緊急更新「朝鮮半島の6つのシナリオ」仮定版

「朝鮮半島の将来シナリオ」とは、当ウェブサイトの人気コンテンツの1つです。以前、「シンガポールの米朝首脳会談を待ってからシナリオを更新したい」と予告していましたが、予定を変更し、本日は現時点で入手できる材料をベースに、朝鮮半島の将来を議論しておきたいと思います。

分水嶺に立つ朝鮮半島

少し悩んだのですが、本日の段階で、「朝鮮半島の将来シナリオ」についてアップデートすることにしました。この「朝鮮半島の将来シナリオ」とは、当ウェブサイトの人気コンテンツの1つで、朝鮮半島が将来どうなってしまうのかを、いくつかのパターンに分けたうえで、確率で示すというものです。

確実なことを申し上げるためには、6月12日のシンガポールでの米朝首脳会談を経る必要があると思っていたのですが、そもそも金正恩自身がシンガポールに現れるのかどうかよくわからないという事情もありますし、何より首脳会談に向けて、さまざまな情勢が大きく動いています。

このこと自体、シンガポール会談自体が朝鮮半島、そして東アジア全体の将来を決定づける「分水嶺」となるという証拠であり、この歴史に残るであろう大きな会談に向けて、人々の注目が集まるのは当然のことでもあります。

そこで、本日は少し異例ですが、「かりにシンガポールの米朝首脳会談が決裂したとしたら、朝鮮半島はどうなるのか」という観点から、「仮更新」をしておきたいと思います。

朝鮮半島のシナリオ

オリジナルの「8つのシナリオ」

もともと、「朝鮮半島の将来シナリオ」については、私がこちらのウェブサイトを開設した直後から少しずつ加筆し、アップデートし、6つに絞り込んで来たものであり、最新版である『史上3回目の南北首脳会談と朝鮮半島6つのシナリオ』のなかでも6つにしか言及していません。

しかし、すでに取り下げたシナリオを含めると、本来、いままでに提示してきたシナリオの数は、6つではなく8つです(図表)。

図表1 朝鮮半島の「8つのシナリオ」
シナリオ名称概要4月の予想確率
①赤化統一北朝鮮主導で南北朝鮮が統一される(いわゆる「高麗連邦」シナリオ)30%
②韓国の中華属国化北朝鮮という国が存続したまま、韓国だけが中国の属国となる20%
③南北クロス承認北朝鮮を日米両国が国家承認し、韓国が中国の属国となる20%
④統一朝鮮の中華属国化朝鮮半島統一が実現し、かつ、その統一朝鮮が中国の影響下に入る10%
⑤北朝鮮分割中国やロシアが北朝鮮に軍事侵攻して分割占領し、韓国が中国の属国となる10%
⑥現状維持とりあえず朝鮮半島の現状が維持される10%
⑦米国による斬首作戦米国が北朝鮮に全面攻撃を仕掛け、国家崩壊した北朝鮮を韓国が吸収する0%
⑧軍事クーデター韓国で軍事クーデターが発生して極左の文在寅(ぶん・ざいいん)大統領を拘束・排除し、日米との友好関係を回復する0%

(【出所】著者作成)

ただ、最新版である『史上3回目の南北首脳会談と朝鮮半島6つのシナリオ』を含め、最近ではこの8つのシナリオのうち、⑦や⑧については排除しています。その理由は、朴槿恵(ぼく・きんけい)前政権が「ろうそく革命」で崩壊して以降、韓国社会の左傾が激しくなったからです。

シナリオ⑦と⑧を排除した理由

2016年12月の時点で、私はシナリオ⑧についても可能性はゼロではないと見ていました。この場合、極端な話、「クーデター」を起こすのは軍部でなくても構いません。2017年3月に憲法裁判所が朴槿恵氏の失職を宣告していなければ、朴槿恵氏自身がそれをやれば良かったのです。

具体的には、朴槿恵氏は大統領復職後、ただちに国家非常事態宣言のうえで憲政を停止し、議会を解散させ、当時の次期大統領の有力候補者だった文在寅(ぶん・ざいいん)氏を拘束するとともに、北朝鮮への全面対決姿勢を示すことです。

これにより、確かに韓国国民が強く反発するであろうことは間違いないと考えられます。しかし、それと同時に韓国政府は日米からの信頼を取り戻し、赤化統一や中華属国化という、韓国にとっての「最悪の事態」を回避する道筋を得ることができたかもしれません。

(※もっとも、朴槿恵氏にそれをやるだけの冷徹さと決断力があったのかといわれれば、それはそれで疑問ですが…。)

しかし、現実には昨年3月10日に朴槿恵氏は憲法裁判所から、裁判官の全員一致で罷免を宣告されてしまい、さらに困ったことに、5月9日には、親北派で極左政治家として知られる文在寅氏が後任大統領に選出されてしまいました。私はこの時点で、シナリオ⑧の可能性はなくなったと考えて撤回しました。

また、当時から北朝鮮による核開発が深刻化していたこともあり、かつ、2016年11月の米国の大統領選でヒラリー・クリントン候補ではなくドナルド・トランプ候補が勝利したことを受け、米国が北朝鮮を全面攻撃し、政権転覆させる可能性はあると考えていました。

しかし、トランプ政権は政権発足後、国務省がろくに機能しておらず、中露両国と北朝鮮処分をめぐっても、いまだに十分な話し合いができているとは言い難い状況です。このため、米国が朝鮮半島の将来に直接介入する可能性は非常に低くなったと考え、「米国主導の南北朝鮮統一」シナリオも撤回しました。

その結果が、①~⑥の「6つのシナリオである」、というわけです。

米軍の北朝鮮攻撃と6シナリオの関係

ただ、当ウェブサイトの読者の方であれば、「米軍が北朝鮮を攻撃するかどうか」、「北朝鮮の核問題はどうなるのか」という点が大きな関心事であるはずです。そこで、次に、この6つのシナリオと、米軍による北朝鮮攻撃との関係を眺めておきましょう。

理屈の上では、米軍が北朝鮮を攻撃するとしたら、次の2つが考えられます。

  • 北朝鮮の軍事拠点などに絞った限定的な攻撃
  • 北朝鮮の体制崩壊を狙った全面的な攻撃

このうち、「限定的な攻撃」については、さらに「ごく軽いジャブを放つ作戦(鼻血作戦)」や、「ミサイル基地・化学兵器格納庫」などに限定した攻撃(サージカル・アタック)などのバリエーションがありますが、共通しているのは、「北朝鮮の現体制を破壊するものではない」、という点です。

限定攻撃シナリオの場合は、別に中国、韓国、ロシアの許可を得る必要はありません。日本海に展開した米空母から爆撃機などを出撃させ、空爆すれば済むからです。その意味で、「お手軽な作戦」であることは間違いないでしょう。

一方で、先ほどのシナリオ⑦でも触れた「北朝鮮の体制崩壊を狙った全面的な攻撃」の場合、空爆だけでは終わらず、地上戦を展開する必要が出てきます。当然、北朝鮮と陸上で国境を接する中国やロシアの了解がなければ成功しません。

そして、米国が北朝鮮の核のCVID(※)を実現するためには、なにもわざわざ、危険な全面攻撃作戦に出る必要はありません(※「CVID」とは「完全な、検証可能な、かつ不可逆な方法での廃棄」(Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement)の略称)。

日本を初めとする国際社会と一緒になって、経済・金融面で北朝鮮を締め上げれば、そのうち北朝鮮が音をあげて来るからです(これが現在、日米両国政府が北朝鮮に対して行っている「最大限の圧力」作戦です)。

そして、限定爆撃作戦だと、「米国が主導して北朝鮮の体制を崩壊させる」ということはできません。せいぜい、北朝鮮の体制が弱り、クーデターで金正恩体制が倒れ、権力の空白を衝く形で中国とロシアが北朝鮮を分割占領するのが関の山でしょう(これがシナリオ⑤です)。

また、シナリオ⑤については、「限定攻撃」以外の場合にも実現する可能性があります。具体的には、日米が行っている経済制裁のすえに、北朝鮮の独裁体制が耐えられなくなり、崩壊してしまう、というシナリオです。

軍事攻撃によらずに北朝鮮の独裁体制を崩壊させる可能性があるならば、米国としてはわざわざリスクを冒してまで北朝鮮攻撃に踏み切るでしょうか?私は昨年末頃、「その可能性は50%程度だ」と考えていましたが、現在、その可能性はきわめて低くなっていると考えています。

シナリオ⑧なら日米が歓迎したかもしれない

ところで、図表1の「8つのシナリオ」に戻り、これについて、もう少し深掘りしてみましょう。

8つのうち、シナリオ⑧(4月時点の予想確率はゼロ%)については、これらのなかできわめて異例です。それは、「韓国自身が韓国の将来を決めるというシナリオ」だからです(もっとも、決めるのは韓国国民ではなく、韓国国内の軍事エリートなのかもしれませんが…)。

このシナリオは、韓国が自らの意思により、「韓国は日米両国と同じ自由主義陣営に留まる」と宣言するというものであり、仮に韓国がこの宣言をすれば、日本と米国はこの決定を尊重し、かつ、歓迎したに違いありません。

何より、韓国自身にとってのもっとも幸福なシナリオとは、日米両国と同じ「自由民主主義陣営」に留まることです。それをすることで、国民は自由を謳歌し、経済発展を続け、西側諸国の一員として名誉ある地位を占めることだって可能でした。

しかし、私はこの⑧のシナリオについて、現時点でその実現可能性はゼロと見ています。なぜなら、韓国国民自身が、文在寅氏という、国を破滅に導く指導者を選んでしまったからであり、かつ、韓国は民主主義国家だからです。よって、国際社会としても、韓国の選択を尊重するより方法はありません。

必然的に、①~⑤(あるいは⑥)のいずれかのシナリオに流れていくしかないのです。

シナリオ①~⑤の共通点と板門店宣言

ところで、6つのシナリオのうち、⑥を除く①~⑤のシナリオには、1つの共通点があります。それは、「もはや韓国自身が韓国の将来を決めることはできない」、という点です。もっといえば、韓国の将来を決めるのは北朝鮮であったり、中国であったり、米国であったり、ロシアであったりするわけです。

韓国国内では、先月27日の南北首脳会談と「板門店宣言」を、「韓半島(朝鮮半島)に平和が訪れる契機になる」として、諸手を挙げて歓迎したようです。しかし、実際にはこの板門店宣言こそ、韓国が北朝鮮面に堕ちた証拠であり、米国が韓国を見捨てるきっかけとなりかねません。

韓国政府が公式発表した「板門店宣言」(日本語版)の原文を、私自身の文責で要約しておくと、次のとおりです。

  • ①南北は、我が民族の運命は我々自身が決定するという民族自主の原則を確認し、過去の南北宣言とすべての合意を徹底的に履行することにより、関係改善と発展の転換的局面を開いていくことにした。
  • ②南北は、高官級会談を始めとする各分野の対話と交渉を早期に開催し、首脳会談で合意された問題を実践するための積極的な対策を立てていくことにした。
  • ③南北は、当局間の協議を緊密に行い、民間交流と協力を円滑に確保するために、双方の当局者が常駐する南北共同連絡事務所を開城地域に設置することにした。
  • ④南北は、民族の和解と団結の雰囲気を盛り上げていくために、各界各層の多様な協力と交流往来と接触を活性化することにした。
  • ⑤南北は、民族分断により発生した人道的問題を早急に解決するために努力し、南北赤十字会談を開催し、離散家族・親戚の再会を始めとする諸問題を協議解決していくことにした。
  • ⑥南北は、民族経済の均衡ある発展と共同繁栄を達成するために、10・4宣言で合意された事業を積極的に推進して行き、一次的に東海線および京義線鉄道と道路を接続して近代化し、活用するための実践的な対策を取っていくことにした。
  • ⑦南北は、地上と海上、空中を始めとするすべての領域で軍事的緊張と対立の基となる相手に対する一切の敵対行為を全面停止することにした。
  • ⑧南北は西海の北方限界線一帯を平和水域とし、偶発的な軍事的衝突を防止し、安全な漁労活動を確保するための実際的な対策を立てていくことにした。
  • ⑨南北は、相互協力と交流、往来と接触が活性化されることによる様々な軍事的保障対策を取ることにした。南北は、双方の間に提起された軍事的問題を遅滞なく協議解決するために、国防長官会談を始めとする軍事当局者会談を頻繁に開催し、5月中にまず、将官級軍事会談を開くことにした。
  • ⑩南北は、いかなる形態の武力も互いに使用しないことについての不可侵合意を再確認し、遵守していくことにした。
  • ⑪南北は、軍事的緊張が解消され、互いの軍事的信頼が実質的に構築されるのに従って、段階的に軍縮を実現していくことにした。
  • ⑫南北は、停戦協定締結65年になる今年、終戦を宣言し、停戦協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制構築のための米南北3者または米中南北4者会談の開催を積極的に推進していく。
  • ⑬南と北は、完全な非核化を通じて核のない韓半島を実現するという共通の目標を確認した。

(※ただし、ところどころ、間の駄文を端折っています。)

このうち①~⑥が南北経済協力、⑦~⑫が南北停戦、⑬が朝鮮半島全域の非核化です。全世界から経済制裁を喰らっている北朝鮮への経済支援・協力を申し出るとは、正気の沙汰とは思えません(『【昼刊】あらためて「韓国への」経済制裁を提唱する』参照)。

これについて日本経済新聞社の鈴置元編集委員は、この⑬が「米韓同盟の終焉を意味する」と指摘されていますが(『【夜刊】鈴置説「米韓同盟破棄」の衝撃』参照)、板門店宣言が韓国の命運を決定づけてしまった格好です。

いずれにせよ、この板門店宣言をもって、「今日・明日にも米韓同盟がなくなる」という短絡的なものでもありませんが、中・長期的に見て、米韓同盟が解消される確率が上昇したことは間違いありません。

分水嶺となるのはシンガポール会談

出不精の金正恩の動きは不自然

一方、北朝鮮の独裁者である金正恩(きん・しょうおん)の動きが急です。金正恩は今年3月に、韓国側の使節と会い、その後、3月下旬には中国を訪問。4月27日に韓国大統領と会い、さらに5月上旬には再度中国を訪問し、習近平(しゅう・きんぺい)国家主席と面会しています(図表2)。

図表2 動きが急すぎる金正恩
日付出来事備考
3月5日韓国の「特使」、北朝鮮の独裁者・金正恩(きん・しょうおん)との間で、夕食を含めて4時間12分に及び面会【夕刊】どうして南北特使報道が出てこないのか』参照
3月25~28日北朝鮮の独裁者・金正恩が訪中。習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席とも首脳会談を果たす中朝首脳会談の思惑と「6つのシナリオ」』参照
3月下旬~4月上旬ポンペオCIA長官(当時)が極秘裏に北朝鮮を訪問していたと報じられる【夕刊】安倍総理の圧倒的存在感:日米首脳会談の滑り出しは上々』参照
4月27日金正恩が板門店を訪問し、南北首脳会談を開催し、「板門店宣言」を発する史上3回目の南北首脳会談と朝鮮半島6つのシナリオ』参照
5月7~8日金正恩が中国・大連を訪問し、ふたたび習近平国家主席と首脳会談を行う【速報】米国のイラン核合意離脱と「PVID」、そして金正恩の焦り』参照
5月9日ポンペオ国務長官が2度目の訪朝【速報】北朝鮮、韓国系米国人3人を解放』参照

(【出所】著者調べ)

あの内弁慶の金正恩が、犬猿の仲だったはずの習近平国家主席と2ヵ月間弱で2回も面会し、また、米国の外交トップであるポンペオ氏とも2回会っています。さらに、韓国の特使と面会したあとは韓国大統領とも直接会っているのです。

あの「出不精」の金正恩が、どうして3月上旬から今までのこの短い期間に、頻繁にメディアに露出しているのでしょうか?

おそらくその理由は、日米が主導する経済制裁により、北朝鮮が相当に追い込まれているからでしょう。実際、シンガポールでの米朝首脳会談の日程が6月12日に決まりましたが、これなども、北朝鮮が困っていなければ応じなかった可能性は高いでしょう。

臆病者の金正恩、すんなり米朝会談は開かれるのか?

先日紹介したとおり、「鈴置説」によれば、米朝首脳会談に先立って、ポンペオ国務長官は金正恩に対し、米韓同盟破棄と核のCVIDを引き換えにすることを提案し、場合によっては金正恩がこれを呑むかもしれない、というものです。

もっとも、本当に金正恩が、6月12日にシンガポールに現れるのかは、私にはわかりません。それは、金正恩がトランプ大統領と会う前に怖気づいて、会合をドタキャンしてしまうという可能性がゼロではないと思うからです。朝鮮半島のメンタリティは、私たち日本人の常識では推し量れません。

さらに、一部報道によれば、この日、中国の習近平国家主席や日本の安倍晋三総理大臣もシンガポールを訪れるかもしれない、といった観測もあるようです。こうなってくると、シンプルに米朝両国だけの首脳会談となるのではなく、これに日中両国が加わって「4ヵ国会談」となるかもしれません。

それはさておき、もしシンガポール会談が開かれた場合には、

  • (A)北朝鮮が米韓同盟の破棄と在韓米軍撤退を条件に、核のCVIDに応じる(鈴置説)
  • (B)北朝鮮が無条件に、核のCVIDに応じる(北朝鮮の無条件譲歩)
  • (C)トランプ大統領が席を蹴り、交渉が決裂する(米朝交渉決裂)
  • (D)米国が北の核保有を限定的に認め、米朝国交正常化する(米国の譲歩)

といった可能性があります(もちろん、金正恩が逃げなかったら、という話ですが…)。そして、(D)という選択肢を米国に取らせないために、日本としては最善の努力をしなければなりません(これについては『米大使館のエルサレム移転と米朝首脳会談の不気味な符合』の末尾で主張したとおりです)。

不気味な沈黙を守る中国とロシア

ただ、北朝鮮はすんなりと核のCVIDに応じるのでしょうか?

私には、そうは思えません。北朝鮮が人民の生活を犠牲にしてまで核兵器を開発してきた理由は、実戦使用するためではありません。おもに転売するためです(『このうえなく能天気かつ無責任な韓国の「朝鮮半島平和論」』の『北が核開発する目的は「実戦使用するため」ではない』参照)。

これに対し、米国が求めているCVIDとは、「半年から1年以内に、北朝鮮が所持しているすべての核兵器・大量破壊兵器と核技術者を米国などの国際社会に引き渡すことで、完全、検証可能かつ不可逆的な方法での核武装解除を実現すること」(いわゆるリビア方式)です。

自然に考えて、こんな厳しい条件を、北朝鮮が呑むはずがありません。そこで、米国側としては、何らかの「交換条件」を与えてこれを北朝鮮に呑ませる、という選択肢が出て来ます。これが『【夜刊】鈴置説「米韓同盟破棄」の衝撃』で紹介した、「在韓米軍撤退」、つまり(A)です。

いずれにせよ、私はシンガポール会談が開かれたとしても、(A)や(B)、すなわち北朝鮮が何らかの形でCVIDに応じる可能性は低いと考えます。しかし、だからといって、交渉が決裂したところで、前述のとおり、米国が北朝鮮に軍事オプションを使用する可能性も、同様に高くありません。

一番可能性が高いのは、(C)、すなわちトランプ氏が席を蹴って米朝交渉が決裂する、というシナリオです。ただし、そうなってしまうと、今度は「朝鮮半島の6つのシナリオ」にも甚大な影響が生じて来ます(図表3)。

図表3 朝鮮半島の「6つのシナリオ」更新版(米朝交渉決裂時)
シナリオ名称概要確率の修正
①赤化統一北朝鮮主導で南北朝鮮が統一される(いわゆる「高麗連邦」シナリオ)30%→35%
②韓国の中華属国化北朝鮮という国が存続したまま、韓国だけが中国の属国となる20%→5%
③南北クロス承認北朝鮮を日米両国が国家承認し、韓国が中国の属国となる20%→5%
④統一朝鮮の中華属国化朝鮮半島統一が実現し、かつ、その統一朝鮮が中国の影響下に入る10%→30%
⑤北朝鮮分割中国やロシアが北朝鮮に軍事侵攻して分割占領し、韓国が中国の属国となる10%→20%
⑥現状維持とりあえず朝鮮半島の現状が維持される10%5%

(【出所】著者作成。ただし、ここに示した「予想確率」は、あくまでも、シンガポールにおける米朝会談が決裂した場合の「仮定の話」です。現時点ではまだシンガポール会談が行われていないため、シナリオの確率を本格的に修正する、というものではありません。)

ここでポイントとなるのは、米朝交渉が決裂した場合、米国が北朝鮮を軍事攻撃するとは限らないものの、少なくとも経済制裁はさらに強化されるはずである、という点です。そうなれば、北朝鮮は経済的に干上がり、結果的に国家破綻の危機に瀕するはずです。よって、②、③の可能性はきわめて低くなります。

ただ、経済的に苦慮する北朝鮮を、韓国が同胞のよしみで支援し始め、結果的に南北朝鮮の統一が実現してしまう確率(つまり①)は、むしろ上昇するでしょう(※余談ですが、この場合、韓国も国際社会からの経済制裁を喰らうことになります)。

一方で、朝鮮半島が統一され、かつ、まるごと中国の属国となる可能性(④)についても、確率はそれなりに上昇します。すなわち、韓国は板門店宣言で米国を激怒させたため、米国が米韓同盟の解消に動き、朝鮮半島の力の空白とともに、統一朝鮮が中国の属領のようになってしまう、というものです。

また、北朝鮮が窮地に陥ることで、ますます経済状態・金正恩の権力基盤が悪化するでしょう。そうなってくると、この隙をついて中露両国が談合し、北朝鮮を分割占領してしまうシナリオ(⑤)についても同様に、可能性は今よりも上昇するでしょう。

「さようなら、韓国」

ただし、繰り返しになりますが、①~⑤に共通しているのは、韓国がプレイヤーではない、という点です。韓国は2016年の「ろうそく革命」で民主主義を放棄し、2017年の文在寅政権誕生で独立を放棄しました。韓国にはもはや、嵐に揺れる小舟のごとく、国際社会の波に翻弄される以外の道はありません。

また、韓国は平昌冬季五輪期間中を含め、一貫して米国を苛立たせ、激怒させてきたことは間違いありません。こうした事情を考えるならば、中・長期的に見て、米韓同盟が消滅することは、既定路線であると考えて良いでしょう。

当然、米韓同盟が消滅すれば、日韓関係も無事ではいられません。

実は、日本は遅ればせながら、韓国を「単なる隣国」に格下げしています(『【昼刊】外務省、遅まきながらも韓国を「単なる隣国」に格下げ』参照)。それに続く日本政府のアクションがないのが少し不安ですが、遅かれ早かれ、日韓関係も「清算」の方向に向かわざるを得ません。

それがどういう形に落ち着くのかは、まだ見えて来ませんが、少なくとも「日韓両国がともに手を取り合い、未来に向けて発展することを目指す」という関係ではないことは間違いありません。そして、この「日本が韓国とどう付き合っていくべきか」という論点についても、深く議論する価値があります。

よって、近い将来、「日韓関係の将来」に関する議論についてもアップデートしてみたいと思います。どうかご期待ください。

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緊急更新「朝鮮半島の6つのシナリオ」仮定版” に対して3件のコメントがあります。

  1. めがねのおやじ より:

    < 今日も更新ありがとうございます。
    < 今、書いている時点でシンガポールでの米朝会談の雲行きが怪しくなっていますが、とはいっても北朝鮮が何時もの如く約束破り、国同士の決定事項を蔑ろにする「ちゃぶ台返し」をやっているだけです。ここは朝鮮民族の民度をスタンダードとせず、『シンガポールでの会談が行われたとしたら』という仮定で話を進めます。
    < 北朝鮮・金正恩委員長は繰り返しになりますが、CVIDを絶対に捨てません。国体を維持できる唯一の手段だからです。それでナイフをチラつかせるが如く、周辺国向けにパレードという軍事威嚇行為だけしていればいいんです(余談ですが、いつ画像で見てもミサイルを載せたトレーラー、多軸式で古臭いよな。1950年代ソ連製か(笑)。よほどの交換条件を出しても呑まないでしょう。「核を販売する」事が主眼。
    < ではポンペオ長官が提案したCVID実施と引き替えに在韓米軍撤去はどうか。私は南朝鮮を文を傀儡にして取れている現状なので、この条件も蹴ると思う。そしたらトランプ大統領とは決裂です。新宿会計士様の6つのストーリーの中で、①の「赤化統一」、④の「朝鮮統一後の中華属国化」が可能性が一番高いと思います。①は韓国愚民の多くが行く行くの事も考えず、マンセーするでしょう。また板門店でもう一度米国等大国抜きで手打ちをやるかも(これは厳密には朝鮮戦争の停戦から終戦にはならない。米国という連合国が当事者である為)逆に②「韓国の中華属国化」や③「南北クロス承認」、⑧の「現状維持」は殆ど可能性が低くなったと見ます。
    < なお、豊渓里の崩落した核実験場破棄のショーはやるでしょう。全く茶番ですがやりたいなら、やらしとけばいい。決裂して統一朝鮮になったら、米国の日本へのシフト、日本の地勢的重要度は飛躍的に高くなりますし、大陸側と海洋国家側が見事に二分されると思います。軽いジャブ程度でも米国は駐韓米軍撤去の代償として、中露に一方的に伝えた直後、核施設のサージカル アタックをやるかもしれない。
    < 失礼します。

  2. 匿名 より:

    日本国に朝鮮半島を語る資格は無い 敗戦国が何が大東亜共栄圏?自国民や統治した現地人を騙して大戦を仕掛け敗れるは一般民衆は関係ないだろ 戦後処理を白人に委ねるな 敗れるのであれば 最初からするな 何がアジアだか分からん 列島は大陸に地続きではない 何でもやって下さい ボケ!

    1. りょうちん より:

      釣り針が、でかすぎです。

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