朝日新聞が消費税を論じるなら、軽減税率を返上するのが筋だ
先ほどの『レーダー照射事件 現時点で「落としどころ」探るのは尚早だ』のなかで、朝日新聞の社説を紹介した下りがあったのですが、これはこれできちんと触れておく必要があると思ったので、もう1本、別稿を立てることにしました。私は、消費税について偉そうに高説を垂れる朝日新聞に対し、「李下に冠を正さず」という名言を謹んでお贈りしたいと思うのです。
益税問題という闇
消費税は、もともとは薄く広く税を負担するという仕組みですが、それと同時にこの税制には、さまざまな問題があります。その代表的なものが、「逆進性が非常に強い」という欠陥です。
これは、広く薄く課税するものの、食料品などの生活必需品にも課税されるため、貧困層ほど税負担が重く感じられる、というものです。所得税は所得が増えれば増えるほど税率が上昇しますが(いわゆる「累進課税」)、消費税の場合、支払う税額は所得と無関係です。
しかし、意外と認識されていない闇が、「益税問題」です。
実は、私自身、東京都内でワンオペ・ブラック企業(笑)を営んでいるのですが、実は、会社を設立して以来、まだ1度も消費税を納税したことがありません。
設立から3年しか経過していないという事情もあるのですが、これまでは売上高が年間1000万円に満たなかったため、そもそも納税する必要がなかったのです(もっとも、幸か不幸か、今のペースで売上高が増えれば、来年か再来年には消費税の課税業者となる予定ですが…)。
つまり、売上高が1000万円以下であれば、そもそも消費税自体を納税する必要がありません。売上高が1000万円を超えた時点で初めて「課税業者」となります。
本来であれば、売上高を1.08で割戻して6.3%を掛けた金額が「消費税」、1.7%を掛けた金額が「地方消費税」として納付する金額です。ただし、仕入側でも消費税を支払っていることが一般的ですので、納税額は売上高に含まれる消費税等から仕入に含まれる消費税等を引いた金額です。
ただし、課税仕入に含まれる消費税部分については控除できるのですが、私のようなサービス業の場合は課税仕入がほとんど発生しません(当たり前ですが…)。しかし、ここにからくりがあります。それは、「売上高の50%を課税仕入とみなす」という簡易課税制度です。
この簡易課税制度は、売上高が5000万円までであれば適用することができます。つまり、売上高が1000万円を超えたとしても、5000万円までであれば、顧客から預かった消費税等相当額については、「簡易課税」の適用を受け、ほぼ半額を納税せず、収益にしてしまうことができるのです。
これが「益税問題」です。
業者の1人としては増税歓迎!(?)
つまり、消費税の免税制度や簡易課税などの制度をフル活用すれば、わざと売上高を5000万円以下に抑え、顧客から預かった消費税等相当額を自分の売上にしてしまうことができるのです。
私自身、来年10月に予定されている消費増税では「軽減税率対象業者」ではないため、放っておけば、来年10月以降、勝手に増収となります。現在の売上高が月間54万円だったとすれば、来年10月以降は月間55万円、つまり、1万円の増収になってしまうのです。
先ほど申し上げた通り、当社はさすがに1、2年のうちに消費税の課税業者になってしまいそうなのですが、それでも簡易課税制度の適用対象業者を選択すれば、納める税額を抑えることができてしまいます。
つまり、消費税とは、実に闇の深い、「呪われた税制」なのだと思うのです。
消費税法と「失われた30年」
消費税が導入されたのは、1989年4月1日のことです。この日以来、すべての課税取引に、3%の消費税が課せられることとなりました。そして、バブル景気の破裂とその後のデフレによる日本経済の停滞をめぐっては、さまざまな仮説ががありますが、私は一番大きな犯人こそ消費税だと考えています。
もちろん、消費税の導入とバブル崩壊のタイミングは一致していませんが、バブル崩壊後、日本経済が回復するさいに大きな足かせとなったのが消費税だった、という意味でもあります。
そして、愚かなことに、1997年4月1日には、当時の橋本龍太郎内閣のもとで、消費税率が4%に引き上げられ、あわせて1%の地方消費税が創設されました。合計税率は5%ということです。
さらに、2012年には、当時の野田佳彦首相が率いる民主党政権が、政権公約に存在しなかった「消費税率の引き上げ」を決定。自公両党との合意のうえで、国会で通してしまいました。
これにより、消費税率は4%から6.3%、7.8%へと段階的に引き上げられ、地方消費税率も1%から1.7%、2.2%へと引き上げられることになりました。つまり、合計税率は、
- 1989年4月以降…3%
- 1997年4月以降…5%
- 2014年4月以降…8%
- 2015年10月以降…10%
となったのです。
安倍晋三総理大臣のイニシアティブにより、2015年10月の合計税率10%への引き上げは、現在のところ、2019年10月に延期されています。しかし、法律で2019年10月と決まっている以上、何もなければ、来年10月には合計税率が10%になってしまうのです。
財務省という組織は、本気で日本経済を潰す気なのでしょうか?
ちなみに、「財政再建」だの、「社会保障財源」だのといったロジックが大ウソであるという点については、以前から『日本は財政危機ではない!数字で議論する日本経済と資金循環』、『読者コメントへの反論:色々と根本から誤解していませんか?』などでも提示して来ました。
その意味で、理屈にあわない消費増税を押し切ろうとする財務省こそが、本当の意味での日本国民の敵、いや、「日本の敵」なのだと思います。
嘲笑に値する、朝日新聞の社説
ただ、「国民の敵」、あるいは「日本の敵」は、財務省以外にも、いくつか存在します。
そのうちの1つが、朝日新聞でしょう。
慰安婦問題や「もりかけ」問題の捏造、印象操作、偏向報道など、朝日新聞はさまざまな問題を抱えており、まさに現代版の「反日プロパガンダ機関」と呼ぶのが相応しいと思います。
余談ですが、朝日新聞が「親韓的メディアだ」と考える人もいますが、私に言わせれば、それは正しくありません。朝日新聞はたんに反日的な言説を展開する際、「使えるものなら何でも使う」という姿勢を取っているだけなのだと思います。
たまたま韓国を材料に日本を貶める話題が「従軍慰安婦問題」だったのであり、この問題はいまでも日本国民の名誉と尊厳を全世界で傷つけ続けているわけですから、その意味では、朝日新聞の狙い通り(?)の効果をもたらしたとみて良いでしょう。
そんな朝日新聞が、昨日の社説で提示したのが、これです。
(社説)消費増税対策 あまりに問題が多い(2018年12月29日05時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より)
簡単にいえば、消費税の増税対策について、財源の裏付けが不透明であり、公平性や使い勝手などに疑問があると指摘するものであり、それ自体は私自身も部分的には共感します。
しかし、来年10月以降の消費税制をさらに複雑なものにしている軽減税率を巡っては、朝日新聞自身がその適用を受ける予定だという事実を忘れてはなりません。
いや、「李下に冠を正さず」ということわざにもあるとおり、自分自身が利害関係者である場合には、その問題に触れること自体が不適切です。軽減税率の適用を受けるのは、別に朝日新聞に限った話ではなく、産経や日経、読売なども同様です。
朝日新聞は2020年6月まで、10%、8%、6%、5%、3%という「5つの税率」が共存することを批判していますが、もし「税率がたくさん存在すること」を批判するならば、まずはご自身が「8%軽減税率」の適用を返上しなければ説得力がありません。
朝日新聞は「与党と各役所の思惑も絡まり、国民を置き去りにするかのように対策は決まった」など、ここでも「国民」を持ち出しています。しかし、『軽減税率の特権を受ける朝日新聞社に消費税を論じる資格なし』などでも紹介したとおり、朝日新聞は消費増税を強硬に主張してきたメディアの1つでもあります。
そもそも論として、軽減税率自体を批判するわけでもないくせに、それを強引に政権批判につなげたとしても、それこそ「私たち国民を置き去りにした議論」であり、説得力は皆無です。
これでもし、安倍政権が来年に「消費増税の凍結」を争点にして衆院解散に踏み切ったとしたら、朝日新聞はどういう反応を示すのでしょうか?
それが今から楽しみでならないのです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
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新聞は社会の公器だからとかなんとか屁理屈点けて軽減税率適用だそうだが、新聞協会に入っていない夕刊紙や週刊紙は雑誌扱いで適用外らしい。
新聞協会や記者クラブなどという特権に胡坐をかいていて、社会の木鐸が聞いて呆れる。
軽減税率適用なら雑誌・書籍を含めてすべてを対象にしよう、という提案をするくらいの気概のある新聞社は1者も無い。
確かに、原価率の低い業態だと簡易課税制度の適用で、増税に伴う増収となりますね。〔羨ましいですね〕
薄利業態では、ありえない選択肢です・・。
次年度の課税が見込まれるタイミングで、個人経営から、会社組織への転換をすると、非課税期間が2年間延びるって聞いたんですけど、費用対効果も心許ないようでは、余計なことはしない方がいいんでしょうね。
*****
私は、本当に生活に瀕した人たちからも、分け隔てなく負担を求める「消費税」という考え方には反対です。
納税は、公共の福祉〔世の中のしあわせ〕を実現するために、「富める者に課せられた責任であり、使命である」と思ってるからです。
贅沢品の購入に課税されてた「物品税」の復活なら、まだ解らなくもないのですが・・。
毎日新聞も社説はTPP発行ほかでした
レーダー照射問題はスルーですね
消費税を取り上げてない分だけ朝日よりマシ?
新宿会計士 様
益税のからくりですが、始め3%を導入する際、激しい抵抗に遭って廃案の危機に陥り、
その懐柔策として中小、特に零細な小売業者等に対して ”導入したら却って利益が出る
のですよ” と悪魔の囁きをして(特に日本では従事している人数が多いため )急に
風向きが変わり成立したという記憶があります。
当時は売り上げが1000万ではなく3000万(?)くらいまで申告が不要でした。その為に特に
貸し倉庫や貸しビルをしていた人の多くは内心では消費税賛成でした。無論中小零細業者も
同様でした。
当然ですが、声を上げるのは少し損を蒙っている人達だけで、利益を受けている人達は
だんまりを決め込むのです。
特にガソリン業界を見ればよく分かります。 少し円安になったり、原油価格が上がると
すぐに悲鳴を上げますが下がったときには何にも言いません。 9月には$75でしたが、
今は$45迄( 30% )落ちました。しかし左程小売価格は下がっていません。
しかし高止まりしないだけまだましな業界ではありますが。
更新ありがとうございます。
新宿会計士様の会社は、え?年間売上高1,000万円以下だったんですか?ウソ〜信じられない〜(笑)。
私の居た業種とは根本的に異なるので、売上高経常利益率とか違うんでしょうが、でも失礼ながら1億や2億円あって、セレブと思ってました。
消費税は、広く浅く吸い上げるシステムですが、実際は生活困窮者、低所得者、比較的若年層には北風の制度だと思います。
1989年の消費税導入前まで、日本は景気良かったですよ。毎年収入は右肩上がりだし、下がる(収入なり、企業の売上等諸数値)事などこれっぽっちも頭に無かった。『下がる?そりゃよっぽど下手な経営者だ』『そんな会社、やめとけ』と言われたもんです。
で、私ら若年層の上に働き盛りの団塊世代がドーンと居て、『消費は美徳』(笑)の時代でした。消費税が導入されて庶民が戸惑ったのは、内税表示と外税表示があり、比較が暗算しないといけなくなった事。
消費税が10%に上がると、確実に消費は落ち、景気も低迷します。良い事は何一つ無い。これを選挙戦に生かすか反対票で減らされるか、大きな違いです。
外交で得点を積み重ねている安倍政権ですが、消費税10%を表明すれば失点になります。何も左派の一部の方みたいに、0%に戻せとは言いません。無理やろ。現状維持でお願いしたいです。
>デフレによる日本経済の停滞をめぐっては、さまざまな仮説ががありますが、私は一番大きな犯人こそ消費税だと考えています。
同意見です。データーを見ていませんが、消費税を導入している欧州より、消費税がないアメリカの方が経済成長率は高いと思います。