戦後日韓関係変容初日、日韓メディアの周回遅れ感

昨日速報したとおり、自称元徴用工の問題を巡り、昨日をもって、韓国政府の日韓請求権協定無視が確定しました。日本は日韓の信頼関係が壊れてしまったという事実から目をそむけず、無理やり日韓関係を修復しようとするのではなく、「韓国に関してもカントリーリスクがある」ということをきちんと意識したうえで、リスク管理をきっちりとしていく以外に方法はないのではないかと思うのですが、これに関する日韓メディアの論説に、どうも「周回遅れ」と感じざるを得ません。

韓国は無法国家

「韓国が日韓請求権協定無視」、ほぼ確定へ』で速報したとおり、自称元徴用工の問題を巡り、昨日をもって、韓国政府の日韓請求権協定無視が確定しました。

考えてみれば、これは凄いことです。

日韓請求権協定は、日韓基本条約と並ぶ「1965年体制」の基本となる条約であり、これを堂々と破っておきながら、話し合いにも仲裁にも応じないということなので、日本としてはもうこの国と「法治国家であること」を前提としたお付き合いができなくなった、ということです。

もっと端的な言い方をするならば、韓国は名実ともに「無法国家」と化した、ということでもあります。

いわば、韓国に進出している日本企業や、韓国に在住する日本人が、韓国で何らかの不利益を受けたとしても、きちんとした保護を受けることは期待できません。その意味で、「戦後日韓関係」は、昨日をもって完全に変容してしまったのです。

そして、この「戦後日韓関係が完全に変容した」という点については、メディアがまっさきに大きく取り上げるべき話題です。ところが、これについてさっそく今朝、日韓の主要メディアの報道を眺めてみたのですが、不思議なことに、産経ニュースを除くと、この話題を大きく取り上げているメディアはあまり見当たりません。

日経の周回遅れの論説

こうしたなか、わが国の主要メディアのなかで目についた論説といえば、日経編集委員の峯岸博次氏が執筆した、次の記事くらいでしょうか。

日韓の事態打開、外交しかない(2019/7/19 2:00付 日本経済新聞電子版より)

しかも、峯岸氏は

不信の連鎖はどこまで続くのか。韓国が元徴用工訴訟をめぐる日本との協議や仲裁を拒否すれば、日本も輸出規制の「説明」にとどめ、ともに相手を非難する。担当者同士すらまともな話し合いをできないのは異様だ。

と、あたかも今回の事態の責任が日韓双方にあるかのように位置付けたうえで、

日韓対立は先の読めない深刻な状況に陥っている。もつれた糸をほぐすのは外交しかない。日韓の場合、首脳対話だろう。両政府は外交を取り戻す機会を探るべきだ。

と、日韓双方に努力を促しているのですが、正直、論説としてのレベルは極めて低く、これが優れた韓国観察者である鈴置高史氏を輩出したのと同じ新聞の論説とは思えないほどです(※逆に、鈴置氏のレベルが高過ぎた、という話かもしれませんが…)。

日経といえば、経産省が『大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて』を打ち出す前日の6月30日付で、『半導体材料の対韓輸出規制へ 政府、元徴用工巡り対抗/自由貿易に逆行も』という記事で、韓国に対する輸出管理厳格化に批判的な視点を向けたメディアでもあります。

もちろん、戦後の日韓両国の経済界が、「お互いに補い合ってきた」(※正確には韓国が日本のサプライチェーンに組み込まれてきた)という事情があるため、よって、日韓関係が悪化すれば、日本経済にも確実に悪影響が生じることは間違いありません。

しかし、くどいようですが、最初に日韓間の信頼関係を崩したのは韓国です。

今回の事態に日本企業が影響を受けないはずはありませんが、それと同時に、韓国が「国際法を破る国だ」という実績が確定した以上、日本企業としても、「無法国家」である韓国でビジネスを行うことのリスクは強く意識する必要があります。

もっといえば、日本企業は短期的な損害を覚悟しても、中・長期的には「脱・韓国」を進めなければ、被害はより大きくなるのではないでしょうか。

だいいち、安全保障は経済問題に優先するという鉄則を、峯岸氏は無視していて、正直、論説に説得力はありません(あるいは、単に峯岸氏が地政学を正確に理解していないだけの話かもしれませんが…)。

現在の局面は、「日韓関係をどう正常軌道に戻すか」ではなく、「日韓関係が壊れてしまったことを前提に、事態をどう管理するか」です。日経ともあろうメディアが、いまさら周回遅れ過ぎる議論を掲載したことに、正直、日本のメディアのレベルを疑ってしまいます。

中央日報社説は「日本の経済報復」に着目

日経が韓国の不法行為を棚に上げて「外交で事態を打開せよ」などと主張している一方で、韓国メディア『中央日報』(日本語版)には、こんな「社説」が掲載されていました。

【社説】日本の経済報復に超党派的な協力、疎通・協力政治のきっかけに(2019年07月19日09時30分付 中央日報日本語版より)

中央日報は、文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領が与野党5党代表者と昨日、大統領府で会談したという話題に触れ、「日本の経済報復への対策が急がれる」、などと述べているのですが、早い話が「挙国一致して日本に対抗せよ」、です。

ただ、「韓国の不法行為を棚に上げる」という点においては中央日報もまったく同じであり、そもそも韓国で日韓請求権協定に違反した確定判決が出たことや、その後、韓国政府が話し合いを拒絶していたことなどについて、中央日報は公正に取り上げているとはいえません。

一方で、朴喆熙(ぼく・てつき)ソウル大学国際大学院教授は、こんなコラムを寄稿しています。

【コラム】韓国、日本の経済報復には厳重対処するものの徴用問題には交渉力発揮すべき(1)(2019年07月19日09時54分付 中央日報日本語版より)
【コラム】韓国、日本の経済報復には厳重対処するものの徴用問題には交渉力発揮すべき(2)(2019年07月19日09時54分付 中央日報日本語版より)

朴教授といえば、以前、『韓国人学者「日本から見て信頼に値するのは韓国より北朝鮮」』でも触れたとおり、「日本から見て、話が通じない韓国よりも、北朝鮮のほうがまだ話が通じる」という論考を執筆した人物でもあります。

ただ、今回の論考は3000文字を超える長文ですが、主張の要点は、

  • 衝突と破局が近づく韓日葛藤をこのまま放置するのはよくない
  • 韓日両国政府は単純な図式から抜け出さない限り、葛藤解消の糸口は見いだせない
  • 韓国政府は日本に対し強弱両面戦略が必要だ

といったものであり、先ほど紹介した日経の峯岸編集委員の論考と同じく、正直、精読する価値はありません。

また、朴教授は例の「1+1+α案」(昨年の3件の確定判決については日韓両国企業がカネを払い、それ以外の件については韓国政府が負担する案)を巡って、

日本政府との外交的協議を通じて時間を確保し、今からでも専門家で構成された官民合同委員会を構成して危機を打開できるように知恵を集めなければならない

と述べています。

意地悪な言い方ですが、朴氏は「時間を稼いで日本を欺く案を持ち寄るべきだ」、とでも言いたいのでしょうか?日本をコケにするのはいい加減、やめてほしいものです。

日韓関係はフェーズが変わった!

さて、以上、現時点で目についた論説をいくつか紹介してみたのですが、正直、「お話にならない」という気がしてなりません。

なぜなら、先ほども申しあげたとおり、すでに日韓関係はフェーズが変わったからです。

もちろん、日韓関係が悪化、破綻すれば、日本企業にも大きな損害が生じるかもしれません。しかし、短期的には大きな打撃が生じたとしても、相手国は「法律を守らない無法国家である」という点については、もっと深刻に受け止めるべきでしょう。

なにより、日本の企業社会は、2010年の中国によるレアアース禁輸事件や、2012年に中国全土で吹き荒れた反日デモで、カントリーリスクを強く意識したはずです。

日本は日韓の信頼関係が壊れてしまったという事実から目をそむけず、無理やり日韓関係を修復しようとするのではなく、「韓国に関してもカントリーリスクがある」ということをきちんと意識したうえで、リスク管理をきっちりとしていく以外に方法はないのではないかと思うのです。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

さて、次の時事通信の記事によると、今朝の韓国国内では、文在寅大統領の強硬発言などが大々的に報じられているようです。

「対日強硬」「決戦宣言」=輸出管理強化への大統領発言で韓国紙(2019年07月16日09時25分付 時事通信より)

ただ、個人的に注目したいのは、日韓関係を破壊した側である韓国政府ではなく、日韓関係を破壊された側の日本政府が、日韓請求権協定を無視されたことに対し、どのような措置を講じるのか(あるいは講じないのか)、です。

これについては、現時点ではまだ情報がありません。

あるいは、本日が金曜日であり、2日後の日曜日に参議院議員通常選挙の投開票を控えているというタイミングでもあるため、日本政府としての本格的な措置は、週明けに出て来るのかもしれません。

いずれにせよ、本件に関連して興味深い話があれば、随時、当ウェブサイトでも取り上げていきたいと思います。

読者コメント一覧

  1. 阿野煮鱒 より:

    まあ、現時点で日本政府は韓国の姿勢を確認したところまでで一旦しめて、参議院選挙に集中でしょう。

    選挙後には内閣改造が待っています。選挙は水物ですから、結果次第で組閣人事も揺れるでしょう。政府が腰を据えて外交問題に取り組むまでには、もうしばらく時間がかかると思います。

    私個人は、のんびりとKOSPIを眺めつつ、8月15日のホワイト国除外に向けて、少しずつ盛り上がろうと思います。

  2. 匿名 より:

    今までの歪んだ扶養状態しか日韓関係を知らないから、それの瓦解を防ごうとしている訳ですな。
    戦後の安保体制が急変していることも認識出来ていない。老害といって差し支えない頼りなさですね。
    一部の週刊誌やネットニュースの方が先進的です。大半の国民は理解して対応を支持し、企業もリスクを見込んでいます。当事国だから当たり前なのにこれは……終わったなマスメディア。

    1. 隠居爺 より:

      匿名 さま

      日本の新聞等は、もう韓国人が主流になっていると考えたほうが良さそうです。日本人が真面目に事態を観察して記事を書いているなら、ここまで質が下がるようなことはないはずですから。

  3. 阿野煮鱒 より:

    連投失礼します。

    > もつれた糸をほぐすのは外交しかない。日韓の場合、首脳対話だろう。

    マスコミが「外交、外交」と騒ぐのは、どなたかもおっしゃっていましたが、外務省の世論工作かもしれませんね。馴れ合い、事なかれ、売国の従来方式を、経済産業省に打ち砕かれ、すっかり立場を失った外務省が、必死に面目を取り繕っている、と。

    「首脳対談」は韓国からのお願いでしょう。

    これでサラリーマン必読の新聞ですからね。受験生必読の朝日新聞と並んで、こんなの読んでいたら、そりゃあ経団連みたいになってしまいますわな。

  4. Tほし より:

    新宿会計士先生のおっしゃるとおり、今回の件は大きな転機だと思います。
    日韓基本条約と同時に締結された日韓請求権協定を遵守しないというのは、日韓関係の根底が揺らぐ話です。
    慰安婦合意を履行しないのもひどい話でしたが、それよりもさらに重たい話だと思います。

    今後も韓国側はこういった2国間の根本原則というべきものを反故にしてくるのでしょう。

    そうなれば、外交どころの話ではなく、民間においても韓国でビジネスをするのは困難ですよね。契約違反を次々起こされるわけですから。特に長期に渡るビジネスは格段にリスクが高まります。
    できるとしても、流行り物をヒットアンドアウェイで売る商売ぐらいでしょうか。

    日本の企業もしたたかだと思いますので、韓国抜きのサプライチェーン構築や韓国向けビジネスの撤退のシミュレーションを水面下ではしているのではないでしょうか。それが明らかになるのもそう遠くないかも知れないですね。

    いずれにしても時代の大きな変化だと感じます。

  5. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    峯岸氏は話の感覚が30年ぐらい遅れている気がします。「首脳対談をやるべきだ」(失笑)。恥ずかしくて、私でも書きませんよ。

    朴教授は「頃合いを見て日本を出し抜く、罠に嵌った方が負け」みたいな小狡さが見えるんですが。やはり半島人だネ。日経も中央日報も、所詮この程度(笑)。

    ぜんぜん読み応え無いですね。ジャーナリストは先が見えない人が多い。特に韓国側。そういえば、韓国の最大労組が、来年最低時給1万ウォンに届かないという政府発表で、ゼネスト計画とか。文は逃げ場無くなったゾッ(笑)。

  6. なんちゃん より:

    日韓メディアどちらもですが、法的に一線を越えたという重い事実を軽く見ていると感じます。
    この人たちの法に対する理解は、

    意思こそが大事で、法なんて建前は後からついてくるもの

    くらいの認識なんじゃないでしょうかね。
    こんなことだと、片方の気まぐれでいくらでも両国関係が変わりうる、不安定なものになります。

    もちろん意思があって法が作られますが、いったん作った法(約束)を守る努力と守らせる努力は、安定した両国関係を作るために、何よりも大事だと思います。
    そこを軽視してはならない。

    メディアはそういう観点を持たなければならない、最たる存在のはずだと思いますが、ね。

    性善説の暗黙の前提にどっぷりで、根っからそれを理解してないんじゃないかと思います。
    それか、過去・現在・未来をみなきゃならないところを、現在しか見てないか。それだと失敗を繰り返すだけです。

  7. 無名希望 より:

    未来の歴史教科書に記載される出来事が次々に起きている気がします。日本はついに半島から手を引き、アメリカと共に海洋国群として大陸半島国群と対峙する決意を固めたと見るべきなのでしょうか?

    このような疑問に答えるべきマスゴミ達は、近視眼的に『日韓友好が台無し!優遇撤廃は結局韓国の産業を育てる!歴史の贖罪の為日本は折れろ!』といった論評を繰り返し政権を批判しています。

    頼みの産経新聞も制裁に舵を切った政権に感情論で賛美しているようだけに見えます。

    マスコミには予想される日韓関係破綻に伴う在韓邦人の今後の身の処し方や財産の引き上げ方といった国民に寄り添った情報提供、果ては韓国人難民対策や日本国内での韓国工作員の破壊活動への警鐘等、高い見地から国民を安全地帯に誘導してもらいたいものです。

  8. BlobFish より:

    現在は「韓国が日韓基本条約に於いて、条約の約款を無視した事により日本を詐欺に陥れた犯罪が確定した」状況ですが、韓国政府は未だに「詐欺犯に対する支払方法をどの様に日本政府に提案するかを模索している」状況です。

    「韓国政府による日韓基本条約の無視と言う詐欺罪が成立した」と言う明確なパラダイム・シフトが理解出来ない無能な人々が韓国だけでなく、日本のメディアにもいる事が残念です。

    1. 引きこもり中年 より:

       独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。

       詐欺に騙された人間は、時として、(自尊心から)騙されたこと自体を
      認めないものです。

       駄文にて失礼しました。

  9. 引きこもり中年 より:

     独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。

     (韓国メディアはよく分かりませんが)日本のオールドメディアは、昨
    日までの日韓関係が、明日以降も続くと疑いもしないのでしょう。(そう
    した方が、今まで通りと考えられるので、楽ですから)
     勿論、日曜の参議院選挙で自民党が大敗して、安倍総理が退陣するとい
    う可能性も、あります。もしかしたら、その可能性に期待しているのかも
    しれません。

     蛇足ですが、意外と時代の変わり目は、その渦中にいる人間には分から
    ないものなのかもしれません。

     駄文にて失礼しました。

    1. 阿野煮鱒 より:

      > 参議院選挙で自民党が大敗

      可能性としてはありますが、マスコミの諦めムードからして自民が過半数以、三分の二未満になりそうです。

      私は昨日、期日前投票に行ってきました。マスコミ数社が出口調査をやっていまして、私は共同通信に捕まりました。調査員が、何となくお通夜的な雰囲気に見えたのは私の思い込みかもしれません。

      私:「ところでさ、最近のマスコミが評判悪い雰囲気感じる?」
      調:「いやー、すみません、私、調査に雇われているだけなんで、良くわかんないっす。」
      私:「飛ばしやフェイクが多くてうんざりだって言っといて。」
      調:「はぁ…」

      > 意外と時代の変わり目は、その渦中にいる人間には分からないものなのかもしれません。

      自分の経験でも、後から振り返って、あれが時代の転換点だったなあ、と思うことの方が多いですね。

  10. 七味 より:

    不当な損害というのがいまひとつわかんないけど、それへの具体的な対応以外の報復を積み上げていって欲しいですね ただし報復とは言わずに適当な理由をつけてでやるのがいいと思うのです

    あと、大使館の自爆テロを理由に渡航自粛の呼びかけたり、不買運動を理由に投資を控えることを呼びかけたり、法律事項以外のとこでも頑張って欲しいのです

    1. 七味 より:

      そうやって近くて遠い国を目指して欲しいのです

    2. 七味 より:

      あと韓国って国や政府を悪者にするのは良いけど、韓国人一般を悪者にしてはいけないと思うのです
      個人テロの連鎖は怖いのです 矛先は韓国内に向けて貰うのがいいのです

      1. 七味 より:

        自爆テロの人についても、日本政府が言及するときには。罪は憎むけど人は憎まずの建前で、反日教育と韓国政府の無為無策の被害者くらいに言っとくのが良いと思うのです

  11. 七味 より:

    >もつれた糸をほぐすのは外交しかない

    もつれた糸をほぐすのに必要なのは「時間」だと思います (*´▽`)ノ ハーイ♪

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