぶっちゃけて言うとタイの会社が日本の特許を買ってくれているんじゃなくて、現地日本企業がその特許を買って物を作っているはずです。

       台湾がくそまじめな親日なら、さしずめタイはノー天気な親日国ですが、第2次世界大戦時、裏切られています。韓国と同じとまでは言いませんが、風見鶏のように自大先を探している尻の軽さが気になります(個人的には)。
       Asean諸国がさすがに中国の横暴に気が付き、対中国の機運が高まっている中、タイだけが「みんなで仲良くしようよ」的な態度で会議の場で浮いているそうです。
      こういうデータを見るとがっかりしてしまいます→<タイ中学・高校の第2外国語、中国語が圧倒>
       http://www.newsclip.be/article/2012/04/30/13999.html

       日本もそろそろ「仲良しごっこ」のODAをやめて、ちゃんと日本からのODAや投資に感謝しているのか、ちくいちチェックするくらいの気構えでやってほしいものです。韓国のように、手助けしたのに敵に寝返っちゃった、ということがないように。

      1. sqsq より:

        >第2次世界大戦時、裏切られています

        タイは第2次大戦時、米英に宣戦布告していたはずです。ただし日本の敗戦を聞いて、あの宣戦布告やっぱりやめたということになって、連合国は実害がないのでうやむやになったと記憶しています。

        1. サムライアベンジャー より:

          >sqsq様
           そもそもタイが植民地化されなかったのも、その2枚舌というか5枚舌(くらい?)を使いこなすのがうまいからでしょう。人のいい民族ですけおドね、信用しきれません・・・

  2. 七味 より:

    >個人的にはぜひ、そういう誠実な相手国との関係を深めていくべきではないかと思う次第です。

    方向性としては異論があるわけじゃないけど、台湾も日本の水産物の禁輸とかやってたと思うので、そういった不合理な規制の撤廃を求めた上で、台湾のTPP参加申請への態度を決めるべきだと思うのです♪

    ・・・・・・韓国は申請もしてないので、検討にすら値しないと思うのです♪ 申請しても、水産物だけじゃなくて、約束守ってなかったり、戦略物資横流ししたり、日本企業排除のための戦犯企業リスト作ってたり、是正させるべき事項が多すぎだと思うのです♪

  3. 閑居小人 より:

    TPP加盟国のシンガポール、ベトナム、マレーシア、ブルネイが台湾の加盟に反対しないよう日本が説得してほしいです。
    今一つ東南アジア諸国は信用できないと思っています。

    1. 七海 より:

      >今一つ東南アジア諸国は信用できないと思っています。

      残念ながら、それは日本も同じでは無いでしょうか…。
      東日本大震災の時、台湾はすぐに救助隊の派遣を表明してくれたのに、他国に忖度して台湾の救助隊を待機させてた、と言う噂がありましたよね?
      今度の選挙で、日本国民の救助よりも彼の国への忖度を優先した疑いのある方達が政権を取れば、日本だって手のひら返しをするかもしれません。
      あの時の官房長官が総理なら、「コロナでダメージを受けた日本経済を立て直すためにも中国にTPP加盟をして貰おう!」とか言い出しそうで、日本の事も信用出来ません。

  4. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

    台湾も日本もパンダハガー(中国のスラングでは「中国当局に逮捕された人」という意味らしいが)が政権取れば
    風向きが変わるよ

  5. 匿名 より:

    台湾は貿易額の半分以上が中国で韓国以上に中国べったりだったけど、少しは中国離れが進んでるのかな?

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