泉代表提唱の野党調整進まず…各党冷ややか=時事通信

フリージャーナリストの宮原健太氏は、立憲民主党を「何を目指しているのかわからない政党」と手厳しく表しましたが、これについてはまったくその通りでしょう。現在の立民からは、どのような国づくりをしようとしているのか、まったく見えないからです。こうしたなか、時事通信は立民が日本維新の会、国民民主党、日本共産党などと進めようとしている選挙協力がほとんど進んでいないとレポートしています。これも泉氏の調整能力のなさ、といったところでしょうか。

岸田首相に対する保守層の不信感

自民党・岸田文雄政権は現在、内閣支持率と自民党への支持率を合算した「青木率」が、一部の調査でついに50%を割り込むなど、支持率の低迷が報じられています。

メディア報道では、支持率急落の理由としては「マイナンバーカードを巡るトラブル」などが挙げられていますが、当ウェブサイトの見立てでは、それは支持率下落の本質的理由ではありません。安倍晋三政権時代から自民党を支持してきた岩盤保守層の自民党離れを招く行動を、岸田文雄政権が取っているからです。

その一例が、国益を著しく棄損する対韓譲歩です。韓国の「(旧)ホワイト国」戻しや日韓通貨スワップの締結、2018年12月に発生した火器管制レーダー照射事件を不問に付すなど、理不尽で国益をドブに捨てる対韓譲歩の数々については、保守層を含めた多くの一般国民を激怒させていることは間違いありません。

ただ、岸田政権の危うさは、それだけではありません。そもそものインテリジェンス(知力)やプリンシプル(政治家、政権としての原理原則)の欠如にあります。

たとえば『岸田首相「株主資本主義からの転換は重要」発言の衝撃』などでも指摘したとおり、岸田文雄首相自身が満を持して提唱している「新しい資本主義」の正体は怪しげな新社会主義のようなものであり、少なくとも資本主義の考えではありません。

保守層が自民党に愛想を尽かす?

また、岸田首相が周囲を財務省出身者などで固めているためでしょうか、岸田政権の方向性は、基本的に「増税」にあります。『剰余金21兆円!税を「取り過ぎている」亡者・財務省』でも指摘したとおり、現在、国の税収は過去最多であり、かつ、巨額の剰余金まで生じているような状況であるにも関わらず、です。

というよりも、著者自身、そもそもの「国の借金」論自体が財務省やその眷属が提唱する怪しげなインチキ理論であって、プロパガンダそのものだと考えており、こうした財務省プロパガンダに飲み込まれている時点で、岸田文雄氏が首相を務める資格などない、とすら思います。

こうしたなかで、例の「エッフェル塔問題」や「ブライダル補助金問題」、「風力発電問題」などが生じていることで、いよいよ保守層も本格的に自民党に愛想を尽かしているという言い方もできるかもしれません。

いずれにせよ、自民党内部で「お盆明けの岸田おろし」の流れが発生するのかどうかについては、個人的には高い関心をもって注目すべきテーマのひとつであることは間違いありません。

立民が自民に代わり政権を取る可能性はない

もっとも、最大野党である立憲民主党に関しては、現状、政権を担い得る体制でもなく、それどころか有権者の支持もほとんどないこともまた間違いありません。

主要メディアが調査する、政党別の支持率や「次の選挙で投票すべき政党」などの項目だけで判断すれば、現在の立憲民主党に、自民党にとって代わるポテンシャルはありません。それどころか第3政党である日本維新の会に、支持率でも大きく逆転されているのが実情です。

もちろん、日本の衆議院議員選挙は比例代表の並立制としつつも、小選挙区をメインに据えているため、その小選挙区で地盤を持っている政治家が選挙で有利である、という特徴があります。

2021年10月の総選挙で立憲民主党が獲得したのは96議席ですが、うち小選挙区では57議席を確保しています。これについては次期衆院選で選挙区の区割り変更も予定されているにせよ、この小選挙区での獲得議席がいきなりゼロになる可能性は高くありません。

ましてや、いくら日本維新の会が「追い風」を受けていたとしても、立憲民主党が議席を確保している57選挙区を奪うことは難しいでしょう。これらの選挙区の多くでは、2位は自民党候補者が多く、維新の候補者はせいぜい3位どまりであり、それも大差を開けられている状況にあるからです。

ボーダー選挙区で維新が逆転も?

ただし、それと同時に「大逆転シナリオ」があり得るとしたら、ボーダー選挙区にあります。

選挙でカギを握る自民・立民「99人のボーダー議員」』でも示した通り、「小選挙区では当選したが、2位の候補者との得票差が2万票以内だった」という議員を「ボーダー議員」と定義づけると、このボーダー議員は自民党に58人、立憲民主党に41人います。

57人のうち41人がボーダー議員というのも凄い話ですが、仮にこの41人のうちの半数が落選を恐れて日本維新の会に大挙して移籍した場合、ほかの条件が全く同じだったとしたら、現時点ですでに離党者が出ている立民は勢力をさらに70議席台にまで減らし、維新は勢力を60議席台にまで増やすかもしれません。

ちなみに自民党にも「ボーダー議員」が58人いますので、これらの選挙区で自民党に敗北した立憲民主党の候補者も同様に、維新に移籍して選挙を戦うかもしれません。この場合、「維新効果」で自民党のボーダー議員が半数落選すれば、維新は勢力をさらに90議席台に増やすかもしれません。

これに、比例票で維新が善戦する(かもしれない)という効果も踏まえれば、維新にとって最も楽観的なシナリオでは、次回選挙で維新が立民に代わって最大野党になるだけでなく、獲得議席も100議席台に乗せる可能性があります。

余談ですが、この場合であっても自公はあわせて辛うじて過半数を維持し、政権を維持する可能性が高いと考えられますが、政権運営は現在よりも困難となるはずであり、選挙の時期によっては岸田文雄首相も事実上の退陣に追い込まれるでしょう(この場合は後任の総理が事態収拾を余儀なくされることになります)。

何を目指しているのかわからない立民

いずれにせよ、現在の状況が立民にとって非常に苦しいものであることは間違いないのですが、その立民は「維新移籍問題」にもこれといった対策が見当たらず、それどころか選挙の候補者調整自体も、ほとんどできていない状況にあります。

とりわけフリージャーナリストの宮原健太氏は、すでに立民を離党した2人の議員について取材した結果、「維新への接近」、「選挙を巡る調整不足」の2つの問題点を指摘しています(『ジャーナリスト「立憲民主党を離党した議員の共通点」』参照)。

これについて宮原氏は、立憲民主党について、「何を目指している政党なのかわからない」と容赦なく批判しますが、これについてはまさに宮原氏の指摘通りでしょう。そもそも立憲民主党がどのような国づくりをしようとしているのか、まったくと言ってよいほど見えてこないからです。

いや、もう少し厳しい言い方をすれば、現在の立民は、「最大野党であり続けること」が自己目的化しているフシがあります。根拠不明の怪文書を片手に「大臣、お辞めください」と迫ったり、「うな丼を食べた」という大臣の発言を問題視したり、と、少々レベルが低すぎるのです。

おそらく、こうした発言で政府・与党をドヤ顔で追及しているフリをしているだけのことではないでしょうか。

そして、それを新聞、テレビなどが大きく取り上げることで、野党議員が仕事をしているフリをし、それを有権者にアピールしていたのでしょう。有権者も舐められたものです。

そして、この宮原氏の指摘をもっと深掘りすると、そもそも立憲民主党の候補者調整には戦略が見えない、という問題点があります。こうした状況に関し、時事通信には17日付で、「野党の衆院での候補者調整が進んでいない」とする記事がまとめられていました。

野党、衆院候補者調整進まず 立民代表提唱に各党冷ややか

―――2023年08月17日07時06分付 時事通信より

この記事を転載した『Yahoo!ニュース』のリンクには、大きな図解も示されています(これは大変わかりやすいものでので、是非ともご参照ください)。

どうしようもない泉氏

時事通信によると立民の泉健太代表は6月末、それまでの「維新や日本共産党とは候補者調整をしない」とする従来の方針を転換し、両党に加えて国民民主党も含めた3党との調整を行うことにしたものの、維新や国民からは協力を拒絶されているというのです。

支持基盤である連合も含めれば、時事通信がまとめた各者の立民に対する立場は、わかりやすくいえば、こういうことです。

  • 国民…「共産党と組んでいるような政党とは協力しない」
  • 維新…「まずは(立民を)叩き潰す」
  • 連合…「連合としては共産との共闘はあり得ない」
  • 共産…「①政権合意、②政策合意、③対等・平等、相互尊重の選挙協力――の本気の共闘が必要」

…。

正直、どうしようもありません。

問題を端的にいえば、泉氏の調整能力のなさに尽きるのでしょう。

もちろん、これは泉氏だけの問題というよりも、そもそも立憲民主党という政党そのものが、「最大野党利権」のもとですっかり腐敗し切っているという問題ではあります。しかし、この2年間、リーダーとして立憲民主党を引っ張って来た泉氏が何をやって来たのか、という問題でもあります。

この点、立民は宮原氏から「何を目指しているのかわからない」と指摘されていますが、冷静に考えると、この「何を目指しているのかわからない」という指摘は、立民だけでなく、泉代表にも当てはまるものなのかもしれませんね。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    立憲かわいそう(笑)

  2. たろうちゃん より:

    いままで選挙時の甘言に散々騙されてきた。確かに立民にいるよりは、自民党にいるよりは、ボーダーラインにいる候補者は少しは当選しやすくなるかもしれない。が、日本国民の政治家への不信感は強く、簡単には騙せないと信じたい。選挙時だけでなく、日頃の活動や国会に於ける姿勢には厳しいチェックが入るはずだ。もと芸能人で単に有名だけの候補者は淘汰されるのではないだろうか。三原順子や馳浩はまともな部類だが今井絵理子や生稲晃子、中条きよしや蓮舫、丸川珠代はどうだろうか。おれは立憲民主党の支持者ではないが、元首相野田毅氏は毎朝千葉の選挙区の駅で辻立をして演説をしているという。立憲民主党のなかでは極めて真面目に政治家を務めているのではないだろうか。野党だから政策遂行能力はないだろうが、選挙の時だけの議員よりは信用できる。次の選挙では日本の未来がかかっている。旧態依然とした現状を突き崩そうではないか!

  3. 引きこもり中年 より:

    素朴な疑問ですけど、野党間調整をしようとしたら、ある選挙区で立憲の候補が出馬しないようにすることも意味します。(ある選挙区で、他党の有力候補の票を回してもらおうとしたら、別の選挙区で、その分の票(?)を回さなければならないでしょう)
    泉党首は、自分の党内をまとめられるでしょうか。

  4. 雪だんご より:

    個人的には泉代表のやりたい事は下記の2つだと思っています。

    「代表なんかやりたくない、さっさと別の誰かに押し付けたい」
    「何をやっても何を言っても叩かれるんだから、何もやりたくない」

    ”やりたくない”が”やりたい事”とはこれ如何に、と言う気もしますが……
    今までの泉代表の言動をまとめるとこうだと思うのです。

    1. 福岡在住者 より:

      確かに・・・。 
      国会議員という職にいたいだけの議員ですね。 でも、最近個人的に思っていることは、こんな人が議員の過半数じゃないか?ってこと・・・。 

      維新も今は甘やかされていますが、勢力を持ったらマスコミ(反日勢力)が突き始めますよ。 彼ら(マスコミ)の基本的目的は国家感・愛国心を無くすこと!  黒幕は分かりますよね(笑)

  5. はるちゃん より:

    連合傘下の官公労など公務員の組織は立憲民主党を後援しています。
    「何を目指しているのかわからない」立憲民主党を官公労はこのまま後援し続けるのでしょうか?
    立憲民主党の迷走が、公務員を組織している連合の弱体化につながることを期待しています。
    この辺りが日本の病巣の一つであったような気がしていますので。

  6. カズ より:

    立憲民主の党是は「アンチ自民(思考の放棄)」

    彼がしたかったのは、提案型への政策シフト(是々非々の国会質疑)なのでしょうが、
    アンチ自民(思考の放棄)を生業としてきた者たちに、それは無理というものですね。
    ・・・・・
    党是を払拭できず、アンチ自民に終始する古参たち・・。
    代表の責だけを負わされて、彼は何を思うのでしょうね。

    「鼻につく おならはウンチの ため息か・・。」by Izumi

  7. JJ朝日 より:

    モリカケサクラ+怪文書+焼肉屋で脱糞してサル。そんな夜盗は要らない。

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