「国連人権委が日韓合意見直しを勧告」報道のウソ・ほか

本日2本目のコンテンツです。明日のコンテンツを準備している最中に、気になる記事をいくつか発見しましたのでクリッピングしておきます。

日韓関係を巡る「時事ネタ」

「再交渉に応じるべき」が25%もいる衝撃

「日本政府が韓国の財団に対して10億円を拠出することなどをもって慰安婦問題が『最終解決』した」とされる、2015年12月28日付の「日韓慰安婦合意」を巡って、韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)大統領は、さっそく「破棄」「再交渉」を主張しています。この点については、私をはじめとするインターネット上の「韓国ウォッチャー」にとっては、全く予想通りであり、驚くには値しません。

ただ、この「慰安婦合意の最終交渉」を巡り、不可解な調査結果が出ています。

日本国民61%「慰安婦合意の再交渉は必要ない」(2017年05月15日11時22分付 中央日報日本語版より)

韓国のメディア『中央日報』(日本語版)は、日本の読売新聞の調査結果を引用して、

文在寅(ムン・ジェイン)大統領が大統領選挙過程で公約した「韓日慰安婦合意再交渉」に対し、日本国民の過半数が反対していることが分かった

と報じています。中央日報の引用元は、読売新聞の次の記事です。

慰安婦を巡る再交渉、61%「不要」…読売調査(2017年05月15日 07時54分付 読売オンラインより)

読売の元記事がウェブサイトに掲載されたのが本日8時前ですが、その4時間後には中央日報がこれを伝えています。それだけ韓国側の関心も高いという証拠でしょうか?

中央日報も、元記事である読売も、

  • 日本国民の過半数が反対していることが分かった」(中央日報)
  • 今回の調査では、再交渉に対する日本国民の拒否感の強さが浮き彫りとなった」(読売)

と、いずれも「過半数が再交渉に反対している」点に焦点を当てて報じていますが、私にとってむしろ不思議なのは、読売の調査で「再交渉に応じるべきだ」とする意見が25%にも達したことです。

読売がいかなる調査を行ったのかはわかりませんが、私は「読売新聞の調査の結果、日本国民の4分の1が慰安婦合意の蒸し返しに同意している」という点に、強い危機感を抱きます。

日韓関係が「良くなる」材料って、一体何ですか?

一方、同じ中央日報の記事によれば、

慰安婦再交渉のような難題にもかかわらず、日本国民の多くは両国関係が悪化するとは見ていない。韓日関係に関する質問に58%が「変わらない」と答えた。「悪くなる」は23%、「良くなる」は8%だった。

としていますが、この「日韓関係が悪化するとは見ていない」という文章は、原文である読売の記事にはありません。中央日報が勝手に付け足しただけでしょう。

私に言わせれば、確かに読売の調査では「日韓関係は変わらない」とする回答が6割近くに達していますが、これは「朴槿恵(ぼく・きんけい)政権時代、すでに悪化した日韓関係が、これ以上悪くなることはない」という意味かもしれませんし、「日本人の6割は日韓関係に関心がない」という意味かもしれません。

ただ、「良くなる」とする回答は10%以下であり、「悪くなる」とする回答は23%であることを考えるならば、日本国民の日韓関係に対する見通しはネガティブということであり、中央日報の報道ぶりには強いバイアスがかかっていると言わざるを得ません。

「国連委員会が慰安婦合意再交渉を勧告」?

一方、慰安婦合意といえば、数日前に、「国連委員会が慰安婦合意の再交渉を勧告した」と大々的に報道が流れました。

国連委、日韓の慰安婦合意見直し勧告=「補償、名誉回復が不十分」(2017/05/13-08:10付 時事通信より)

時事通信の記事によれば、「国連の人権条約に基づく拷問禁止委員会」は12日、韓国に対する審査報告書の中で、慰安婦合意は「(被害者への)補償や名誉回復、再発防止の保証などが十分ではない」とし、「合意の見直しを勧告した」と述べています。

いわば、「国連が日本に対し、慰安婦合意の見直しを要求した」と受け取られかねない報道ですが、これは明らかな偏向報道です。

記事の中に出てくる「国連の人権条約に基づく拷問禁止委員会」とありますが、「拷問禁止委員会」とは英語で“The Committee Against Torture (CAT)”であり、根拠となっている国際協定は “Convention against Torture and Other Cruel, Inhuman or Degrading Treatment or Punishment” で、日本語訳としては「拷問など残虐で非人道的、あるいは不名誉な取扱い、処罰を禁止するための国際協定」とした方がすっきりします。というのも、 “convention”という単語に「(罰則を伴うほど重い)条約」までの意味はないからです。

それはさておき、報道されている「CATによる勧告」とは、次のリンクのことでしょう。

Concluding observations on the third to fifth periodic reports of the Republic of Korea(2017/05/12付 CATウェブサイトより)

CATの報告書は、どちらかといえば「朝鮮共和国(Republic of Korea、つまり韓国のこと)」に関して、その人権遵守状況などをチェックするものだという位置付けです。そして、勧告はあくまでも韓国政府に対して出されており、その項目の中に、次の項目が含まれているのです。

(d) Revise the Agreement of 28 December 2015 between the Republic of Korea and Japan in order to ensure that the surviving victims of sexual slavery during World War II are provided with redress, including the right to compensation and rehabilitation and the right to truth, reparation and assurances of non-repetitions, in keeping with article 14 of the Convention;

(仮訳)(d)第二次世界大戦中の性的奴隷の犠牲の生き残りが補償を受けること(協定第14条に従い、賠償金を受け取る権利、リハビリテーションを受ける権利、真実を知る権利、再び起こらないようにすることの確約と保証を含む)を確かめるために、2015年12月28日の朝鮮共和国と日本との間の合意を見直すこと

余談ですが、私はこの英語の「ensure」という単語が、役所っぽくて大嫌いです。ただ、ここで述べている内容は、「朝鮮共和国(=韓国)政府がこの合意を見直すこと」であり、「日本政府が」、ではありません。つまり、日本政府としては、この何回で珍奇な「勧告」とやらに従う義務は、一切ないのです。

これを踏まえて時事通信の記事を書きなおすと、「CATが韓国政府に対し日韓合意の見直しを勧告」とでもすべきでしょう。

時事通信さん、記事は正確に書いてくださいね。

明日の予告:「次のステージ」を議論する

日曜日早朝、北朝鮮が新型ミサイルを発射したことは、日本にとっては深刻な脅威ですが、それと同時に危機は日本を自立させる「チャンス」でもあります。そこで明日は、過去に私自身が発信した記事を振り返るとともに、あらためて「自分の足で立つ」ことの重要性を強調したいと思います。どうかご期待ください。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

    時事通信の「国連委、慰安婦問題〜」という報道は、「国連の方から来ました〜」って勝手にセールス始める消火器販売みたいな感じですか。よく会計士様が調べてくれると全然意味合いが違うじゃないですか。馬韓国に対してですね(笑)。読売のは再交渉に肯定的が25%ですが、とても実感として信じられません。しかし日韓の関係が今すでにかつてないほど悪いですから、これ以下はないという意味で「変わらない」が58%、「悪くなる」が23%、足すと
    81%。こう見れば8割以上が悪いまま、またはさらに悪くなると見ていて、妥当だと思います。「良くなる」は、在日の方と親韓派の淡い希望かと。

  2. 風邪の又五郎 より:

    すごいサイト見つけた。めっちゃマニアックでびっくりした。思わずこのサイトの韓国崩壊のタグをじっくりと読んでしまったよ。っていうか、言いたいことをこんなに理路整然とまとめてくれてるからわかりやすい。他の人から嫌韓厨って言われたらその反論でそのまま使わして貰おっと。ムン・ジェインが大統領になってから南朝鮮は完全に反日だね。っていうか慰安婦合意って国際合意なのに、どうして「再交渉が可能だ」ってなるの?まったくもって意味不明。

  3. 黒猫のゴンタ より:

    再交渉反対、産経では8割、読売6割、その差の2割はなんだ?
    ttp://blog.livedoor.jp/rakukan/archives/5214460.html

    反対表明の責任関与の度合いが、設問自体からしてまず違う
    という楽韓さんの指摘や寄せられたコメントもそれぞれ興味深いが

    あたしなんざ単純に、産経が二択なのに読売のアンケートには
    「答えない 14%」
    の三択目があることだろうよと思ったわ
    つか「答えない」のならまずそれ分母から除けよと
    「答えない」という態度があるという意義は認めるとしても

    61÷(25+61)≒71% で「応じるべきではない」は7割
    8割と6割の中取って7割

    「実際の数字この両方の真ん中あたりにありそうな感触ですかね」
    という楽韓さんの感触は単純に説明できそう

    タイトルやリードだけで記事の内容を鵜呑みにしちゃいけないね
    いずれにしてもそういう教訓でした

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