【読者投稿】韓国GDP粉飾疑惑を2008SNAで検証する

以前、優れた論考を寄稿して下さった、ハンドルネーム「りょうちん」様から、再び興味深い論考が提示されました。少しマニアックですが、GDPなどに関する「2008SNA」という計算方法に関する解説です。きっかけは、読者コメント欄で「韓国のGDPは、韓国資本の海外生産分も算入する計算方式だ」、という投稿があり、これに対してほかの方が「その証拠を出してほしい」と要請して出て来た中央日報の記事について、SNAマニュアルなどから検証を加えた、という論考です。

またしても、読者投稿に感謝!

お知らせ:読者投稿を開始します』でお伝えしたとおり、当ウェブサイトでは先月から、読者投稿窓口を常設化しました(投稿要領については『読者投稿募集につきまして(2019年6月24日版)』にまとめております)。

これについて、読者投稿窓口常設化のきっかけを作って下さったのが、ハンドルネーム「りょうちん」様であり、医療現場という視点から、次の4つの記事を執筆して下さいました(いずれの記事も、読者の皆さまからは高い評価を頂いています)。

こうしたなか、今回は「国内企業と海外子会社間の取り引きは統計から除き、海外の子会社の輸出入は組み入れる」という韓国のGDPの計算方式が、果たして統計上の不正に該当するのかどうか、という点について、論考を執筆し、ご寄稿いただきました。

当ウェブサイトの読者コメント欄における記事の流れから着想を得られたそうです。

ただし、本文については、記事の引用方法を当ウェブサイトの体裁にあわせるなど、大意を損ねない範囲で修正しておりますので、ご了承ください。

(※これ以降がりょうちん様からの投稿です。)

今回は韓国経済の話題

「韓国のGDPは韓国資本の海外生産分も算入」?

すみません。何度もお邪魔して…。

今回は、医療の話ではありません。みんな大好き韓国経済の話です。

ちなみに私は韓国が好きなだけ(馬鹿な子ほど可愛い)の経済素人ですので、この記事は単なる事実の羅列です。自分の得意分野じゃないので、おふざけもありません。

きっかけは『西村副長官「対抗措置ではない」→そうか、そういう狙いか!』に2019/07/02 01:41付けで投稿された、

韓国財閥は、国内投資をゼロにしてまで海外投資を積極的に増やしている状況ですから、今回の日本の措置は、「背中を押してくれた」様なものでしょう。/迂回輸出なんて必要ない、財閥としては、韓国国内生産分を減らして、その分海外工場へ生産を割振るだけで解決する。元々、韓国内からせっせと生産設備を運び出している最中>なのだから、「良い口実ができた」としか思わないだろう。/各財閥の長は文在寅の手前、「民生労組と縁切りできてハッピー」とは口が裂けても言えないので、困ったフリはするだろうけど、内心は狂喜乱舞。/韓国のGDPは、韓国資本の海外生産分も算入する計算方式なので、GDPも減らない。

というコメントからです。このコメントに対し、他のコメント主から

韓国のGDPは、韓国資本の海外生産分も算入する計算方式

というこの独自方式に関して根拠を求められたところ、発言者からは次のような記事が紹介されました。

【コラム】日本を超えた? 輸出入の統計改編が歓迎できない理由=韓国(2014年04月16日12時07分付 中央日報日本語版より)

この記事をもとに、「韓国のGDPは、韓国資本の海外生産分も算入する計算方式」という主張がネットの海に流れ出し始めました。

などが典型的で、嫌韓系のクラスタでは「常識」になってしまっているようですね。

「2008SNA」と「BPM6」

しかし、私がGDPや国際収支のことを勉強するうちに、アレ、これ本当にそうなんだろうかという疑問を持つに至りました。

まずGDPがなにかという話になりますが、その意味まで解説をするほどの見識が無いので、どうやって計算されるかだけについて触れます。

GDPは国連が定めた “System of National Accounts” 、すなわち「国民経済計算」(または「国民経済計算体系」)という、国ごとに違う国のあり方を数字で把握しやすいようにしようよ、という志から始まり、その初版は1953年に決められました。

しかし、産業構造やビジネスの形態変化に対応できなくなり、モダンな産業などを反映したり、軍事費も含めたりと、大きな改訂を1968年、1993年、2008年に行いました。現状最新のものは2008SNAと呼ばれています。興味のある方は以下の和訳があります。

2008SNA(仮訳)(内閣府ウェブサイトより)

この基準が公表されたのは2008年ではありますが、それぞれの国の統計基準の見直しが5年ごとだったりといった諸事情により、その採用は国ごとにバラバラです。日本でも2008 SNAを適用し始めたのは2016年度になりますが、日本の官僚のマメさからいって、これは普通だと思っていいでしょう。

国際収支とは、国家の内と外のお金の流れを可視化しようとする計算であり、そちらはIMFの管轄で計算の基準が定められています。

Balance of Payments and International Investment Position Manual、通称BPMと呼ばれるもので、現在の最新版はBPM6と呼ばれているものです。

Sixth Edition of the IMF’s Balance of Payments and International Investment Position Manual (BPM6)(2013/11改定 IMFウェブサイトより)

このBPM6採択は日本でも2013年になっています。

国際収支関連統計の見直しについて(2013年10月時点 日本銀行ウェブサイトより※PDFファイル)

韓国銀行の2014年3月のアナウンスメント

さて、ことの発端である、中央日報の記事に戻ります。

韓国銀行は先週、国内総生産(GDP)算定方式と共に国際収支統計を改編した。国内企業と海外子会社間の取り引きは統計から除き、海外の子会社の輸出入は組み入れる方式だ。/これに伴いサムスン電子ベトナム工場で生産されて他国に輸出された携帯電話が、ベトナムではなく韓国の経常収支とされる。加工貿易も韓国の輸出実績になる。/国際通貨基金(IMF)が定めた基準であっても、必ずしも良いことではない。

これは、2014年に、GDPの計算を2008 SNAに、国際収支の計算をBPM6に切り替えただけの話ではないかと考えました。

ちなみに実際のアナウンスはどうだったのかと韓国銀行のサイトに行って検索しました。おそらくこれです。

Comprehensive Revision of the Korean System of National Accounts(2014/03/26付 韓国銀行ウェブサイトより)

この “Comprehensive Revision of Korean System of National Accounts(※PDFファイル)” によると、

Modifying the point of transactions of global manufacturing activities, such as goods sent for processing and merchanting, from the point of crossing border to the that of ownership being transferred in order to capture transactions between countries with greater accuracy

このあたりが相当するのではないかと。

これが、「韓国のGDPは、韓国資本の海外生産分も算入する計算方式」なのかどうか検索していたら次のような面白い論文が見つかりました。

国民経済計算SNA方式における国内・国民概念について(国立研究開発法人 科学技術振興機構ウェブサイトより※PDFファイル)

高校や経済学の教科書、高名な経済学者の著書の誤りがビシバシ指摘されていて笑えました。(参考文献のあとに関連文献として並べる辺り軽蔑を隠し切れていないですw)。

国民と国籍は一緒ではないという簡単な常識には目からうろこ。

この論文によると2008 SNAでは、93 SNAとでは「国内・国民概念の変更はない」とされています。

となると、SNAの切り替えによる韓国のGDPの増加は、「海外子会社の利益を算入したから」ではなくて別の要素なのではないかと思うのです。

そしてそれは2008 SNAに算出方法を切り替えた全ての国に起こる現象であると。

あとこの論文内の記述でためになったのが、アメリカ合衆国は、SNAに準拠しないマイ統計(NIPA)を用いている事実の指摘です。米国の教科書や経済書に誤りが多いのはそのせいじゃないかとも思います。

「93SNA」から「2008SNA」への変更点

93 SNA→2008 SNAの変更点はこちらに詳しく説明されています。

付録 3:1993 年国民経済計算体系からの変更点(総務省ウェブサイトより※PDFファイル)

「加工目的で海外に送られた財を所有権移転ベースで記録する」(PDFのP1881)や「仲介貿易」(PDFのP1882~)あたりの影響が大きかったものと推測されますが、これをGDPを大きくするために独自の算定方式にしたというのは強弁や誤解が過ぎるのではないでしょうか?

新聞記者がものを知らなかったり、批判のための批判をこねくり返すのは日本だけの専売特許ではないでしょう。

中央日報の経済記者の勘違いではないかと思うのです。

そしてそんなヨタ記事を元に、嫌韓クラスタが面白いようにコリエイトと。

だいたい、その国の計算方法が独自なのをあげつらうなら、まず米国を批判したらどうなんでしょう。

米国のように「唯我独尊」な考えで、独自の算出方法をひねり出すようなマメさも韓国の官僚にはないんじゃないのかなという、謎の信頼感もあります。

マニュアルにしたがって、脳死状態で作業している姿の方が、韓国人っぽいですよネ。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「韓国がダメな子であって欲しい」というアンビバレンツな欲求はわかります。

しかし、そのためにファクトをねじ曲げるようになったら、「フォースの韓国面」に堕ちてしまいます。

(了)

客観的事実に基づく議論が重要

いかがでしょうか?

「2008SNA」や「IMF統計マニュアル」については、当ウェブサイトでは特段、説明することなく使っています(ただし、例外的に『読者コメントへの反論:色々と根本から誤解していませんか?』のなかで、これらの基準について少しだけ触れています)。

読者コメントへの反論:色々と根本から誤解していませんか?

(※余談ですが、当ウェブサイトでは国際収支統計や資金循環統計などをしばしばダウンロードするのですが、BPM6や2008SNAに切り替わったときには、それまで使っていたデータのフォーマットが使えなくなり、大慌てした記憶もあります。)

前回までの、医療という観点からの論説も秀逸でしたが、ご自身が「専門外」とおっしゃることを、よくここまで短期間で調べ上げて記事にされたものだと思いますし、こうした姿勢は尊敬に値します(※いっそのこと、私に代わって当ウェブサイトを運営なさってはいかがでしょうか?笑)。

とくに、末尾にあるとおり、「韓国がダメな国であってほしい」という先入観があるがために、韓国に関する情報を何でもかんでも捻じ曲げる、という姿勢には賛同できませんし、「韓国が大失敗したことにして溜飲を下げる」という姿勢は、ときとして物事の本質を見誤らせることにつながりかねない危険なものでもあります。

その意味で、今回の冷静な視点からの論考は、非常にありがたい限りです。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ただし、金融規制の専門家という立場から、非常に細かいことを申し上げれば、2008SNAは「最終リスクベース」という思想が背景にある、という点と、韓国がこの「最終リスクベース」から逸脱している可能性が完全に排除されるものではない、という点には注意が必要といえるかもしれません。

2008SNAに関し、国連統計部(UN Statistics Division)が公表しているマニュアル(P274、セクション14.38)によれば、あくまでも「加工目的で海外に送られた財のうち、所有権が移転していない場合」に、このような計算方法が採用されるに過ぎません。

この点、中央日報の元記事にあった「国内企業と海外子会社間の取り引きは統計から除き、海外の子会社の輸出入は組み入れる方式」という記載をそのまま素直に読む限り、りょうちん様のご指摘は正しいと考えるべきです。

なぜなら、通常、この形態の取引だと、最終リスクベース(連結ベース)では所有権の移転は発生しないからです。

ただし、「加工目的で海外に送られる原材料について、所有権の移転が発生している場合」にも、その生産品を韓国のGDPにカウントしているという確たる証拠が出て来たときには、「韓国がGDP統計で不正を行っている」という可能性が生じます。

(もっとも、この点については「証拠」として提示された中央日報の記事だけでは確認できませんので、りょうちん様の主張が誤りだと主張されるなら、「マニュアルの14.38に反している」というエビデンスを提示していただきたいと思います。)

余談ですが、韓国の場合、統計分野(とくに資金循環統計や外貨準備統計)では、何かと矛盾や不明点が点在しているため、「韓国の統計の信頼性」という点では注意が必要といえるかもしれない、という点については付言しておきたいと思います。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

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読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    専門的なことはわかりませんが失礼します。韓国のGDPなどあまり興味が向きませんし影響もないのですが、中国のGDPは粉飾とねつ造だということは一般に信じられています。それでも公の場や新聞上では「真実」の如く扱われます。専門家の目でこれはどうなんでしょうか?

    1. チキンサラダ より:

      匿名様、

      こんにちは。後ほど私より経済に詳しい方がきっちりと説明してくれると思いますが、とりあえず私からお答えいたします。

      > 中国のGDPは粉飾とねつ造だということは一般に信じられています

      中国が GDP を「盛っている」可能性は十分にあります。が、他の国も大なり小なり盛っているのも事実でしょう。
      また、GDP は本来経済構造の違う国同士を比べてもあまり意味がないものなので、少々盛っていてもそう実害はありません。GDP の競争で賞金を得ているわけでもないので。

      また、よく言われるように輸出のデータは相手国があるので「盛る」ことはハードルが高くなります。
      そして現代では生産活動に置いて貿易が占める割合がかなり高いことから、GDP を盛るにも限度があります。
      中国が GDP を偽っていても数倍も大きく見せるということはできなくて、せいぜい2,3割増し程度ではないかというのが一般的な説です。

      そもそも GDP は主婦の家事などを参入していないので、実際の経済活動に沿ってないと批判を浴びています。(主婦の家事も家族を「満足」させるわけなので、立派な経済活動のはずです。)

      さらに最近は GDP が経済活動の実態を表していないという説が強くなってます。たとえばネットでの無料の情報の消費は GDP 的にはゼロと換算されます。つまり、我々がこの新宿会計士さんが毎日多くの時間を割いてブログ発信している行為は、多くの人に満足を与えていることを鑑みえれば大きな経済活動であるはずです。GDP 的にはゼロにカウントされます。子どもたちがこぞってスマホに熱中して時間を消費していますが、これらも GDP 的にはほぼゼロにカウントされます。(有料ゲームの場合はカウントされますが)

      といっても GDP よりよい経済指標というのはまだありませんから、GDP はある程度いい加減なものだと意識して数字を見ていくのが程よいスタンスだと思われます。

      お答えになったかどうかわかりませんが、御参考になれば幸いです。

      1. りょうちん より:

        SNAの計算方法については、ビジネスや産業構造の変化に対応して15年くらいで改訂されていますから今のようなグローバルサービスに対応できるように改訂されるのは2023年ころなんでしょうね。

        GDPはその国の他の経済指標の分母にするとか、経時的変化の比較には使えても、本来、国同士の比較にはあまり使えないものなんです。

        米国のGDPは自分の基準で計算していますし、中国のGDPは数字のための数字というか・・・

        https://www.sankei.com/world/news/140111/wor1401110017-n1.html
        GDP算出方法 中国が統一方針 地方の“水増し”チェック

        >中国では、31の省レベルの地方政府がそれぞれ発表した域内GDPの合計が、中央が発表した全土のGDP規模を大きく上回る事態がまかり通っている。

        こんな感じですからね。

      2. 匿名 より:

        なるほど。よくある住みやすさベストテンみたいなものですかね。比べてもしょうがない。
        それにしては政府とかメデイアは二言目にはGDPがどうのこうのよく引用しますが 他に代わる「枕詞」が無いので使っているだけなんですね。でも 一般の人の理解は間違いなく「GDPイコール経済力」ですね。

  2. チキンサラダ より:

    りょうちん様の素早くかつ正確な調査能力には脱帽です。

    韓国には怒りを感じる事が多いですが、ファクトに基づいた批判をしなければなりませんね。
    「韓国の GDP 算出は海外生産分を含む独自のもの」は誤解が積み重なって拡散したものだったようですね。
    こういうことが重なると日本側の韓国批判も韓国の日本批判と同レベルに落ちてしまいますから要注意ですね。
    (韓国はこれ以外の方法で、GDP をある程度「盛っている」可能性も少なからずありますが)

    なお、りょうちんさん自身もおっしゃっていたように、この件についてはまさに新宿会計士さんの御専門なので、その意見を聞いてみたいと思っていました。

    そのご意見も拝見できたので私的にはとても満たされた。一服の上質のお点前を頂いた気分です。
    りょうちん様、新宿会計士様、ありがとうございました。

  3. みかえ より:

    前から私もこの件は不思議に思っていました。
    たとえば、韓国メーカーが10億円分の部品をベトナムの子会社で組み立てて、11億円相当の商品にした後、韓国に戻してから13億円で各国に輸出している場合、2008 SNAでは、以下のように変更されたと理解して良いでしょうか?

    従来
    韓国(輸出)→ 部品 (10億円)→ ベトナム(輸入)
    韓国(輸入)← 完成品(11億円)← ベトナム(輸出)
    韓国(輸出)→ 完成品(13億円)→ 世界各国(輸入)

    2008 SNA
    韓国(輸入)← 加工賃(1億円)← ベトナム(輸出)
    韓国(輸出)→ 完成品(13億円)→ 世界各国(輸入)

    この場合、GDPは変動しないはずですね。というか、むしろ輸出額と輸入額が共に減少しそうですが。
    この計算は、ベトナム子会社で加工した商品が韓国メーカーに戻されてから各国に輸出されるという前提です。もしベトナムから直接世界各国に輸出した場合は、従来どおりの対応になるはずですが、中央日報の記事ではそのへんが曖昧です。

    2008 SNAへの変更でGDPが増えたとしたら、その原因は研究開発費を従来の消費支出から資本形成への変更が原因でしょうね。これは日本も同じです。

    一時期、アベノミクスでGDPが増えたように見えるのは計算方法を変えたからだ、と騒いでいる人も居ましたね。2008 SNAへの変更は民主党政権時代以前まで遡って再計算されているのですが。

    1. wonder earth より:

      韓国のGDPの粉飾に関する記事について、みかえ様の7月7日の投稿記事に刺激を受けて、私も投稿することにしました。みかえ様の疑問点、ご意見は、よく理解できます。ただし、私は、この中央日報のこの記事はほとんど事実を述べているものであって、そのまま解釈すればよいと思っております。私のこの投稿が、韓国のGDPの真実を考えるヒントになれば、幸いです。

      (1)たとえば、サムソン電子の海外子会社から第三国への製品輸出を、韓国が自国の輸出としてカウントしていることについて
      2014年4月16日の中央日報の元記事に、「サムスン電子ベトナム工場で生産されて他国に輸出された携帯電話が、ベトナムではなく韓国の経常収支とされる。加工貿易も韓国の輸出実績になる」 「新しい統計では、海外生産が増えるほど輸出がうまくいくように表れる。海外工場に送り出す部品と原材料値よりも、これらで作る完成品の値がさらに高いからだ」 とあります。これを、記事を書いた記者の勘違いだと論じる投稿がありますが、この記事の内容が間違いだという確証はありません。

      そこに、りょうちん様が調査されました、2014/03/26付 韓国銀行ウェブサイトからの抜粋(下記に邦訳) があります。
      「より正確に各国間の取引を捉えるために、処理や販売のために送られる商品などのグローバルな製造活動の取引のポイントを、国境を越えたポイントから、譲渡される所有のポイントに変更する」
      (オリジナル文=Modifying the point of transactions of global manufacturing activities, such as goods sent for processing and merchanting, from the point of crossing border to the that of ownership being transferred in order to capture transactions between countries with greater accuracy)
      これをどう解釈すればよいのでしょう?私は、これを、自国製品の国際間取引の金額をもっと自国に取り込むために、海外で生産している製品の取引ポイントを変更することであり、たとえば、ベトナムの子会社の取引ポイントを、今までは、部品を出荷する釜山港FOB(≒韓国の国境)であったが、それを越えて最終製品を顧客向けに出荷するベトナム港FOB に変更する。その結果、完成品のべトナムからの第三国輸出金額を韓国の輸出金額として取り込む、と解釈するのが、自然だと思います。これは中央日報の内容と合致します。 そして、韓国銀行は、そうした理由を 「より正確に取引を捉えるために」と言っています。この言葉も意味深長です。
      しかし、誰が何と言おうと、ベトナムの領土内で生産された付加価値はベトナムのGDPとしてカウントされるしかなく、それを韓国のGDPにカウントするために韓国からの輸出として扱うなどということは、IMFもSNAも認めるはずがないのです。

      そして、この中央日報の元記事の中の、気になる四つの文章を、下記の①〜④に並べてみました。
       ①「1-3月期の情報通信技術(ICT)商品の輸出が、412億ドルで史上最大を記録した。前年同期比で6%増えた数値だ。」
       ②「輸出を主導するICT(情報通信)産業は、すでに完成品の70%以上を海外で作っている」 
       ③「昨年末国内の主な研究機関が展望した今年の平均輸出増加率は6.4%ぐらいだった。」
       ④「国内生産」を基準とした関税庁の通関基準の輸出額(=つまり、通常の製品などの出荷額)は3年連続5500億ドルで足止めを食らっている」
      矛盾を感じませんか? 海外生産が増えて、通関基準の輸出額は増えないのに、輸出は6.4%増加する見込みであると。
      どうして?それは海外子会社からの配当、海外直接投資に関する再投資利益があって、それが増加して輸出が増加するから?
      しかし、それは、国民総所得(GNI)の話であって、国内総生産(GDP)や輸出のことではないですよね。所有権移転が議論されるのは、GNI(所得)であって、GDP(=その国の領土内の生産物の付加価値)の増減には、関係ありません。
      それでは、製品以外にサービス(用務)の輸出があって、それが輸出を増加させる?そういえば、2009年まで韓国のサービス輸出は万年赤字でしたが、2010年以降、急に黒字転換しました。それも韓国銀行の操作であることを、韓国の新聞が暴露していました。海外プラント建設における受注金額全額をサービス(用役)受注として輸出にカウントいるとのことです。これは、一体何でしょう?

      私は、中央日報の記者がおかしいと気付き、それでも韓国銀行が、「国際通貨基金(IMF)が定めた基準だから、これでいいんだ」 と言っているので、海外に知られると恥ずかしい、まずい記事が堂々と出てしまった可能性があると思います。この新聞記事にある、1-3月期の全体輸出 383億ドルは、1383億ドルの誤植ですね。

      日本のGDPがなかなか増えない要因の一つは、日本の企業が海外生産に集中して、輸出が伸びないからである、というのは周知のことですが、それに追従するかのように海外生産をずっと伸ばしてきた韓国の輸出が何故、増加しているのか、輸出が増加する結果、韓国のGDPが成長を続けてきていることに、多くの方が疑問を持っておられるはずです。韓国企業は、半導体も、自動車もすでに大半(70%!)が海外生産になっていて、2019年の今も国内生産を止めて海外生産に切り替える活動を継続してきているのに。私は、この新聞記事に、その回答の一つがあると思っています。

      (2) みかえ様のもう一つのご指摘
      「2008 SNAへの変更でGDPが増えたとしたら、その原因は研究開発費を従来の消費支出から資本形成への変更が原因でしょうね」 と鋭い指摘をされておられます。2008SNAの変更に従って、日本のGDPが研究開発費を取り込んだのは、2016年、GDPが約3%増えて、みかえ様のご指摘のようにメディアが騒ぎました。この変更を適用した米国は変更前後で3.6%アップ、豪州4.4%、カナダ2.4%、そして2013年に適用した韓国は何と7.8%アップして、韓国銀行が、「研究開発費の割合が高いから」と説明しているという記事があります。韓国のGDPの7〜8%を研究開発費が占めていることになるのです。本当なのでしょうか?

      (3) 韓国が (嘘をついてまで) GDPを上昇させ続けなければならない理由
      韓国青瓦台は、韓国国民に対して 韓国が 「30-50クラブ」(一人当たり所得3万ドル、人口5千万人以上)の国の地位である
      ことを自慢し、それが韓国のプライドになっていることは、このサイトの読者の方々はご存知のことと思います。
      もし、「30-50クラブ」から外れたりすると、大統領府、政府の失策になってしまうから、GDPと国民総所得(GNI)を死守するために、その最重要品目である輸出が下がることを許容していないのでしょう。正直であることより、自国を大国と見せるプライドを守る国民性ですから。ただ、2019年には GDPと国民総所得がかなりダウンすることは避けられません。その時は、日本政府のせいにするのでしょうね。問題が発生した時は、自分たちの責任ではなく、すべて外部要因にするのも、彼らの国民性ですから。

      (4) 韓国の輸出金額、GDP、国民総所得の粉飾(の疑いのある)期間 まとめ
      輸出、GDPの金額の処理に関して、粉飾の強い疑いがある内容と、その期間をまとめておきます。
       ① 海外プラント受注品の受注金全額を 韓国の輸出金額(GDP、GNI)にカウント  【2010年〜現在も継続中】
       ② 研究開発費の水増しによるGDP、GNIの粉飾  【2013年〜現在も継続中】
       ③ 海外子会社から第三国への輸出金額を 韓国の輸出金額(GDP、GNI)にカウント 【2014年〜現在も継続中】

      繰り返しになりますが、最近の中央日報のコラム 「輸出業種まで海外に奪われれば…=韓国」 のリンクを下記に貼っておきます。
      https://japanese.joins.com/article/112/253112.html?servcode=100&sectcode=120
      この記事によりますと、我々の想像を超えた勢いで韓国国内の輸出産業を含む製造業の空洞化が、どんどん進んできました。それは現在(2019年)も進んでいます。それなのに、何故、今までも韓国の輸出が減らないのか、GDPが成長を続けてきているのか、
      そして、今年の韓国のGDP成長率の予測値を2.5%だと言えるのか、私は疑問を持たざるを得ません。輸出業種を海外に奪われても、韓国の輸出は常に増え続けてきたのです。 ここまでして、プライドを守りたい国なのです。

      以上、状況証拠を下にして、私の意見を述べましたが、間違いがあるかもしれません。その時は、指摘して頂ければ幸いです。

  4. カズ より:

    *韓国は「世界でいちばん大きな小人〔こびと〕」・・性格は小人〔こども〕

    韓国の統計が信憑性に欠けるのは、裏付けとなる事実の公開が乏しいからなんですよね。

    自由主義経済の国家なのに、こんな隠蔽体質で何を基準に信用を築いてるのでしょうか?

    おそらく、血の繋がり・同郷の繋がり・お金の繋がりではないかと・・。
    と、考えれば韓国社会においての日常的な賄賂の存在にも納得できるんですよね。

    「統計調査がいい加減なので公表できるレベルではないから」との可能性も否定はできないんですけど、本当の理由は①不名誉な数字は隠す。②情報がオープンになりすぎると「シンジツを捏造〔つく〕れなくなる」からなんでしょうね。きっと。

    韓国:隠蔽志向の自由経済
    中国:自由志向の隠蔽経済

    ↑境目が良くわかりません。
    一応、片方の通貨市場は自由開放されてることになってるみたいなんですけどね。

    1. りょうちん より:

      それが実は日本の統計も結果しか公表していないんですよ。
      韓国だけが・・・というのはここでもブーメランになりかねないです。

      GDPは、言ってみれば、パソコンのベンチマークプログラムの総合スコアのようなもので、CPU/GPU/ストレージ/ネットワークなどのテストの数値を合計しているようなもので、数字が大きければなんだかたすごそうだというのはわかるのですが、論理的に何を測ろうとしているのかわからなくしているところがあります。
      本文にこれ書けば良かったと反省。

      私は中国のGDPは数字の嘘自体は控えめではあっても実需を無視した産業振興などはあると思うので、実質的には日本は経済規模ではまだ世界2位のままだと思っていますけどね。
      ただし、熱心な軍拡などで実需もこのままでは抜かされるでしょう。

      あとGDPの比較の時に名目GDPなのか実効GDPなのかも書かれていないことが多いです。
      あれなんとかならないですかねえ。

      1. カズ より:

        >それが実は日本の統計も結果しか公表していないんですよ。

        統計とはそうゆうものだと認識することにします。

        >私は中国のGDPは数字の嘘自体は控えめではあっても実需を無視した産業振興などはあると思う

        そうなんですよね。中国政府は余剰住宅の自己買取りもしてるんでしょうけど、それでも投資用マンションの空室が5000万戸でしたよね。
        鬼城の建設計画?〔開発計画〕では最終的に34億人分の住処が供給されるとのことです。が、誰が住むんでしょう。・・鬼城だから鬼〔ゴースト〕が住むのでしょうか?

        経済は、拡大時には入金先行で潤沢なキャッシュフローも、停滞時には支払先行で回らなくなってしまいます。
        だから中国経済は拡大基調を維持する必要性からも鬼城の建設を止める訳にはいかないのかもですね。〔結果、GDPが持ち上がる?〕

  5. 格差 より:

    一人当たり3万ドル超、GDP÷人数で出しているような…

  6. ランダム黒白 より:

    GDPの算出法は実は国によって独自だったり、詳しい計算法などは公開されていないことも…
    こうしたことは経済学に明るければ基本の基本なのでしょうが、ニュースなどを見ていても素人では気づけない点です。あらためてご指摘いただき、また韓国GDP算出法についての噂の真偽を明かしていただき、ありがとうございます。
    韓国ではないですが、「中国のGDP(成長率)など各省ごとの数字も当てにならない」と李克強さんが言ったこともありましたね。中国に限らず水増しはある程度どこでもやってるとしても、そもそも経済の強さを一つの数字で表そうというのが無理なのかなとも思いました。

    1. りょうちん  より:

      今回の件で、韓国統計庁、韓国銀行のサイトを覗いたりしましたが、

      http://kostat.go.kr/portal/eng/index.action
      http://www.bok.or.kr/eng/main/main.do

      韓国のお役人は比較的真面目なんじゃないかと。
      しかし、こうしてリンクを張ってみると、Struts丸出しのURLにしているのが気持ち悪くないのかなあ・・・。
      そういう細かいことを気にしないのが韓国人と言えばそうなのかも。
      あと、文書がPDFなのはまだしも韓国独自のオフィスソフトなのがなんとも。
      官公庁のサイトに一太郎形式でアップロードされているような感覚でした。

  7. ななし より:

    しろうとなのでな中身はぜんぜんわからないのですが、すごく気持ちの悪い記事だと感じました。
    きちんと調べていてすごいとは思うんですが、なにか大事な根本が足りてない気がします。
    この記事より、きちんとした日本の経済学者による韓国に関する分析の記事を読んだほうがいい気がします。

    たしかに一部の嫌韓の人が揶揄するために、勘違いしてる可能性もありますが、コリエイトと書いたりこの記事はいまいち信用が置けません。

    感情論で論理的な反論を書けないのが申し訳ないのですが、記者はなにか詭弁による嘘、もしくは根本的な知識の欠如があるのかと思いました。

    ここの記者の賛美も怖いです

  8. 通りすがり より:

    う~ん。
    この記事は説明が下手すぎて、何が言いたいのかよくわからん。
    侮辱する言葉を長文でダラダラと書く労力を割くぐらいなら、分かりやすい説明を心掛けてほしい。

    1. りょうちん より:

      >この記事は説明が下手すぎて、何が言いたいのかよくわからん。

      ええ。この程度の説明を理解する努力を放棄して韓国を叩く人たちを批判するのが主旨ですよ。
      韓国が好きか嫌いかで言えばわりとキライですが、この記事では侮蔑の対象は韓国ではありません。

  9. だんな より:

    りょうちんさま
    読者投稿、ありがとうございます。
    韓銀が公表している輸出の月次統計と、GDPの輸出が合わない疑問は、残念ながら解消出来ませんでした。
    うーむ、分からない。

  10. 匿名 より:

    [単独]国家統計エラー。輸出の8年間「176兆」膨らませた
    https://kaikai.ch/board/43935/
    韓国銀行が過去8年間の輸出統計を膨らませてきたという事実がMBCの取材結果確認された。輸出入で発生した樹脂打算、すなわち国際収支をBOPと呼ばれ、ここで輸出実績を実際よりも誇張したのです。

  11. 匿名 より:

    ファクトベースでの議論をというのは理解できるのですが
    それにしては記事の内容は推測ベースが多すぎてどうなのと思います
    現状では他人の推測ベースの意見を否定して自分の推測ベースの意見を述べているだけに見えます
    どんなファクトを挙げたとしても「これは書いた人が勘違いしてるんだろう」で
    済まされるともはやいかなる議論もできないと思うんですけど

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