日銀の外貨買入オペなら財政再建と物価目標で一石二鳥

当ウェブサイトが長らく主張してきた、「財務省が外為特会で保有する巨額の外貨準備を日銀に売却する」という構想が、唐突に現実味を帯びて来ました。日銀が昨日、財務省から60億ドル程度の米ドル資金を買い入れると発表したのです。これについてどう考えるべきでしょうか。

日銀が財務省から60億ドルを購入

本稿は、ショートメモです。まさか、あちらからこの話題が出て来るとは思っていませんでした。

日本銀行は昨日、財務省・外為特会から米ドル資金買入を行うと発表したのです。

財務省(外国為替資金特別会計)からの米ドル資金の買入について【※PDFファイル】

今般、日本銀行では、新型コロナウイルス感染症にかかる状況も踏まえ、国際金融協力や金融機関に対する外貨資金供給のより円滑な遂行に備える観点から、別紙要綱のとおり財務省(外国為替資金特別会計)から米ドル資金(60億米ドル程度)を買い入れることとしましたのでお知らせします。<<…続きを読む>>
―――2020/12/16付 日本銀行HPより

日銀の報道発表によると、買い入れるのは米ドル資金(60億ドル程度)であり、買入日(決済日)は2021年3月末までのいずれかの営業日で、買い入れる際の為替相場は約定日の市場実勢レートとしています。

なぜそんな中途半端な額を買うのか?

おそらく、日銀がおもに期越えのドル資金などを直接、市中金融機関などに貸し付けたりするのに使うためでしょう。また、財務省との相対(あいたい)取引とする理由は、おそらく、日銀が市場で買入を実施してしまうと、為替相場に影響を与える可能性がある(つまり為替介入となりかねない)ためでしょう。

また、財務省の側としても、外為特会で保有している1.4兆ドル近い外貨の一部を売却すれば、円資金が手に入るはずです。おそらく、補正予算の執行などに備え、手元に現金を確保しておきたいというニーズでもあるのかもしれません。

もっとも、60億ドル程度といえば、1ドル=103円と仮定しても、せいぜい6180億円に過ぎません。日本の金融市場の規模に照らして考えるなら、なぜこんな中途半端に小さい額を買い入れようとするのか、よくわかりません。

それに、日銀は米FRBと期間無制限の為替スワップを締結しているため、ターム物(1週間物と3ヵ月物)のドル資金流動性オペレーションを実施することが可能です。わざわざ日銀が60億ドル程度の資金を購入する必要性に迫られているとも思えないのです。

外貨準備の日銀移管で「財政再建」とやらも進む!

ただ、あくまでもうがった見方をすれば、これは新たな日銀のオペの予行演習、という意味合いもあるのかもしれません。

つまり、財務省が保有しているドル資金を、市場の為替レートに影響を与えない形で日銀に移し、日銀は外貨を、政府は円資金を手に入れて、お互いウィン・ウィンの関係になる、ということではないでしょうか。

ちなみに現在、財務省やその取り巻きの御用学者、御用メディアの皆さんは、しきりに「国の借金が1000兆円を超えていて大変だ」、などとおっしゃるのですが、そのように述べるのであれば、財政再建を兼ねて、1.4兆ドル前後の外貨準備の一部を売却してはいかがでしょうか。

たとえば外貨準備から1兆ドルを今回と同じ方法で日銀に売却するのです。日銀は通貨を発行する権限を持っている日本で唯一の経済主体ですので、財務省からドル資金を購入し、その代金を日銀当預勘定に振り込む(実際には記帳する)だけで作業は完了です。とっても簡単ですね。

そして、財務省はそのオペレーションにより103兆円の現金(というよりも日銀政府預金)を手に入れることができます。手に入れた現金は国民1人あたり100万円を配るための原資にしても良いですし、彼らが「国の借金」と呼ぶ国債の買入消却に使っても構いません。

もっとも、日銀がそれだけのカネを発行すると、インフレになっちゃうのではないか、と心配する人もいるかもしれません。

しかし、現在の日本のマネタリーベースは603兆円に達しており、それでもなかなかインフレにならないわけですから、この603兆円が706兆円になったとしても、正直、あまり影響はありません。

というよりも、日銀が物価目標を達成するための「玉」、つまり買い入れる対象資産が市場から徐々に枯渇しているわけですから、むしろ日銀にとっては1兆米ドル程度の外貨は買い入れる絶好の資産でもあります。

また、もしも財務省に外貨準備がなくなってしまえば、この際、外債オペとして米国債などの買入を始めても良いかもしれませんね。

読者コメント一覧

  1. お虎 より:

    働いている人たちの給与水準が上がらないと、どうにもならんやね。

    1. 匿名 より:

      韓国みたいに無理矢理給与水準上げますか?

    2. お虎 より:

      「日本でつくるから高くなる」とはよく聞くが、OECDの中で給与が下がり続けている日本でなぜ、と疑問持たないのかねえ。生産性が低下しているのが一番の原因なんだが、政府の規制の多さはどうにもならない。
      健康で働いて所得がどんどん増えて、企業も増益を続けて、消費をし納税する。そうしてこそ持続可能な社会だと思うが。ブログ主が提示した財政の小手先技などは、苦肉としかみえないね。かつての華やかなりし経済大国時代の幻影にひたっているんだろうな。

  2. 奇跡の弾丸 より:

    「米国、ベトナムとスイスを為替操作国に認定-日本は監視対象継続」

    日本が為替操作監視対象ってどうなんでしょうね^^;

    アメリカのほうがよっぽど、という気もしますがどうなんでしょうか?
    (まあちゃんと把握していないので間違っていたら指摘してくださいね)

    彼の国は?と思ったのは私だけ?

    1. だんな より:

      奇跡の弾丸 さま
      米財務省、韓国を為替監視対象国で維持…持続的監視
      https://s.japanese.joins.com/JArticle/273463
      日本は、「年間200億ドル以上の顕著な対米貿易黒字」が、該当するはずです。
      後は、彼の国の記事を読んで下さいませ。

      1. 奇跡の弾丸 より:

        だんな様
        貴重な情報ありがとうございます。
        明確なルールがあったのですね。

        彼の国のGDPの2%というと2兆~3兆円(円ベース)ぐらいでしょうか?
        新宿会計士様の記事「韓国メディア「韓日通貨スワップは再開もできず」内に
        1か月で1兆円ぐらい増えてると記載があるのですが、対象にならないのでしょうか?
        ・・・勉強不足で理解できません><。

  3. 愛読者 より:

    このあたりのお金も,めぐりめぐって株式市場に入ってくるのでしょうね。でも,実体経済と乖離したバブルを膨らませすぎると,破裂した後が怖いですよ。一部の国では不動産バブルも引き起こしてますね。経済学部でも,無秩序に通貨を発行すると,それはみんな株式市場に流れ込むよ,なんて理論は教えなかったでしょ。私も最近学習しました。

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