結局、日本は釜山沖会合共同訓練に参加するのか、しないのか

今朝方に掲載した『釜山沖共同訓練参加を巡る報道の虚実と「本当の背景」を探る』で取り上げたとおり、今年4月、韓国・釜山沖で行われるASEAN防衛相会合(ADMM)プラス拡大会議下の専門家会合での海上共同訓練を巡って、インターネット上では「日本は参加する」「いや、参加しない」といった論争が生じているようですが、この論争の背景には、「その訓練と釜山港入港がセットかどうか」という点を巡る解釈の違いがあると思います。

日本は参加する?しない?

今朝方の『釜山沖共同訓練参加を巡る報道の虚実と「本当の背景」を探る』を投稿したあとになって、少し気になって、もう一度、防衛省のホームページに掲載されいてる岩屋防衛相の発言をじっくりと眺めてみました。

Q:昨日、韓国の国防省がADMMの専門家会合に関連して伴う多国間の協同訓練について、4月末行う予定だったものを日本側が参加を見送るということを伝えてきたと発表しましたが、事実関係を確認させていただきたいのと、これに関して今後、韓国側に何か申し入れ等対応される予定はありますでしょうか。

A:以前からも説明させていただいているとおり、今般のADMMプラス拡大ASEAN国防相会議の下の専門家会合による海洋安全保障の訓練については、関係国による最終計画会議が21日及び22日に釜山で開催されまして、防衛省からは、海上幕僚監部の担当者が参加いたしております。この訓練への参加については、先日8日、私から申し上げたように、今般は、釜山への入港は見送りますけれども、後のプログラムは全部参加するということで臨みたいと思っているところでございまして、韓国との防衛協力については、これからも適宜適切に判断していきたいと思いますが、やはり、この東アジア地域の安全保障を考えた時に、日韓関係、日米韓の関係は極めて重要でございますので、適宜適切に判断しながら、日韓との防衛協力も進めていきたいと思っております。(※下線部は引用者による加工)

これは、先週金曜日時点の、次の『聯合ニュース』(日本語版)記事に対する質疑を踏まえた質問だと思います。

釜山沖の国際海上訓練 海上自衛隊は不参加へ(2019.02.22 17:32付 聯合ニュース日本語版より)

この報道では、確かに「韓国・釜山沖の国際海上訓練に海自は参加しない」と明記されています。そして、岩屋氏の「釜山への入港は見送るが、後のプログラムは全部参加する」という発言の意味について、インターネット上では、次の2つの解釈があるようです。

  • 解釈①韓国での訓練へに参加する…釜山港入港と韓国沖での共同訓練は同一プログラムではない
  • 解釈②韓国での訓練への参加を見送る…釜山港入港と韓国沖での共同訓練が同一プログラムであると考える

私自身は上記①の立場を採用しており、今朝方の記事もこの解釈に基づいて執筆しました。

しかし、議論の出発点が異なれば、結論は異なります。仮に②の立場を採用すると、岩屋大臣の発言は「韓国沖での共同訓練には参加しない、という意味である」という解釈も成り立つ余地が出て来るような気がします。

解釈①

自衛艦がキャンセルするのは「釜山港入港」というイベントのみであり、韓国の沖合で行われる共同訓練を含めて、それ以降のイベントにすべて参加する(つまり韓国の『聯合ニュース』(日本語版)の報道は誤りである)

解釈②

自衛艦がキャンセルするのは「釜山港入港」とそれに伴うイベントであり、韓国の沖合で行われる共同訓練は「釜山港入港」とセットであり、したがって日本は韓国の沖合で行われる共同訓練に参加しない(つまり韓国の『聯合ニュース』(日本語版)の報道は正解である)

はたして、どちらが正解なのでしょうか?

現時点では、断然、①の方が可能性が高い

結論からいえば、現時点で判断する限り、断然、①の方が可能性が高いと私自身は考えています。というのも、先ほどの岩屋大臣の発言に、「先日8日、私から申し上げたように」という下りがあるからです。

実際に、2月8日の岩屋氏の記者会見を眺めてみましょう。

Q:今週の報道官会見で、本年4月から5月のADMM専門家会合が予定されている海上訓練で、海自艦艇の釜山への入港を見送るとの発表がなされました。改めて、その理由と今後の日韓関係、防衛交流についてお考えをお聞かせください。

A:先日、青柳報道官からお伝えしたとおり、ADMMプラス、これは拡大ASEAN国防相会議の下の専門家会合ですが、海洋安全保障専門家会合の海上訓練につきまして、今般は、釜山への入港は見送りますが、それ以降のプログラムには参加するという決定をさせていただきました。防衛省としては、ADMMプラスの専門家会合による海上訓練に、各国とともに参加することが非常に重要であり、「自由で開かれたインド太平洋」を作っていくという観点からも重要であると考えております。また、現在の日韓関係全体の中で、このプログラムへの参加につきましては、両国の関係が建設的に前進するような方向性を見出さなければいけないと考えまして、今般の対応が最も適切であると判断したところでございます。(※下線部は引用者による加工)

岩屋氏は2月8日の時点でも、ハッキリと、「釜山への入港は見送るが、それ以降のプログラムには参加する」、「ADMMプラスの専門家会合による海上訓練に、各国とともに参加することが非常に重要」と発言しています。

そして、もし、「韓国沖の共同訓練に参加しない」のだとしたら、岩屋氏は「今般は、釜山への入港と韓国沖合での共同訓練については見送る」、などと発言したはずです。

私が解釈①を採用する根拠は、それだけではありません。少し前の記事ですが、産経ニュースが今年1月26日時点で、海自艦の派遣中止を「検討している」と報じています。

護衛艦「いずも」韓国派遣中止へ レーダー照射問題受け協力縮小(2019.1.26 05:00付 産経ニュースより)

この記事に、次の下りが出て来ます。

海自護衛艦は釜山への入港は見送るものの、各国海軍と洋上で行う共同訓練への参加は検討を続ける。

この記事を読むと、「釜山への入港」は単なる儀礼として実施され、その後の洋上共同訓練が重要視されている、と読めることも確かです(もっとも、この記事自体は政府発表ではなく民間メディアの報道であるため、証拠力としてはやや弱いかもしれませんが…)。

解釈②の余地もあり得るが、可能性は低い

私が①説を取る理由は、「釜山入港」というイベントはあくまでも「海上共同訓練」とは別物である、という理解に基づいています。そして、そのような理解の根拠となるのは、岩屋氏の発言と産経ニュースの報道である、ということです。

ただし、解釈②についても、全否定するつもりはありません。仮に、当日の日程が「海上共同訓練が行われ、その後、釜山入港というイベントをこなす」というものであったとしたら、日本が海上共同訓練に参加しなかったとしても、岩屋氏の発言と『聯合ニュース』(日本語版)の記事は、矛盾しないからです。

もっとも、現時点において、その詳細なスケジュールを確認することはできません。というのも、、ADMMの公式ホームページ上も、防衛省のホームページ上も、現時点で、4月から5月の韓国、シンガポールにおける専門家会合とそれに伴う海上訓練についてはスケジュールが明示されていないからです。

また、この説にはもう1つの欠点もあります。それは、仮に解釈②が正しいのだとしたら、「なぜわざわざ韓国メディアが2月22日にこれを報じたのか」、という点について、すっきりと説明がつかなくなるからです。

もっといえば、解釈②が正しければ、岩屋氏が2月8日に「釜山入港は見送るが、その後のすべてのイベントには参加する」と発言した時点で、「日本が共同訓練に参加しないことになった」ということが確定しているはずです。

以上より、私はやはり、現時点では解釈①の方が正しいと考えているのであり、今朝の記事についても取り消すつもりはありません。

(※なお、その後、新しい事実が判明すれば、結果的に結論が変わるかもしれませんが、だからといって記事を執筆した時点で得た情報に基づいて判断したわけですから、その場合であっても今朝方の記事について取り消すつもりはないと申し上げておきたいと思います。)

読者コメント一覧

  1. Kiraku Sami より:

    初めて投稿いたします。
    ブログ、いつも楽しみに拝見しております。釜山沖合同訓練参加の件ですが、単純に「釜山寄港しない」という一説だけ取り上げて「日本参加せず」とした、韓国側の早トチリの可能性も有りだと思います。
    大事なのは、防衛大臣の発言の真偽以上に、韓国側の意図だと思うのですが、いかがでしょうか?

    単なる早トチリなのか、意図的に「参加せず」と報道したのか?意図的ならば、その目的は?(例えば、安倍政権に揺さぶりという嫌がらせをしたいという意図ならば、十分に効果を挙げていると言える気がします)
    又は、韓国で軍と政府等の組織間での連携が機能不全に陥っていて、情報が上手く伝達できていないと言うのも考えられるかもしれません。
    それにより、我が国の情勢認識と判断も変わってきますから、軽視はできないかと思いますが、なぜ防衛大臣の発言・資質が云々されているのか、少し理解し難く感じております。
    拙い意見ですが、書き込ませていただきました。

    あと、ブログでの分析が、仮に間違っていたとしても、記事の取り消しは必要ないかと思いますよ。

    1. ざぶとむ より:

      旭日旗の国際的な正当性を証明出来る場でも有りますし、堂々と旭日旗を掲げて参加して欲しいです。

  2. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    拡大ASEAN閣僚会議参加諸国との合同訓練は、アジアに浮かぶ爆雷(中、北、韓)を踏まない為にも、日本が参加し、主導する立場にあるのは当然でしょう。このメンバー国で海自は、ずば抜けてます。

    聯合ニュースのは、日本への挑発、デマの類いです。。『釜山には来ない=参加しない』と曲げて報道。岩屋大臣の発言は『釜山港には入港しない』。当然でしょう。また旗を降ろせてか?韓国主催のセレモニーなんぞには参加しなくていい。

    まともな海軍艦艇も作れない国が、何をヌカすか(笑)。ご存知の方も多いでしょうが、最新鋭の駆逐艦、と言っても2,000トンクラスで、日本のイージス艦の4分の1ぐらいの排水量です。この『大邱』号が就役半年で動かなくなった(笑)。

    重大な欠陥があるようですが、どう治せばいいかがワカラナイ(爆笑)。艦型を見ると、韓国得意のトップヘビー(笑)。ごちゃごちゃ隙間なく装備を付けて、てんこ盛り。こりゃまたセォウル号と同じだわ。

    1. 鞍馬天狗 より:

      めがねのおやじさんへ

      韓国海軍新型護衛艦「大邱」、実戦投入5カ月で故障
      梁昇植(ヤン・スンシク)記者
      朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
      http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/02/21/2019022180005.html
      面白い話を、ありがとうございました

  3. 保守太郎 より:

    入港するとかしないとか そんなにしてまでなぜ参加するの?こんな情勢では普通はボイコットだよ。

    1. 定年碁打ち より:

      保守太郎様
      ボイコットは、悪手でしょう。
      釜山に入港しないだけで、残りの訓練は旭日旗を上げて行う事が日本の国益になりそうです。
      韓国軍を除く、皆さんの軍と訓練を行いたいというメッセージになれば、日本にとって幸い。
      去年韓国は、海自旗へ無茶な言い掛かりを行い、他国軍へ守られない内容の要望を行っています。
      そのため、海自の艦が、釜山へ入港しない理由も他国軍に理解してもらえそう。
      以上、私の妄想でした。
      また、防衛大臣の発言内容を見てきましたが、「釜山入港だけしない」と、私は理解しました。

  4. より:

    どうも今回の合同訓練は①日本海上自衛隊の艦船は釜山へは入港しないが、シンガポール海域での2段階目の訓練には駆逐艦2隻が参加する見込み。
    ②今年4月29日から5月2日まで釜山沖で行われ
    2段階目は5月9日から13日までシンガポールで実施
    という事らしいです。
    http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/02/22/2019022280169.html

    「岩屋防衛大臣が釜山沖訓練に参加表明」と報じているのは「朝日新聞」のみで朝日の不確かな見出しが原因のようなきがします。

    1. 匿名 より:

      そのようですね。
      岩屋大臣は、朝日新聞などにデマのような記事を書かれないように、国民に分かりやすくはっきり発言するべきだと思います。

      >拡大ASEAN合同演習は2年に1度行われ、今回の幹事国は韓国とシンガポール。演習は韓国の釜山港、シンガポールのチャンギ港、そして釜山沖からチャンギ沖までの航海でしたが、航海演習は急遽中止で、海自は釜山には参加せずチャンギのみ。朝日は保守側の安倍批判に火をつけようとしてるように見えます。
      https://twitter.com/yamazogaikuzo/status/1099592696623071235

    2. 心配性のおばさん より:

      提案します。

      新聞協会(ある?)で、各誌の年間のねつ造件数や誤報件数をカウントして発表してはいかがでしょうか。

      1. 匿名 より:

        どこまで不正確なら、誤報とカウントするかですが、細かい誤報まで入れると、
        多すぎてカウントできません。

  5. 田舎人 より:

    国連総会で、康京和はいわゆる慰安婦問題を取り上げるようですね。韓国は世界に向けてあくまでも情報戦を展開する腹づもりのようです。情報戦は声を高々に上げた方が結局は勝ちになります。如何にねつ造された歴史であっても、仲間を得れば、それはそれで真実或いは共感の証として受け入れられます。それが歴史の理です。これまで何度か投稿させていただいたことの繰り返しになりますが、今は海外に(もちろん国内にも)向け、これまで苦手としてきた情報戦を徹底的に展開すべきではないかと思います。別のコーナーでどなたかが書いておられましたが、我が国の自衛隊は、もしもの場合、数時間で補給切れとなるとか。これはまったくもって専守防衛にさえもほど遠い状況です。私の住む市(県庁所在地)では、専ら金曜日の夕方になると、反戦・反原発、反安部のアジ演説が看板をかざしてデパート前でなされています。年配の小綺麗な、おそらく主に日・高教組系とおぼしき人たちの一団です。彼らの主張を聞くと、南北と気脈を通じているように思われ、我が国を卑下する言葉が繰り返されます。そうした主張が大通りで堂々と叫ばれる現実は、それを日本人(だと思いますが)が行っていることは、誠に残念でなりません。
    以上、脈絡なく駄文で失礼しました。

    1. 鞍馬天狗 より:

      田舎人さんへ

      細かいコトだけど、
      >我が国を卑下する言葉
      この場合は”誹謗”じゃないかな?
      “卑下”の用法が違うと思う

      1. 田舎人 より:

        ご指摘のとおりでした。有り難うございます。もちょっと勉強します。国語、苦手でした。

    2. (老)新参者 より:

      田舎人さま

      世界に向けて発信することですが、政府が何もしないので民間で「史実を世界に発信する会」というものがあります。
      保守言論の錚々たる人々が運営しております。
      私も、年間1万円を寄付しております。

      ネットでお調べください。

      1. 田舎人 より:

        情報有り難うございます。

  6. 匿名 より:

    「詐欺国家 韓国」という形で、河野大臣には、反論をしていただきたいものです。

    河野大臣は、英語も得意そうですし。
    https://www.youtube.com/watch?v=eLjcBtkku-w

    1. 心配性のおばさん より:

      匿名様

      反論には国際社会という舞台で効果的にやっていただきたい。
      韓国相手なら時間のムダです。

  7. 捨韓人 より:

    数年前の韓国海軍が主催した共同訓練でも、訓練は行って釜山(または基地のある鎮海)だったかの入港だけ取りやめたことがありましたね
    韓国内の入港は別として、今回も各国(特に米海軍)との合同訓練を日本だけが自分から取りやめる理由は認められませんし、韓国海軍側が強制的に日本だけ排除できる根拠もありません

    従って、今回の韓国側のフライング発表は、「日本側から取りやめた」という点を強調して既成事実化しようと仕向けた工作であると考えるべきでしょう

    朝日新聞ソースの防衛相会見は、上に述べた日本の立場を的確に表明したもので適切であると言えます

    話が変わりますが、雑誌「世界の艦船」誌は、こういったインド太平洋周辺の海軍合同訓練のグラビアを必ず掲載していますが、米空母を中心にして参加艦艇のフォーメーション画像を広報用として最低10ショット程度は添付しています
    広報用ですから、各国大型サイズの軍艦旗をメインマストに誇示しますが、海自旗は通常より大きめと言う程度で他国に比べると控えめなんですね
    今回は特大の自衛隊旗を堂々掲揚して誇示すべきでしょう

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