円安の影響?韓国でアジア危機以来初の2年連続赤字か
円安の影響でしょうか、韓国の貿易収支が悪化しているようです。韓国メディアの報道によると韓国の貿易収支は今年、来年と2年連続して赤字になるかもしれない、といった予測も出ているのだそうです。ただ、それ以上に重要な点があるとしたら、韓国の苦境は輸出で競合関係にある日本企業にとっても大きな注目点のひとつである、ということではないでしょうか。
「悪い円高論」の正体は「悪いウォン安論」
「悪い円安論」の正体は、「悪いウォン安論」――。
『メディアの「悪い円安論」の正体は「悪いウォン安論」』でも取り上げたとおり、現在の韓国ではウォン安を受けた輸入品物価の上昇に加え、円安により日本企業の輸出競争力が上昇し、韓国企業の輸出が急減している、という現象が生じています。
このあたり、日本ではしきりに「悪い円安論」なるものが取りざたされており、これについてはだいたい次のような流れが主張されています。
- ①円安で輸入品の価格が押し上げられ、それにより国内の物価が上昇し、生活が苦しくなる
- ②製造拠点の海外移転により、円安になっても輸出は伸び辛い
- ③ドル建てで見ると日本のGDPはどんどんと低下し、日本が貧しくなる
――。
端的に言えば、どれも物事を一面でしか見ていないか、酷いときには歪曲しています。上記のうち①にかんしては、特にそうでしょう。そもそも論ですが、円安になれば輸入品価格が押し上げられるという悪影響が生じるのは事実ですが、これも「貿易には輸出と輸入の両面がある」という事実を無視した暴論だからです。
円安は日本経済にどういう影響を与えるのか
上記のうちの③については論外として、①と②についてもさまざまな誤解があります。
そもそも円高や円安が日本経済に与える影響は複雑ですが、これを一覧にしたものが、次の図表です。
図表1 円高・円安の日本経済に対する影響
区分 | 円高 | 円安 |
輸出 | ×輸出競争力は下がる | 〇輸出競争力は上がる |
輸入 | 〇輸入購買力は上がる | ×輸入購買力は下がる |
国産品需要 | ×輸入品に押され需要減 | 〇輸入代替効果で需要増 |
製造拠点 | ×海外で作った方が有利になる | 〇国内で作った方が有利になる |
海外旅行 | 〇海外旅行に行きやすくなる | ×海外旅行に行き辛くなる |
国内旅行 | ×海外旅行に押され需要減 | 〇海外旅行の代替で需要増 |
訪日観光客 | ×外国人は来づらくなる | 〇外国人が来やすくなる |
外貨建資産 | ×為替評価損が生じる | 〇為替評価益が生じる |
外貨建負債 | 〇為替評価益が生じる | ×為替評価損が生じる |
(【出所】著者作成)
このうち、とくに輸入については円安で圧迫されることは間違いありませんし、とくに原発再稼働がなかなか進まない日本は石油、石炭、天然ガスなどのエネルギーを輸入に依存せざるを得ず、これが日本にとって貿易収支の大きな圧迫要因となっています。
ただでさえ世界的にエネルギー価格が高騰するなかで、円安が「ダブルパンチ」となっている格好だと考えればわかりやすいでしょう。
したがって、日本が貿易収支を改善しようと思えば、稼働できる原発を積極的に再稼働すること、原発を新増設することなどを通じ、輸入に占めるエネルギーの割合を減らすのが最も手っ取り早く、最も効果的な方法、というわけです。
円安は日本経済に良い影響を与える
ただ、逆にいえば、日本経済の大きなボトルネックのひとつはエネルギー供給にあるのであり、この問題が解消されるならば、日本経済の再生に向けた条件は一気に整います(※もちろん、日本経済の問題点は、エネルギー供給だけではありませんが…)。
日本の場合はそもそも国内での付加価値比率が非常に高いという特徴があります。
著者自身の私見に基づけば、これは長引く円高で製造業の体力が削がれ、低付加価値品の生産を海外拠点(たとえば中国など)にシフトさせざるを得ず、日本国内に残せた生産拠点は高付加価値品のものに限られていたからでしょう。
要するに、高付加価値な品目(半導体製造装置や半導体等電子部品など)を中国などに輸出し、組立加工品(たとえば日本から輸入した半導体などで作ったPCやスマートフォン)を中国から輸入する、といった流れができていたのです。
日本がPC、スマホ、家電などを国内で生産しなくなった理由は、円高で海外に生産させ、それを輸入した方が安い、といった事情もあったのです。
これが、円安になれば事情が大きく変わります。
円安になれば海外から製品を買ってくるコストが上昇します。そして、シンプルな組立加工品については比較的短期間で日本国内に製造拠点を戻すことができますし、海外製品より日本製品の方が安くなる効果もありますので、製造業を中心に、日本の企業の業績が急回復しているのです。
今朝の『「円安ショック」?製造業の経常利益水準が過去最大に』でも指摘したとおり、「法人企業統計」上、2022年9月期における日本企業は、とくに製造業において、経常利益水準が過去最大を記録しているのは、そのあらわれでしょう。
過去の円高で「潤った国」
しかし、それと同時にもうひとつ確認しておかねばならない点があるとすれば、とくに2009年から2012年にかけての民主党政権時代におけるハイパー円高で「潤った国」の存在です。
当時、日本企業の(とくに製造業の)多くが円高で苦しみ、エルピーダメモリが経営破綻するなどの混乱も生じてきた一方で、2008年のリーマン・ショック以降に通貨安が進み、一気に輸出競争力を拡大したのが韓国です。
図表2は、リーマンショック直前から民主党政権時代、そして安倍政権発足直後までの円・ウォン相場(JPYKRW)の推移を示したものです。
図表2 JPYKRW
(【出所】BISウェブサイト “Download BIS statistics in a single file”, US dollar exchange rates データをもとに著者作成)
これで見ると明らかなとおり、リーマン直前では1円=10ウォンを割り込む程度の水準で推移していた為替相場は、リーマン後に1円=16ウォンを突破するくらいの円高・ウォン安となり、その後は韓国も通貨危機水準を脱却したにも関わらず、日本の民主党政権時代(2009年8月以降)を通じてウォン安を維持しました。
この時期に、少なくない日本企業が韓国企業との価格競争に敗退したのであり、エルピーダメモリもその一例なのです。
円安が韓国経済の重しに…!?
ただ、韓国の貿易構造も、非常に特殊です。
輸出の分野では日本企業と競合関係にある一方、貿易構造上、日本から高付加価値の素材、装備、部品(韓国語でいう「素部装」)などを輸入しているという特徴もあるからです。
当然、円に対してウォンの価値が上昇すれば、日本からの「素部装」の輸入条件は良くなりますが、競合する日本企業との輸出競争では厳しい条件に立たされます。こうした証拠がまた出てきたようです。
11月の韓国輸出、前年同月比14%減…貿易収支は8カ月連続赤字
―――2022/12/02 07:59付 朝鮮日報日本語版より
韓国メディア『朝鮮日報』(日本語版)に今朝掲載された記事によれば、11月の韓国の貿易収支が前年同月比で14%も減少したそうです。11月の輸出が前年同期比14%落ち込んだのに対し、輸入が2.7%増加し、結果として貿易収支が70億ドル少々の赤字だったそうです。
これについて朝鮮日報は、こう述べています。
「輸出の減少幅は10月(5.7%)から拡大し、輸出不振で部品・素材の輸入の伸びも2.7%に鈍化した」。
つまり、輸入自体は伸びているものの、その内訳をみるとエネルギーの輸入額の増大が輸入額を押し上げた格好であり、これを除外すれば、輸入も「事実上のマイナス」です。これについて韓国経済研究院の関係者は、次のように述べたそうです。
「部品・素材を輸入し、輸出を行う韓国の経済構造からみて、輸出入の不振は景気低迷の兆候と言える」。
しかも、問題はそれだけではありません。
朝鮮日報によると、「来年の輸出は4%減少し、貿易赤字も138億ドルに達する」などとした韓国貿易協会の予測を引用したうえで、「来年の貿易見通しも暗い」と指摘しているからです。もしこの予想通りなら、「アジア通貨危機以来初となる2年連続の貿易赤字」です。
もちろん、こうした状況は、ロシアによるウクライナ侵略がどう展開するか、米FRBがいつまで利上げ基調を続けるか、といった要因とも密接にかかわってくるのかもしれません。
ただ、日韓両国が貿易で競合関係にあることを踏まえるなら、韓国の貿易動向は日本経済にも大きな影響をもたらすことは認識しておく価値はあるでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
>日本経済の大きなボトルネックのひとつはエネルギー供給にある
我が家の光熱費(電気とガス)の10か月分を去年と比べると今年は去年の31%増。
ここ15年で1番多い。
もはや朧げな記憶ですが、超円高で多くの日本企業が呻吟していた頃、大幅に輸出を伸ばしていた韓国について、韓国メディアは「為替レートの問題ではない。韓国企業が技術的にも日本企業を凌駕し、製品自体の競争力によって輸出を伸ばすことができたのだ」と宣っておりました。
もしもそれが事実だったとすれば、為替レートの都合に関わらず、韓国企業の輸出はさらに伸びているはずなんですけどねえ。
まさに新宿会計士さまのご指摘にわが意を得たり。
対アメリカとか対産油国での為替変動なんて日本の場合にはあまり問題にならない。日本に取り憑き、日本を疲弊させ、日本の席を日本の代わりに占め、日本を凋落させる事を目指す国が歴として存在してそことの為替レートの問題こそが一番大きな問題なのだと。
客観的にはそう悪い事ばかりでは無いはずの韓国の輸出が何やら黄色信号が点って居る。韓国国内でも何やら内訌が激しい。不動産の投機がバブルが弾けたり、キャピタルフライトの危機だとか、Samsungが微細化技術で頭打ちだとか、投機のし過ぎで家計負債が異常増殖とか、中共がキャッチアップに成功したり、更には中共国内の問題もあって中共一辺倒の輸出ドライブが頓挫など一つ一つ大問題ですが、韓国の國體である反日、反日立国であるところの韓国の本願である日本攻略の戦略がウォン>円の為替で逆流が起こって居る。
ここのところ何かの揺り戻しで対ドル円安は急速に緩和(円高)して居ますが、ヒョイとKRWを見てみるとあちらはもっと対ドルウォン高。つまり円高になろうと円安になろうと対ドルではなぜかウォンがやや高く、その為に韓国は経済で混乱し国内的に憤懣が高まる。まさに【悪い円安】ですね。
過去の日本企業がウォンが安ければ国内産業を見捨てて韓国に発注を切り替えたのと同じように、愛国で鳴らした韓国企業も1ウォンでも安く調達出来るなら日本へ日本へと調達先を変える。チープな客が多数でも国内観光を見捨てて日本へインバウンドを落とす。コンビニでサンドイッチと駄菓子と飲料水とラーメンを買って手軽なビジホでそれを食う。あとは高い高い言いながら電車で移動。それでもなけなしの韓国人の観光資源に投ぜられずに日本で消費されるのです。
後は韓流芸能人のゴリ押し露出をどうにかして、日本人観光客が韓国以外に目を向ける事ができれば良いのですが。