【速報】AIIBが最高格付取得の意味

本日3本目のネタは、「緊急ニュース」です。

AIIB、最高格付を取得

読者であるunagimo3様からのコメントで、格付会社のムーディーズがアジアインフラ投資銀行(AIIB)に対し、「Aaa」の格付を付与したという情報を頂きました。unagimo3様、貴重な情報をありがとうございます。

Moody’s Gives AIIB Top Credit Rating(2017/06/29 13:02 JST付 Bloomberg Newsより)

以前私は、中国が主導する国際開発銀行(MDB)であるAIIBが、銀行自己資本比率規制(いわゆるバーゼル規制)上の適格格付機関(ECAI)のレーティングを取得していないという事実を指摘して来ましたが、この前提条件が一つ崩れた格好となっています。ムーディーズ自体、多くの国の規制当局にとっては「適格格付機関」とみなされているからです。

もちろん、今回の同社の決定は、外部格付の決定の不透明さという観点からは、大きな問題があります。世界の主要なECAIのうち、特にムーディーズが付与する外部格付には不透明さが強く(※あくまでも私の主観です)、バーゼル規制上もリスク・ウェイトの判定に用いるには不適格ではないかと考えています。

ただし、今回のムーディーズの決定により、本邦の金融機関がAIIBに投資する際の「リスク・ウェイト」が変わります。

これまでであれば、AIIBは「無格付」でしたので、本邦の金融機関がAIIBの発行する債券を取得する場合には、「100%以上のリスク・ウェイト」が適用されていました。しかし、今回の決定により、「20%のリスク・ウェイト」を適用することが可能となります。

仮に、AIIBが円建ての債券を発行すれば、資金運用難に悩む日本の金融機関がこぞってAIIB債に群がる可能性も高く、事実上、日本の金融システムからAIIBに大量の資金が流れてしまう可能性に道が開かれたという点では、十分に警戒すべきでしょう。

日本はAIIBとどう「付き合う」べきか?

AIIBはガバナンス(統治機構)に大きな問題点を抱えており、理事会がどこで開かれているかもわかりませんし、融資承認プロセスも不透明ですし、さらに(少なくとも現時点においては)貸借対照表などのディスクロージャーが見当たりません。このような組織に、日本政府が貴重な血税を投じるべきではないことは間違いありませんが、それと同時に、日本の民間金融機関の資金が、「AIIB債」などの形でAIIBに流れてしまうことも、国益の観点からは望ましくありません。

ムーディーズの格付が付与されたことで、少なくとも本邦の金融機関はAIIBのリスクを100%から20%に圧縮することができるようになってしまいました。金融行政上、本邦金融機関がAIIBに投資するという流れを規制するのは困難かもしれませんが、金融庁はこの事実と実態を、至急、把握すべきでしょう。

もちろん、銀行などの金融機関は「民間組織」であり、民間組織がどういう投資を行おうが「自己責任」です。しかし、その一方で、銀行等金融機関を支える金融システムは、潜在的には日本国民の税金負担で運営されていることを忘れてはなりません。悩ましい問題ですが、日本政府としては、日本の金融システムの資金がAIIBに流れてしまうことをある程度覚悟しなければならないでしょう。

非常に悩ましい話ですが、この論点については、近日中に改めて議論したいと考えております。

読者コメント一覧

  1. 非国民 より:

    民間金融機関には自由に判断させたらよい。AIIBが破綻したら民間金融機関がつぶれても仕方ない。そのかわり民間金融機関が何に投資しているかは開示すべきだ。預金者や投資家はそれでどこにお金を預けるかを考えるべきだと思う。中国はメンツを重んじる国なのでAIIBがつぶれないように何かあれば支援する可能性が高い。債権の元本と利息がちゃんと支払われれば誰にでも貸すのが民間金融機関だと思う。

    1. 銀行員 より:

      某金融機関で資金証券部に所属しているものです。初めてのコメントをお許しください。

      純粋な民間企業だったらば、経済原理に従えば、「金融機関に自由に判断させたらよい」というのは正しいです。しかし、金融機関(銀行や信用金庫など)の場合は、倒産しそうになった場合には、預金保険法に従い公的資金(つまり国民の税金)が投入されます(ブログ主さんには釈迦に説法だと思いますが)。金融機関は民間企業ですが公的な金融システムの一部を構成しています。だから、「金融機関の判断でジャンクボンドを好き勝手買って良い」という理屈は間違っています。

      韓国の企業・銀行が日本市場で起債していますが(ちなみに債「権」じゃなくて債「券」ですよ)、韓国の国家デフォルトが起これば当然韓国の銀行が発行した債券も償還できなくなり、その結果、日本の銀行の中には自己資本不足に陥るところもあります。「ソトモノ」「ゲテモノ」を好き好んで買うことで有名な某第二地銀なんかがその典型例でしょうね。そうなったら、「その銀行が倒産すれば良い」という単純なものではありません。

      あと、戦後に「ペイオフ」(銀行の完全な破たん処理)が行われたのは木村ナントカいう詐欺師が経営していた日本振興銀行の事例だけです。普通のネトバン、地銀、第二地銀だと、ペイオフ処理は凄い混乱が生じます。不可能です。

      その意味で、銀行がAIIB債を容易に買えるようになったことを警戒するブログ主さんの意見には全面的に賛成です。私は過去にブログ主さんがリスク・ウェイトの議論をしているのを見て、「この人は只者ではない」と思いましたが、「ソブリン扱いされるMDBにAIIBが入っていない」という点を指摘した人は、他のマスコミやブログの例はないんじゃないですか?

      是非、リスク・ウェイト(できれば格付けクリフ効果あたりも)で記事を書いてください。

      1. ムル より:

        おおわざわざ解説を有難うございます。
        たまにコメント欄に本職の人も補足的に解説してくれるんで助かります。
        しっかし他国にAIIBは危険だから入るなと警告していた米国がどうして格付けを許したのかも疑問ですね。(そもそも米国が格付けを止めれるかどうかは詳しくないんで知りませんが)

        韓国に経済制裁出来ないのは某地銀貴様のせいなのかよ………初めて知ったよそんな事(;´д`)
        そして一番の悩みの種がAIIBに投資を進めそうな勢力な訳だが…………
        自民党親中派二階派、マスゴミ、野党、共産党、在日、天下りしたい官僚、中国の工作員……うっ頭が

      2. 銀行員 様

        コメント大変ありがとうございます。頂いたご指摘は概ね正確なものと思量いたします。

        ご承知の通り、私は本職でバーゼル規制を詳しく研究しております。つきましては、リスク・ウェイト(SA/IRB)と関連してMDBを包括的に取り上げた記事を近日中に上梓します。

        当ウェブサイトの今後の更新予定については、土曜日を目途に「米韓首脳会談」ネタで1本記事を作成したいと考えているため、AIIBの件につきましては、日曜日か月曜日を目途に、バーゼル規制ネタと絡めて上梓したいと考えております。預金保険法の特別危機管理措置等につきましても言及したいと考えておりますので、上梓後には本職の立場から補足すべき点があればぜひコメントを賜りますと幸いです。

        引き続きご愛読賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

      3. 非国民 より:

        銀行員さん、ありがとうございます。地銀でペイオフが不可能なら、お金がいっぱいある人は大手金融機関ではなく、地銀に預けておけば安心なんですね。そんなこと普通の人は知りません。特に会社経営をしている人は1,000万円なんてあっという間に到達するので万が一銀行が倒産したらどうするか内心不安な人はいっぱいいます。

  2. 非国民 より:

    格付け会社は買収されているんじゃないですか?だって格付けがなんかおかしいと思いませんか?日本政府の借金はすべて円。日本政府はお札を印刷できるのでいくら借金があってもお札で返済可能。ハイパーインフレになるかもしれませんが、返済不能ということはないはずでAAAでもおかしくないと思います。ところで日銀は日本国債をいっぱい保有しているそうですが、日銀が日本国債を債権放棄すると日本政府の借金はなくなるのかな?ま、そんな話はきいたことがないので、何かの理由で不可能なんでしょうね。

  3. たまる より:

    こんばんわ。

    AIIBについて非常に深い考察を公開いただきありがとうございます。

    ムーディーズの評価理由報告書(Credit opinion)は250ドルもするので、彼らの評価が正しいかどうか第三者が評価するために、わざわざムーディーズから評価理由書を250ドル払って買わないといけないというのが何より不当だと思いますが、仕方がないので買っています。

    タイプミスを恐れずに適当に打ちますが、
    Total Assets USD Million 17795
    Return on Average Assets % 1.9
    Usable Equity/gross loans outstanding+ equity opeartion % 186222.4
    Gross Non-performing loans/gross loans outstanding % 0.0
    Shorterm debt + callable capital/liquid assets % 0.1
    total debt/discounted callable capital % 0.0
    1.9%のリターンしか得られていないですね。また、これらの数字の大半はAIIBが何もしていないことを示しているように思われます。

    格付けが下がる危険性要因に、資産価値の棄損などのごく普通の要因に加え、ガバナンスの欠如、AIIBに対する政治的干渉が挙げられています。

    AIIBのAnnual Report 2016の後半のFinancial Statementsを見ると、驚くのが一般管理経費の中の人件費の項目です。staff costs 12226千ドルのうち、Short-term employee benefitsが 10826千ドルで大半を占めるので、端的に言えば、1年契約の職員ということでしょう。実際、Annual Reportにも1年間仮採用で3年未満の契約にしていると明記してありますので、設立時に1年間の仮採用になった職員しかいないということです。
    職員数は24カ国から79人だそうですが非常に少ないので、AIIBの融資部門は人員不足で単独融資は到底できないでしょう。AIIBの職員の賃金水準が不明確なので、優秀な人材が集まりにくいと思われます。
    IBRD(HQ,8684人)で賃金構造は、最低ランクの最低賃金が23900米ドルで、最高ランクの最高賃金が410000米ドルで20倍の差があります(若手の低賃金労働者がいるため)。ADBで81000米ドルから360500米ドルで4倍の差がありますが、最高賃金はIBRDにさほど劣りません。国際競争しているので賃金水準が高くないと優秀なリクルートができないです。AIIBは職員数が少ないために、こうした賃金構造を公表しておらず、いちいち応募の際に自分の賃金を聞かないといけないので、中国人で中国で帰りたいとか、北京で働くのを希望するとかを除けば、契約切れ等の事情がない限りわざわざ応募したいと思わないでしょう。単独融資をしたければ国際競争可能な好待遇を保障しないといけないはずですけどね

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