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自称元徴用工側の言い分は、まるで北朝鮮そっくり

韓国に対する経済制裁という話題については、正直、私自身も食傷気味なのですが、それでも今のうちに記録しておかねばならないという意味もあるため、当ウェブサイトとしても、ここ数日はもう割り切って、韓国ネタに特化することに決めました。こうしたなか、本稿では後日の記録も兼ねて、ちょっとした話題をいくつか集めておきたいと思います。

「当ウェブサイトが制裁カードを潰した」?

以前、『フッ酸禁輸は本当に韓国に対する制裁カードになり得るのか?』のなかで、「韓国に対するフッ酸の禁輸は韓国に対する制裁カードとしては不十分だ」と申し上げました。

その理由は、「フッ酸が外為法上のリスト規制の対象品目であることくらい、韓国側は百も承知であるはず」、「自称元徴用工問題などへの対抗措置として、日本がフッ酸を韓国に禁輸する措置を発動する可能性に備えて、韓国側では在庫の積み増しなどに動いているはずだ」、というものです。ちなみに

もしかしたら当ウェブサイト『新宿会計士の政治経済評論』が昨年秋口からフッ酸について言及し続けたことが、結果として『フッ酸禁輸』という日本の対韓制裁カードを潰してしまった可能性もあるのではないか

とも申し上げたのですが、実際、私などは「自分が対韓制裁カードを潰してしまったのではないか」と思い悩むあまり、それこそ睡眠が浅くなり、1日10時間くらいしか眠れず、晩ゴハンも3杯くらいしかおかわりができないほど食欲が減衰していたほどです。

こうしたなか、すでに皆さまご存じのとおり、経済産業省はフッ酸など3品目の輸出規制を導入し、あわせて韓国を「キャッチオール規制上のホワイト国」から削除する政令改正案のパブコメを発表しています。

この規制を読んだ当初、私などは、今回の措置については「『経済制裁』としては不十分ではないか」、などと考えていたのですが、そう考えた理由は、まさに「韓国側が今回の措置についてきちんと準備しているはず」という固定観念があったからです。

あれ?まさか、準備していなかったのですか?

ただ、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に掲載された次の社説を読むと、こうした懸念は杞憂だったという可能性が出て来ました。

【社説】いよいよ始まった日本の経済報復、韓国政府は外交力を総動員して解決に動け(2019年07月02日07時31分付 中央日報日本語版より)

中央日報は社説で、この経産省の措置について、次のように述べているからです。

韓国企業は非常事態に陥った。これら品目の供給のほとんどを日本に依存している状況で、代替輸入先を探すことが容易でないためだ。輸出の遅延ないし中断が現実化されれば、関連企業はもちろん、韓国経済全体が打撃を受けることになる。そうでなくても我が国の輸出は米中貿易戦争の荒波の中で7カ月間のマイナス成長だ。6月の輸出は半導体の不振などが重なって前年比13.5%も減った。この渦中に日本が韓国経済の急所を突いたも同然だ。

鳩が豆鉄砲を喰らったような反応ですが、「急所を突く」も何も、フッ酸をはじめとする「リスト規制の対象品」を規制されてしまえば、短期的には韓国経済に大混乱が生じるであろうことくらい、当ウェブサイトを含めた多くのサイトで指摘されてきたはずです。

中央日報の社説では、今回の措置を「日本の報復措置は偏狭で度量の小さなものとしか見ることができない」などと舌鋒鋭く批判しているのですが、この点に関する批判が的外れであるという点については『官房長官「韓国がG20までに解決案持ってこなかった」』で述べましたので、割愛します。

それよりも注目する下りは、韓国政府に対する批判です。

中央日報の社説は次のように続けます。

しかし日本政府の狭量を恨んでばかりもいられない。事態がここまで発展するまで、果たして政府は何をしていたのか問わざるをえない。日本が報復措置に出るという予想は昨年10月に強制徴用賠償判決が下されたときから提起されていた。日本は韓国政府の問題解決への努力を促したが、政府は『司法府の判決を尊重しなければならない』という立場を曲げなかった。

まさかとは思うのですが、やはり、韓国政府は8ヵ月ものあいだ、本当に何も準備をしていなかったようなのです。

また、麻生太郎総理(副総理兼財相)が今年3月の衆院財務金融委員会で、丸山穂高氏の質問に対し、韓国に対する対抗措置として「▼関税(引き上げ)、▼送金停止、▼ビザ発給停止」に言及した、という件もありました(『【速報】麻生太郎総理が関税、送金停止、ビザ発給停止に言及』参照)。

それなのに、韓国政府がまったく動かなかったことについて、中央日報は韓国政府の対応を巡り、「韓国内部からも政府が積極的に出るべきだという合理的な声があがったが、政府は事実上、手をこまぬいていた」と批判したうえで、

日本政府の報復措置はここで終わらない公算が大きい。先端素材の輸出制限が3品目に終わらず拡大するという懸念だ。一部からは韓国産製品に対する関税率の引き上げまで話が出ている状況だ。

と危機感を露わにしているのです。

「韓日関係は重要だ」のウソ

そのうえで、中央日報の社説では、

政治・外交葛藤が経済に負担を与えないように管理する知恵が必要だ。韓日は経済はもちろん外交・安保においても切っても切れない関係だ。両国が感情的な争いに拘泥すれば、双方がこの上なく甚大な被害を受けるのは火を見るより明らかだ。」(※下線部は引用者による加工)

と述べ、日韓政府双方に自制を促しているのですが、このあたりはあきらかにトンチンカンです。

なぜなら、「日韓双方がこのうえなく甚大な被害を受ける」ということは、基本的にあり得ないからです。

もちろん、韓国は日本にとっては隣国ですし、「重要な国ではない」といえばウソになります。日韓両国のヒト・モノ・カネの往来を眺めてみると、両国間で年間1000万人を超える人々が行き来していますし、日韓貿易高、日本から韓国に対する与信、直接投資の残高も非常に巨額です(図表)。

図表 日韓のヒト・モノ・カネの往来
区分 数値 情報源
①日本に入国した韓国人(2018年) 7,538,986人 日本政府観光局(JNTO)
②韓国に入国した日本人(2018年) 2,948,527人 韓国観光公社
③日韓の往来の合計(2018年) 10,487,513人 ①+②
④日本から韓国への与信(2018年12月) 56,269百万ドル BIS最終リスクベース統計
⑤日本から韓国への直接投資(2017年12月) 36,883百万ドル JETRO『直接投資統計』
⑥韓国から日本への直接投資(2017年12月) 4,067百万ドル JETRO『直接投資統計』
⑦日本から韓国への輸出(2018年) 54,605百万ドル JETRO基礎データ
⑧韓国から日本への輸出(2018年) 30,529百万ドル JETRO基礎データ
⑨日韓貿易総額 85,134百万ドル ⑦+⑧
⑩日本の対韓貿易黒字額 24,076百万ドル ⑦-⑧
⑪韓国に在住する日本人永住者 8,906人 外務省『海外在留邦人数調査統計
⑫韓国に在住する日本人長期滞在者 27,821人 外務省『海外在留邦人数調査統計
⑬日本に在住する韓国・朝鮮人(2018年6月) 560,536人 法務省『国籍・地域別 在留資格(在留目的)別 総在留外国人
⑭⑬のうち特別永住者(2018年6月) 322,447人 法務省『国籍・地域別 在留資格(在留目的)別 総在留外国人

(【出所】図表中「情報源」欄参照)

しかし、それと同時に、たとえば「カネの流れ」に関していえば、日本から韓国に対する直接投資残高など、全体のほんの数パーセントに過ぎません(『直接投資:そもそも日本にとって、韓国の重要性はとても低い』参照)。

また、与信統計から見ても、日本にとって韓国は「死活的に重要な国」とはいえず、最終リスクベースで日本から韓国に対する与信残高は対外与信全体の2%以下に過ぎないのです(『「カネ」から眺めた日韓関係:日本にとって韓国は2%の国』参照)。

(なお、日韓交流そのもについては、『数値で見る日韓関係:ヒト・モノ・カネの交流状況とは?』でもまとめていますので、適宜ご参照ください。)

それでも資産売却はやめない

今回の経産省の措置でも明らかなとおり、日本が韓国に対する経済制裁などの措置に踏み切れば、たしかに日本側にもダメージはゼロであるとは言いませんが、明らかに韓国側の方が大きな打撃を蒙るのです。

このように考えたら、日本的な発想からすれば、「ここまでの状況になれば、少なくとも自称元徴用工らの資産売却手続についてはただちに中断する」と思うのですが、韓国側ではそのような発想はないようです。

日本の強制徴用報復にも…「真実を糊塗、資産差し押さえ滞りなく進める」(2019年07月02日16時24分付 中央日報日本語版より)

中央日報によると、自称元徴用工側は日本製鉄(旧・新日鐵住金)が韓国国内に保有する合弁会社株式の売却手続を進める意向を明らかにしたのだとか。

ちなみに当ウェブサイトでは何度も何度も指摘しているとおり、一般に、非上場株式の売却は極めて困難です(『時間もカネもかかる 非上場株式の競売が困難である理由』参照)。

本気で強制換金処分するつもりなら、非上場株式ではなく株式配当請求権などの金銭債権を差し押さえた方が効率的ですが、彼らがそうしないのは、この期に及んで彼らが「基金構想」などの安易なソリューションを捨てていないからでしょう。

結局、日韓関係は行き着くところまで行くしかないのかもしれません。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ところで、中央日報の記事では

強制徴用被害者側の関係者は「政府の案は最高裁判決を認めつつ、実質的に両国に役立つ合理的な案だったにもかかわらず、日本政府はこれを拒否した」とし「まるで韓国政府が何の先制的措置も取らなかったため経済報復に出たように日本国民を欺く処置」と批判した。続いて「日本政府の経済措置で韓国企業が今回の機会に被害者に対する責任と連帯を共に感じる契機になるだろう」と明らかにした。

と述べているのですが、この言い分、どこかで見たことがあると思ったら、北朝鮮の言い分にそっくりですね(笑)

新宿会計士:

View Comments (46)

  • もはや本当に誰も責任をとらないという構造が出来上がってるのですね。
    まぁ北朝鮮とまとめることができるというのは大きな利点ですね。
    表面上だけでもちゃんとしてたり国際社会と足並みを揃えようとなどとされていればいつまでも裏切り者が中にいることになったでしょうから。

  • 1000年たっても、謝罪と補償。
    正常ではないと、あらためておもいました。
    正常でない人は怖い。
    言われなき暴力があるかも知れないので。
    国際法破りの言われなき暴力に対しては、国際社会と連携して戦うしかありません。

    この規制は、そのことも考えているのかもしれません。

  • 今回の輸出規制品目(フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素)に関し、輸出規制がかかれば、韓国メーカーと合意した契約(納期)を、日本企業が守れなくなります。韓国半導体メーカーは多分、契約違反として韓国得意技の補償を求めて来るでしょう。例えない事でも、因縁をつけるのに最高レベルの技を持つ韓国の事です。更に半導体の納入先の生産ラインも止まったとなれば、その納入先から求められた補償を、そっくり日本メーカーに求めて来るでしょう。半導体納入先が例えば現代自動車だったら、生産品の単価が高いわけですから、ラインが1日止まっただけでも、結構な金額になると思われます。本当に納入先がどこかは関係ありません。韓国人ですから、それこそ何でもありです。『製品が作れないだけでなくその先まで補償を要求』
    何を言いたいかと言うと、この輸出規制が発表される前に受注した「フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素」に関しては、日本の経産省は、すぐ輸出許可を出すと思うんですけど・・・。2ケ月間か3ケ月間は、今まで通り韓国に輸出されると思われるので、本当に韓国に効いて来るのは、その後になると思います(これからの受注分から)。即効性があるのは、関税かもしれませんが、トランプ大統領みたいにはなれませんね。『今後の第二第三の矢の”迅速な”対抗措置に期待します。』
    ただ、今回の輸出規制の効果は、今の段階でも単に3品目に限りません。ホワイト国を外れたので、日本からの輸出企業は、外為法リスト規制の該当/非該当判定に、非常に神経質になります。税関でも、ホワイト国向けと、例えば中国向けでは、すべての輸出品に関して、シビアさが変わるでしょう。ハイテク製品なんかは、ほとんどリスト規制該当品です(ローテク製品は、中国から買えるでしょうから)。したがって、日本から韓国への輸出は、先細りするはずです。韓国国内での生産も減っていくでしょう(それでなくても労働貴族の国ですから)。この外為法対抗策に関しては、ずっとずっと続けてほしいものです。日韓関係が希薄なっていくためにも・・

  • 今時の契約なら、フォースマジュール条項と有限責任条項は入っているでしょう。

    韓国相手に両条項を欠いているなら、自業自得と思います。

    • なるほど、私の杞憂でしたね。
      それに日本政府も、「これは対抗措置ではない」と言ってるし。あくまでも韓国を信頼出来ないからだと・・
      悪いのは、韓国。

    • でも、あの国だしなあ・・・。

      『そんなのカンケーネエ!?』とか、言い出しそう・・・。

  • 一応韓国政府の反応をまとめておきますと

    産業通商資源部→「WTO提訴等」
    外交部→「日本は1+1の企業拠出案を受け入れるべき」
    青瓦台→「今後どのような対策を打ち出すかももう少し見守ってほしい」

    などと、各部署でブリーフィングある都度にバラバラで逆に心配ですかね。
    外相や大統領自身が口を開く機会が19日までにあれば、もう少し肝の座った話になるでしょう。

  • 今夜7時のNHKニュース、印象操作を深く感じました。
    今回の経産省の措置、日本へのマイナスの跳ね返りを強調し、ここに至った経緯など一切述べていません。
    日経の論調にも沿っており(経済団体幹部のコメントあり)、極論すれば、韓国いじめのような報道ぶりです。(現地の韓国企業の社員にも取材)
    今回の事案に疎い多くの人々(一般大衆)は、日本政府のかたくなな態度は誤り、判断ミスだと思うことでしょう。
    NHKは、いったいどこのマスコミでしょうかね。

    • 自分は9時のNHKニュース見ましたが、おっしゃる通りの
      内容でしたね。まるで日本が原材料をすぐ禁輸にして
      大混乱するような報道ぶり。

      韓国企業の顧客には、日本メーカーも米国メーカーもいるの
      だから、そこに大迷惑かけるようなことするわけないですよ。
      そんなことしたら米国に怒られます。読売の報道はブラフだと
      思ってます。

      ただ今回の措置は、サプライチェーンから韓国を徐々に排除していく
      きっかけになりそうと思います。
       ・顧客が部品供給先を多角化(韓国メーカーからの供給に不安)
       ・韓国以外のメーカーがチャンスと見て生産能力拡大
       ・韓国メーカー自身が生産を海外へ移す
      などの動きが広がっていくのでは? そして韓国国内の空洞化が
      進む結果になるのでは?

  • 輸入先の開拓すればいいんじゃないんですか〜 その結果競争環境ができて、高品質低価格になれば、まさにwin-winなのです \(^o^)/

    というは置いといて、経産省も不適切な事例があったって理由示してるんだから、その事例の問題点をちゃんと把握して、解決策を提示すればいいんじゃないでしょうか?

    そういう実務面での積み上げって大切なんだと思うのです♪

  • 新宿会計士様

    いつも鋭い分析をありがとうございますm(_ _)m

    本件ですが、私見(妄想を含む)で感じることは…
    「もう一つの朝鮮民族国家への牽制」と思うのは私だけでしょうか?

    「国際法になじまない無法な要求を繰り返すなら、日本は協力も容赦もしない」
    と言っているようにも聞こえますが…。
    (浅はかなコメントで恐縮ですが、韓国を見せしめに、同じ民族(=同じ思考回路を持つ)に対する
     日本からの牽制と警告では無いかと思いました。)

    駄文失礼しました。

  • 韓国企業が今回の機会に被害者に対する責任と連帯を共に感じる契機、ってそれ韓国企業にとっては詰みでは?
    1+1、2+2基金とは関係なく韓国企業が責任持って被害者に賠償する必要が出てきます。責任という言葉は非常に重いものであるはずです。

    そういえば1+1基金は韓国内でも否定的な意見があると報道していた気がするのですが、日本側に対案を出したのにというなら韓国内でしっかり意見まとめてから対案を出すべきです。

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