米ドルFIMA為替スワップ残高一覧20200604

本稿は「資料集」です。『速報:米FRBが9つの中央銀行と為替スワップを締結』などでも報告したとおり、日英欧瑞加5ヵ国・中央銀行に加え、世界の9つの中央銀行・通貨当局(FIMA)は現在、米連邦準備制度理事会(FRB)と為替スワップを締結しています。当ウェブサイトでは「FRB-FIMA為替スワップ」に関して、その実行残高を定期的に報告しているのですが、今週もその最新の残高が公表されていますので、本稿ではその残高、平均金利・借入期間、時限スワップに関する返済予定表などの概要をまとめておきたいと思います。

FIMA為替スワップ

速報:米FRBが9つの中央銀行と為替スワップを締結』などでも報告したとおり、日英欧瑞加5ヵ国・中央銀行に加え、世界の9つの中央銀行・通貨当局(FIMA)は現在、米連邦準備制度理事会(FRB)と為替スワップを締結しています。

この為替スワップは、通貨スワップと異なり、「通貨当局同士」が通貨を交換する協定ではありません。あくまでも通貨当局を通じ、相手国の民間金融機関に対して外貨を供給するための契約であり、一般に “Bilateral Liquidity Swap Agreement” などと呼ばれます。

なお、国際金融協力の世界における通貨スワップや為替スワップと、デリバティブの世界における通貨スワップや為替スワップについては意味合いが異なりますので、これについては『【総論】4種類のスワップと為替スワップの威力・限界』あたりをご参照くださると幸いです。

一般に「為替スワップ」でも通用するのですが、いわゆる民間金融機関の提供する「為替スワップ」(Buy-Sellあるいは “FX swap” )と区別するため、本稿では敢えて、「FIMA為替スワップ」と呼称したいと思います(※ただし、この表現は一般的なものではありませんが…)。

現時点における米FRBとのFIMA為替スワップは、日英欧瑞加5ヵ国の中銀が常設型で金額上限を設けていないタイプのものを保有しており、それ以外の9つの中銀・通貨当局は、期間6ヵ月以上、上限600億ドルないしは300億ドルの為替スワップを3月に締結しています。

米FRBとのFIMA為替スワップ
  • 常設・金額上限なし…日本、英国、欧州、スイス、カナダ
  • 期間6ヵ月~・金額上限600億ドル…豪州、ブラジル、韓国、メキシコ、シンガポール、スウェーデン
  • 期間6ヵ月~・金額上限300億ドル…デンマーク、ノルウェー、ニュージーランド

最新残高は4470億ドル、うち日本銀行が半額借入

また、ニューヨーク連銀の “Central Bank Liquidity Swap Operations” のページにあるエクセルファイル “U.S. Dollar Liquidity Swap – Operation Results” に、3月2日以降の入札実績がすべて公表されています。

見たところ、このエクセルファイルはおおむね週1回、現地時間の木曜日に更新されているようであり、現時点で公表されているデータは6月3日(水)入札実施・6月4日(木)貸付実行分までのものです。

これをベースに、6月4日(木)時点の借入残高をまとめたものが、図表1です。

図表1 6月4日(木)時点の各中央銀行のFIMA為替スワップ借入残高
相手先元本と構成比平均金利・日数
日本銀行2221.58億ドル(49.7%)0.34%/82.95日
欧州中央銀行1449.76億ドル(32.4%)0.36%/83.93日
イングランド銀行231.25億ドル(5.2%)0.35%/75.68日
韓国銀行187.87億ドル(4.2%)0.62%/83.89日
スイス国民銀行108.98億ドル(2.4%)0.33%/83.62日
シンガポール通貨庁95.71億ドル(2.1%)0.50%/82.55日
メキシコ銀行65.90億ドル(1.5%)0.77%/84.00日
ノルウェー銀行54.00億ドル(1.2%)0.34%/84.00日
デンマーク国民銀行42.90億ドル(1.0%)0.34%/82.36日
豪州準備銀行11.70億ドル(0.3%)0.32%/84.00日
カナダ銀行なし(0.0%)
NZ準備銀行なし(0.0%)
リクスバンク(スウェーデン)なし(0.0%)
ブラジル銀行なし(0.0%)
合計/平均4469.65億ドル(100.0%)0.37%/82.96日

(【出所】ニューヨーク連銀の “Central Bank Liquidity Swap Operations” のページにあるエクセルファイル “U.S. Dollar Liquidity Swap – Operation Results” を参考に著者作成)

5つの中銀のなかで最も多くを借り入れているのは日本銀行であり、その金額は2221.58億ドル、全体に対する比率は49.7%に達しています。また、欧州中央銀行が1449.76億ドル(全体の32.4%)で、両行あわせて3671.34億ドルに達し、この2行だけで全体の82%を引き出している計算です。

もっとも、日本が巨額のFIMA為替スワップの引出を行っているというのは、日銀の円資金を米FRBに預け、米ドルの緩和を行っているのと同じ効果でもあります。その意味では、日銀が米国の金融緩和に協力している、という見方もできます(『日米為替スワップ「本当の意味」と国債372兆円増発』参照)。

このことは、決して日本にとって良い話とは限らない点には注意が必要でしょう。

非常設型スワップの返済予定表

一方、非常設型のスワップ締結国の場合は、最も多額の借入を行っているのが韓国銀行で187.87億ドル、2番目に多くの借入を行っているのがシンガポール通貨庁で100.28億ドルです。

一方、常設型スワップ締結国のなかではカナダ銀行、非常設型スワップ締結国のなかではNZ準備銀行、リクスバンク(スウェーデン)、ブラジル銀行の借入残高がゼロです。

ここでは、6月4日時点の残高についての「返済予定表」を確認してみましょう。

まずは韓国銀行です。韓国銀行は6月4日時点で187.87億ドルを借り入れており、加重平均金利と日数はそれぞれ0.62%と83.89日ですが、その返済予定表は図表2のとおりです。

図表2 韓国銀行の返済予定表
返済日金額金利/期間
6/25 (木)79.20億ドル0.91%/84.00日
7/2 (木)41.40億ドル0.53%/84.00日
7/9 (木)20.15億ドル0.36%/83.00日
7/16 (木)21.19億ドル0.34%/84.00日
7/23 (木)12.64億ドル0.33%/85.00日
7/30 (木)13.29億ドル0.29%/83.00日
合計/平均187.87億ドル0.62%/83.89日

(【出所】ニューヨーク連銀の “Central Bank Liquidity Swap Operations” のページにあるエクセルファイル “U.S. Dollar Liquidity Swap – Operation Results” を参考に著者作成)

次に、シンガポール通貨庁(MAS)です。MASは6月4日時点で95.71億ドルを借り入れており、加重平均金利と日数はそれぞれ0.50%と82.55日で、その返済予定表は図表3のとおりです。

図表3 シンガポール通貨庁(MAS)の返済予定表
返済日金額金利/期間
6/17 (水)2.48億ドル0.32%/28.00日
6/24 (水)21.75億ドル1.09%/84.00日
7/8 (水)31.49億ドル0.34%/84.00日
7/22 (水)25.06億ドル0.33%/84.00日
8/5 (水)14.43億ドル0.30%/84.00日
8/19 (水)0.50億ドル0.30%/84.00日
合計/平均95.71億ドル0.50%/82.55日

(【出所】ニューヨーク連銀の “Central Bank Liquidity Swap Operations” のページにあるエクセルファイル “U.S. Dollar Liquidity Swap – Operation Results” を参考に著者作成)

同様に、デンマーク国民銀行、メキシコ銀行、ノルウェー銀行、豪州準備銀行についても残高をまとめておきましょう(図表4)。

図表4 その他の中央銀行
返済日金額金利/期間
デンマーク国民銀行
6/19 (金)28.25億ドル0.34%/81.00日
7/2 (木)14.25億ドル0.33%/85.00日
7/10 (金)0.40億ドル0.45%/84.00日
デンマーク国民銀行 合計42.90億ドル0.34%/82.36日
メキシコ銀行
6/26 (金)50.00億ドル0.91%/84.00日
7/1 (水)15.90億ドル0.36%/84.00日
メキシコ銀行 合計65.90億ドル0.77%/84.00日
ノルウェー銀行
6/22 (月)10.75億ドル0.37%/84.00日
6/29 (月)5.00億ドル0.32%/84.00日
7/13 (月)2.75億ドル0.33%/84.00日
7/20 (月)35.50億ドル0.33%/84.00日
ノルウェー銀行 合計54.00億ドル0.34%/84.00日
豪州準備銀行
6/19 (金)0.50億ドル0.34%/84.00日
6/26 (金)6.00億ドル0.32%/84.00日
7/7 (火)5.00億ドル0.33%/84.00日
7/24 (金)0.20億ドル0.30%/84.00日
豪州準備銀行 合計11.70億ドル0.32%/84.00日

(【出所】ニューヨーク連銀の “Central Bank Liquidity Swap Operations” のページにあるエクセルファイル “U.S. Dollar Liquidity Swap – Operation Results” を参考に著者作成)

なお、このFIMA為替スワップについては、いちおう、9つの中央銀行・通貨当局については9月まで協定自体が維持されるとのことですが、当ウェブサイトとしては、すべての国についてこれが維持されるのかどうかには注目している次第です。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

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読者コメント一覧

  1. イーシャ より:

    計算してみたら、6/25 に韓国が返済すべき為替スワップの金利は 1658万ドルもあるんですね。
    経済大国韓国さんにとっては、どうってことない金額です。
    元本ともども、耳をそろえて返しましょうね。

  2. カズ より:

    韓国の対米為替スワップ利用状況を見てると・・

    (^^♪
    スワップの階段の~ぼる Kはいつか「タヒんでれら~」さ 踊り場で足を止めて・・米国の顔気にしている・・♩

    と言った状況なんですよね。

    第一回目の入札以来、着実に利用残高を積み上げた韓国。累計額を一度も減らしたことがないのは彼らだけなだったと思います。

    6月25日満期分は同条件でロールオーバーできてしまいそうな気もするのですが、少しでも返済する気はあるのでしょうか?

  3. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    ん?どないしたん?皆さま。コメント2個だけですよ(失笑)。こういうハナシになると、どうしても「貝」になってしまうんだから。

    私もそうですヨ。でも『6/25 に韓国が返済すべき為替スワップの金利は 1658万ドルもあるんです』。ほう〜。返せるんでしょうか。イーシャ様貴重な情報、ありがとうございます。他人事なんで韓チャンの失態希望ですが(爆笑)。

  4. 雑把  「げっ、最初の返済日 オレの誕生日だ」 より:

    チッ、

    増えて無いのかよっ、

    つまらん!

    (ウソです、いつも楽しく読ませていただいてます)

  5. 市井の内科医 より:

    ウオン/ドル、強烈に巻き返してますが、これ、やっぱ介入なんでしょうか?

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