韓国の外貨準備高がまた減少傾向
韓国の外貨準備高が57億ドル減少しました。おそらくは通貨防衛が原因でしょう。韓国の外貨準備のうち「現金預金+有価証券」の残高は、コロナ禍の最中の2020年4月から21年7月にかけて564億ドル増えましたが、そこから反落に転じ、今年5月末までに489億ドル減少したのです。コロナ禍で膨らんだ外貨準備を吐き出した格好ですが、問題はそれだけではありません。韓国経済はいま、利上げすれば金融危機、利下げすれば通貨危機という瀬戸際に追い込まれているのです。
韓国の外貨準備、前月比57億ドルの減少
隣国の資金フローが、再び怪しくなってきたようです。韓国の中央銀行である韓国銀行が月曜日に公表したデータによると、同国の5月の外貨準備高は、前月と比べて57億ドルの減少となったそうです。
2023年5月末の為替保有額【※韓国語】
- 2023年5月末韓国の外国為替保有額は4,209.8億ドルで前月末対比57.0億ドル減少
- その他通貨外貨資産の米ドル換算額の減少、金融機関の外貨預金の減少、外国為替市場の変動性緩和措置などに起因
- 2023年4月末時点で韓国の外国為替保有額の規模は世界9位
―――2023/06/05付 韓国銀行HPより
韓国銀行によると同国の外貨準備の内訳は有価証券が3789.6億ドルで全体の90%を占め、これに預金178.2億ドル、特別引出権(SDR)147.1億ドル、IMFリザーブ・ポジション46.9億ドルなどが続き、金は47.9億ドルで前月比横ばいでした(※)。
(※ただし、『ロシアから金塊を込めて:金融制裁「苦しい台所事情」』でも触れたとおり、金の価格が変動していない理由は、韓国が金塊を時価ではなく取得原価で評価しているためと考えられます)。
これを一覧にしておくと、図表1の通りです。
図表1 韓国の外貨準備高(2023年5月末時点)
項目 | 2023年5月末 | 前月比 |
外貨準備合計 | 4209.83億ドル | ▲57.00億ドル |
うち金 | 47.95億ドル | ±0.00億ドル |
うちIMF-RP | 147.06億ドル | ▲2.27億ドル |
うちIMFSDR | 46.95億ドル | ▲0.71億ドル |
うち現金預金+有価証券 | 3967.88億ドル | ▲54.02億ドル |
(【出所】韓国銀行)
平たく言えば「通貨防衛」
また、外貨準備高の増減要因に関連し、韓国銀行の報道発表には「ドル以外の資産のドル換算額が目減りしたこと」などと並んで、「外国為替市場の変動性緩和措置」という文言があることが確認できますが、平たく言えば「為替介入」、もっと言えば「通貨防衛」のことです。
ちなみに韓国の外貨準備高が前月比で50億ドル以上落ち込んだのは、一気に193億ドルも溶かした昨年9月以来のことでもあります。これに関連し、2017年5月以降の直近6年分の外貨準備高をグラフ化したものが、図表2です(※グラフ縦軸の起点がゼロではないことにご注意ください)。
図表2 韓国の外貨準備高の推移
(【出所】韓国銀行)
こうやって眺めると、外貨準備高はコロナ禍が本格化する直前の2020年3月にガクンと落ち込み、その後は2021年10月に4692億ドルにまで増えましたが、そこをピークに再び減少を続け、昨年10月には4140億ドルと、コロナ禍直前のレベルに近づきました。
また、韓国の外貨準備高が2021年8月に急増しているのは、特別引出権(SDR)が追加配分され、35億ドルから152億ドルに増加したためですが、この要因を除外するために「現金預金+有価証券」の部分だけで見たものが、グラフの赤線です。
「現金預金+有価証券」は2021年7月に4457億ドルを付け、2020年4月から564億ドル増えたのをピークに、そこから減少基調が続いており、現時点では3968億ドルで、21年7月時点と比べ489億ドル減少した計算です。あるいは、コロナ禍の最中に蓄えた外貨準備の蓄積がほぼ吐き出された格好です。
韓国の通貨は「ソフト・カレンシー」
では、どうして韓国の外貨準備はここまで変動するものなのか。
その前提条件として踏まえておかねばならないのは、韓国の通貨・ウォンは、国際的な通用度が非常に低い、いわゆる「ソフト・カレンシー」である、という事実でしょう。
この地球上には、通貨(おカネ)には「国境を越えて、国際的に広く通用する通貨」(いわゆるハード・カレンシー)と、そうでない通貨(ソフト・カレンシー)があります。
ハード・カレンシーの範囲がどこまでか、確定した評価があるわけではありませんが、一般に米ドル、ユーロに加え、わが国の通貨・円や英国の通貨・ポンド、さらにスイスフランなどは「ハード・カレンシー」であると呼ばれることが多いです(アジア太平洋の場合、これに香港ドルや豪ドルなどを加える考え方もあります)。
また、中国の通貨・人民元は近年、決済通貨としての地位を徐々に高めているため、「ハード・カレンシー」なのか「ソフト・カレンシー」なのかについては諸説ありますが、それでも資本移動の自由が保障されていないことから、金融筋はこれを「ソフト・カレンシー」と位置付けることが一般的です。
韓国はGDPで世界10位圏を伺うほどの(自称)「先進国」で「心理的にはすでにG8」ではありますが(『韓国のG8入りの「最大のハードルは日本」=駐日大使』等参照)、そのわりに、同国の通貨・ウォンは国際的な市場で存在感がまったくなく、いわゆるソフト・カレンシーであることは明らかでしょう。
、そして、韓国は自国通貨がソフト・カレンシーであるがために、韓国企業は国際的な活動(輸出入、海外投資など)を行うにあたっては、外貨(とくに米ドル)を借りなければなりません。したがって、韓国にとっては自国通貨安が行き過ぎると困ったことになります。韓国企業は財務健全性が悪化してしまうからです。
だからこそ、韓国にとっては許容し得る為替レートのレンジが非常に狭く、自国通貨高が行き過ぎる局面(たとえば2020年4月以降21年7月頃まで)では自国通貨売り・外国通貨買い介入を、自国通貨安が行き過ぎる局面(たとえば21年8月以降)では自国通貨買い・外国通貨売り介入をせざるを得ないのです。
貿易赤字、不動産PF、限界企業…金融危機か通貨危機か
韓国経済を取り巻く問題点は、それだけではありません。
これに加えて韓国では最近、貿易赤字が常態化し、国内的には不動産PF問題や限界企業の問題(『金利高止まりの韓国、「限界企業」と不動産PFが信管』等参照)も顕在化しつつあります。
韓国銀行がこれ以上金利を上げた場合、これらの限界企業や家計債務の破綻が相次ぎ、金融危機に発展することが懸念される反面、金融危機を防ぐための利下げに踏み切ろうものなら、韓国から外貨が流出することで通貨危機に発展する可能性もあります。
いずれにせよ、今月末の日韓財務対話では、かなり高い確率で、例の「日韓鴨葱スワップ」(『詐欺師が狙う次の「鴨葱」:日韓スワップ交渉本格化へ』等参照)の再開要請が韓国側から提起されると想定されます。
日本は再び韓国に対し、通貨スワップを通じた支援を行ってしまうのでしょうか。
このあたりの動向には注意が必要でしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
(広告だけで本文を読んでいないので恐縮ですが)本日発売のAERAに、「日本はすでに戦時体制」という記事があるそうです。(もちろん、この記事が正しいという前提ですが)ということは、(朝鮮戦争停戦中の)韓国も更に戦時体制を強化しなければならない、ということになります。もちろん、この先、何がどうなるかは分かりませんが、韓国の外貨準備高減少が、大きな問題になるのではないでしょうか。
蛇足ですが、韓国は砲弾や兵器輸出を増やすことで、外貨準備高減少を乗り切ることを考える考えるかもしれません。(もしかしたら、韓国側から日本円と砲弾のスワップの申し入れがあるかもしれません)
日本との通貨スワップ取極、断固反対します。日本はカネもモノもヒトも融通しません。メガバンクも手仕舞いしなさい。韓国は勝手に滅んで下さい。我々は何も困りませんので。
個人的なささやかな願いは別にありますが、それを置いておくと、このギリギリの状態で結局、彼の国はしぶとく生き残るんだろうなあと考えてしまいます。
なぜわざわざ自業自得因果応報で、自らを死地窮地に追い込むのかはわかりませんが、そこから謎の生命力を発揮して、ギリギリ生き残っている間に、周りの国際情勢の方が先に崩壊して助かるというのを、いつも通りまた繰り返しちゃうのかな、いやだなあ、と。
先送りしてる間に、ますます爆発力を増し続ける国際金融爆弾が、いざ弾けたときは、彼の国が身動きがとれないゆえに、爆発圏からの蚊帳の外のため助かるとかだったら大変皮肉なお話しです。(汚い花火がみたいんじゃ。)
阿呆の岸田は通貨スワップ結ぶかもな?!
はよ岸田を下ろしましょう、ヒヤヒヤするわ
自民党にお灸を据えねばな
しかし、図表2なんかを見ると、ホント浮き沈みの激しい国ですねぇ。
去年の第3四半期あたりで、一時外貨準備高が急伸していますが、この頃の韓銀のレポートを見ると、貿易は黒字基調を回復、サービス収支は好調で、史上最大の経常黒字なんて、結構バラ色の表現になっていました。知財収入とソフトコンテンツ(イカゲーム?)が支えになってたそうですが、それからすると、一年足らずの間にすっかり様変わりの今ですね。
どこの国にしたって、良いときもあれば、悪いときもあるんだからと、生温かい目で「好調な時期がまた巡って来るといいですね」と、見守ってあげてれば済むはなしなんですが、どうも昨今のこの国の経済状況、この国をとります国際環境などを見る限り、そうそう簡単に歯車が順回転に転じるきっかけなんて、掴めそうにないような気がして来るんですよね。
目端の利く人間なら、ここは一念発起。韓銀が為替相場を買い支えてる実弾が尽きないうちに、手持ちのウォンをすべてドルに替えて、海外逃避が吉という選択があっても不思議じゃなさそう。実際、国籍放棄者がずいぶん出ているような記事も目にしますしね。
こんな状況で、政府自らが吹聴する、謎の「実質」「心理的」G8入りなんて与太話も、ただ見栄を張りたいなんて動機より、勘ぐれば、もっと切羽詰まったものなのかも知れません。国の将来に見切りを付けて海外に出て行こうとする人間が続出する傾向に、少しで歯止めを掛けたいという、切ない心情の表れかなと、思えないでもないんです(笑)。
となると、尹錫悦が岸田文雄から金を巻き上げる重要性が高くなってきますね。
岸田文雄は韓国に貢ぎまくるミツグ君である己に興奮する変態と思われるので、おそらく色んな形で韓国に日本のお金を貢ぐ事でしょう。