NHKにとっては企業倒産よりも受信料収入の方が大事

先週、『サンケイビズ』というウェブ評論サイトに、「コロナ禍により多くの事業所の休・廃業が相次いだ影響で、NHKの契約数が大幅に減少した」とする話題が掲載されていました。ただ、契約の減少数は8.5万件であり、減少率で見ると0.2%に過ぎませんので、これを「大幅減」と見るべきなのかは微妙です。それよりも、コロナ禍を契機に、「そもそも公共放送は必要なのか」という論点とともに、「NHKが公共放送を担う組織として妥当なのか」について、議論することが必要ではないでしょうか。

NHK「契約数が大幅減」、本当?

NHKの動向をチェックしている当ウェブサイトにしては不覚でした。

「イーシャ」様というコメント主様から読者コメント欄にご提供いただいた話題を紹介していなかったからです。

NHK契約数が大幅減 新型コロナで事業所の解約申し出多数(2020.6.11 19:07付 SankeiBizより)

『サンケイビズ』に6月11日付で掲載された記事によると、2020年5月末時点におけるNHKの放送受信契約総数が、3月末(4212万件)と比べて8.5万件減少したそうです。

『サンケイビズ』はこれを「大幅減」としているのですが、減少率で見ると0.2%ですので、「大幅減」などと大騒ぎするほどのことはないようにも見えます。ただ、前田晃伸(てるのぶ)NHK会長はこの理由について、11日の記者会見で次のように述べたそうです。

  • 多くの事業所で事業運営に影響が出ていて、相談窓口には休業や廃業に伴う解約や支払い延伸の申し出が多数寄せられている」。

すなわち、武漢コロナウィルス蔓延の影響で、休廃業する事業者が増えていることが、解約が相次いでいる理由だ、というのが前田会長の説明なのだそうです(※前田会長といえば、某銀行が2002年にシステム障害を発生させた際、その持株会社の社長として居座ったこと有名ですね)。

そのうえで前田会長は

  • 休業したり廃業した方がもう1回改めて起業するのは大変難しい
  • NHKの受信料という意味では、構造的なところに直撃するのではないかと心配している

などと述べたそうですが、これが事実ならとんでもない発言です。

銀行員出身でありながら、「いちど休・廃業したらもう1回起業するのは大変難しい」などと勝手に決めつけるというのも驚きです(もしかして前田氏は銀行員時代、「いちど休・廃業したらもう2度と起業するな」というスタンスを取っていたのでしょうか?)。

そして、この「NHKの受信料」云々の発言自体も、結局は「休・廃業した事業者」のことを心配したものではなく、「NHKの経営」に対して懸念を表明したというものであり、将来的な受信料の値上げなどを視野に入れたものではないかとの疑いを抱くに十分です。

少し言葉は悪いのですが、前田氏こそ、さまざまな意味で「NHKの会長」に相応しいお方でしょう。

NHKのその受信料は必要なのか?

さて、NHKの決算についてはいろいろと不透明な部分が多いのですが、その最大の疑問は、「その受信料は必要なのか」、という点にあります。

以前、『日本新聞協会「NHKは受信料削減と業務抑制が必要」』でも報告したとおり、珍しく日本新聞協会の意見に当ウェブサイトとして賛同したいのは、NHKが現在のままで存続するならば、受信料を削減することと業務の肥大化を抑制することが必要だ、という点です。

日本新聞協会「NHKは受信料削減と業務抑制が必要」

そもそも論として、NHKの2019年3月期連結財務諸表によれば、オフバランス項目である年金資産も含めれば、連結集団内にじつに約1.1兆円を超える金融資産を抱え込んでいますし、都心部の一等地などに所在するとみられる優良資産についても低い帳簿価額で計上されている疑いが濃厚です。

ではなぜ、NHKはかくも大金持ちなのでしょうか。

その理由は、ひとえに受信料の水準が高過ぎるからでしょう。

NHKの経費項目については、連結決算に関しては詳細なデータが秘匿されているため、よくわかりませんが、2019年3月期の単体決算上は、受信料が7236億円であるのに対し、「契約収納費」(受信料の取立費用)が644億円と10%近くに達していることがわかります。

また、人件費については職員1人あたり、少なく見積もっても1550万円に達しており、これにNHKの職員のために、豪奢な社宅が格安の家賃で提供されているとの報道(たとえば次の『サンデー毎日』記事等参照)もあります。

受信料収入でNHK職員の「好待遇」全調査

NHK受信料値下げの「公約」を事実上撤回した籾井勝人会長。だが、値下げの原資はある。視聴者のために「放送界の覇者」といわれるNHK職員の恵まれた待遇を再考すれば、巨額の「埋蔵金」が掘り出されるのも夢ではないのだ。<<…続きを読む>>
―――サンデー毎日 2015年5月31日号より

NHKを「倒産させる」ことはできない

ところで、先週は株式会社ローソンのあらたな商品デザインがインターネット上で大きく騒がれている、という話題を、『「商品を普通に誤認する」と評判のコンビニ新デザイン』と『PBデザイン騒動は消費者がローソンを愛している証拠』で相次いで報告しました。

これについては該当する記事でも申し上げたとおり、たとえ消費者からの受けが悪くても、株式会社ローソンにはデザインを変更しない自由がありますし、逆に、デザインを今すぐ元に戻すという自由もあります。なぜなら、株式会社ローソンは民間企業だからです。

たしかに、株式会社ローソンが大企業である理由は、それだけ多くの消費者に愛され、支持されてきた結果ですし、それと同時に株式会社ローソンが日本を代表するコンビニエンスストアチェーンを展開している以上、非常に公共性が高い会社であるという言い方をしても良いでしょう。

しかしながら、株式会社ローソンはライバルであるセブンイレブンを展開する株式会社セブン&アイホールディングス、ファミリーマートを展開する株式会社ファミリーマートなどとの間で熾烈な競争を繰り広げている、という関係にあります。

もし消費者がローソンのPBのデザイン変更について「気に入らない」と思うのならば、株式会社ローソンに文句を付けるのではなく、「ローソンで買わずにセブンイレブンやファミリーマートなどで買う」という選択をすれば良いだけの話です。

極端な話、株式会社ローソンのような大企業であっても、私たち消費者がそっぽを向けば、経営危機に陥る可能性があります。なぜなら、コンビニエンスストアチェーンなどの小売業は、自由競争が貫徹している世界だからです。

しかし、NHKの場合はそういうわけにはいきません。なぜなら、NHKがどんなに問題のある番組を制作しても、消費者は「NHKの番組を見ない」、つまり、「NHKの商品を買わない」、という選択を取ることができないからです。

放送法第64条第1項本文

協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。

NHKは「放送法第64条第1項本文」などをタテに取り、テレビを設置した家庭や事業者などに対し、なかば強制的に受信契約の締結を迫り、また、いったん契約を締結したあかつきには、高額な受信料を半強制的に徴収している組織です。

自由主義経済の鉄則である、「嫌なら(その会社のサービスを)買わない」という選択を取ることが消費者に許されていないという時点で、NHKはまさに「国民の敵」の名に値するのです。

NHKに公共放送騙る資格なし

ただ、このように申し上げると、「いや、NHKでなければ制作できない番組もある」、「商業主義と無関係なNHKでなければ、とくに科学系の良質な番組を作ることはできない」、といった反論をいただくことがあります。

当ウェブサイトが問題にしているのは、「NHKの受信料の水準が妥当なのか」、「NHKの番組を見ない人からも受信料を半強制的に徴収するのが、社会正義に照らして正しいのか」、という論点であり、「NHKの番組が良質だ」という点は単なる論点ずらしです。

それに、NHKが制作している科学系の番組が「良質」なのかどうかはさておき、一般論として申し上げるなら、どんな組織であっても、それなりにコストをかければ、それなりの質の番組を制作することができるのは当然の話です。

つまり、「商業主義によらず、良質な番組を作る『公共放送』が必要だ」という議論と、「NHKが『公共放送』を担うにふさわしい組織である」という議論は、まったくの別物です。

それよりも、『公共の福祉に反する番組作るNHKの廃局を議論すべき』でも報告しましたが、NHKは明らかに「公共の福祉」に反した反社会的な番組を制作している、という事実もありますが、NHKの経営に対し、国会も、監督官庁である総務省も、十分に監視・監督しているようには見えません。

さらに、NHKを含めた地上波テレビ局が制作する番組については「BPO」という業界内組織が自主規制をしていると称していますが、BPOが放送コンテンツを監視するための機構として十分に機能しているのかといえば、非常に微妙でしょう。

要するに、放送法第64条の規定をタテに、巨額の受信料を一方的にかき集め、反社会的な番組を制作したり、NHK職員を異常に厚遇したり、連結集団内に子会社をたくさん作ったり、1兆円を超える金融資産を溜め込んだりする組織に「公共性」があるのかどうか。

この点については、もう1度、国民レベルで議論すべきでしょう。

読者コメント一覧

  1. kazusa より:

    >放送法第64条第1項本文
    >協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。

    これって契約を義務付けてはいますが契約条件は協会の言いなりで、とは規定されていないですよね。
    こちらが提示する契約条件に協会が同意せず、こちらに契約する意思はあっても、協会側と契約条件が折り合わず、契約交渉中の状況が延々と続く場合はどうなるのでしょうか?

    1. 極北テレワーク より:

      契約は当時者同士が納得して交わすべきものですので、平行線が続くことは当然あり得ます。
      放送法はザル法でいつまでに契約しなければならないか決めもなく、罰則などの強制力の記載もありません。
      受信料は、法ではなく受信規約で定められていますので、契約してはじめて有効になるのです。

      しかし、埒が明かない場合、協会側に係争に持ち込まれると視聴者側の旗色が悪くなりますね。
      テレビを保有していることが明確で、その前提で契約内容について折り合わないというだけですから、テレビを設置した時点から受信契約が有効となり、受信料を払えという判決が下るでしょうね。

      BSのテロップを消すようリアクションしたことにより、テレビを保有していることが明るみに出てしまい、訴えられて裁判で負けるケースなどは、テレビを保有している者は受信料を払わねばならないという大原則は変わらないという証ですね。

      余計なことは考えず、テレビを保有しているとしてもそれを明かすことなく受信契約をしない、契約済みなら解約する、これを国民が徹底すれば協会は理論上潰せます。

      1. ano より:

        テレビを捨てろ / Red Hot Chili Peppers
        https://www.youtube.com/watch?v=4OL81q0EVAo

        1. 福岡在住者 より:

          もしかして、「マッサン‐笑」ですか? この辺はご想像で、、、。
          だとしたら、素敵過ぎ(笑)

  2. タナカ珈琲 より:

    NHKには言いたいことが1つ有ります。
    それを言えば長くなりますので省略します。

    30年間NHKには イワユル 受信料は払ってません。

    NHKからは郵便がきますが、開封せずにゴミ箱に直行デス。

    駄文です。

    1. プラズマクラスター より:

      正しい判断です。
      協会の委託業者が戸別に未契約リスト宅(と思われるところ)を回り、ピンポン攻撃のあと受信契約を結べという恫喝まがいの封書やチラシを置いていきますが、一切応じる必要はありません。

      契約済みで未払いするケースは訴えられる危険がありますが、未契約は最強です。
      無視して取り合わなければ訴えられることもまずありませんから。

      1. タナカ珈琲 より:

        プラズマクラスター様

        ありがとうございます。

        ワタシは年金生活者ですので、近所付き合いしていません。ピンポンのコンセント入れてないので、、、、、誰か来てもキー開けません。

    2. たくさんいる匿名の一人 より:

      NHKを30年間視聴していないというのはすごいです。筋金の入り方に敬服いたします。

      1. タナカ珈琲 より:

        たくさんいる匿名の一人様

        ありがとうございます。

        誤解をあたえました。
        ごめんなさい。

        NHKは見ています。
        一週間に十五分ぐらい、、、、

        見ないから支払いをしない、、、
        そんなマトモな考えではなく、

        NHK見るけど、ノーペイしてます。

  3. すまないさん より:

    NHKの解約条件も中々ヒドイもんですよ…
    簡単に契約しない方が良いと思いますね。
    Exite引用:https://www.excite.co.jp/news/article/Radiolife_37555/#:~:text=NHK%E3%81%8CWeb%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88%E3%81%A7,%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E8%A7%A3%E7%B4%84%E3%81%8C%E5%8F%AF%E8%83%BD%E3%80%82

    NHKよりもスカパーとかCATVとか好きなチャンネルで契約した方が良いと思います。
    駄文にて失礼します。

  4. 匿名 より:

     民放キー局の経営が傾いて公共放送と民放との役割分担の切り口で政治課題にならない限りNHKの見直しが議論になることはないでしょう、規制改革の土俵に載らない限り。

     ただただNHKに不満があるから国政選挙で与党に投票しないというムーブメントが起きない限りNHK単体で改革しようという推進力が湧いてこない。民放が傾いてNHKひとり勝ちのフェーズに入ればNHK改革が不可避になるという何とも皮肉な未来。

  5. ちょろんぼ より:

    いつもお世話になっております。

    私が思うNHKの存在理由は、
    1.政治で行う事を国民に分かりやすく説明する事
    2.日本の海外への発信能力が足りないと以前から
     言われており、海外への発信機関であります。
    例としては、ロシアのプラウダ・中共の新華社等
    日本政府の言い分を海外に広める事だと思っております。

     それを何か勘違い又は他国の報道機関に成り下がった事が
    問題です。
    放送経費が必要なら、現在の変なやり方ではなく
    はっきり税金の中から支出すべきであると思います。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の全文引用はお控えください!発見次第、削除します。

コメントに際しては当ウェブサイトのポリシーのページなどの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。