本日も昨日に続いて、「韓国の経済破綻の可能性」について議論します。昨日は外貨準備や為替介入に焦点を当てましたが、本日は家計債務と預貸率に焦点を当てたいと思います。やや専門用語も多数出てきますが、重要な話でもあるため、本日は敢えて、難しい専門用語をそのまま使って議論していきます。

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    ↓本文へ

    ここからが本文です。

    続・「韓国経済の破綻」

    昨日の続きについて

    昨日は、私が「愛読」(?)しているメディア『中央日報』の日本語版に掲載された、次の記事の前半部分を取り上げました。

    韓経:韓銀総裁「為替操作国指定・4月危機の可能性低い」(2017年02月24日13時51分付 中央日報日本語版より)

    本日はこの記事の後半部分を取り上げるとともに、あわせて次の記事の内容についても、テーマとして取り上げてみたいと思います。

    韓国の家計負債1200兆ウォン突破…国民1人当たり2400万ウォン(2016年02月25日10時02分付 中央日報日本語版より)

    韓国が抱える「3つの爆弾」

    韓国経済が「3つの爆弾」を抱えている、というのは、私の持論です。

    ただ、私は根拠なしにそのように申し上げている訳ではありません。韓国銀行が公表する資金循環統計を分析し、日本や欧州などと比較したところ、現在の韓国がギリシャ型の経済破綻に向かっているのではないかと疑わざるを得ない状況が生じていると考えているのです。

    私が考える「3つの爆弾」とは、「キャピタル・フライト・リスク」、「家計債務問題」、「銀行のオーバーローン」です(図表1)。

    図表1 韓国が抱える3つの爆弾
    項目 概要 備考
    キャピタル・フライト・リスク 韓国から資本逃避(キャピタル・フライト)が生じ、韓国の銀行・企業などが調達している外貨建ての債券・借入金がデフォルトする可能性がある 韓国が外国から30~40兆円程度の外貨での借金を負っている一方、外貨準備の75~80%程度はウソである可能性が高い
    家計債務問題 韓国の家計が巨額の債務を抱えている問題 中央銀行は悪性インフレ抑制のための利上げに踏み切り辛い
    銀行のオーバーローン 銀行セクターが負債側の預金以上に資産側で貸出金を計上している問題 歴史上、銀行のオーバーローン問題は金融危機の引き金となることも多い

    これらの問題のうち、「キャピタル・フライト・リスク」に伴う諸論点(外貨準備や外貨債務)については昨日触れたとおりですので(詳しくは『』をご参照ください)、本日は他の2つの問題を見てみましょう。

    家計債務問題

    これらの問題のうち、「家計債務」の問題は深刻です。

    韓国の家計債務はGDP比102%!

    昨日も触れた、冒頭の中央日報日本語版の記事から、韓国銀行の李柱烈(り・ちゅうれつ)総裁の発言を引用してみましょう。

    李総裁は「家計の債務償還能力は全体的に良好」としながらも「国内総生産(GDP)比の家計負債は確かに問題がある」と述べた。続いて「家計の負債を軽視できない理由は、市場金利の上昇圧力と対内外経済環境の不確実性のため」とし「低所得低信用多重債務者など脆弱層の債務負担に留意しなければいけない」と語った。

    この、「家計の債務償還能力は全体的に良好」といった、根拠のない楽観的な発言を行うのは、韓国の政府高官らに共通する悪い点です。

    GDP比の家計債務負担には極めて大きな問題があり、そのことは韓国社会の不安定化につながります。韓国銀行が発表する「資金循環統計」から、韓国の家計部門の金融資産・負債を抽出してみましょう(図表2)。

    図表2 韓国の家計の金融資産・負債状況(2016年9月時点)
    区分 勘定科目 金額(十億ウォン)
    金融資産 現金・預金 1,424,208
    保険・年金基金 1,045,901
    その他の資産 861,447
    金融資産合計(①) 3,331,556
    金融負債 借入金 1,418,226
    その他の負債 98,937
    金融負債合計(②) 1,517,163
    家計純資産 ③=①-② 1,814,394

    (【出所】韓国銀行・資金循環統計)

    韓国の家計資産は3,332兆ウォン(約333兆円)ですが、これに対して家計債務は1,517兆ウォン(約151兆円)で、純資産は1,814兆ウォン(約181兆円)しかありません。そして、韓国のGDP(名目値)は2014年時点で1,485兆ウォン(1.4兆ドル)ですから、GDP比102%(!)もの家計債務が存在している計算です。

    家計債務負担の重さ

    この家計負担について比較するために、日本の家計の状況についても抽出しておきましょう(図表3)。

    図表3 日本の家計の金融資産・負債状況(2016年9月時点)
    区分 勘定科目 金額(億円)
    金融資産 現金・預金 9,160,079
    保険・年金基金 5,214,026
    その他の資産 3,143,671
    金融資産合計(①) 17,517,776
    金融負債 借入金 3,193,274
    その他の負債 653,802
    金融負債合計(②) 3,847,076
    家計純資産 ③=①-② 13,670,700

    つまり、日本の場合は家計資産が1,752兆円(!)、家計純資産は1,367兆円と、いずれも財務省とマスゴミが主張する「国の借金」を大きく上回っている状況です。もちろん、家計債務はGDPの100%を大きく割り込んでいます(図表4)。

    図表4 家計債務の日韓比較
    項目 日本 韓国
    2014年の名目GDP(①) 486兆9390億円 1,485兆0780億ウォン
    2016年9月末家計債務(②) 384兆7076億円 1,517兆1630億ウォン
    債務比率(②÷①) 79% 102%

    つまり、グロスの家計債務だけで見ても、韓国はGDPとほぼ等しい金額を抱えているという、非常に危うい状況にあります。

    家計債務は政府債務などと異なり、債務者は個々人です。このため、国民レベルでの債務管理方法を間違えたら、多重債務のために生活に苦しむ人や、生活に行き詰まる人も多数出現します。

    利上げできない!

    問題はまだあります。それは、キャピタル・フライトが生じた時でも、「通貨防衛のための利上げ」ができない、という点です。

    昨日も『韓国は為替操作国だ―外貨不足の末に…』で論じたとおり、「3711億ドルである」とされる韓国の外貨準備高の中身は非常に怪しいものです。そこで、投機筋が韓国の通貨を売り崩そうとした場合、韓国は通貨防衛のために、外貨準備を売却したり、国内の銀行・企業にドル資金を貸し出したりしなければなりませんが、肝心の外貨準備が乏しければ、通貨防衛のためには利上げするしかありません。

    ただ、韓国銀行が利上げをすれば、家計債務を直撃します。なぜなら、家計は利払い負担に苦しんでいるからです。

    「ヘル朝鮮」

    こうした状況を受けて、でしょうか、韓国国内では最近、「ヘル朝鮮」という言葉が流行しているようです。ここで、興味深い報道を紹介しておきましょう。

    Young South Koreans call their country ‘hell’ and look for ways out(2016/01/31付 WPより)

    米ワシントンポスト(WP)は昨年、韓国では若者を中心に、自分の国のことを「ヘル朝鮮」と呼び、いつかは脱出したいと考えている人が増えている、と報じました。WPは、ある女性が

    She wonders when she goes to sleep each night whether she’ll still have a job in the morning(夜寝るときに、『明日の朝起きると自分の仕事があるかどうかが気になる』)

    と述べているのを報じています。

    家計債務負担が重い状況を作った原因は、いったい何でしょうか?

    過度に輸出に依存した経済構造でしょうか?

    大企業を極端に優遇した税制・産業振興策でしょうか?

    明日への備えを怠る国民性でしょうか?

    あるいはそれらが複雑に絡み合っているのでしょうか?

    そのいずれが正解なのかは、本日は問いません。ただ、事実として、韓国では家計債務負担が極めて重く、そのことは韓国銀行にとって金融政策の自由度を奪い始めているという状況にあることは間違いないとみてよいでしょう。

    オーバーローン

    2日間のシリーズの最後に、「オーバーローン問題」についても、簡単に触れておきたいと思います。

    預貸率とは?

    銀行業の健全性を見る尺度として、「預貸率(よたいりつ)」と呼ばれるものがあります。

    銀行は一般大衆から預金を受け入れて、それを企業や事業者などに貸すことで、「利ザヤ」を得ていますが、一般的に中央銀行は、銀行経営の健全性の観点から、受け入れた預金を全額、融資に回すことを禁止しています。これが「預金準備率」の考え方です。

    例えば、あるお客さんが銀行の窓口に来て、1万円を預けて行ったとします。銀行がこの1万円を、すぐに誰かに貸し付けてしまうと、そのお客さんが再び銀行に来て、「やっぱり気が変わったからお金を引き出す」などと言われると、困ってしまいます。そこで、銀行は顧客から預かった預金の一定割合(預金準備率)を中央銀行に預けなければなりません。これが「中央銀行準備預金」です。

    預金準備率は国によっても異なりますが、日本の銀行(都銀、地銀など)の場合は、2013年4月の「量的質的緩和」以前であれば、だいたい10%程度で推移していました(信用金庫などはもっと高かったのですが、ここでは議論しません)。

    ということは、預かったお金を全額、貸出金に回す、ということは、本来であればできないはずです。実際、日本の銀行の預貸率も、業態により異なるものの、だいたい60~80%程度(信用金庫だともっと低い値)で推移しています。

    韓国の銀行の預貸率

    ところが、韓国の場合、預貸率は優に100%を超えています。

    銀行(国内銀行と特殊銀行の合算)の金融資産・負債の状況は、図表3のとおりです。

    図表3 韓国の銀行の金融資産・負債状況(2016年9月末)
    区分 勘定科目 十億ウォン
    金融資産 現金預金 114,774
    貸出金(①) 1,553,972
    債券 293,951
    その他 446,900
    金融資産 合計 2,409,597
    金融負債 預金(②) 1,390,285
    社債等(③) 330,628
    その他(④) 678,371
    金融負債 合計 2,399,284

    このバランスで特筆すべき点は、貸出金(①)の金額と、預金(②)の金額のアンバランスさです。

    韓国の銀行(国内銀行+特殊銀行)の貸出金は1,553兆ウォン(約155兆円)ですが、預金量は1,390兆ウォン(約139兆円)に過ぎず、163兆ウォン(約16兆円)、不足が生じています。

    この不足額を埋めるのが「社債等」(③)や「その他」(④)です。ちなみに、韓国の銀行業も、外貨建でかなりの借金をしているものと考えられるものの、その金額の多くが「その他の外国債権債務」に紛れているため、実態は不透明です。

    韓国に待ち受けるのは「ギリシャ型破綻」?

    欧州金融危機の教訓

    欧州では2010年以降、債務危機が続きました。

    特に深刻だったのは、「PIIGS」(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインの頭文字を取った5カ国)でしたが、とりわけギリシャは2012年3月に、事実上の債務不履行に陥り、ギリシャ国債は額面が50%以上削減されるという債務再編を余儀なくされました。

    ただ、欧州危機については、各国で状況は異なります(図表4)。

    図表4 欧州危機の様相
    タイプ 概要 事例
    金融危機型 国内の金融機関が経営破綻の危機に瀕し、公的資金を注入する際に、国際社会からの救済を余儀なくされた アイルランド、スペイン、キプロス、アイスランド
    放漫財政型 政府が借金を重ねて放漫財政を行った末に、財政危機が到来した イタリア、ポルトガル、ギリシャ

    このうち、「金融危機型」の国は、金融機関が経営破綻の危機に瀕したために国際社会から救済を受けたもので、特にアイルランドの場合は、国の財政も家計債務も、いずれも健全でした。

    一方、「放漫財政型」の国は、その後も長引く危機に苦しんでおり、特にギリシャは最近も、国際的な債権者(EU、ECB、IMF)との協議が迷走しています。ギリシャの債務削減は、もはや「歳時記」と化したかの感すらあります。

    韓国はギリシャではないが…

    ところで、韓国とギリシャを比べると、似ている点と異なる点があります(図表5)。

    図表5 韓国とギリシャの異同点
    要点 韓国 ギリシャ 判定
    経常収支 経常黒字 経常赤字 ×
    財政収支 財政黒字 財政赤字 ×
    預貸率 高い 高い
    外貨債務 極めて多い 極めて多い
    家計債務 極めて多い 極めて多い
    統計のごまかし 極めて疑わしい 極めて疑わしい

    図表5に列挙した6つの要点のうち、韓国とギリシャが異なっている点は、韓国は経常黒字国であり、政府財政も比較的健全であるという点ですが、それ以外の4つは、いずれも非常によく似ています。

    特に、社会・経済統計を不正に操作している(疑いがある)という点では、韓国とギリシャは全く同じ構造です。ギリシャは財政破綻する前であれば、「比較的健全」だと思われていたものの、財政破綻後は基本的な統計の多くを不正操作していたことが判明しました。

    私が見たところ、韓国は外貨準備高が3700億ドルを超えていて、一見すると「キャピタル・フライト・リスクへの備え」は万全であるようにも見えます。しかし、その実態は、外貨準備高の7~8割が虚偽ではないかと疑われるものであり、その意味でも韓国とギリシャは類似しているのかもしれません。

    ギリシャ型破綻に備えよ!

    韓国経済が現在、どの程度悪いのか、正直、私にはわかりかねる部分が多いのも実情です。というのも、韓国は基本的な統計(資金循環統計、外貨準備統計、対外債務統計など)で粉飾が多く、信頼できない部分もあるからです。

    ただ、ギリシャが2008年の世界的な金融危機から2年遅れて国家破綻の危機に瀕したという教訓を踏まえると、韓国も米国の利上げから1~2年のタイムラグを伴って、猛烈な資金流出に見舞われる可能性があることは、否定できないでしょう。

    いずれにせよ、韓国は私たち日本の(時として迷惑な)隣国であり、この国がいつ、経済破綻しても大丈夫なように、日本の銀行や企業は備えを万全にしておくことが望ましいのではないでしょうか?

    金融規制の専門家として、そのように強くお勧めする次第です。

    ※本文は以上です。

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