入国制限解除には相互信頼が必要
現在の日本は事実上の「鎖国中」と言っても過言ではない状況にありますが、経済活動への影響を考えるなら、いつまでも出入国制限を続けるというのも限界があります。こうしたなか、必ず出てくる議論は、「防疫面で安全だと信頼できる相手国とのあいだで入国制限措置を徐々に緩和していく」という考え方です。いわば、日本や相手国がヒトの流れを再開するためには、お互いに信頼がなければならないという、ごくあたりまえのことを、改めて痛感せざるを得ません。
日本は現在「鎖国中」…
例の武漢コロナウィルスの蔓延を巡り、わが国ではすでに緊急事態宣言も解除され、徐々にではありますが、経済活動も正常化しつつあります。しかし、諸外国について眺めてみると、まだまだ新規感染者は出続けていますし、死者数も多いのが実情です。
こうした状況を受け、日本は事実上の「鎖国」にも近い入国制限措置を取っていますし、また、外務省『海外安全ホームページ』でも、世界のかなり多くの部分が「レベル3(渡航中止勧告)」の対象国・地域に指定されています。
もちろん、日本でコロナ騒動が完全に収束したとは言い切れないうえ、ワクチンもまだ開発されていない以上、防疫の観点から事実上の鎖国措置を続けることに対しては、国民の理解も得られていると考えて良いでしょう。
ただ、いつまでも「鎖国」を続けるわけにもいきません。
この点、茂木敏充外相は以前から入国制限措置の緩和ないし解除について、①日本国内で感染が収束し、②相手国で安全が確認され、③日本と相手国でほぼ同時に制限を緩和する、などを条件に、ビジネス客など重要性の高い往来を復活させる考えを示しています(たとえば5月15日の記者会見)。
また、その具体的な相手国を巡っては、当ウェブサイトでは先日の『「4ヵ国の入国制限先行解除」は産業構造の変革好機に』でも触れたとおり、一部報道ではタイ、ベトナム、豪州、ニュージーランドの4ヵ国の名前が挙がっています。
もちろん、これは現時点において観測報道の域を出ないのですが、ただ、これらの国は日本とのビジネス上の関係も深く、かつ、コロナ騒動にも収束の兆しが見えていることは確かでしょう。
茂木外相の「3要件」
これについて判断するうえでの手掛かりが、茂木外相の金曜日の記者会見です。
茂木外務大臣会見記録(令和2年6月5日(金曜日)15時01分 於:本省会見室)
―――2020/06/05付 外務省HPより
茂木外相は、具体的なビジネス客などの往来に関する諸外国との協議状況について尋ねたNHKの木村記者の質問に対し、次のように答えました。
「まず、私(大臣)は電話会談、もう40ヵ国以上とやっておりますので、その3ヵ国(※ベトナム、ニュージーランド、豪州)だけではありません。もちろん挙げていただいた3ヵ国については、世界全体で見ても感染症はかなり収まっている国だと考えておりますが、先日来お話ししているように、今後の緩和に当たりましては段階的に行うと。まずは人材面でも段階的に行いますし、国についてもまずは限られた国からということになってくるのではないかなと思っております。」
つまり、茂木外相は、このあたりの国について「感染症がかなり収まっている」と考えているということであり、また、出入国制限の緩和についても「段階的に行う」という姿勢を改めて示した格好です。
さらに、日本政府は現在、基本的には外国から帰ってきた人、外国から入国して来た人に対し、2週間の待機措置を求めているのですが、NHKの木村記者がこの点について尋ねたところ、次のようにも答えました。
「これですね、コロナ対策と経済活動の再開、これは国内でもそうでありますが、そのバランスをどう取っていくかということが極めて重要だと思っております。当然、ビジネス等でお越しになる方にとっては、来たその日からでも活発に仕事をしたいということであると思いますが、一方で感染症対策上、それで万全なのかということは考えなくてはいけない。それは検査も含めてでありますし、また、どういった形でその人たちが移動の範囲を設定するか、こういう問題もあるのだと思っておりまして、そういった点も含めて、今、関係省庁で検討しているということであります。」
つまり、防疫とビジネスのバランスを取るという観点からは、
- ①相手国が日本について「感染状況が落ち着いている」と判断すること、
- ②日本が相手国について「感染状況が落ち着いている」と判断すること、
- ③日本と相手国が同時に同様の入国制限緩和措置を実行すること、
という3つの条件で折り合いが付くことが必要だ、ということでしょう。
入国制限が「固定化」される国はあるのか?
逆にいえば、ワクチンや特効薬などが開発されていない状況が続く限り、理論的にはこの3つの条件が満たされない国とのあいだでは、出入国規制が厳格化された状況もまた続く、ということです。
ちなみに上記①~③の条件のうち、①については日本政府にコントロールできる話ではありません。なぜなら、「日本国内が安全であるかどうか」については、相手国が判断すべき話だからです。
いちおう、日本国内ではすでに緊急事態宣言は解除されていますが、その一方で東京都内では依然として毎日のように2桁の新規感染者が出ているため、国によっては「日本では本当に安全といえるのか?」などと相手国から疑念を持たれる可能性はあるでしょう。
ただし、②については日本政府が判断すべき事項であり、③については日本と相手国が協議すべき事項です。ということは、①~③の条件を満たして入国制限措置が相互に解除されるためには、日本と相手国のあいだで、ある程度の信頼関係がなければならない、ということです。
なぜなら、①については相手国政府が日本政府を信頼していなければならないということであり、②については日本政府が相手国政府を信頼していなければならない、ということで、③については①と②の条件を同時に満たさなければならない、ということだからです。
「信頼」という意味では、すでに具体例が挙がっている豪州、NZ、ベトナム、タイ以外にも、たとえば他のAESAN諸国の大部分やG7(米英仏独伊加+EU)、台湾などが想定できると思います。
これに対し、肝心の「コロナ加害国」である中国、日本人を拉致したままで返さない北朝鮮、さまざまな問題を次々と起こしてくる韓国、さらには北方の無法国家・ロシア、ゴーンの逃亡先・レバノンなど、必ずしも日本とは信頼関係があるとは思えない国に関して、往来の復活が後倒しになるのは当然でしょう。
ということは、企業関係者も、サプライチェーンを再構築する際には、今後は疫病による相互往来の寸断というリスクを織り込まねばならないということなのです。まさに普段からの国の行動というものは、こういう局面で効いてくるというものなのかもしれませんね。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
そういえば『ビジネス客の入国制限解除はTPP加盟国から順番に?』などでも触れましたが、中韓両国はすでに「ファストトラック」と呼ばれる入国制限解除措置に踏み切っているようです。信頼レベルが似たような状況にある国どうし、ある意味では釣り合っている、という言い方もできるのかもしれませんね。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
>中韓両国はすでに「ファストトラック」と呼ばれる入国制限解除措置に踏み切っているようです。
まじか、狐と狸の化かし合いですね。
どっちも信用できないわ~
トップへの権力集中が顕著な両国だから、本質は「ファシストトラック」なのかもですけどね。
一見、仲良さげな狸と狐は「黄色いクマさんと破天荒なトラ」に化けてるのかな?
私の住んでいる地域では先週あたりから給付金が配られた為でしょうか、
今日ホームセンターとスーパーに行ったらだいぶ混んでいました(今まで見たことないぐらいかも)
給付金がこの時期になったことを肯定的に見れば、緊急事態宣言の解除され経済を回し始めるためにやった可能性もないでしょうか?
これは今後もあると思うのですが、あまりに早く経済をふかすと、生産拠点が中国にあるので、国内より中国にお金が回ることになるのかも。
考えすぎですかね?
知り合いの大陸通がかなり以前につぶやいたことを思い出します。コンサルティング業でも始めようかと言っていたのです。もし今書店にこんなタイトルの図書が出回ったとしたら、売れると思いませんか。
『損をしない中国事業撤退術』『泣かされる前に知っておきたいこと』『事例別損切り確定法』
> 『損をしない中国事業撤退術』『事例別損切り確定法』
この二つは売れると思います。想定購買層は情弱経営者です。有能な経営者なら今頃慌てていません。新型コロナ騒動以前から、ホワイトハウスの中国への風当たりは強いものでした。共和党よりもむしろ民主党の方が強硬だと言われていました。トランプ大統領個人の思惑と言うよりも、米国議会の総意として中国を叩き潰す意図は見えていました。それが読み取れなかった層が多数派ですので、カモとして狙い目だと思います。
「筋トレ不要! アミノ酸豊富で飲むだけで痩せるスッポンエキス」、「アラフォーなのにスタイル抜群の芸能人○○さんも愛用のコンブチャ・ドリンク」みたいなものです。努力が不要と主張するところがミソです。
> 『泣かされる前に知っておきたいこと』
これは、危機感を持ちにくい情弱経営者の心には響かないでしょう。泣かされてから買っても遅いので売れないと思います。
読み直してみて自己批判!
> それが読み取れなかった層が多数派ですので
断定する根拠がありません。撤回して「それが読み取れなかった層が、カモとして狙い目だと思います。」に縮めます。
中韓かファストトラックし合っているのは、両国ともコロナウイルスに勝った事を、誇示したい国内事情から、両国の利害が、一致した為だと思います。
中国とは、相互主義て段階的に解除されると思います。
K国は、相互主義が通用しないというのは、私が言い出しっぺですので、どうなるか楽しみです。
だんな様
〉K国は相互主義が通用しない
日本側が先に解除しない限り
K国が解除しないに一票
だって、反日K法に書いてました
から日本には二度と負けないって
日本が日和らず8月ぐらいまで
引っ張ると楽しくなりそうです
H様
相互主義は通用しないに賛同します。日本も南朝鮮も同じ名目ならばですね。日本が防疫目的で南朝鮮が報復目的ですから、このままでは武漢肺炎が終息したら日本が先に解除せざるを得ず南朝鮮が勝ちを得たように見えてしまいませんか。
まあ信用が失われ..無いのでノーピザを廃止に切り替えのチャンスとなればいいなと思います。
立ち寄り人さま
「このままでは武漢肺炎が終息したら日本が先に解除せざるを得ず」
と書いて有りますが、会計士さんが書いている、茂木外相の発言を、良く読まれたら如何でしょうか。
Hさま
反日K法って何?
だんな様
妄想です
良いネーミングが思いつき
ませんでした
ややこしくてすみません
更新ありがとうございます。
入国措置制限の緩和について、日本は
① タイ、ベトナム、豪州、ニュージーランドの4ヵ国。
② TPP参加国、G7+台湾。
③ 一部を除く欧州諸国、一部を除くASEAN。
④ その他。
* この際国交を閉じる国も極少数あり。
この順で宜しいかと存じます。
なお韓国については、嘘、偽りの類いが多く、
①「お互いに悪い点があったが、未来志向で信頼関係を構築しよう」
②「困った時はお互い様、隣国同士知恵を出し合おう」
③「我々は既に一等国であるが、もし日本に新しい革新的な技術が開発されれば、韓国に第一に相談して欲しい」、、。
と言う囁きが親韓議員、企業経営者、VIPに届きますが、一切政府が無視にて切り捨て下さい。国交回復はお互いの合意によりますが、「検討中」で即断は避けられるようお願いします。
自民党内の親韓、親中議員はともかく、政権内の外交方針にブレはないようですね。お慶び申し上げます。これで、アメリカから妙な外圧がかからない限りにおいては、この方向は維持されると思います。
茂木外相のことだから抜かりはないでしょうが、対韓、対中の入国制限は、これらの国をサプライチェーンや国際機関から外す動きと同期をとると存じます。従来の日本はこれらの国からいかな不法行為を仕掛けられても遺憾砲しか使えませんでしたが、茂木外相なら、外交面で彼らを追い込むことはできますよね。期待しております(笑)。
心配性のおばさんさま
アメリカは、韓国をアメリカ側に残そうという姿勢を維持しています。
日韓の入国制限については、日本にだけ解除しろと言って来る事は、有り得ないと思います。
内政干渉になりますので、仲裁する事も無いと思います。
だんな様 レスありがとうございます。
>内政干渉になりますので、仲裁する事も無いと思います。
本当にそうだとよろしいのですが(笑)。今回のコロナで再選を危うくされたトランプ大統領であれば、対中姿勢が当面ブレることはない。また、トランプ大統領は北朝鮮制裁破りに積極的な文在寅大統領を信頼もしておりません。トランプ大統領は自分の仕事のジャマをする存在を許しません(笑)。
が、バイデン氏が大統領選挙に勝利すれば、アメリカの対中姿勢、対韓姿勢がブレる可能性があります。なにしろ、バイデン氏は○○マネーにどっぷりだと聞いております。
まあ、アメリカがどう干渉しようと、日本がブレなければよろしいのですよね。
防疫上の措置と相手国への信頼を関連づけるのには少し違和感があるのです♪
もちろん、相手国での感染状況が落ち着いてなくて日本へ来る人がかなりの割合で感染者である可能性があるという状況で、無制限な入国を認めるわけにはいかないし、相手国での感染状況については、相手国の発表を信じるか否かということだから、ある程度信頼できる相手じゃないと、そもそも踏み切れないとは思うのです♪
ただ、相手国の感染状況がどんなに落ち着いていたとしても無症状のまま日本に持ち込むリスクはある訳だから、外国人の入国を認めることによるリスクをコントロール可能な状態に抑え込むことができるのかってことが大切なんだと思うのです♪
だから、茂木外相の発言の中の「一方で感染症対策上、それで万全なのかということは考えなくてはいけない。それは検査も含めてでありますし、また、どういった形でその人たちが移動の範囲を設定するか」という問題意識は大切なんだと思うのです♪
このあたりは、相手国から来日しようとする人数との兼ね合いはあるけど、入国時の見極めと入国後の管理が上手くいくかどうかっていう国内問題なんじゃないかって思うのです♪
あと、もひとつは、それなりに長期間の滞在となると、日本国内で感染・発症することも考えられるので、そのための医療リソースが確保できるのか、医療費はちゃんと払えるのかって観点も大切なんだと思うのです♪
個人的には、最初はビジネス客といえど、自由な来日を認めるんじゃなくて、明確な行動日程と身元引受人がいて予定外の行動を抑止できて、かつ、ちゃんと医療保険に加入している人、みたいな形で制限をかけて欲しいと思うのです♪
そういう人だったら、もしかすると、今でも入国できるのかな?
権威主義国家と普通の国とは分けて考えて、韓国には「権威主義国家の中では一番の入国制限解除ですよ」と言えば喜んでくれると思います。