出版業界と技術革新

ここ数日、やや「重いネタ」が続きましたが、本日は出版業界に関する「軽いネタ」を紹介したいと思います。

読者の皆様への御礼

本日は私自身にとっての「吉報」があります。

以前、専門書の刊行でお世話になった出版社から、私の専門分野の一つである通貨・為替論に関して、ごく簡単な「入門書」の執筆を依頼されました。「専門的な内容をわかりやすく説明することができる」という点について、非常に高く評価して頂いたようです。

こうした仕事を頂いたのは、間接的に、当ウェブサイトを運営していたおかげです。当ウェブサイトは私が「趣味」の一環として(しかも「新宿会計士」という匿名で)運営しているものですが、結果的に「専門的な内容を誰にでもわかりやすく執筆する」という訓練になっているからです。

当ウェブサイトを読み返してみると、「ハード・カレンシー」や「人民元」、「オフショア決済」、あるいは「日韓通貨スワップ」など、金融・通貨に関する専門的な概念が大量に出てきます。こんなマニアックなウェブサイトを日々読んで下さる千人を超える読者の皆様、さらには日々コメントを下さる皆様には、改めて心より感謝申し上げたいと思います。

「アマゾンの横暴」?

意外と儲からない書籍の出版

私はこれまで、単行本を3冊出版していますが、出版のペースは2012年、2015年、2017年であり、ほぼ2~3年に1回の計算です。ただ、出版社の厚意もあり、今年9月にはもう1冊、金融規制に関する専門書を刊行予定であり、これに加えて年内の「入門書」の執筆依頼を受けたため、順調にいけば、今年は人生で初めて、1年間に3冊の書籍を出版することになりそうです。

また、当時勤務していた会社の仲間と共同で出版した書籍も3冊ありますが、これらを自分自身の出版履歴に含めて良ければ、私は人生で8冊の書籍を執筆した計算となります(図表1)。

図表1 私の書籍出版履歴
出版年月ジャンル形態
2008年3月金融商品に関する入門書共著
2012年3月金融規制に関する専門書共著
2012年11月金融商品に関する専門書単著
2014年3月金融規制に関する専門書共著
2015年3月金融商品に関する専門書単著
2017年3月金融商品に関する専門書単著
2017年9月(予定)金融規制に関する専門書単著
2017年10月(予定)金融商品に関する入門書単著

なぜここまでたくさんの書籍を刊行しているかといえば、一番大きな理由は、「自分自身がやった仕事を形に残したい」という希望があるからです。もっとも、最近は、2年前に起こした会社の売上高が少なく、いろいろと稼がなければならない(笑)という事情もありますが…。

もちろん、私は時間があればもっとたくさんの専門書や入門書を執筆したいと思っています。しかし、1冊の書籍を執筆するのも非常に大変であり、1冊仕上げるのに最低半年は必要です。なぜなら、ベースとなる原稿を書き上げるのに、どんなに頑張っても2ヵ月かかりますし、それを「初校ゲラ」⇒「再校ゲラ」⇒「念校ゲラ」とやり取りするのにも、数週間ずつ必要だからです。

そして、私は書籍を刊行する際、某著名な専門書の出版社のお世話になっています。出版の条件とは、専門書であるため、多くの場合は次のようなものです。

  • 初刷は1,000部~1,500部程度
  • 単価は3,000円~4,000円程度
  • 印税は販売価格の10%

つまり、「消費税込み3,500円の書籍を1,000冊刷れば、印税は35万円」です。

半年仕事して35万円」!意外と儲かりませんね(笑)

もちろん、著名人であれば「印税は販売価格の20%」という場合もあるようですが、残念ながら私は著名人でも何でもありませんから、10%いただければ「御の字」です。

「虎ノ門ファミリー」の印税は?

一方、私が毎週、楽しみに視聴しているインターネット番組『真相深入り!虎ノ門ニュース』のレギュラー・コメンテーターの皆様は、最近、相次いでご著書を出版されているようです(図表2)。

図表2 「虎ノ門ファミリー」の皆様のご著書
著者著書単価ランキング
上念司さん習近平が隠す本当は世界3位の中国経済 (講談社+α新書)907円96位
有本香さん「小池劇場」が日本を滅ぼす1,404円101位
百田尚樹さん今こそ、韓国に謝ろう1,400円3位

(【出所】アマゾンドットコム。なお、「ランキング」は今週月曜日時点のもの)

いずれのご著書もランキングから判断する限り、売れ行きは好調で、とくに百田尚樹さんの『今こそ、韓国に謝ろう』に至っては、数日連続して1位をキープしていたというほどです。

ところで、これらの著名人の方が出版されるのであれば、おそらく印税率は10%でなく、20%、あるいは30%というケースもあるでしょう。ただ、標準的に「印税率は10%だった」と仮定し、初刷で1万部発行されたとすると、収入はどの程度になるのでしょうか?

上念司さんの場合は90.7万円、有本香さんの場合は140.4万円、百田尚樹さんの場合は140万円です。意外と儲からないものですね(笑)

もっとも、『虎ノ門ニュース』に出演された百田尚樹さんによると、『今こそ、韓国に謝ろう』は現時点で10万部以上売れているようですから、印税は1400万円を下らないであろうと考えられます。

ということは、「書籍を執筆して儲ける」ためには、必然的に「売れる本」を書かなければならない、ということです。

仮に私が半年かけて執筆した書籍で入ってくる印税が35万円だったら、1ヵ月の労働対価はわずか5万円程度だという計算です。しかし、印税が350万円なら1ヵ月の対価は50万円、印税が3500万円なら1ヵ月の対価は500万円です。

ふぅ、まだまだ遠そうですね(笑)

出版社も「売れる本」「儲かる本」を出したがる!

ところで、書籍がたくさん売れれば、著者にも印税が入ってきますが、それと同時に、出版社としても儲かるはずです。

ということは、出版社としても「売れる本」、すなわち「儲かる本」の方が、「売れない本」(すなわち「儲からない本」)よりも出版したいと思うのは当然でしょう。ただでさえ「出版不況」の折り、百田尚樹先生のようにベストセラーを連発する作家は、出版社から見ても有難いに違いありません。

ところで、百田尚樹氏は朝日新聞社から嫌われているためでしょうか、同氏のベストセラーは朝日新聞社からことごとく無視されています。

百田尚樹さんご自身のツイッターによると、将棋で連勝を続けている藤井聡太さん(14)は愛読書として百田尚樹さんの『海賊と呼ばれた男』を挙げているのに、それを朝日新聞の毒コラム『天声人語』が無視したという出来事が紹介されています。

左がかった人たちの間では、最近、なぜ自分たちが人々から拒絶されているのか、その理由を突き詰めようともせずに、「日本社会が右傾化している!」などとヒステリックに叫んでいます。しかし、冷静に考えてみたら、世の中「売れるモノが売れる」のです。朝日新聞が売れている理由は、新聞業界の参入障壁が高すぎて、人々が仕方なしに朝日新聞を購読しているだけの話であり、そのうち人々は新聞自体を読まなくなるでしょう。

編集長、アマゾンに切れる!

ところで、先日、金融商品に関する入門書の執筆案件の打ち合わせで出版社を訪問した際、私がお世話になっている編集長といろいろ話をしてきたのですが、最近は出版も儲からなくなってきているようです。

考えてみれば当たり前ですが、私自身、仕事をするときに、PCを操作することは増えましたが、書籍をペラペラめくりながら調べ物をする、ということはやらなくなりました。書籍の執筆者でさえこうなのですから、普通の会社員や公務員の方であれば、なおさら「紙の資料を使った調べもの」など、滅多にやらないのではないでしょうか?

実際、電子辞書が普及したことに加え、英語の辞書サイトグーグル翻訳などの機能が充実して来たため、英語をはじめとする語学の辞書もかつてほどは売れなくなっているようですし、紙にびっちりと情報が書かれた専門書を読み込むという人も少ないと考えられます。

当然、小さな書店の多くも経営難のため、店じまいするところが増えているようです。私自身、新宿にはかれこれ20年近く居住していますが、近所にあった書店はほぼ全滅状態にあります。さらに、新宿ローカルの話で恐縮ですが、新宿駅南口にあった「紀伊国屋タイムズスクエア店」が、洋書コーナーを除いて撤退してしまい、その後には人気家具店の「ニトリ」が進出してきたほどです。

出版不況とは、言い換えれば「書店不況」のことなのかもしれません。

こうした中、勢いを増すのが先ほども引用した「アマゾンドットコム」です。

いまや、「読んでみたい本」があれば、評判をアマゾンで確認してから買うという人も多いでしょう。あるいは、アマゾンから送られるメールで、興味のある本をチェックするという人もいらっしゃるかもしれません。つまり、昔は「書店を散策する」という楽しみが、いまや「アマゾンでネットサーフィンする」という形態に変わって行っているのです。

編集長によると、やはり価格競争力があるためでしょうか、「アマゾンは出版社に対して横暴だ!」とお怒りでした。具体的に何がどう横暴なのかはよくわかりませんが、とにかく「横暴だ!」と切れているのです。

誰でも気軽に出版できる!

ただ、出版社にとってアマゾンは「横暴(?)」なのかもしれませんが、私たち一般消費者にとっては、かならずしも「横暴」ではありません。なんだかんだで便利ですし、ポイントが付くこともあります。

こうした中、私がいま注目しているのは、「kindle出版」です。

これは、アマゾンが提供する情報端末「kindle」で閲覧できる電子書籍を出版するというもので、出版社を経由せず、直接、アマゾンにデータを送れば、電子書籍が出版できてしまう、という仕組みです。

印税率は35%と70%のいずれかから選ぶことができ、いずれにせよ出版社で出版するのと比べると破格の値段です。

また、調べてみると、アマゾンだけでなく、最近ではGoogle Play Booksなど、個人で出版できるプラットフォームはインターネット上に多数出現しているようです。

もちろん、世の中には「自費出版」という出版方法もあります。しかし、「自費出版」には金がかかります。仮に自伝とかを「自費出版」するのなら、アマゾンなどの電子書籍を検討してみても良いかもしれません。

技術革新は容赦なく押し寄せる

以上、本日は「出版」という個人的経験を紹介してみました。この体験を通じて痛感するのは、「インターネットの技術の進歩」です。

当ウェブサイトにしたって、ひと昔前だと、一個人が発信する情報が、日々、千人を超える人々に届けられるとは、考えられない話でした。もちろん、新聞だと、すでに明治時代から日刊紙が刊行されていましたが、新聞記者になるためには新聞社に入社する必要がありましたし、昔は原稿も手書きですから、日々、数千文字の文章を人々に向けて配信するなどということは不可能だったに違いありません。

新聞や雑誌、あるいはテレビの退潮が話題になり始めてから久しいですが、技術革新の波は容赦なく押し寄せます。私自身、「紙媒体の専門書」を出版している身分ではありますが、同時にインターネットの技術革新の恩恵をフルに受けている人間でもあります。

私は、「インターネット技術の進展というテーマ」については、今後とも精力的に追いかけていきたいと思います。

読者コメント一覧

  1. ムル より:

    更新ご苦労様です。
    出版社の話とは違いますが米国の下院議員が韓国に在韓米軍撤退かミサイル配備かを迫るべきだと言い現在韓国側が反発しているようです。(どちらかと言うと韓国国民ですが……
    http://japanese.joins.com/article/703/230703.html?servcode=A00&sectcode=A20&cloc=jp|main|ranking

    会談内容と結果は未だ定かではありませんが北東アジアの安全保障に関わる問題なので注視していきましょう。まぁ火に油を注ぐ行為をするか、逆に一切THAAD配備の話題をしないか、米国追従路線に舵を切るかで踏み絵になるでしょう。

  2. 非国民 より:

    液晶パネルのバックライトは従来は冷陰極管が使われていたが、今やほとんどが発光ダイオード。そのため倒産した会社もでた。技術革新は会社の運命を変えることもある。だが、技術革新を止めることはできない。会社は逆に積極的に会社の経営を変えないといけないということだと思う。出版業界も同じ。対応を誤るとつぶれる。

    1. ムルムル より:

      ちょっと待ってなんでここのコメ欄に湧く人たちそんなに色々と詳しいのちょっとレベル高過ぎてドン引きなんですけど……
      これはお前みたいな新参者はROMってろって事なのか(汗……

  3. yoshi より:

    朝日新聞にも広告が載ったようです。
    先に産経に出たものと同じもののようですが、
    インパクトが強すぎです(笑)。
    http://ameblo.jp/japangard/image-12288287811-13971827382.html
    (坂東忠信さんのブログより↑)

  4. 匿名 より:

    ムルムル様、私も新参者で何もわかりませんが、ここの記事をしっかり読んで勉強していきましょう。

    先生、コメントを書かれている皆々様方、これからもよろしくお願いいたします。

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