首脳会談を勝手に既成事実化して関係改善論じる韓国紙
日韓が首脳会談を契機に日韓諸懸案の解決策を探る、などとする観測記事が、中央日報だけでなく、朝鮮日報にも掲載されました。韓国メディアでは日韓首脳会談が行われることが確定したかのような記事が相次いでいるのですが、そのなかでもとくに酷いのが、朝鮮日報の今朝掲載された『尹大統領・岸田首相、初の二者会談…韓日関係正常化へ始動』などと題した記事でしょう。その一方、左派メディアとされる『ハンギョレ新聞』の方には、わりと冷静な記事が掲載されていました。
目次
日韓首脳会談を松野長官が否定:林外相は言及すらせず
昨日の『韓国政府高官「韓日は首脳会談の開催で快く合意した」』でも取り上げた、例の「日韓首脳会談」を巡っては、客観的な事実関係だけで見れば、情報源は「ニューヨークの国連総会に合わせて韓日首脳会談が開かれると韓国政府が明らかにした」、というものがすべてです。
日本政府の側は、現在までのところ、松野博一官房長官が「何も決まったものはない」と述べるのにとどまっているからです(※念のため、本日の松野長官の午前の会見や林芳正外相の定例記者会見も視聴してみたのですが、日韓首脳会談に関しては、質問すら出ていませんでした)。
つまり、日本政府の立場としては、「現時点では何も決まっていない」というのが答えのすべてであり、それ以上でもそれ以下でもありません。
朝鮮日報「徴用・輸出規制の解決策見出そうと共感形成」
ただ、これに関しては先ほどの『韓国紙、首脳会談開催を前提に勝手に日本の謝罪を議論』でも触れたとおり、どうも韓国国内の一部メディアでは、「韓日首脳会談の開催が確定した」ことが事実であるかのごとく取り扱われ、それを前提としてさまざまな議論がなされているフシがあります。
先ほど取り上げたのは保守系メディア『中央日報』(日本語版)の記事でしたが、これに関し、同じく「保守系」とされる『朝鮮日報』(日本語版)には、こんな記事も掲載されていたようです。
韓国大統領室「徴用・輸出規制の解決策見いだそうと共感帯形成」
―――2022/09/16 08:59付 朝鮮日報日本語版より
ご丁寧に、『尹大統領・岸田首相、初の二者会談…韓日関係正常化へ始動』、というサブタイトルまで付されています。まるで「日韓両政府が初の首脳会談を通じ日韓関係を正常化することで合意した」、とでも言いたいかのようにも見えます。
ここでは同記事のポイントを確認しておきましょう(※朝鮮日報の記事の場合、記事公表から数日が経過すると読めなくなるようですので、原文を読みたいという方は、お早めにお願いします)。
朝鮮日報の記事でも、やはり、尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国大統領が来週、ニューヨークを訪問する際、日本の岸田文雄首相と「就任後初めて二者による首脳会談を行う」、と断言したうえで、次のようにその意義を説明しています。
「尹大統領が経済安全保障の複合危機という局面で韓米日協力を固め、前政権時に最悪となった日本との関係において正常化への原動力を確保するための外交戦に乗り出すものだ。特に、2年10カ月ぶりに実現する韓日首脳会談は、両国関係正常化の分岐点になる見通しだ」。
このあたり、百歩譲って本当に日韓首脳会談が行われると仮定しても、首脳会談さえ行えば「両国間に存在する難題を解決し、関係正常化の実質的な契機にできる」というものではありません。というのも、日韓諸懸案はすべて韓国が作り出した、韓国の日本に対する一方的な不法行為だからです。
「諸懸案のほとんどは文在寅政権時代に浮上した」の間違い
ただ、これらの不法行為について、朝鮮日報は次のように述べます。
「韓日両国間には強制徴用被害者賠償問題をはじめ、日本の対韓輸出規制や、いわゆる『韓国海軍の日本海上自衛隊哨戒機レーザー照射問題』など、多くの難題を抱えている」(※「レーザー」も含め、原文ママ)。
「強制徴用被害者賠償問題」とは自称元徴用工問題の間違いですし、「日本の対韓輸出規制」も「韓国の輸出管理不正事案の発生を受けた日本の対韓輸出管理適正化措置」の誤りでしょう。
さらに、2018年12月に発生した火器管制レーダー(FCレーダー)照射事件については、韓国側がいまだに日本に対して謝罪も行っておらず、再発防止策も策定しておらず、それどころかFCレーダー照射がなされたという事実すら認めていません。
しかも、朝鮮日報は、これらの諸懸案については「そのほとんどは文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に浮上した問題だ」、などと述べるのですが、これも事実誤認があります。
たしかに文在寅(ぶん・ざいいん)政権時代に日韓諸懸案の多くが発生したことは事実ですが、日韓諸懸案のなかには竹島不法占拠問題や韓国による農作物の種苗窃盗問題、東京五輪妨害や当時の産経新聞のソウル支局長に対する刑事告訴事件など、文在寅政権以前に発生したものも多数残されているのです。
このことを、私たち日本人は決して忘れてはなりません。
「日韓共同宣言の継承」という噴飯物
さて、朝鮮日報の記事のポイントは、ほかにもあるのですが、そのひとつが「なぜ現在、韓国政府が日本との首脳会談を執拗に求めているのか」に関するものです。それはおそらく、「新たな謝罪利権の確立」にあるからなのですが、そのヒントが、次の記述でしょう。
「尹大統領も大統領選当選後から就任までの間に韓日政策協議団を日本に派遣し、いわゆる『金大中(キム・デジュン)・小渕宣言』(韓日共同宣言)を継承するという考えを何度も口にし、韓日関係回復に力を注いだ」。
1998年に小渕恵三首相と金大中(きん・だいちゅう)大統領(いずれも当時)が合意した「日韓共同宣言」に「回帰する」という話は、たしかに尹錫悦政権の関係者らが何度か口にしている構想です。
ただ、この日韓共同宣言自体、2001年に韓国の国会が全会一致で破棄を求めているという事実(※下記ウェブ魚拓記事参照)を踏まえると、尹錫悦氏が日韓共同宣言継承を宣言するなら、まずは国会に対し、2001年7月の破棄宣言の撤回を決議するようにお願いするのが先決でしょう。
対日関係全面見直し決議、韓国国会が採択
―――2001/07/18付 ウェブ魚拓サイトより【※朝日新聞記事】
なんとも呆れる話と言わざるを得ません。
「未来志向で解決を探る」
さて、朝鮮日報によると、日韓首脳会談に関連し、大統領室関係者は次のように述べたのだそうです。
「日本政府は尹錫悦政権に対する様子見を終え、オープンな姿勢に切り替えるようなムードだ。初めての首脳会談ですべての懸案を一気に妥結させることはできないだろうが、未来に向かって広い視野で見ていこうという共感を持つことが重要だ。現在の雰囲気は双方とも解決策を探ろうという方向だ」。
これについては、ニューヨークの首脳会談では自称元徴用工問題などを巡って「未来志向的に解決しようとの考えでまとまる公算が高く」、「そうなれば両国の当局間で具体的な解決策を見出せるだろう」、という意味なのだそうです。
いったい何をおっしゃっているのか、意味がわかりません。
かつての日本政府ならともかく、現在のように韓国の日本に対する一方的な不法行為という構図が日本国民に広く共有されている状況にあって、韓国による国際法破り・条約破り・国際合意破りといった状態を放置したままで、「解決策」も何もありません。
ちなみに朝鮮日報によると、韓国政府は「3年前に安倍晋三内閣が主導した半導体部品などの輸出規制を緩和させることに関心を持っている」、としていますが、これも理解に苦しむ記述です。
そもそも日本は韓国に対し輸出「規制」など適用していませんし、2019年7月に日本政府が発表した対韓輸出管理適正化措置は、韓国自身がきっかけを作ったものですので、これも韓国による対日不法行為に対する適正な措置に過ぎません。
もしも「(旧)ホワイト国」待遇を復活してほしいのであれば、日本との政策対話に誠実に応じること、輸出管理体制をきちんと整備すること、対日WTO提訴を撤回することなどが必要であり、それをしない限り、日本が輸出管理上の待遇を元に戻すいわれなどありません。
さらには、FCレーダー照射事件についても、朝鮮日報はこう述べます。
「だがその一方、日本政府は2018年12月、東海(日本名:日本海)で韓国海軍の艦艇が日本の海上自衛隊の哨戒機に向けてレーザー照射をしたと主張し、反発してきた」(※「レーザー」などの記述は原文ママ)。
韓国政府がFCレーダー照射事件を「なかったこと」にしようとしているフシがあることは間違いないのですが、先日の『関係改善望む韓国に「観艦式」突き付けた意地悪な日本』でも取り上げたとおり、おそらく日本側はこれを不問に付すことは許さないでしょう。
意外と冷静なハンギョレ新聞
さて、韓国メディアを眺めていて面白い点があるとすれば、政権交代後、「左派メディア」とされる『ハンギョレ新聞』が、わりと客観的・中立的な記事を配信するようになった、という点でしょうか。
『ハンギョレ新聞』(日本語版)に掲載された次の記事などは、その典型例でしょう。
韓国大統領室「国連で韓日首脳会談」…日本「決まっていない」
―――2022-09-16 07:29付 ハンギョレ新聞日本語版より
中央日報や朝鮮日報、聯合ニュースなどが、あたかも日韓首脳会談が既定路線であるかの記事を配信しているのに対し、ハンギョレ新聞のこの記事は、松野官房長官の「現時点では何ら決まっていない」とする発言を取り上げています。
やはり、左派メディアというだけのことはあって、政権から距離を置いているためでしょうか。
その意味では、韓国メディアもやはり一枚岩ではないのかもしれない、などと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
隣国メディアの願望記事はまあ平常運転として、このところの支持率低下を気に病んだ岸田首相が一部外務官僚あたりに唆されてサプライズ会談なんぞヤラカサナイカ?
不安の種は尽きマジ…
韓国に日本の国益と日本人の尊厳を売って来たおぞましい
カルトである統一協会との関係をきちんと総括出来ていない
事が支持率低下の一因なのに、韓国に融和的な態度を取れば
支持率が上がるなどと考える訳が無いでしょ。
まー貧すれば鈍すとも云われますし、一部外務官僚あたりから「首脳会談実施=相手国に融和的、というわけではアリマセン! ここらで直接ガツンと一発カマしておきまショー!!」などと唆され『外交得意とは思われちょらんみたいなし、パチキカマして存在感アピろーかいね』『瞬間国内問題から目先ズラセリャ多少動き易なかしらん』と錯乱せんとも限らんなんせ宏知会なし
でもって同フレームで写真にでも納まってしもーてナイコトナイコト捏造タレ流し喰らい『嵌められた~』まで画が…
米中間で剣の刃渡りを演じている今の韓国に、対日関係の改善に外交的リソースを割く余裕なんてないんじゃないかという気がします。
こんな○芝居、日本に向けてのパフォーマンスなら、ただ無視ないし冷笑されるだけ。下手すれば一層関係をこじらせることにも。
米国に対しては、
「ほら、こんなに努力して関係改善の場を用意しても、いつも日本が土壇場で…」
中国に向いては、
「韓米日三角同盟の強化なんて気に掛ける必要ないですよ。だって、日本がいつもの如く…」
まあ、どちらからも、自作自演の言い訳作りと、見透かされるとは思うんですけどね(笑)。
日韓正常化の正常化というものの認識に差があるのが問題です。
それに加えて、首脳会談にも認識の差があると思われます。
彼らは、国連総会にてニューヨークで同じ時間に日韓の首脳が存在したら それはもう日韓首脳会談したのと同じではないか と思ってるかも知れません。
前開安倍総理の時にはだまし討の様な形で写真をとりましたが同じ手は使わないでしょう。
おそらく撮影トリックを使うやも知れません。
コロナで店を閉めるよう要請していた頃、この商店街には沢山の人がーという写真がありましたが、それはどんなにまばらでも超々望遠レンズでみると人が密集してる様に見えるトリックでした。
同じように、超々望遠レンズで日韓の首脳が向き合ってる様な写真をとって間をトリミングしたら首脳会談の写真の出来上がりです。
いつもの「首脳会談ヤルヤル詐欺」ですかね。日本からは、日韓で首脳会議をやるという声は上がっているように見えませんが。
もう彼らに「未来志向」という言葉を使わせないようにしましょう。「未来志向」を語る政治家に同調しても、任期末期にはまた過去のネタを持ち出し、反日行動に出るのが彼らのいつもの行動。何度も騙されているし。
こんだけ間違われる事を指して「レーザー照射問題」と言えるかもしれません(アンサイクロペディア感)。一般人はまだしもメディアがこれやっちゃうとは……韓国メディアの(というか韓国人平均の?)科学リテラシーの低さは常々問題でしたが。筆者個人だけでなく、社の校正通ったってことですよね。
連中もFCレーダー照射は誤魔化し様無くドウシヨウモナイと自覚しており「レーザー照射は無かった!」と強弁する(そりゃ照射したのはレーダーやもんな)ことで精神勝利と時間稼ぎからの風化を企図している、とゲスパー
>「レーザー照射は無かった!」と強弁する(そりゃ照射したのはレーダーやもんな)
ちと笑ってしまいました。
なるほどその手が。本気でソレだったら
「強制徴用などというものは無いから判決に応じない。」
「日帝などというものは無いから謝罪には一切応じない。」
「日王などというものは存在しないから大使が来ても拝謁させない」
「在留資格無いから強制送還」
等でこちらもイケますな……あれ、本来なら普通か?
かなり以前、中国人青年の呆れた英会話学習法について外国人が書いた記事を思い出し
ました。
中国に来ている外国人をつかまえて、積極的に会話するやり方だそうです。
その中身たるや、外国人との会話を想定した英会話テキストで、丸暗記した中国人Partを
話しかけ、相手の返答内容を無視して、一方的にテキストの中国人Partのみ話して、去って
行ったらしいです。(根性付けに、私も日本にきている外人相手にやってみようかな。)
なんか、相手のことなど屁とも思っていない、ある意味、日本人にはとても真似できない
外国人相手に臆すことのない、やり方だと感心しました。(もちろん皮肉です。)
ご紹介いただいた、中央日報さん、朝鮮日報さんの記事は、ちょっと、それを彷彿させる
何かがあります。
特亜の人達って、みんな、こんなマインドなんですかね。
韓国メディアは基本MoMaメディアって事ですかねぇ。。。
ハンギョレも自称革新系政権の時はMoMa記事出すでしょうし。
「とにかくトップと合意してしまえば何とかなる」って考えは権威主義的だと思う。