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韓国経済を麻痺させる物価・金利・ドル「3高」の脅威

日本は韓国が「良い友人」を見つけられることを祈るべき

韓国の保守系メディアがそろって、現在の韓国で資金不足が表面化しつつあることを指摘しました。考えてみれば、コロナ後の資産バブルについてはいずれ調整が必要でしたが、これに現在、未曽有のドル高という波が韓国に押し寄せている格好です。韓国が資産バブルのソフトランディングを図ろうとすれば通貨危機が、通貨危機を割けようとすれば金融危機がやってくるかもしれないという状況のなか、日本は「韓国が危機のときに惜しみなく迅速に外貨を供給してくれる友人を韓国が見つけられること」を真摯にお祈りすべきでしょう。

韓国で表面化しつつある「資金不足」

韓国副首相「韓国で経済危機再燃の可能性は極めて低い」

韓国メディア『ハンギョレ新聞』(日本語版)を眺めていると、興味深いものを見つけました。

同サイトに土曜日に掲載された次の記事によれば、秋慶鎬(しゅう・けいこう)副首相兼企画財政部長官は30日、第55回アジア開発銀行(ADB)年次総会に参加するために訪問したフィリピンで記者団の取材に応じ、「韓国で経済危機が再燃する可能性は極めて低い」と述べたそうです。

韓国副首相「韓国で経済危機再燃の可能性は極めて低い」

―――2022-10-01 07:48付 ハンギョレ新聞日本語版より

そのうえで秋慶鎬氏は「米国の利上げは長く続かない」とする見通しを示す一方、「韓国は外貨準備高が十分なので問題はない」、とも指摘。

これに加え、米国のロバート・カプロス財務次官補、浅川雅嗣ADB総裁、フィリピンのベンジャミン・ディオクノ財務相、日本銀行の黒田東彦総裁らと会ったところ、「いまは過去の危機のときと状況が異なり、危機が再燃する可能性はないというのが大方の見解だった」、とも付け加えたのだとか。

これについてハンギョレ新聞は、この秋慶鎬氏の認識の背景について、「米国の利上げは長く続かないだろうという見通しと、韓国の外貨準備高の規模に対する楽観的な態度がある」と指摘しているのですが、はたしてその認識は正しいのでしょうか。

韓国で信用収縮の兆候か?

このあたり、秋慶鎬氏のいう「経済危機」の定義がよくわからないという点もさることながら、そもそも論として「韓国は外貨準備が多い」とする発言の当否はよくわかりません(※このあたり、月初という事情もありますので、近いうちに公表されるであろう同国の外貨準備の状況については、別稿にて取り上げると思います)。

ただ、本稿で注目しておきたいのは、現在の韓国の金融状況が、果たしてそこまで楽観して良いものなのかどうか、という論点です。というのも、レジット・クランチの兆候とでもいえば良いのでしょうか、韓国では現在、投資環境が猛烈に悪化し始めているように見受けられるからです。

先週の『韓国で信用収縮の兆候:「優良企業も倒産する恐れも」』では、韓国メディア『朝鮮日報』に掲載された韓国語の記事をもとに、企業の資金調達環境が苦しくなり始めている、とする話題を取り上げました。

韓国メディア『朝鮮日報』によると、韓国国内で企業が資金調達難に陥り始めているのだそうです。社債市場、銀行融資などが目詰まりを起こし、「不良企業だけでなく優良企業までもが倒産」した1990年代の通貨危機、あるいは2008年の金融危機と「同じような衝撃が来る可能性がある」(現代経済研究院室長)という指摘すら出てきました。何がやりたいのかわからない韓国銀行の迷走今朝の『韓国「トリプル安」過去最多:通貨安と債券買入の矛盾』では、韓国銀行がどうやら金融引締め(利上げ)と金融緩和(流動性供給)という2つの相反す...
韓国で信用収縮の兆候:「優良企業も倒産する恐れも」 - 新宿会計士の政治経済評論

具体的には、「とある大手企業が社債市場における金利急騰を受け、地方銀行から数十億ウォン規模の追加融資を受けようとしたところ、融資を拒否された」、「とあるベンチャー企業が11月までに借り換え資金などを含め700億ウォンを必要としている」といった事例を紹介。

そのうえで、金融市場では新発債の発行額が前年同期比で半減し、BBBマイナス格だと3年債の調達利回りが11.04%にまで上昇している、といった情報も取り上げられています。

また、続く『韓国で信用収縮の初期症状:大企業も社債発行困難に?』では、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に掲載された記事をもとに、信用格付が「A格」の大手企業が先月、無担保社債の発行に失敗し、「P-CBO」と呼ばれる優先型担保付社債の発行を余儀なくされた、などの話題に触れています。

冷静に考えれば考えるほど、韓国が置かれた状況が芳しくないことが明らかになってきました。昨日当ウェブサイトでは韓国メディア『朝鮮日報』の記事をもとに、優良企業でも倒産しかねない「クレジット・クランチ」が韓国で発生しているという可能性を紹介したのですが、『中央日報』(日本語版)にも同じような記事が掲載されました。まさに信用収縮の初期症状です。黒字倒産の恐怖昨日の『韓国で信用収縮の兆候:「優良企業も倒産する恐れも」』では、韓国メディア『朝鮮日報』に掲載された記事をもとに、どうも韓国でクレジット・ク...
韓国で信用収縮の初期症状:大企業も社債発行困難に? - 新宿会計士の政治経済評論

どちらの記事も、韓国の金融市場全体において、徐々に資金繰りが目詰まりが発生しつつあるのではないかとの疑いを抱くには十分な材料です。

韓国債券市場の「利回り急騰」+韓国ウォンの急落

こうした2本の記事を踏まえ、著者自身が韓国銀行データベースをもとに簡便的な「イールドカーブ」を描いてみたところ、とくに3年国債利回りが年初と比べて2.3%ポイントも上昇するなど、すでに韓国では資金調達環境が悪化し始めていることが明らかになりました。

これについては『韓国債券市場で「利回り急騰」が意味する金融ショック』で、トリプル安の発生回数とともに詳しく議論したのですが、この「トリプル安」も、金融市場における資金の目詰まりを示すものとして、注目に値する論点のひとつであることは間違いないでしょう。

韓国は今度こそ「率先して惜しみなく積極的に外貨を融通してくれる友人」を探してはいかが?韓国の金融市場におけるトリプル安の発生回数が、年初から9月末までで50回に達しました。もちろんこれは1996年以降で最多です。ただ、問題はそれだけではありません。韓国の金利市場では債券利回りなどが年初と比べ、どの年限でも1.5~2%ポイント程度は上昇してしまっているのです。過剰債務などの調整はどのみち不可避であり、こういうときにこそ、尹錫悦(いん・しゃくえつ)氏が大統領としてリーダーシップを発揮し、国民に痛みへの理解...
韓国債券市場で「利回り急騰」が意味する金融ショック - 新宿会計士の政治経済評論

この点、当ウェブサイトにおいて議論したのは、あくまでも「韓国国債市場」であって、韓国の社債市場、貸出金市場など、金利市場全体の状況ではありません。ただ、それと同時に、どの国でも一般に、社会全体の基準となる金利は、国債市場などで決定されることが多いといえます。

実際、『韓国「トリプル安」過去最多:通貨安と債券買入の矛盾』でも紹介したとおり、現在の韓国では、株式市場、債券市場、通貨市場のすべてから資金が引き揚げられるという「トリプル安」が頻発している状況にあります。

韓国の金融市場で「トリプル安」(株安・債券安・通貨安)が加速しています。年初から昨日までにトリプル安は50回発生した計算であり、このことは、それだけ韓国市場から猛烈に外国人投資家などの資金が引き揚げられている可能性を示唆するものです。こうしたなか、韓国銀行の迷走の証拠でしょうか、ロイターによると、韓国銀行は29日にも、国債を最大3兆ウォン分購入するのだそうです。果たして韓国銀行は、いったい何がやりたいのでしょうか?NDF市場とウォン安私たちの隣国でここ数日、資本市場にきな臭い動きが続いています。...
韓国「トリプル安」過去最多:通貨安と債券買入の矛盾 - 新宿会計士の政治経済評論

韓国銀行による債券買入とは、経済効果的に見れば一種の金融緩和ですが、韓国におけるマネー供給量が増えれば、米ドルとの交換比率(つまり為替レート)が韓国ウォンにとって悪化する(=ウォン安方向に動く)のは当然のことでもあります。

この点、先週、韓国ウォンは一時、1ドル=1445ウォンを突破する局面もあったようですが、その後はとくに「NDFセッション」において大きくもみ合い、米国時間の終値は1ドル=1440ウォン前後という状況です(※値動きの激しさは投機筋による売りと韓国の通貨当局による為替介入が交錯したためでしょうか?)。

東亜日報も「大企業の投資が止まる」と報じる

さて、朝鮮日報、中央日報と並ぶ「保守系メディア」とされる韓国の主要紙が『東亜日報』ですが、その日本語版に土曜日、やはりこんな記事が掲載されていました。

「最悪の状況に備えろ」大企業の投資も止まる

―――2022/10/01 08:54付 東亜日報日本語版より

記事はこんな趣旨の指摘で始まります。

未曽有の物価高、ドル高、金利高の『3高現象』により、投資や生産などの企業の経営活動が相次いで委縮している」。

この物価上昇、ウォン安、金利高騰という3つの事象のうち、後の二者については当ウェブサイトでもずいぶんと取り上げてきた論点ですが、東亜日報によると、この「3高現象」のために「コスト負担が大きくなった企業各社は相次いで投資を保留・再検討」し、あるいは「現金を積み増す動きに出ている」、というのです。

具体的には、サムスン、LG、SKといった大手財閥で、系列会社の社長などを集めた会合が相次いでいるほか、先月、現代オイルバンクとハンファソリューションが相次いで主要生産設備の設立計画を撤回すると表明したのだとか。

また、東亜日報によると、こうした影響は実体経済にも徐々に及び始めているようです。

というのも、韓国統計庁の「8月の産業活動動向」によると、国内主力輸出品目である半導体の生産高が前月比14.2%も落ち込み、減少率としてはマイナス17.5%となった2008年12月以来、13年ヵ月ぶりの水準だったのだそうです。

韓国バブルの生成とその反動

資産バブルを形成したFRBの金融緩和

このように考えていくと、本稿冒頭でも触れた「経済危機再燃の可能性は極めて低い」、とする韓国政府の認識が正しいのかどうかは、かなり微妙でしょう。というのも、保守系3紙が相次いで取り上げた動きは、実体経済に影響が及び始めている可能性を強く示唆するものだからです。

状況を改めて整理しておくと、話はコロナ禍が発生した2020年にさかのぼります。当ウェブサイトではしばしば指摘してきたとおり、韓国では不動産、株式、暗号資産といった「リスク性資産」の市場で、一種のバブルが形成されていた可能性があります。

本来であれば、この手のバブルは早めに潰されなければならないのですが、おりしもコロナ禍直後から米FRBを含めた先進国の中央銀行が積極的な金融緩和政策で市場に資金を潤沢に供給したこともあり、韓国を含めた新興市場諸国に巨額のホットマネーが流入した、という仮説です。

これが、「韓国資産バブルFRB主犯説」です。

【参考】韓国資産バブルFRB主犯説
  • ①FRB等、主要国中央銀行による金融緩和
  • ②為替市場で韓国ウォンを含めた新興市場諸国に投機資金が流入(=通貨高)
  • ③韓国の通貨当局が「ウォン高になり過ぎれば輸出業者が困る」と判断
  • ④韓国のウォン売り・ドル買い介入(→外貨準備の増加)
  • ⑤市中のウォン流通量が増大(→マネタリーベースの増加)
  • ⑥金融機関の家計向けローンが増大(→家計債務の増大)
  • ⑦カネを借りた家計がリスク資産(株式、不動産、暗号資産など)に投資
  • ⑧韓国ウォンが一時、ビットコイン取引通貨の第3位に浮上

(【出所】著者作成)

この①~⑧の流れは、いずれも当ウェブサイトで勝手に作った仮説ではありますが、③以外の部分についてはいずれも統計的な裏付けが取れているものです。

とくに2020年後半から2021年前半にかけてウォン高が進み、外貨準備高が膨張したことは、韓国が自国通貨高を抑制するための為替介入を行っていた可能性を強く示唆するものでもあります。

為替介入でマネーが縮小?

そして、現在発生していることは、上記①に始まる新興国バブルの形成の「逆行程」です。

具体的には、①FRBがマネーを回収し始めていることにともない、②韓国で「トリプル安」が頻発。③行き過ぎたウォン安を牽制するために通貨当局が外貨を売り、ウォンを買い入れることで④外貨準備が減少し、⑤市場金利が上昇している、という状況だと考えればよくわかるでしょう。

このなかでもポイントは、韓国では中央銀行である韓国銀行が頻繁に為替介入を行っているという事実でしょう。そして、為替介入を行えば、為替レートにも影響があることは当然ですが、それと同時におそらくは債券市場にも大きな影響を与えているものと考えられます。

すなわち、ウォン高局面においては韓国銀行が「ウォン売り・外貨買い」を行うため、市場に流通しているウォンの量が増え、金利が低下します。しかし、これとは逆にウォン安局面においては韓国銀行が「ウォン買い・外貨売り」を行うため、ウォンの市場流通量が減って金利が上昇する、というわけです。

これが日本や英国などのケースだと、金融政策(通貨供給量や金利水準)については中央銀行が為替相場と無関係に決定し、為替介入は滅多なことでは行われません(実際、財務省が先月実施した為替介入も、外貨売り・円買いとしては24年ぶりのことです)。

なにより、国内の金利市場に影響が生じるほどの為替介入という状況は、通常の先進国では考えられないのです。

国際収支のトリレンマ

つまり、韓国の金融政策を考察するうえで前提に置かねばならないのは、韓国では為替レートと金利水準の両方が考慮されているフシがある、という状況であり、このことは、韓国の金融状況を議論するうえで、条件を非常に複雑なものにしています。

一般にどんな国であっても、本来、「①資本移動の自由」、「②金融政策の独立」、「③為替相場の安定」の3つの政策目標を同時に達成することはできません。これが『香港とスイスの明暗を分けるもの』を含め、当ウェブサイトで何度も指摘してきた「国際収支のトリレンマ」です。

先週木曜日、日本が3連休に入る直前、財務省が唐突に為替介入を実施しました。これについては巨額の含み益を実現させたという経済効果があったのですが、この点を脇に置けば、そもそも論として「為替介入自体、有効なものなのか」という疑問があります。そこで、本稿では改めて「香港とスイスの違い」などを含め、為替介入や金融政策などについて、広く考えてみたいと思います。為替介入年初来の下落率では日本円は24%に!先日の『BIS統計で確認する世界通貨安:本質は「ドル不足」』では、国際決済銀行(BIS)の統計データを...
香港とスイスの明暗を分けるもの - 新宿会計士の政治経済評論

香港もスイスも「①資本移動の自由」を重視しているという意味では共通していますが、香港では「1米ドル=7.8香港ドル」というカレンシーボード制を1983年以来40年近く採用しており、「③為替相場の安定」が重視され、そのかわりに「②金融政策の独立」は放棄されています。

米国が利上げをすれば、香港はインフレだろうがデフレだろうが関係なしに、もほぼ自動的に利上げせざるを得なくなり、その結果、経済情勢が悪化することだってあり得ます。しかし、香港は米ドルとほぼ完全にリンクした通貨制度を採用している以上、これは仕方がないことでもあります。

一方、スイスは「②金融政策の独立」を放棄していないにも関わらず、2011年9月から2015年1月までの期間、1ユーロ=1.2フランという水準を定め、これを防衛すると宣言し、無制限の為替介入(フラン売り、ユーロ買い)を余儀なくされました(スイスの外貨準備は現在も1兆ドル前後に膨張しています)。

あたりまえですが、自国通貨高を防ぐために無制限に外貨を買い入れれば、通貨供給量が無限に増えてコントロールできなくなりますし、通貨供給量をコントロールできていない時点で「②金融政策の独立」という目標の達成が危うくなってしまっているのです。

現在の韓国は「逆スイスパターン」

つまり、同じ「①資本移動の自由」を重視する国であっても、香港は最初から割り切って「②金融政策の独立」を放棄しているため、結果として「③為替相場の安定」を40年近くも達成し続けています(※厳密には現在は「1米ドル=7.8香港ドル」で完全に固定されているわけではありませんが…)。

しかし、スイスのように「①資本移動の自由」、「②金融政策の独立」という2つの目的を下ろしていないにも関わらず、「③為替相場の安定」を達成しようとすれば、たいていの場合はその政策は失敗に終わります。2015年1月のスイスショックがその典型例でしょう。

このあたり、スイスの場合はまだ「自国通貨売り・外国通貨買い介入」だったのですが、現在の韓国の場合は「自国通貨買い・外国通貨売り介入」です。つまり、現在の韓国は「3つの目標を同時に追いかける」という意味では、「逆スイスパターン」です。

この場合、売れる外貨準備の「実弾」が尽きた瞬間、韓国ウォンは最悪の場合、フリーフォール状態に陥るかもしれません。

しかも、為替介入オペは、韓国銀行が保有している外貨準備を溶かすという意味合いに加え、韓国の金融市場からマネーを吸収してしまうという意味を持ちます。市場からマネーが少なくなれば金利が上昇し、クレジット・クランチが発生しかねません。

そうなると、企業倒産や家計破綻が相次ぎ、結果として金融機関は貸出金が焦げ付き、巨額の償却引当を余儀なくされて自己資本不足に陥るという金融危機に見舞われる可能性があるのです。

為替介入を急に止めるのも難しい

だからといって、韓国の場合は今さら為替介入を止めてしまうと、却って厄介なことになります。

これまでの韓国銀行による為替介入という実務慣行のせいで、韓国経済は市場の自律的な為替相場形成や為替変動への耐性といった能力に乏しく、さらには韓国ウォンが国際通貨ではないという事情もあり、韓国企業は外貨がなければ生産活動もままならないという状況にあります。

もしも為替相場がウォン安に大きく動き、その結果として外貨資金調達ができなくなれば(つまり通貨危機に陥れば)、やはり多くの韓国企業がバタバタと倒れてしまう恐れもあります。

しかも日本と異なり、韓国には世界的に活動する大規模な金融機関の数が非常に少なく、なかでも「G-SIBs」と呼ばれる国際的な金融システムに重要な影響を与える金融機関は皆無です。このことは、ウォン暴落時に韓国企業を貸し支えてくれる金融機関が存在しない、ということを意味します。

韓国のジレンマと日本の対応

バブル退治か、通貨防衛か

こうした状況を振り返っておくと、現在の韓国がバブル退治をするにせよ、通貨防衛をするにせよ、どうにも中途半端な状況に置かれていることは明らかでしょう。

もしもバブル退治でのソフトランディングを優先するならば、中央銀行と中央政府が連携し、「ゾンビ企業」とそうでない企業を選り分けるなどしなければならないでしょうし、日本でいう「産業再生機構」のような受け皿を作り、事業再生手続法などを整備する必要もあります。

それでもさすがにいきなりマネーを絞ることはできません。政策的にはある程度の期間、金融緩和を維持しなければならないと考えられ、この場合は通貨安がさらに進んでしまい、通貨危機に発展するおそれも十分にあります。

その一方で、通貨防衛をすると決めるのであれば、バブル退治は「ハードランディング」とならざるを得ませんし、「痛みを伴う改革」とならざるを得ません。通貨防衛をするならば、かつての香港のようにマネーの供給量をぐんと絞らねばならず、金利の大幅な上昇を容認せざるを得ないからです。

このあたり、現在の韓国政府、韓国社会では、「金融緩和を維持したままでの通貨防衛」という「良いところどり」をしようとする主張も見られるのですが、これがいわゆる「通貨スワップ待望論」につながるのだと思います。

日本にできるのは「お祈りすること」

さて、くどいようですが、2008年12月に日本は韓国に対し、通貨スワップの規模を一気に300億ドルに増額したことがありましたが、この措置を巡っては、当時の尹増鉉(いん・ぞうげん)韓国企画財政部長官が2009年7月6日、日経新聞のインタビューに答え、日本を厳しく批判しました。

「韓国が厳しい時、日本が最も遅く外貨融通」

―――2009.07.07 08:07付 中央日報日本語版より

尹増鉉氏の批判の要点は、次のとおりです。

  • 韓国が最も厳しい時に外貨を融通してくれたのは米中日の中で日本が最後だった
  • 世界第2位の経済大国なのに、日本は出し惜しみをしている気がする
  • アジア諸国が日本にふがいなさを感じるゆえんだ

この尹増鉉氏の批判を思い出しておきましょう。

前回提供したスワップが「遅い」、「金額が少ない」、「ふがいない」と批判されたわけですから、そんな日本が韓国を支援するというのも明らかにおこがましい話です。

「遅くて少なくてふがいない」日本としては、「韓国が最も厳しいときに、率先して積極的に支援の手を差し伸べ、外貨を出し惜しみせずに融通してくれる友人」を韓国が今度こそ見つけられることを、真摯にお祈りするのが良いと思います。

なお、ヒマでヒマで仕方がないという方は、この日韓通貨スワップの意義については昨日の『【インチキ論説】日韓スワップ復活で相互信頼醸成図れ』でも記しておきましたので、ご一読ください(ただし「時間を無駄にした」との苦情は受け付けませんのでご了承ください)。

読み手のリテラシーを試す記事久しぶりに、頭をまったく使わないで文章を執筆してみたくなりました。正直、この手の文章を書くのは本当に楽です。ただし、読み手の皆さまにはそれなりの負担が生じますので、本稿を閲覧なさる場合には十分にご注意ください。生活にちょっとした刺激を最近、生活にハリがない。潤いがない。笑いがない――。そんなあなたにおススメなのが、少し変わった視点から世相を斬るという論考かもしれません。本稿では久しぶりの「インチキ論説」です、頭をまったく使わないで文章を執筆してみたくなったからです。...
【インチキ論説】日韓スワップ復活で相互信頼醸成図れ - 新宿会計士の政治経済評論
新宿会計士:

View Comments (22)

  • > 現在の韓国がバブル退治をする
    1年前のお話ですね。現在は,もう,ほぼバブルは潰れ終わっています。
    それで,景気も悪いです。
    > バブル退治でのソフトランディングを優先する
    もう,滑走路の真上にいて間もなく着地する状況です。
    投資は目先の利く2割くらいの人が利益を得て,
    逃げ遅れた(判断が遅い)8割くらいが損をするので。
    情報の鮮度が非常に大切です。
    岸田さんも,投資を始めたら,確実に損するタイプだと思います。
    ウオール街での演説も2年前なら良かったのですが。

    • 古いほうの愛読者 さま

      >岸田さんも,投資を始めたら,確実に損するタイプだと思います

      これはキツイ。でも、少なからぬ国民が同意するところでしょう。
      聞く力と自称していますが、考え抜く訓練が足りてない、近くも遠く見えてない。地球儀俯瞰外交とはスケールが違うということで。

  • 媚中・韓の岸田・林政権では、日本のあちら系が韓国を助けることを防げそうにないので、イタリアと英国の首相にもっと頑張っていただきたい。極右がー、気候変動がー、話し合いでーと喚きながらデモをするノイジーマイノリティーどもの目をくらませるために。所詮奴らは自らの安全を確保しつつ誰かを攻撃したいだけなので、平気で左翼でない外国政権には内政干渉するでしょうから。
    なお、気候変動については、「日本はもう頑張ってきたし排出量自体少なくて他国に迷惑かけてないので、中国と米国がCO2大幅減なら、日本もあともうちょっと減らすことくらい考えてやらんでもない。ただし高技術石炭火力やって文句は言わせないし、太陽電池とかバッテリーとか風力の羽とか中国製のものは一切使わない。」派で、「CO2など地球温暖化に関係ない。」派ではありませんので、念のため。

  •  日本をベンチマーキング()して産業構造とか技術とか色々盗んでパクって真似して成長してきたのだから、通貨の信用力も真似すれば良いのにね。

  • 1997年のIMFの救済のときは財閥解体など痛みの伴う改革がありましたが
    現在、IMFが融資を行う際に当該国に課す政策条件は緩和されているので
    世界第10位の経済大国は安心して、途上国の国々と一緒にIMF救済要請できます。
    サムソンの半導体部門だけは切り離して、どこかの会社に買収されたほうがいいと思いますが。

    国際通貨基金(IMF)の変遷と改革
    file:///C:/Users/life8/Downloads/joshidaigaku_11_51_63.pdf

  • 思うことは、
    「早く隣国の話題が出ない平和な日々が来ますように」
    ということだけです。

  • (韓国政府が自決できること)
    信用格付を保持のため国債を買い支える
    家計破綻を回避のため不動産・株式を買い支える
    企業破綻を回避のため不良債権を買い支える
    物価為替を抑制のため通貨安定証券を・・(誰が引き受けるんだろう?)

    >遅くて少なくてふがいない
    これって過度な期待の裏返しなんですよね。
    本来、必要最低限の救けで十分な筈なのに。

    (こころの声)
    >真摯にお祈りするのが良いと思います。
    *尻撃でお折りするのが良いと思います。
    ・・。

  • 昨日の別記事でもコメントしましたが、結局のところ、尹錫悦政権はぐずぐずと有効な手を打てないまま、金融&通貨危機に直面する可能性が高いと思います。韓国だけに限った話ではありませんが、多くの国民は、たとえ先々の壊滅的ダメージを避けるためと言われても、目先の確実に痛みを伴う政策をけして歓迎しません。まして韓国の現状では、国民の猛反発を受けることはほぼ確実で、ロウソク祭りが再現される可能性が高いと思います。なにしろ、それで一度政権を転覆したという実績があるので、むしろより過激になって再現されるでしょう。
    もっとも、痛みを伴う政策を行わずに金融&通貨危機に見舞われた場合であっても、おそらくはロウソク祭りが再現されます。すべての不都合は大統領の責任とされ、「魔法使いではなかった罪」で断罪されることになるでしょう。

    まあ、有史以来、ひたすら逆境の中で生き延びる術ばかりを磨いてきた民族ですので、もしかすると、我々には想像もつかない奇想天外な手段で破滅を回避してしまうかもしれません。それでも、かなりの混乱状況にはなるだろうと見込まれるので、日本としてはその対応策をそろそろ準備し始めるべきでしょう。
    その意味では、ビザなし渡航の解禁は最悪の一手ではあるのですが、あくまでも現時点ではまだ危機は到来してませんので、韓国だけを除外するのはちょっと難しいですね。なんとも頭の痛い所ではあります。

    • 釜山の日本領事館とソウルの日本大使館をそれぞれの「少女像」が撤去される迄ビザ発行業務を中止するのはどうでしょう? もっと早くすべきでしたけど。

      • それは韓国に「日本は歴史を全く反省していないのみならず、今またこうして韓国を差別しているのだ」と喧伝するきっかけを与えるようなものですよ。おそらくは、哭き女よろしく、メディアのカメラに向かって泣き喚いてみせることでしょうね。
        全ての国ではないでしょうが、それを真に受けるナイーブな国や、ウソを承知で乗って見せる国は必ずあります。残念ながら、我が外務省はその手の泥仕合にはとことん不向き(というか真っ先に逃げそう)なので、日本の外交的立場を傷つけるだけになりそうです。

        もっとも、日本が個人旅行解禁と聞いて、韓国では日本行きの航空券がバカ売れしているとか。これでビザ無し渡航解禁国リストから韓国を除外したら、さぞかしオモシロかろうとは思うのですが。

        • まあビザ当該公館での発行業務の停止の理由は「少女像の由来を信じていて、その存在を支持している方々は反日である可能性が高いので、日本に行きたくて公館でビザを申請したい親日と思われる方々とのゴタゴタを避ける為」とでもすれば正当化出来たかも知れませんが、どちらにしても遅すぎました。

  • そういえば、③→④のウォン売り介入とマネタリーベースの関係で思い出したのですが、現在のマネタリーベースってどうなってるんでしょうね。
    ウォン買い介入で外貨準備が減少を続け、多少の利上げもしている局面ですが。

    これであってるのかな?
    https://www.bok.or.kr/eng/bbs/E0000634/view.do?nttId=10072772&menuNo=400069&pageIndex=1

    拡大鈍化の兆候、と読めばいいのかな?

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