意外と小さい「一帯一路」:中華金融の実情を考察する

中国の中・低所得国、新興国などに対する金融面での影響力は、現在のところ、少なくとも4200~4300億ドル程度とみるべきでしょう。これを多いと見るか、少ないと見るかは微妙ですが、著者自身としては「案外少ない」という印象を持っています。というのも、4.6兆ドルに達する邦銀の対外与信総額と比べれば、10分の1にも満たない金額だからです。もちろん、中国が途上国金融の世界で不透明な融資を増やさないかどうかに関する監視は必要ですが、現時点であれば十分にコントロール可能なレベルでもあります。

「中国が金融覇権を狙っている!」

「中国が金融覇権を狙っている」、などと指摘されることがあります。

最貧国を中心に、中国が巨額の貸付を行い、借金でがんじがらめにしたうえで、それらの国をコントロールする、というやり方です。

ただ、その中国の金融の実態については、正直、統計資料が少なくてよくわからない、というのが実情でしょう。

とくに当ウェブサイトでよく引用する、国際決済銀行(BIS)の『国際与信統計』(Consolidated Banking Statistics, CBS)にしたって、結局はデータを提出している国が31ヵ国(※)に限られており、そこに中国は含まれていません。

データ提出31ヵ国の内訳
  • 先進国…日本、米国、英国、豪州、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、カナダなど21ヵ国
  • オフショア…香港、パナマ、シンガポールの3ヵ国
  • 発展途上国…ブラジル、チリ、台湾、インド、メキシコ、韓国、トルコの7ヵ国

(【出所】日銀『「BIS国際与信統計の日本分集計結果」の解説』)

したがって、「データ提出国」が中国から借りているおカネ、中国に貸し付けているおカネ、といったデータであれば、このCBSなどのデータを使えば把握できるのですが、中国が「データ提出国」以外の国に貸しているおカネの流れなどについては、把握することはできません。

AIIBのB/Sのサイズは三菱UFJの40分の1以下!

こうしたなか、当ウェブサイトではこれまで、中国が主導して設立した国際開発銀行である「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)などの分析を定期的に続けてきましたが(『日本が乗り遅れたAIIBという「バス」の最新の状況』等参照)、AIIBの貸出金の状況を見ても、「一帯一路金融」の実態はよくわかりません。

そもそもAIIB自体、「出資金1000億ドル級」などとして華々しく登場したものの、2022年6月末時点の融資残高は200億ドルに満たず、AIIBのバランスシートの規模も、日本の最大手である三菱UFJ銀行と比べて約40分の1以下です。

しかも、その肝心の融資も世界銀行やアジア開発銀行との協調融資案件が非常に多く、「コロナ特需」で急伸した融資を別とすれば、正直、AIIBが国際インフラ金融の世界で存在感を発揮しているとはとうてい言い難いでしょう。

中国のスワップは5900億ドル相当だが…

その一方で、先日の【総論】中国・人民元スワップ一覧(22年8月時点)』でも取り上げたとおり、中国は少なくとも33ヵ国・地域との間で、総額4.1兆元(1ドル≒6.97元で換算すれば、約5900億ドル相当)の通貨スワップ・為替スワップ協定を結んでいます。

図表を再掲しておきます(図表1。なお、そのテキストデータが欲しいという方は、上記記事の末尾に収録していますので、適宜ご利用ください。)

図表1 人民元建ての通貨スワップ・為替スワップ一覧

(【出所】中国人民銀行『人民幣国際化報告』より著者作成。ただし、シンガポールとのスワップに関してはシンガポール通貨庁(MAS)の報道発表をもとに作成。なお、米ドル換算額はBISウェブサイト “Download BIS statistics in a single file”, US dollar exchange rates データから取得した2022年11月14日時点から遡って最も新しいもの。BISデータが存在しない場合はファイナンスサイト等を参考にしている)

これで見ると、たしかに中国は4兆元、6000億ドル弱という巨額のスワップを外国に提供しているのですが、このうち先進国や金融センターとの為替スワップ(上から順番に香港、英国、ECB、シンガポール、日本、豪州、カナダ、スイス)が2.55兆円を占めています。

発展途上国・新興国との純粋な通貨スワップに限定すると、韓国(4000億元)、インドネシア(2500億元)などを含め、通貨スワップといえるのは1.6兆元、米ドルに換算すればせいぜい2300億ドル弱、と言ったところでしょう。

世銀レポートに見る中国の金融の実情

さて、先日の『途上国金融における中国の存在感高まる=世界銀行調査』では、世界銀行が公表した『国際債務レポート2022』と称した、興味深いレポートについて、その概要を取り上げました。

International Debt Report 2022

The International Debt Report (IDR), formerly International Debt Statistics (IDS), is a longstanding annual publication of the World Bank featuring external debt statistics and analysis for the 121 low- and middle-income countries that report to the World Bank Debt Reporting System (DRS).<<続きを読む>>

―――2022/12/06付 世界銀行HPより

このレポートは低・中所得国121ヵ国を対象にした対外債務をまとめたものだそうであり、レポート自体はPDFファイルでダウンロード可能であるほか、ありがたいことに、元データへのアクセスも可能です(ただし、データ自体は大変に重く、ダウンロードをしようとするとブラウザがクラッシュしてしまうこともあるため、取扱注意です)。

ただ、ありがたいことに、このデータではBISのCBSには含まれていない、「中国関係のデータ」が収録されています。

データの収録項目は大変に多いのですが、ここでは「対外債務残高合計」(原系列名は “External debt stocks, total (DOD, current US$)” )だけをダウンロードし(※ただし、これだけでも結構なデータ量です)、その内容を確認してみましょう。

総額9.3兆ドル、意外なほどに特定国には依存せず

これによると、中・低所得国が2021年末において世界から借りているおカネは9兆2959億ドルなのですが、その金額を展開していくと、意外なことが判明します。意外と、特定国からの借入には依存していないのです(図表2)。

図表2 中・低所得国(2021年末時点)
債権者金額割合
その他のマルチプル・レンダー4兆6697億ドル50.23%
債券保有者2兆4230億ドル26.07%
IMF4149億ドル4.46%
マルチプル・レンダー2565億ドル2.76%
世銀(IBRD)2098億ドル2.26%
世銀(IDA)1805億ドル1.94%
中国1800億ドル1.94%
アジア開発銀行1304億ドル1.40%
日本1240億ドル1.33%
米州開発銀行911億ドル0.98%
オランダ767億ドル0.83%
フランス468億ドル0.50%
アジア開発銀行435億ドル0.47%
ドイツ408億ドル0.44%
米国389億ドル0.42%
欧州投資銀行318億ドル0.34%
英国302億ドル0.32%
ロシア265億ドル0.29%
UAE220億ドル0.24%
ラテンアメリカ開発銀行188億ドル0.20%
その他2399億ドル2.58%
合計9兆2959億ドル100.00%

(【出所】世銀データベースより著者作成)

「マルチプル・レンダー」(multiple lenders)とは聞きなれない表現ですが、これはおそらく貸し手が複数存在する形態のローンのことだと考えられます。また、「債券保有者」という表現も独特ですが、これはおそらく、公募債券方式で資金調達をしている場合が含まれているのだと考えて良いでしょう。

中国の金融面での影響力は4200~4300億ドル

このようにカテゴリーを分けると、中国の中・低所得国に対する与信は単独国としては最多ではありますが、その金額は1800億ドルと、国際通貨基金(IMF)の4149億ドル、世銀グループ(IBRDが2098億ドル、IDAが1805億ドル)よりも少ないというのは意外でもあります。

ということは、先ほどのAIIBの融資残高(200億ドル弱)や図表1に示したスワップ一覧のうちの通貨スワップ(2200億ドルあまり)とあわせても、中国の途上国に対する金融面での影響力は、せいぜい4200~4300億ドル程度に過ぎないのだ、という見方もできるかもしれません。

中国の途上国に対する金融の実情(試算)
  • AIIBを通じた与信総額(2022年6月末時点)…184億ドル(うち債権144億ドル、債券40億ドル)
  • 2022年8月末時点で中国が保有するスワップのうち、先進国に対する為替スワップ(2.55兆元≒3660億ドル)を除外した金額…1兆5545億元≒2230億ドル
  • 世銀データベースで判明する2021年12月末時点における中・低所得国に対する与信…1800億ドル
  • 上記合計…4214億ドル

…。

いや、もちろん「4300億ドル」という金額は巨大です。1ドル=140円で換算すれば60兆円という金額に達するからです。

しかし、それと同時に中国が保有している外貨準備の金額(2022年9月末時点で公称3兆1936億ドル)と比べれば、その7分の1程度に過ぎませんし、邦銀の4.6兆ドルという対外与信総額(『世界最大の債権国・日本はどこにいくら貸しているのか』等参照)の10分の1以下です。

中国の金融の野望を軽視すべきではないが…

もちろん、中国が金融面を通じ、中・低所得国に対する影響力を拡大しようとしていることは間違いないでしょうし、中国が虎視眈々と、その「野望」の実現に向けて動いていることを軽視すべきでもありません。「世界の金融は中国に席巻されてしまう!」という危機感を持つことは重要です。

ただ、一帯一路金融とやらの「正確な実情」を知れば、案外、中国の金融面での影響力を排除することは、現時点であれば十分に可能でもあります。

さらには、先ほどの図表にも含まれていた「マルチプル・レンダー」や「債券保有者」に、中国が含まれているという可能性は、それなりにあります。つまり、中国の金融の総額が、4200~4300億ドルよりも多い、という可能性には注意は必要でしょう。

ただ、その場合であっても、「マルチプル・レンダー」の場合はそれらの融資を中国が「単独で」行っているというものではありませんし、「債券保有者」の場合は純粋に「投資家」としての影響力しか行使できません。

したがって、正直、これらのカテゴリーにおいて、中国が「債務の罠」で相手国からインフラを取り上げる、といった使い方をすることは難しいでしょう。

いずれにせよ、日本を含めた西側先進国は、中国に対しては透明性の高い融資を実行するよう呼びかけ続けるとともに、不透明な「一帯一路融資」の実情をちゃんと監視し、新興市場諸国金融が中国によって支配されてしまわないように管理することが重要ではないかと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. カズ より:

    中・低所得国に対する貸付総額はともかくとして、問題となるのは国連等での議決権への影響とかでしょうか?

  2. オタク歴40年の会社員です、よろしくお願いいたします より:

    私の世代、
    昭和40年生まれ、
    いわゆる団塊ジュニア世代は

    韓国に対しては心底嫌悪感を抱く一方、
    中国には
    いささか脇が甘いような気がします、

    その原因を考えてみました、
    昭和50年代に思春期を過ごした私は
    当時日本漫画アニメブームの影響をもろに受け、
    数多くの有名作品群を見て読んで育ちました、

    作品名を挙げると作者の方々に迷惑が及びますので控えさせていただきますけど、

    それらの作品に登場する
    中国人のイメージは
    思慮深く義理堅い、そしてストイックとかなり贔屓目で、
    現在リアルタイムで世界中から配信される
    中国人の実像とは
    かなり
    かけはなれたものとなっています、

    当時はネットなどもない時代、入ってくる
    中国の情報はせいぜい
    クンフー映画、チャイナドレスなどの断片的なもの程度だと思われます、

    そんな中、当時流れていた
    某商品のCMのフレーズ、

    中国2000年、

    これを覚えておられる方も多いはず、
    これに想像力を加えて
    長大な歴史、広大な国土から
    先ほど挙げたイメージを当時執筆した方々は架空の中国人像を作り上げていったものと考察します、

    とにかく大きな国、穏やかでおおらかな国民、スケールがでかい、等々

    私自身もいまだに この刷り込みが脳裏にあります、

    中国と一瞬即発の状況にある現在、いまだに中国に理想を求める日本人が多いのも
    この様な経験からくるものと想像します、

    タチャーッ‼️、民◯書房、北◯百烈拳‼️

    1. 攻撃型原潜#$%&〇X より:

      >とにかく大きな国、穏やかでおおらかな国民、スケールがでかい、等々

      戦後の左派マスコミ・文人によって作られた共産主義幻想の影響が大きいように思います。少なくとも明治時代の日本人は中国(清王朝)をそのような捉え方はしていなかった筈です。
      中国2000年の悠久の歴史と言うけれど、仔細に見れば王朝の滅亡と勃興を繰り返しており、常にどこかで戦争をしていたといっても過言ではないくらい争いが絶えない国です。
      現代中国においても、ともかく人が多くてどこへ行っても苛烈な競争があり、人々はボーっとしていると蹴落とされるため何事にもアグレッシブにならざるを得ません。特に習近平主席がリーダーになってからは、多少の自由があったそれまでの中国からガラリと変わりました。とにかく住みづらい国のようで、この数年日本に移住してくる中国人が数万人規模で増えていて、各地でトラブルが発生していることを耳にします。

      >中国人のイメージは思慮深く義理堅い

      中国人社会は人とのつながりが極めて重要なので、日本人の道徳的な義理堅さとは違う実利的な義理堅さはあると思います。

    2. はにわファクトリー より:

      NHK が放映したシルクロード、あれがブームになったときに学祭実行委員会に所属していました。蝋原紙がりの切り方を憶えてインクまみれになりましたし、立看闘争文字なら今でもきっと書けます。
      で、実行委員会が番組 NHK プロデューサー講演をものにしました。自分は別な担当だったので経緯を体感していませんが、すごい人気だったと聞いています。「ちょっとハイランク」を目指したかった知識人たちの中国かぶれはあのころからずっと続いたままなんでしょう。

      1. オタク歴40年の会社員です、よろしくお願いいたします より:

        レスありがとうございます、
        あまりタイトルと関係ないことなので、書き込みしてしまい反省しています、

        ついでに、
        中国人のイメージについて、
        捲土重来、大器晩成などの
        大陸からの四文字熟語なども
        影響しているものと考えています、

        歴史の長さと広い国土、
        息が長く考えが深い、

        これらの断片的な情報からも
        中国人のイメージが定着していったことと考察します、

        漫画少年だっだ私は、
        当時劇画漫画、
        特に小池一夫さん原作の作品をよく目にしており、
        そこに登場した中国の裏の組織、中国人像がいまだに忘れられません、
        紳士で律儀、凄腕の漫画の中国人と比べ、

        先月渋谷で暴れた
        ドラゴンなる中国人の愚連隊、とても
        同じ民族とは思えない。

    3. CRUSH より:

      中国人と中華政府は、分けて考えた方がよいですよ。

      というかたぶん地球上で日本&日本人だけが特殊なのであって、普通は住んでる人と統治国家とは一致するとは限りませんから。

      大陸在住の人たちや彼の地の文化に敬意を払うことは問題ありません。
      でもそれは共産党中国政府に敬意を払うことを必ずしも意味する訳ではないのです。

      そういう考え方を教えてくれたのは台湾の人でした。
      若い頃に僕は朝日新聞社的な考え方をしておりましたので、
      「戦争中には申し訳ない」
      と申したところ、
      「台湾の主人は時代とともに移り変わったが、日本の統治は悪くなかったよ」
      「国民党が乗り込んできたときは最悪」
      「でも共産党中国はもっと最悪」
      「今は軍政から民主化を進めてる所」
      「日本には、また統治してくれとは言わないけど、統治時代のように台湾を育てるアドバイスをしてほしい」
      とのことでした。

      共産党中国なんか、もともと毛沢東の八露軍ですから山賊ですよ。
      呉越や明清みたいに、たまたま今は共産党中国が王朝として栄えているだけ。

      そう考えておくと、ジレンマなく心の平安が保てるかと思います。

      PS:ヒデブっ!の方ではなくて、オレンジ色の亀つなぎの一派の話かと思いました。

    4. 裏縦貫線 より:

      わたしの認識は中国=4000です。烏龍茶の広告だったかと。もっとも、四千年が怪しいからか?暫くして宣伝文句が「うまさ四千杯」に変わったと記憶しています。

      はにわファクトリー様がコメントされているシルクロード、番組の内容は覚えていませんかテーマ曲は今でも頭の中で聞こえます。印象に残っているというか刷り込まれているというか…当時から「イメージ戦略」があったとすれば大したものであります。

    5. はにわファクトリー より:

      今の中国を理解するには黒色中国さんの Twitter 投稿をじっくり読み解けば十分と考えています。一方 Youtube 投稿にもすばらしい情報源が多いですね。香港があんなことになってしまった以上、日本人は「現実の」「現代の」中国をもっともっと理解しないといけませんね。
      ただ直観として感じるのは、日本は彼らとは距離を置いて独自の国益を目指してぜんぜん大丈夫そうだというものです。新聞や NHK 内の媚中派は猛烈工作を続けるでしょうが。

      1. オタク歴40年の会社員です、よろしくお願いいたします より:

        烏龍茶、
        あの妙な味のお茶を売り出すため
        当時、
        太極拳の映像とともにCMを頻繁に放送
        なんとなく、

        体に良いイメージを作り出し
        数年がかりで販売を軌道に乗せたことで、
        中国イコール健康、
        烏龍茶は体に良い、
        あの
        ポ◯リスエットとともに
        味の不味さは体に良いからと
        先輩?の漢方薬に続き
        健康志向の日本人に強烈なイメージを植え付けた、

        CMも最初は2000年でしたけど、
        いつの間にか倍の4000年になっていましたね、

        これらも現在のネットで流れてくる
        中国の汚れた国土、怪しげな飼育の家畜類、何が入っているかわからない穀物野菜、

        今までの中国のイメージが大きく覆されることになりました。

  3. 古いほうの愛読者 より:

    人民元は自由にドルやユーロのような外貨に交換できる通貨ではありません。しかし,中華思想の基づいて,人民元建てで決済できる「人民元経済圏」の構築を夢見ています。今のところ,アフリカやアジアの貧しい国々が部分的にそこに参加しています。
    モデルとしては1990年以前にあったソ連の「ルーブル経済圏」でしょう。そこには旧東欧諸国が参加していました。
    歴史を百数十年遡って清までの時代には,東アジアに「中国通貨経済圏」が実際に長年にわたって存在し続けてきた(日本でも中国の「銭」が使われています)ので,荒唐無稽の話でもないです。

  4. 古いほうの愛読者 より:

    人民元は自由にドルやユーロのような外貨に交換できる通貨ではありません。しかし,中華思想の基づいて,人民元建てで決済できる「人民元経済圏」の構築を夢見ています。今のところ,アフリカやアジアの貧しい国々が部分的にそこに参加しています。
    モデルとしては1990年以前にあったソ連の「ルーブル経済圏」でしょう。そこには旧東欧諸国が参加していました。
    歴史を百数十年遡って清までの時代には,東アジアに「中国通貨経済圏」が実際に長年にわたって存在し続けてきた(日本でも中国の「銭」が使われています)ので,荒唐無稽の話でもないです。(北宋銭の頃を思い出しましょう)

    1. 古いほうの愛読者 より:

      朝,WEBの調子が悪くて,多重投稿になってすいません。次の投稿も無視してください。

  5. 古いほうの愛読者 より:

    人民元は自由にドルやユーロのような外貨に交換できる通貨ではありません。しかし,中華思想の基づいて,人民元建てで決済できる「人民元経済圏」の構築を夢見ています。今のところ,アフリカやアジアの貧しい国々が部分的にそこに参加しています。
    モデルとしては1990年以前にあったソ連の「ルーブル経済圏」でしょう。そこには旧東欧諸国が参加していました。
    歴史を百数十年遡って清までの時代には,東アジアに「中国通貨経済圏」が実際に長年にわたって存在し続けてきて,日本でも「北宋銭」が大量に使われていた史実を思い出しましょう。

    1. より:

      > 歴史を百数十年遡って清までの時代

      確かに日本でも宋銭(北宋銭ばかりではありません)や明銭が長らく流通していましたが、江戸幕府が慶長11年(1606年)に慶長通宝を発行して以降、銭貨は国内鋳造のものになっています(渡来銭の流通が完全になくなったのは寛文年間(1660年前後)とのこと)。清の建国が1616年で、中国全土を支配するようになったのが1644年ですから、日本では清代の通貨はほぼ流通していません。むしろ、Wikiによれば、清でも寛永通宝がある程度流通していたそうで、日本から輸出もされていたようです。

      ちょっと驚きの余談:
      銭形平次などでおなじみの寛永通宝ですが、通用停止となったのは昭和28年でした。つまり、昭和27年までは寛永通宝を1厘硬貨として使うことが可能だったようです。

  6. より:

    国際金融の世界で飛び交う数字は桁が大きすぎて、何やらピンとこないという例が多々あります。例えば、どこぞのファンドが1兆円の資金を調達して円ドル市場に突っ込んだとかいう話を聞くと「おおっ」と思ってしまいますが、たかだか1兆円程度では、実際には為替相場にほとんど影響はありません。ただ、この「たかだか1兆円」というところが、日常的な金銭感覚とかけ離れ過ぎていて、なにやらピンとこないのです。
    同様に、邦銀が韓国相手に1000億円単位での与信があると聞くと、エライことであるかのように感じてしまいますが、全体の与信額から見るとごく僅かなものでしかなく、仮に全額回収不能となったところで、まあ少々の痛手ではあるでしょうが、邦銀の屋台骨が揺らぐようなことは全くないでしょう。これは、しばしば話題に上がる某銀行でも同様のはずです。

    もっとも、それはあくまでも日本から見ての話であって、実際には、100億ドル単位の外債でにっちもさっちもいかなくなっている途上国も、おそらく少なくはないはずです。これは、お金持ちがちょっと借りる1000円と、明日の食費にも窮する人が借りる1000円とでは意味合いが異なってくるのと同様です。風の噂では、パキスタンとかラオスとかモルディブあたりが中国から多額の融資を受けているとのことですが、すでに返済が危ぶまれており、不良債権化(の可能性)に伴って中国の銀行が青ざめているなんて話も聞きます。スリランカ相手にやったような手口は今後中々難しいでしょうし、さて、中国はどのように収拾するつもりでしょうかね。

    1. 伊江太 より:

      龍様

      わたしの先輩に、当時花形だった不動産関連の銀行に入社した人がいたのですが、バブル期を経て、その崩壊に伴って発生した多額の不良債権の回収業務に当たらせられ、心労が重なって自殺に追い込まれたひとがいます。

      聞いたはなしに依れば、「お前さんの性格では、その仕事は絶対に無理だから、早く会社辞めろ」とアドバイス人もいたようですが、結局思い詰めてしまわれたようです。あの時期決して特殊なケースではなかったと思います。上の安易な判断で生じた不始末の尻拭いに汗をかかくのが下の役割。それがサラリーマンの宿命と言ってしまえば、それまでなんですが。もっとも件の銀行の場合、不良債権の総額が余りに巨額だったが故に、銀行そのものが消滅してしまいましたが。

      「たかだか」数百億ドル規模の焦げ付きくらいなら、それで中国経済が揺ないでしょうし、また国有銀行幹部=共産党指導層の権力構造に綻びが出ることも、またないと思います。ただし、不良債権の膨大化という事象が同じであれば、本来責任などないはずの組織の末端にそのしわ寄せが行くことは、多分中国でも日本と変わるところは無いと思います。

      中国人のメンタリティは日本人とは異なりますから、それが組織内の自殺者の増加に繋がるかどうかは分かりませんが、順風満帆と思っていた人生が一挙に暗転する、そうした人の数は相当な規模になるのではないでしょうか。上の責任は一応の降格程度で済ませ、それもいつの間にやら復権なんてことになれば、民の不満は一層蓄積する。その方が中国にとっては、なおヤバい。そんな気がします。

      1. はるちゃん より:

        コロナ前に日本で不動産投資をしている中国人から聞いた話ですが、出資者からのプレッシャーは大変な重荷になっているようです。
        この人は北京大学出身者で、大学や知人ルートで集めた資金を日本の不動産に投資しています。
        プライベートなルートでお金を集めていますので、失敗は許されないと言っていました。
        中国人による日本の不動産取得が問題になっていますが、中国人の側にもいろいろ事情があるのだなあと感じました。
        私が心配する必要もないのでしょうけど。
        私は、日本も相互主義で、中国人による不動産取得を禁止すれば良いのではないかと思っていますが。

      2. より:

        債権回収現場の厳しさは『ナニワ金融道』で学びましたが、「ヒッジョーにキビシィィィ(財津一郎風に)」ものであり、文字通り鋼のメンタルを持ち合わせてないと、とてもではないが担当できないと感じました。なにしろ、規模の違いこそあれ、債権回収に当たっては、債権者がフロに沈もうが、はては一家心中に追い込まれようが、一々気に病むこともなく、断固として回収しなければなりません。きっとその先輩さんは心優しい方だったのでしょう。確かに、回収担当には不向きだったのだろうと思います。

        中国の国営銀行がたかだか数百億ドル程度の焦げ付きでは微塵も揺らがないという見立てには100%同意しますが、問題は、中国国内での不良債権が、不動産セクターを皮切りに爆増している(らしい)という点にあります。どこかで読んだ推計によると、すでにシャレにならない額に上っているとか。
        なにぶん、断片的な情報しかなく、さらに市場経済での常識など平気で踏みにじる国ですので(株式市場で、突然「売り注文」を出すことを禁止するとか)、この先が全く予想できません。現状、世界経済にとって中国は決して無視できない規模になっていますので、「ある日突然大混乱」とかいうことになったりはしないか、ちょっと心配ではあります。杞憂であってほしいとは思いますが。

  7. 匿名 より:

    お忙しい中、記事をアップしてくださりありがとうございます!

  8. ねこ大好き より:

    韓国を発展途上国に分類するって、、、
    自称G8なのに、自称日本を超えたーなのに、新宿会計士さんもお人が悪い。

    1. 世相マンボウ* より:

      韓国が発展途上国分類なのは
      日銀の国際与信統計の国別分類であり
      新宿会計士さまではなくて
      公式な日本銀行の分類です
      https://www.boj.or.jp/statistics/outline/exp/exibs.htm/

      まあ、日本のマスコミはさんざん
      K国みたいなものの
      ゴリ押し報道であふれてるので
      間違って先進国かも(?)と
      錯覚させられてしまいそうです。(笑)

      またこうして、
      正しく途上国との位置づけに言及すると
      「嫌韓サイトニダ」とのレッテル貼りを
      韓流方面からされそうなのですが、
      ここはそんな韓流汚染からは
      きっちり距離をおいて
      事実と実態と実数に基づく
      凛とした姿勢のサイトです。

  9. 世相マンボウ* より:

    中国の金融面での影響が意外と拡大していない
    ことを実数で解明いただいて 驚きです。

    日本と違い中国は前世紀帝国主義的な
    収奪のスタンスなので
    拡大していない理由は、
    純粋に中国の算盤勘定と考えます。
    貸し込んで返せなくして担保に取る
    めぼしい軍港や資源などの範囲内で
    中国は貸付しているのだと感じます。
    スワップでも、結ぶのは相手国を操縦するためで 
    いざ必要なときにスワップ拒否して
    軍港奪うほうが中国のメリットなら
    スリランカのような目にあってしまいます。

    さて、貸出増やしたいけど担保不足に悩む
    悪徳高利貸C国屋さんが考えたのが
    返せなくなった不良債権を担保外して
    日本に巨額出資させたAIIBに
    肩代わりさせ焦げ付かせ、
    外した担保でさらに貸しこもう
    とのウッシッシのアイデアでした。
    日本で鳩ポッポさんや田原の爺さんが、
    A新聞などマスコミで
    「バスに乗り遅れるな!」と
    さんざん工作されてましたが
    そんな行き先怪しいバスを見送った
    日本の判断は正しかったことが
    あらためてわかります。

    だいたい、
    「・・・乗り遅れるな!」のように
    不自然に急かしてくるものというのは、
    見送るのが正解と感じます。
    「チャンスは今だけ!お電話を」
    のテレビショッピングはまだ良いとして、
    振り込め詐欺のひっっかけトークや、
    国際法違反を押し通して引っ掛けようと
    「関係改善を急がねば」のどっかの国、
    「この場で早よ ウンといわんかい!ごらあ」の
    チンピラカツアゲなどなど、
    およそそれらの手口は
    こちらが冷静な判断下す前になんとか
    せかして遂げようとするものと感じます。

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