WSJ「通貨スワップを使って影響力の拡大図る中国」

当ウェブサイトでは先週指摘した「通貨スワップを使った中華金融」について、米メディアのWSJにも同様の趣旨の記事が出ていました。WSJの情報自体、当ウェブサイトよりもやや遅れているという点はさておき、中華金融の実情については冷静に把握することが何よりも大切ではないかと思います。

中華金融:データを統合してみる

中国が外国に貸しているカネの総額は、いったいいくらなのか――。

これについては、なんだかよくわかりません。

ただ、当ウェブサイトでは以前から「中華金融」、あるいは「一帯一路金融」の総額について、研究を続けてきた結果、おぼろげながらその全容が少しずつ見えてきました。

先日の『意外と小さい「一帯一路」:中華金融の実情を考察する』では、この世銀データに加え、中国人民銀行が外国中央銀行等と締結している通貨スワップ・為替スワップ、中国が主導する「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)の融資データを「統合」してみました。

これについて、改めて最新の為替レート等をもとに、もう少し詳細に分析しておきましょう。

人民元建ての通貨スワップ+為替スワップ

先月の【総論】中国・人民元スワップ一覧(22年8月時点)』でも取り上げたとおり、中国は少なくとも33ヵ国・地域との間で、総額4.1兆元(1ドル≒6.97元で換算すれば、約5900億ドル相当)の通貨スワップ・為替スワップ協定を結んでいます。

図表を再掲しておきます(図表1。なお、このテキスト化データについては本稿末尾に再録しておきますので適宜ご利用ください)。

図表1 人民元建ての通貨スワップ・為替スワップ一覧

(【出所】中国人民銀行『人民幣国際化報告』より著者作成。ただし、シンガポールとのスワップに関してはシンガポール通貨庁(MAS)の報道発表をもとに作成。なお、米ドル換算額はBISウェブサイト “Download BIS statistics in a single file”, US dollar exchange rates データから取得した2022年12月5日時点から遡って最も新しいもの。BISデータが存在しない場合はファイナンスサイト等を参考にしている)

通貨スワップに限定したら1.5兆元≒2200億ドル

ところで、この図表1には、明らかに通貨スワップではなく為替スワップと考えられるスワップが含まれています(たとえば英国、ECB、日本などとのスワップ)。

これらの為替スワップは「中国が相手国をスワップで支配する」という性質のものではなく、どちらかというと「人民元市場の混乱に際し、各国の民間銀行に人民元の流動性を供給する」という性質のものです。

こうした視点から、図表1を通貨スワップのみに書き換えたものが、次の図表2です(※これをテキスト化したものについては本稿末尾に収録しておきます)。

図表2 人民元建ての通貨スワップ一覧

(【出所】中国人民銀行『人民幣国際化報告』より著者作成。米ドル換算額はBISウェブサイト “Download BIS statistics in a single file”, US dollar exchange rates データから取得した2022年12月5日時点から遡って最も新しいもの。BISデータが存在しない場合はファイナンスサイト等を参考にしている)

BIS「CBS統計」の限界と世銀データ

その一方で、個人的に国際金融の流れを見るうえで重視している統計のひとつが、国際決済銀行(BIS)が公表している『国際与信統計』です( “Consolidated Banking Statsitics” を略して、当ウェブサイトでは「CBS」と呼ぶこともあります)。

しかし、このCBSだと「中華金融」の実態は見えません。そもそもCBS用のデータをBISに提出しているのは世界の31ヵ国・地域に限られており、このなかに中国は含まれていないからです。

データ提出31ヵ国の内訳
  • 先進国…日本、米国、英国、豪州、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、カナダなど21ヵ国
  • オフショア…香港、パナマ、シンガポールの3ヵ国
  • 発展途上国…ブラジル、チリ、台湾、インド、メキシコ、韓国、トルコの7ヵ国

(【出所】日銀『「BIS国際与信統計の日本分集計結果」の解説』)

したがって、「中国が貸し手」となっているデータはこのCBSには含まれていません。

「債務者」としての中国の状況については把握できるのですが、それはあくまでも「債権者」からのデータで見たものに過ぎず、中国自体が「債権者」としてどの程度の存在感があるのかは、よくわからないのです。

ただ、このBIS統計の代替となり得るデータがありました。先日の『途上国金融における中国の存在感高まる=世界銀行調査』でも取り上げた、世界銀行が公表する『国際債務レポート2022』と称するレポートと関連データです。

International Debt Report 2022

The International Debt Report (IDR), formerly International Debt Statistics (IDS), is a longstanding annual publication of the World Bank featuring external debt statistics and analysis for the 121 low- and middle-income countries that report to the World Bank Debt Reporting System (DRS).<<続きを読む>>

―――2022/12/06付 世界銀行HPより

これは世界の「低・中所得国」とされる121ヵ国を対象にした対外債務をまとめたものだそうであり、レポート自体はPDFファイルでダウンロード可能であるほか、元データへのアクセスも可能です(データ自体は大変に重く、ダウンロードをしようとするとブラウザがクラッシュしてしまうこともあるため、取扱注意です)。

世銀データで見る中華金融は1800億ドル

これをもとに、これによると、中・低所得国が2021年末において全世界から借りているおカネを集計すると9兆2959億ドルと算出されますが、その金額を展開していくと、意外と特定国からの借入には依存していないという実情が浮かびます(図表3)。

図表3 中・低所得国(2021年末時点)
債権者金額割合
その他のマルチプル・レンダー4兆6697億ドル50.23%
債券保有者2兆4230億ドル26.07%
IMF4149億ドル4.46%
マルチプル・レンダー2565億ドル2.76%
世銀(IBRD)2098億ドル2.26%
世銀(IDA)1805億ドル1.94%
中国1800億ドル1.94%
アジア開発銀行1304億ドル1.40%
日本1240億ドル1.33%
米州開発銀行911億ドル0.98%
オランダ767億ドル0.83%
フランス468億ドル0.50%
アジア開発銀行435億ドル0.47%
ドイツ408億ドル0.44%
米国389億ドル0.42%
欧州投資銀行318億ドル0.34%
英国302億ドル0.32%
ロシア265億ドル0.29%
UAE220億ドル0.24%
ラテンアメリカ開発銀行188億ドル0.20%
その他2399億ドル2.58%
合計9兆2959億ドル100.00%

(【出所】世銀データベースより著者作成)

「マルチプル・レンダー」(multiple lenders)とは聞きなれない表現ですが、これはおそらく貸し手が複数存在する形態のローンのことだと考えられます。また、「債券保有者」という表現も独特ですが、これはおそらく、公募債券方式で資金調達をしている場合が含まれているのだと考えて良いでしょう。

また、中国の途上国に対する貸出金総額は1800億ドルであり、これに上記図表2の通貨スワップ(2192億ドル)を足すと、4000億ドル前後、という計算です。

AIIB融資を含めると4200~4300億ドル程度に

これに加え、中国が主導して設立した国際開発銀行である「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)という組織もあるのですが、このAIIBによる現時点における貸出金額は200億ドルに満たない金額です(『日本が乗り遅れたAIIBという「バス」の最新の状況』等参照)。

以上より、中国の中・低所得国などに対する影響額は、4200~4300億ドル程度、といったところです。

これを「多い」とみるか、「少ない」とみるかは微妙でしょう。何と比較するかにもよりますが、たとえば最貧国などの場合は中華金融によって「がんじがらめ」にされているという事例もあるかもしれません。

しかし、邦銀の対外与信総額(4.6兆ドル)と比べれば、「中華金融」の規模はその10分の1以下です(しかも、この「4.6兆ドル」は邦銀の対外与信に限定したものであり、日本が外国に提供している通貨スワップなどについては考慮していないベースのものです)。

このように考えていくならば、現時点での中華金融の規模は、まだコントロール可能な水準にある、ともいえます。

たとえば故・安倍晋三総理大臣が遺した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の考え方も、中国の「一帯一路」に対抗するものだ、という言い方もできます。そして、現時点で先進国が力を合わせれば、「一帯一路金融」の支配力を食い止めるだけの余力は、十分に残っているのです。

WSJ:「一帯一路にスワップ利用する中国」

こうしたなかで、米メディア『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)に昨日、少し気になる記事が掲載されていました。

China Props Up Belt-and-Road Borrowers Via Unusual Channel

―――2022/12/11 08:00 ET付 WSJより

副題に “People’s Bank of China uses currency-swap lines to support governments that borrowed heavily from Chinese banks” とありますが、これは先ほどの図表1や図表2で示した通貨スワップのことを意味しているようです。

WSJによると、中国人民銀行はここ数年、中央銀行通貨スワップという「異例な手段」を使い、外貨準備不足に陥った国々に近づき、支援を強化している、などと指摘。そのうえでWSJは、パキスタン、スリランカ、アルゼンチン、ラオスなど20ヵ国以上に対し、人民元建ての通貨スワップを提供している、としています。

また、WSJの記事によれば、「1兆ドルの一帯一路金融」の一環として、世界の最貧国の外貨準備に対してスワップラインを通じて中国が支配力を強めている、というものです。

「一帯一路金融」の規模が1兆ドル、という部分についての情報源はありませんが、これはおそらく「現時点で中国が最貧国に貸し出している金額が1兆ドルである」、という意味ではなく、「将来的に1兆ドルのきぼにまで拡大する」、という意味でしょう。

この点、「通貨スワップを通じて中国が最貧国などへのアプローチを強めている」とする指摘については、正直、当ウェブサイトではずいぶんと前から数値入りで紹介してきた論点でもあるため、あまり目新しさはありません。

しかも、WSJの記事で指摘されている4ヵ国のうち、スリランカについてはすでに『スリランカ、外貨準備に人民元スワップを計上していた』でも紹介したとおり、「人民元通貨スワップ」を外貨準備に計上していることは、国際金融関係者の間ではわりと有名です。

それに、人民元という通貨自体が国際的な金融市場でさほど使い勝手がよくないという点を踏まえるならば、「通貨スワップを通じた最貧国支配」という実情も、冷静に考えれば十分にコントロール可能でもあります。

もちろん、中華金融の実情についてはまだわからないことも多いうえ、中国が持続可能性を考えずに「貸し込み」を行うという可能性についても否定できないことから、十分な警戒が必要であることはいうまでもありません。金融だけでなく、社会全般においても、中国は相手国に対する影響力を拡大しようとするフシがあるからです。

中国の影響力は東南アジア、中央アジア、韓国などに及ぶ

こうしたなかで、韓国メディア『中央日報』(日本語版)には今朝、こんな記事が掲載されていました。

「中国の影響力浸透」韓国は13位…パキスタン1位、日本52位(1)

―――2022.12.13 07:05付 中央日報日本語版より

「中国の影響力浸透」韓国は13位…パキスタン1位、日本52位(2)

―――2022.12.13 07:06付 中央日報日本語版より

中央日報によると、台湾の非営利団体「台湾民主実験室」が最近発表した「チャイナ・インデックス2022」で、全世界82ヵ国のうち中国の影響が最も大きく及んでいる国がパキスタンだったことが判明したとされています。

続いてカンボジア(2位)、シンガポール(3位)、タイ(4位)、フィリピン(7位)、マレーシア(10位)など、東南アジアを中心に中国の影響が及んでいることが示されており、これら以外にも南アフリカと南米のペルーが同率で5位になるなど、中国の影響力が目立っている、などとしています。

また、中央アジア諸国もキルギス(8位)とタジキスタン(9位)、カザフスタン(15位)などが上位に入ったほか、韓国自身も13位で、とくに経済領域での影響力が大きい、などとしています(ちなみに日本については「中国と貿易、観光などで深く関わっているにもかかわらず52位」にとどまったのだとか)。

いずれにせよ、増長する中華金融に対しては、冷静に現状を把握し、不透明な融資が広まらないよう、先進国が協調していかねばならないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

資料集:スワップテキスト化データ

なお、図表1と図表2をテキスト化したものを収録しておきますので、適宜ご利用ください。

図表4 人民元建ての通貨スワップと為替スワップの一覧
相手国と締結日人民元相手通貨
1位:香港(22/7/4)8000億元(1151億ドル)9400億香港ドル(1210億ドル)
2位:韓国(20/10/11)4000億元(576億ドル)70兆ウォン(541億ドル)
3位:英国(21/11/12)3500億元(504億ドル)400億ポンド(492億ドル)
3位:ECB(19/10/8)3500億元(504億ドル)450億ユーロ(476億ドル)
5位:シンガポール(22/7/14)3000億元(432億ドル)650億Sドル(482億ドル)
6位:インドネシア(22/1/21)2500億元(360億ドル)550兆ルピア(357億ドル)
7位:日本(21/10/25)2000億元(288億ドル)3.4兆円(252億ドル)
7位:豪州(21/7/6)2000億元(288億ドル)410億豪ドル(279億ドル)
7位:カナダ(21/1/7)2000億元(288億ドル)加ドルはスポットで計算
10位:マレーシア(21/7/12)1800億元(259億ドル)1100億リンギット(252億ドル)
11位:ロシア(20/11/23)1500億元(216億ドル)1.8兆ルーブル(286億ドル)
11位:スイス(17/7/21)1500億元(216億ドル)210億Sフラン(225億ドル)
13位:アルゼンチン(20/8/6)1300億元(187億ドル)700億元と7300億ペソの交換+600億元の二国間現地通貨スワップ
14位:タイ(20/12/22)700億元(101億ドル)3700億バーツ(107億ドル)
15位:チリ(21/8/20)500億元(72億ドル)6兆ペソ(68億ドル)
16位:ハンガリー(20/9/17)400億元(58億ドル)400億元規模の補足的な二国間現地通貨スワップ
17位:トルコ(21/6/4)350億元(50億ドル)460億リラ(25億ドル)
17位:カタール(21/1/6)350億元(50億ドル)208億リヤル(57億ドル)
19位:南アフリカ(21/9/13)300億元(43億ドル)680億ランド(40億ドル)
19位:パキスタン(21/7/13)300億元(43億ドル)7300億Pルピー(33億ドル)
19位:マカオ(19/12/5)300億元(43億ドル)350億パタカ(43億ドル)
22位:ニュージーランド(20/8/22)250億元(36億ドル)NZドルはスポットで計算
23位:エジプト(20/2/10)180億元(26億ドル)410億Eポンド(17億ドル)
24位:ナイジェリア(21/6/9)150億元(22億ドル)9670億ナイラ(22億ドル)
24位:モンゴル(20/7/31)150億元(22億ドル)6兆トゥグルク(18億ドル)
24位:ウクライナ(18/12/10)150億元(22億ドル)620億フリヴニャ(17億ドル)
27位:スリランカ(21/3/19)100億元(14億ドル)3000億ルピー(8億ドル)
28位:カザフスタン(18/5/28)70億元(10億ドル)3500億テンゲ(8億ドル)
28位:ベラルーシ(18/5/10)70億元(10億ドル)22億Bルーブル(0.40億ドル)
30位:ラオス(20/5/20)60億元(9億ドル)7.6兆キープ(4億ドル)
31位:アイスランド(20/10/19)35億元(5億ドル)700億クローナ(5億ドル)
32位:アルバニア(18/4/3)20億元(3億ドル)342億レク(3億ドル)
33位:スリナム(19/2/11)10億元(1億ドル)11億スリナムドル(0.36億ドル)
合計4兆1045億元(5809億ドル)5894億ドル

(【出所】図表1と同じ)

図表5 人民元建ての通貨スワップの一覧
相手国と締結日相手国と締結日相手国と締結日
1位:韓国(2020/10/11)4000億元(573億ドル)70兆ウォン(541億ドル)
2位:インドネシア(2022/01/21)2500億元(358億ドル)550兆ルピア(357億ドル)
3位:マレーシア(2021/07/12)1800億元(258億ドル)1100億リンギット(252億ドル)
4位:ロシア(2020/11/23)1500億元(215億ドル)1.8兆ルーブル(286億ドル)
5位:アルゼンチン(2020/08/06)1300億元(186億ドル)700億元と7300億ペソの交換+600億元の二国間現地通貨スワップ
6位:タイ(2020/12/22)700億元(100億ドル)3700億バーツ(107億ドル)
7位:チリ(2021/08/20)500億元(72億ドル)6兆ペソ(68億ドル)
8位:ハンガリー(2020/09/17)400億元(57億ドル)400億元規模の補足的な二国間現地通貨スワップ
9位:トルコ(2021/06/04)350億元(50億ドル)460億リラ(25億ドル)
9位:カタール(2021/01/06)350億元(50億ドル)208億リヤル(57億ドル)
11位:南アフリカ(2021/09/13)300億元(43億ドル)680億ランド(40億ドル)
11位:パキスタン(2021/07/13)300億元(43億ドル)7300億Pルピー(33億ドル)
11位:マカオ(2019/12/05)300億元(43億ドル)350億パタカ(43億ドル)
14位:エジプト(2020/02/10)180億元(26億ドル)410億Eポンド(17億ドル)
15位:ナイジェリア(2021/06/09)150億元(21億ドル)9670億ナイラ(22億ドル)
15位:モンゴル(2020/07/31)150億元(21億ドル)6兆トゥグルク(18億ドル)
15位:ウクライナ(2018/12/10)150億元(21億ドル)620億フリヴニャ(17億ドル)
18位:スリランカ(2021/03/19)100億元(14億ドル)3000億ルピー(8億ドル)
19位:カザフスタン(2018/05/28)70億元(10億ドル)3500億テンゲ(8億ドル)
19位:ベラルーシ(2018/05/10)70億元(10億ドル)22億Bルーブル(0.40億ドル)
21位:ラオス(2020/05/20)60億元(8.6億ドル)7.6兆キープ(4億ドル)
22位:アイスランド(2020/10/19)35億元(5.0億ドル)700億クローナ(5億ドル)
23位:アルバニア(2018/04/03)20億元(2.9億ドル)342億レク(3億ドル)
24位:スリナム(2019/02/11)10億元(1.4億ドル)11億スリナムドル(0.36億ドル)
合計1兆5295億元(2192億ドル)

(【出所】図表2と同じ)

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 伊江太 より:

    カネにモノを言わせて、低所得国多数を手なずけ、アタマ数勝負で、種々の国際機関のヘゲモニーを握ることを目指してきた中国。しかし、そんなやり方がいつまでも通用するとも思えません。WHOへの批判が強まっているなどその典型ですが、カネで世界の覇権を握ろうと、中国が本気で考えているとするなら、頓挫はもう目の前に迫っているように思えます。

    金満中国の懐を実質的に支えてやっていた米国が、もうたくさんだと、明らかにカネの流れを絞ろうとしている。国内の経済状況が暗転しているのは、ひとりコロナのせいとばかりは言えないでしょう。それでも、過去に気前よくバラ撒いたカネのおかげで、中国の味方が、たとえ国の数だけにしたところで、かつてより大きく増えたというようには、どうも見えません。むしろ、世界の有力国からは、ますます距離を置かれだしているのが、現状ではないでしょうか。

    結局、現ナマをちらつかせ続けていない限り、差しだした指にとまってくれる国が大挙して現われることは期待できない、となったら、今までの撒き餌は、ほとんど無駄になったと言うほかないのかも。

    現在、習近平氏がサウジアラビアを訪問し、対米感情が微妙、このところドル覇権の軛から免れたいという意向を強めているアラブ諸国と精力的に会談を重ね、強固な共助関係を唱いあげているところですが、彼が期待しているのは何のことはない、オイルマネーということじゃないでしょうか。だけど、相手から毟り取ることしか考えていない者同士、本当の協力関係など築けるものなのやら、どうなのやら。

    1. ちょろんぼ より:

      伊江太様

      イスラム教圏である中東諸国と
      宗教禁止・イスラム教のウィグル人を
      弾圧している中共が、手に手を取り合う事は
      反米(西洋的倫理問題)しかないと思うのです。
      金の切れ目が縁の切れ目と言われていますが
      どうなんでしょう? 中共の銭って実物はどれくらい
      なんでしょうね。

  2. 古いほうの愛読者 より:

    途上国のトップには政治基盤が脆弱だったり,非民主的手法で権力の座にいる人もいて,そういう人は,良質な援助をしてくれるが時間のかかる欧米や日本ではなく,悪かろう安かろうだが即座に動いてくれて非民主的手法も容認してくれる中国に頼りたいのでしょう。将来の損失より,今政権の座はら引きずり降ろされないことが大切です。
    あと,欧米から好ましく思われていない国も,中国やロシアを頼るしかないでしょう。世界にはそういう国のほうが多いかもしれません。

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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
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