IMF「人民元での外貨準備の保有は広まっていない」
IMFから「答え合わせ」が出てきました。世界の外貨準備に占める通貨別構成を見ると、最近、人民元の金額、割合が増えているのですが、その原因を作ったのはやっぱりロシアだったのです。IMFによると人民元建てで外貨準備を保有している国は基本的にロシアであり、多くの国は人民元ではなく、豪ドル、加ドル、スウェーデンクローナ、韓国ウォンなどに外貨準備を分散している、などと指摘されているのです。
外貨準備に占める人民元の金額・割合は上昇しているが…
今年4月の『外貨準備で人民元の存在感高まる一方で「落とし穴」も』では、国際通貨基金(IMF)が公表している統計をもとに、世界の外貨準備の内訳分析を実施しました。
その暫定的な結論を申し上げると、次のとおりです。
- 世界の外貨準備に占める米ドルの割合は、徐々に低下してきている
- 外貨準備に占める人民元の割合は徐々に上昇している
- ただし広い意味での「西側諸国通貨」の割合が顕著に低下しているとはいえない
具体的に、人民元建ての外貨準備の金額、そして世界の外貨準備に占める割合をグラフ化したものが、次の図表1です。
図表1 世界の外貨準備に占める人民元の金額・割合
(【出所】International Monetary Fund, Currency Composition of Official Foreign Exchange Reserve データより著者作成)
グラフで見ても明らかなとおり、とくにこの1~2年で、人民元の金額や割合がさらに増えていることが確認できます。ちなみに実際の数値で見れば、2020年12月時点で2716億ドル・2.3%でしたが、2021年12月時点では3361億ドル・2.8%にまで増えています。
ロシア中央銀行のデータから判明
この増加要因について、上記記事執筆時点では「なんだかよくわからない」けれども、「なんとなくロシアの動向と何らかの関係でもあるのかな?」といったくらいの仮説しか提示できていませんでした。
しかし、『開戦準備の証拠?ロシア外貨準備でドルが急減していた』でも触れたとおり、その後にロシア中央銀行が公表した2022年1月時点のデータでは、ロシアは1年間で外貨準備に占める人民元建て資産の金額・割合を大幅に増やしていることが判明しました。
詳しい計算プロセスは上記記事を確認していただくとして、ここでは結論として、当ウェブサイトにて試算した外貨準備の通貨別内訳の結果だけを再掲しておくと、次の図表2のとおりです。
図表2 ロシアの外貨準備の通貨別内訳
通貨 | 2022年1月末 | 1年間の変化 |
---|---|---|
ユーロ | 2037億ドル | +349億ドル |
金(マネタリー・ゴールド) | 1292億ドル | ▲55億ドル |
米ドル | 655億ドル | ▲571億ドル |
人民元 | 1028億ドル | +287億ドル |
英ポンド | 373億ドル | +8億ドル |
その他 | 625億ドル | +209億ドル |
合計 | 6009億ドル | +227億ドル |
(【出所】ロシア中央銀行議会向けレポート、IMFデータをもとに著者試算)
すなわち、世界の外貨準備に占める人民元の割合が上昇していることは事実ですが、何のことはなく、結局ロシアが人民元建ての資産の割合を大幅に積み増していたことがその原因だった、というわけです。
IMFのブログ:人民元資産を増やしている国は限定的
こうした当ウェブサイトの試算が正しかった証拠が出てきました。驚くことに、それを公表したのは国際通貨基金(IMF)自身です。
Dollar Dominance and the Rise of Nontraditional Reserve Currencies
―――2022/06/01付 IMFblogより
これには人民元を外貨準備として保有している国と各国の比率が掲載されているのですが、内訳が判明する国はロシアが圧倒的に多いことがわかります(図表3)
図表3 人民元建ての外貨準備
(【出所】IMFblog)
ちなみにこのIMFブログの記載内容は、「外貨準備を米ドルから分散させる動きが続いている」が、「そのメインの行き先は人民元であるとは限らない」、「豪ドル、加ドル、スウェーデンクローナ、韓国ウォンなどの小国通貨に分散している」、などとするものです(なにかひとつ、よくわからない通貨が混ざっているようですが…)。
いずれにせよ、人民元建てで資産を保有する国が非常に限られているという事実に加え、今後、ロシアが西側諸国の金融市場から完全に排除される動きが続くなかで、結果的に中露の「一蓮托生」状態はさらに強まることでしょう。
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さて、IMFのブログサイトにはほかにも通貨スワップなどを巡って面白そうな記事も発見したのですが、これについてはちょっと読み込むのに時間がかかりそうです。興味深い話題があれば、どこかで取り上げたいと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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自分がその方面に疎いため経済、通貨の話はコメント付けられないのですが何時も勉強させていただいています。
今後ともよろしくお願いいたします。