「手の常在菌シロップ」でホテル謝罪:保健所立入りも

あまりに多すぎるマスコミ業界の話題

またしても、ネット側が勝ってしまったのでしょうか。先日の「手の常在菌で発酵させたシロップ」事件、つまりテレビ朝日の情報番組『ビートたけしのTVタックル』で紹介された内容が、SNSなどで強く批判されたという問題を巡り、テレビ放送で取り上げられたホテルが問題の飲料水の提供を中止するとともに、ホテルには27日、保健所の立ち入り検査があったというのです。それにしても、時代は大きく変わったものです。ネット革命はフランス革命に匹敵する変化を私たちの社会にもたらすのでしょうか。

常在菌シロップに批判殺到

先日の『テレ朝番組「手の常在菌で発酵させたシロップ」に批判』では、テレビ朝日の情報番組『ビートたけしのTVタックル』で、静岡県のホテルの「手の常在菌を使って発酵させた自家製の酵素シロップ」というものが取り上げられたところ、ツイッターを含めたSNSなどで強く批判された、とする話題を取り上げました。

番組が放送されるや否や、医師と名乗るツイッター・ユーザーを筆頭に、さまざまなユーザーが専門的見地から、その番組内容の非常識さを批判した、というものです。

そもそも手の常在菌のなかでも代表的なもののひとつが黄色ブドウ球菌で、菌が産生する毒素によって数時間後には激しい腹痛・嘔吐・下痢などの症状が発生することもあるというから、なんとも恐ろしい話です。

また、化学に詳しいと思しきユーザーの方は「腐敗と発酵の違い」について言及。

法律に詳しいと思しきユーザーの方は食品衛生法違反の疑いを指摘し、調理に詳しいと思しきユーザーの方からは、そのテレビの画面に映された、ホテルの従業員が「夏みかんシロップ」に素手を突っ込んでいるシーンを、「衛生面」から強く批判している、といった具合です。

問題のホテルが提供中止、保健所も立ち入り

そして、これに続報がありました。

静岡のホテル、「手の常在菌を使って発酵ジュース」で謝罪、提供停止 保健所が立ち入り調査

―――2023/4/27 16:50付 産経ニュースより

産経ニュースによると、この騒動を受け、問題のホテルは公式サイトで「私どもの発酵に対する知識不足でこのような事態となりましたことを、深く反省いたしております」などと謝罪したうえで、問題のジュースの提供も停止すると発表。また、静岡県東部保健所が27日、ホテルに立ち入り調査を実施したのだそうです。

これなど、まったく新たな時代が到来しているという証拠といえます。なぜなら、インターネットが出現する以前であれば、私たち一般人は、テレビを視聴することはできても、放送された内容に異を唱えることは、ほとんど不可能に近かったからです。

しかし、現代社会だと、ツイッターを含め、インターネット空間でテレビ放送の内容の間違いを、さまざまな専門家が指摘可能であり、とりわけ今回のケースも、医学、化学、法律、調理などの観点から、放送された内容が明らかにおかしいとする指摘が相次いだものです。

今回の事例も、テレビで好意的に取り上げられたものの、インターネットではそれを上回る大きな批判があったことから、おそらくホテル側も問題の飲料水の提供を中止せざるを得なくなったのでしょう。これなど、「テレビよりもネットの方が、情報拡散力や社会的影響力が大きくなっている」という間接的な証拠と言えるかもしれません。

依然として二次被害のリスクも:テレビ局を処罰する方法がないのが問題だ

ただ、それと同時に、ここまでインターネットが普及している現代社会においても、依然として、「インターネットで情報を調べる」という習慣がない人も存在することは間違いありません。

そうした人たちがテレビで見た内容を盲信し、「よし、手の常在菌で自分もあの番組と同じシロップを作ってみよう」、などと安直に考えると、日本各地で食中毒という二次被害が生じる可能性もあります。依然として、テレビの社会的影響力は大きいからです。

このように考えると、テレビ番組で放送される内容の妥当性を、放送する前に検証するなどの仕組みが存在しないことは、日本の電波行政の大きな問題点であることは間違いありません。

いちおう、テレビ局には放送法第4条第1項において、公安および善良な風俗を害しないことに加え、政治的な公平性や事実歪曲の禁止、多面的な論点提供などの義務が課されています。

放送法第4条第1項

放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。

一 公安及び善良な風俗を害しないこと。

二 政治的に公平であること。

三 報道は事実をまげないですること。

四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

しかし、テレビを日常的に視聴する人であれば、テレビ局がこの4点を明らかに守っていないことは、周知の事実でしょう。

また、今回の事例を含め、NHKや民放が不適切な内容を放送したとしても、明確なペナルティが存在しないことも問題です。いちおう、「停波処分」などができることにはなっているのですが、処分が強すぎるためか、事実上、「抜くことができない刀」となってしまっているのです。

このあたり、NHKと民放はテレビ業界のインナー・サークルで作った「BPO」という組織で放送番組の内容を事後的に審査する仕組みを作っているとしているのですが、このBPOは放送局に対し、「勧告」することはできても、何らかの処分を強制することはできません。

つまり、BPOという仕組み自体、まったく機能していないのです。

マスコミの話題が多すぎる!?

当ウェブサイトはいちおう、『政治経済評論』と名乗っている通り、政治(国内政治や外交)、経済(経済全般や金融)などについて評論するサイトを標榜しており、「マスコミ評論の専門サイトである」、というつもりはありません。

ただ、ここ数日に関していえば、やはり、新聞、テレビを中心とするオールドメディアの話題が急増してしまっているのが実情です。

「常在菌」問題だけではありません。今週取り上げたなかでも、メディアに関する話題には事欠きませんし、なかには理解に苦しむほど強烈な話題もあったりします。

…。

ネット革命はフランス革命に匹敵か

なんだか、どれも本当に興味深いものばかりです。

ちなみに「NHKがぶっ壊す」問題については、NHKが貴重な文化遺産などを破壊したのはこれが初めてではない(『NHKが文化遺産「熊野古道」破壊=必要な許可を得ず』等参照)ことも忘れてはなりません。

常在菌問題はテレビ朝日の、「桜ういろう」は共同通信の、重要文化財破壊問題はNHKの、それぞれ「単独犯」ですが、「うな丼問題」はまさにオールドメディア業界と特定野党(とくに立憲民主党)の腐敗の癒着構造そのものです。

何も問題ではないことを、あたかもさも問題であるかのごとく報じ立て、その報道をもとに、立憲民主党の宮口治子・参議院議員が「うな丼大臣」などと呼び、即刻更迭を要求したのですから、オールドメディアと特定野党の「中の人たち」の感覚が、いかに一般常識と乖離しているか、何となく想像がつくところです。

いずれにせよ、私たち一般人はインターネットを得たことで、オールドメディアという「第四の権力」の支配に従う必要がなくなりました。この流れは不可逆的なものでしょう。

そして、オールドメディアがインターネットに進出していることは事実ですが、正直、「恐れるに足りず」です。業界最大手の一角を占め、デジタル戦略で先行しているはずの朝日新聞社でさえ、デジタル版の会員がほとんど増えていないのですから。

今回の「黄色ブドウ球菌シロップ」事件も、「不適切なコンテンツを垂れ流すほどに腐敗し切ったオールドメディアに対し、私たち一般民衆がインターネットを使って戦い、倒した」という意味においてまさにフランス革命に匹敵するほどの大きな社会的変化の象徴ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    「第四の権力」
    って言葉は
    「お客さまは神さまです」
    と同じだと思います。

    1. 匿名 より:

      「第四の権力」は
      第三者が形容するために使うべき言葉で当事者が使ったり実践する言葉ではない。
      「お客さまは神さまです」は
      当事者が自分たちの戒めのために使う言葉で第三者が使ったり実践する言葉ではない。

      ま、使い方を誤っているのは同じなので同じにしとくか

  2. 匿名 より:

    常在菌が発酵するなんてことは無い。
    教育大国日本の教育を受けて来たの?
    飲食を提供するホテルの従業員、情報を提供するマスコミ・TV局員。
    人々に何かを提供する立場なら、最低かつ一般的な知識、常識は身に付けていなければ。
    マスコミ・TV局員は、高学歴者の集まりと世間から思われているが、取材過程や放送前に誰もオカシイと言わなかったのか?
    こちらの方が恐ろしい。
    情報提供者が、フェイクニュースを見抜け無いんじゃ、マスコミは、「社会の木鐸」なんて大見得きれない。

    1. KY より:

       マスゴミには「白いんげん」の前歴があるのに、全く学習してないんですね。
       まあ学習能力がないから同じ不祥事を繰り返すのが性癖になってるんでしょうけど。

  3. めがねのおやじ より:

    オールド芸人、まだ居たの?という感じの人を使って、本人は何も知らないだろうが、大変な広告塔になっている。「黄色ブドウ球菌シロップ」、、もし見てたら「手の菌は?」と思う人はたくさんいただろう。その前に阿呆らしくてそんなテレビの前に座ってないけど(失笑)。「まさにフランス革命に匹敵するほどの大きな社会的変化の象徴」と言われるなら、私も「大日本帝国憲法の発布」ぐらいのインパクトかなと思います(ちょっと違うな笑)。

    1. 匿名 より:

      黄色ブドウ球菌シロップって乳酸菌のような果実由来の特別の菌なんだと思ってました。

  4. 元ジェネラリスト より:

    マスコミ諸氏にお勧め:「もやしもん」

    マンガくらいなら読めるでしょ。

  5. 一之介 より:

    ホテル側も悪気があったわけでは無いと思いますが、食中毒等の被害者が出る前に対処できて良かったですね。テレビの(阿呆な?)番組も、こういう形で社会に貢献できるのですね。私はテレビを見なくなって久しいですが、まだまだテレビにも少しは社会的意義があるのかも?ですね。

  6. やまいぬ より:

    「○○動物王国」にどうぶつ革命が起こったらなんかカワイイ

  7. 農民 より:

     この発酵シロップとやらが実際にどんなものだったのかが気になります。手の常在菌由来だと思っていたにしても、手洗いなどはして雑菌のほとんどは落とし食中毒に至らない程度の状態でかき混ぜていたと推測しますが、「何も発酵していないシロップ」か「自然に発酵するものに清潔な手をつっこんでいただけのシロップ」だった、というあたりでしょうか?そこらを検証する番組なら面白かったかもなぁ。

     ふと思いましたが、小西は落選後はこういった事件のたびに「あんなの蛮族やサルのやること」と呟くボットを開業すると良いかもしれません。

    1. 匿名 より:

      菌というのは、人間を含めた自然界の微妙なバランスで存在しているものでありますから、ホテルの従業員の素人発想で、何かが出来るものではないと思います。
      科学知識がしっかりとした研究機関でいろんな実験や試行錯誤が重ねられて出てきたもので、安全性も確認されたものであれば、他人に提供してもいいですが、それにしても、米国であれば、FDAの認可が必要ではないでしょうか?
      尚、自分で飲んでいるのであれば、自分の自由ですから、どうぞご自由にとも言えますが、
      他人にお金を貰って販売するものに関しての、責任意識が低すぎます。

      1. 団塊 伝染病 より:

        >自分で飲んでいるのであれば、自分の自由ですから…

         う~ん、伝染病の病原菌がビンの中で発生しないとは限らないので…飲んで苦しくなって通院した病院が院内感染とか迷惑千万!

        1. 匿名 より:

          全くその通りです。無知は、他人と社会に迷惑をかけます。

  8. Masuo より:

    > フランス革命に匹敵するほどの大きな社会的変化の象徴
    ローソク革命の方が偉大ニダ!ヽ(`Д´#)ノ

    1. 新宿会計士 より:

      www

  9. 匿名 より:

    連休直前という最悪にタイミングでこれだよ。

    最悪のタイミングで最悪の選択…あっ

  10. 人工知能の中の人 より:

    酒造の現場で今も素手の工程を続けてるところもありますけどあれは長い歴史で安全性が確立したものです。調べたら麹が増殖したもろみは酸性度が比較的高く、きちんと均一化できたら丹念に洗浄した手に残る常在菌程度なら発酵の過程でほぼ死滅するそうですね。

  11. 団塊 きたねぇな より:

     以下の如く何日もビンの中に手を突っ込んで果物をぐちゃぐちゃと握り潰して
     手の雑菌で果物を腐らせたものを飲み食いさせたホテルもさせようとしたテレビも潔癖症人種日本人には汚くて耐えられない行為であり別の不潔人種の生きざまですね。

    >>発酵を進めるために、清潔にした素手で一日に一度かき混ぜる。

    >>36度くらいで発酵が進むので、直射日光が当たらない暖かい場所に瓶を保管する。

     腐るよ、36度にもなるところに何日も刻んだ果物を放置しておいたら。
     そもそも真夏でもなけりゃ、ありゃあしないよ、36度になる直射日光に当たらない場所など家のなかにはない。
     腐るよ、真夏のどうしようもない最高に暑い一日中36度が何日も続く日々に刻んだ果物を入れたビンをテーブルの上や床の上に放置しておくだけで。

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