「日航機事故で真っ先に到着」記事が象徴する報道加害
報道の自由というものは、本当に絶対視すべきものなのでしょうか?満員の映画館で「火事だ」と叫ぶ自由はあるのでしょうか?本日・8月12日は、日航機墜落事故の発生日でもありますが、それと同時に「報道加害」について考える機会でもあるのかもしれません。個人的には、ウェブ評論サイト『東洋経済オンライン』に昨日掲載された論考に含まれている、「真っ先に事故現場に駆け付けた報道陣」という表現には、怒りと憤りしかありません。
日航機事故から37年
8月12日といえば、今から37年前の1985年、羽田空港を離陸し、伊丹空港に向かっていたはずの日航123便が突如としてコントロールを失い、群馬県の山中(通称「御巣鷹の尾根」)に墜落し、520名の方が犠牲になるという凄惨な事故が発生した日付でもあります。
改めて犠牲となられた方々のご冥福をお祈りしたいと思います。
ただ、ここで思い出しておきたいのは、この手の大事故や大事件、大災害のたびに繰り返される、「もうひとつの加害行為」です。
現在、40代後半以上であれば、この痛ましい事故を記憶している方も多いでしょう。なぜなら、新聞、テレビを中心とするマスメディア各社が、事故発生直後から、これをセンセーショナルに取り上げ、連日のように報道したからです。
著者自身、この事故そのもののインパクトもさることながら、当時のテレビ放送は同日の夜以降、この事故の話題で持ち切りになり、翌朝の新聞も大きな見出しで事故を衝撃的に報じていたことを、昨日のことのように思い出します。
真っ先に現場に到着し、生存者を発見したカメラマン
そんな記憶が改めてよみがえる記事のひとつが、ウェブ評論サイト『東洋経済オンライン』に、昨日付で掲載されています。
日航機墜落現場を写した私が伝え続けたい記憶 37年前の御巣鷹山を取材したカメラマンの写真
―――2022/08/11 11:32付 東洋経済オンラインより
記事冒頭の記載は、こうです。
「残骸の中から、白い手が一度だけ振られた。『ピカッ』とリングの指輪が光る。僕らは一目散に駆け出した。当時パーサーだった落合由美さんのダイヤリングだった。紺に白の水玉模様のワンピースが今も記憶に残る」。
この記事の著者は「新潮社『FOCUS』創刊メンバー」で「社会派写真家」などと名乗っていらっしゃいますが、この記事で最も重要な点があるとしたら、この執筆者の方が事故の直後に真っ先に現場に到着した人物のひとりだった、という点でしょう。
「当時、僕は新潮社『FOCUS』誌の契約カメラマンとして、生存者のいる事故現場にいち早く到着した。31歳だった。今でもいろんな出来事が脳裏をかすめる。御巣鷹山事故JAL123便は記録写真から記憶写真という世界に突入してさらに時間を重ねてきた」。
「当時、いち早く現場に到着したものの、相棒の記者と2人だけの報道陣が生存者も発見して右往左往している姿は惨状をどう的確に伝えたら良いか。実はファインダーにある光景を切り取っていった記憶も断片的に薄れてきて少し楽になってきたような気がする」。
この著者の方には無礼を承知で申し上げるなら、この記述を読んで真っ先に抱くのは、「どうして救助隊よりも先に現場に到着してしまったのか」、「救助する道具もノウハウもない者たちが事故現場にいることが何を意味するのか、理解していなかったのか」という点に対する怒りであり、憤りです。
「報道陣が生存者を発見して右往左往」。
本当にやりきれない話です。
最も重要な論点は「報道加害」
じつは、この記事自体は日航機墜落事故の原因に関する彼なりの考察っぽいものも掲載はされているのですが、それよりもはるかに重要な論点は、「報道加害」です。この記事で改めて強く認識するのは、メディア関係者のやることは、少なくともこの40年間、まったく変わっていない、という点でしょう。
実際、当ウェブサイトでもときどき、報道災害という「二次加害」についての話題を取り上げています。
たとえば今から約4年前の『災害報道の共同通信の新人記者は被害者ではなく立派な加害者』で、大阪北部の地震で被災したマンションを戸別訪問する共同通信の新人記者の手記を話題に取り上げたことがあります。
また、アニメ制作会社にガソリンが撒かれ、放火された事件を巡っても、被害に遭った会社がメディア各社に取材を自粛したにも関わらず、オールドメディアが被害者の実名公表を執拗に警察に要求し、取材活動をしたという「二次加害事件」がありました(『京アニ事件とマスコミ取材の二次被害が酷い』等参照)。
これに加えて昨年冬に著名な俳優の方が亡くなった際には、お父様の自宅の呼び鈴を深夜に鳴らした者や、葬儀直後にご両親に向かって「今の心境は?」と尋ねた者などもいました(『メディア記者、傷ついたご両親に「いまのお気持ちは」』等参照)。
さらには、先月発生した安倍晋三総理の暗殺事件に関しても、オールドメディアがその手口や現場の様子を詳細に報道しているためでしょうか、広告主が一時的に出稿を見送った、といった出来事もあったようです(『安倍総理関連報道をめぐりメディアがもたらす二次被害』等参照)。
このように、メディアによる報道加害の事例は、数え上げていけば、キリがありません。
このあたり、報道とは本来、社会をよりよくするための手段のひとつにすぎないはずなのですが、新聞社やテレビ局を中心としたオールドメディア各社の報道のなかには、むしろ社会不安を煽る、非常に有害なものも多く見受けられるのです。
(※なお、先ほどの記事の執筆者は新聞・テレビではなく雑誌社のカメラマンだったのだそうですが…。)
報道加害考える機会のひとつにしたい
正直、報道関係者のなかでは、事件・事故・災害現場に最も早く到着し、それを「スクープ」的にセンセーショナルに伝えることが高く評価されるのかもしれませんが、そのことに社会的な有益性はまったくなく、それどころか有害ですらあるのです。
さらには、災害報道では報道ヘリ、報道車両が救助活動を大きく妨げ、結果的に助かるはずの命が助けられなくなる、といった出来事も発生しています。有名な格言でいえば、まさに「満員の映画館で『火事だ!』と叫ぶ自由はない」のです。
その意味では、日航事故の当日である本日は、事故の真相究明もさることながら、「報道加害」について日本全体できちんと考える機会にしたいものだと思うのですが、いかがでしょうか?
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
ご指摘のけん件、私にとって最も強く記憶に残っているのは、松本サリン事件です。市井の人の人生を滅茶苦茶にした人達。どう責任を取り、今後の再発防止に活かしたのでしょうか?
今年の参議院選挙で長野県選挙区から立憲民主党の候補として出馬をして、当選をしました某在京テレビ局の元アナウンサーの事ですね。
確か、その方が頭を下げてお終いでしたね。
森友学園事件でも同僚の“天ぷら”(千葉県選出の某参議院議員)と一緒に財務省に殴り込みをした結果、事情を知っていたある男性を自殺に追い込みましたからね。
話を戻しますが、その後某在京テレビ局は、オウム真理教の件で色々とやらかしていることが発覚して、ワイドショー番組を自粛せざるを得ない状況に追い込まれました。
自業自得ですね。
nanashiさま
ご返信ありがとうございます。
立憲の元TBSの杉尾秀哉ですね。
覚えておきます。
それにしても長野県民、何故にして自民党を押し退け当選するほどコイツに投票するのでしょう?
クライマーズ・ハイという小説がこの件をテーマにしていますが
メディア側が反省してるようなフリをして弁解と韜晦に終始していました。
物語としては大変面白いのですがそれだけにその弁解と韜晦を鵜呑みにした
読者も多かっただろうという懸念があります。
プロフェッショナルに要求されるものは二つある。ドラッカーがヒポクラテスの誓いを引いて書いていたと思うが、間違っていたらご免なさい。
一つは能力で、もう一つはそれを用いて害を為さないこと、つまり倫理。
最近の記者つまり報道機関は、報道の自由を盾にして、どちらも持ち合わせていないように感じている。
マスゴミの屑っぷりが他者の命まで奪った最悪の例は、91年の雲仙普賢岳の火砕流事故の時でしたね。
あの時マスゴミが警告無視して危険地帯に入りさえしなければ(怒)。
日航機墜落事故については発生当時より誇大妄想に基づく与太話をさも事実であるかのようにまき散らす不届き者がいましたが、40年近くたってもまだ「自衛隊撃墜説」なんて真顔で抜かしてる重症患者がいるんですね。
https://ameblo.jp/statesgrow/entry-12757703051.html
彼らにはどれだけ事実を理路整然と説いても聴く耳は持たないでしょう。だから今に至るまでカビの生えた妄想を懲りずに撒き散らし続けてる訳です。
“報道の自由”だの”知る権利”だのもっともらしく嘯くうえにテメーらの身内がヤラカシた件はスルー、バレたらアリバイ的なサラ流し、連中の云う”知る権利”を持ってるハズの”視聴者”サマが個別に問い合わせてもニゲルかスルー…
静かな大勢からは見透かされて今に至っとるんにナァ
「ペンは剣より強し」なんだったら、ナゼに「剣」にはキビシイ規制をかけてるのに「ペン」が野放し?
コメント失礼します。
どんな自由も「公共の福祉に反しない限り」だと思ってます。表現や信教もですがそれを理由に犯罪、国家転覆とかやっていい訳では無い。国家の目的「自国の生存と発展」に反し害する振舞いはいけない。やってる輩は官民問わずあまりにも多いから今一度日本人全員に周知徹底したいものです。
そういえば野次の自由を求めて訴え、同調した地裁と屈した警察が居ましたね。そしてその後の安倍総理暗殺。マスゴミ、官僚、その他反日勢力の協力プレイですね。
https://www.asahi.com/articles/ASN6H71RYN6HIIPE00X.html
「私達を一番自由にする不自由は何か?」
あらゆる人にあらゆる自由を認めると、却って自由が減る。万民闘争。
コロナ報道など、報道加害のそのものでしょう。
国民の生命、健康に関することですら視聴率稼ぎと政権打倒の道具にするのかと、個人的には既存メディアへの不信感を決定的なものにしてくれました。
2020年2月24日 専門家会議の尾身さんの会見より。https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/view/detail/detail_01.html
「感染症予防の観点からは、全ての人に新型コロナウイルスの検査をすることは、有効ではない。また、設備や人員の制約のため、全ての人に新型コロナウイルスの検査をすることはできない。」
しかし、この後既存メディアはこの提言を無視し、全力でPCR検査キャンペーンを打ち、国民の不安を煽り、医療機関に負荷をかけ続けました。
忘れません。
長崎県民です、「KY」氏が上記で指摘されてますが、
報道加害や被害についてはどうしても言いたいことがあります。
一部きつい表現になっていますがご容赦ください。
1991年の雲仙普賢岳火砕流災害で、43人もの犠牲者がでました。
当時、噴火が続く普賢岳の様子を取材するために、マスコミが該当地域に入っていました。
のんびりした地元住民が家屋に施錠せず避難していたところ、
マスコミたちがやりたい放題、勝手に家に入って電気を使う、土足で上がる、
冷蔵庫の中のものを食い散らかすなどの蛮行・泥棒行為を繰り返していたそうです。
堪りかねた住民が警察や消防団に対して、取材陣に同行して監視して欲しいと依頼しました。
そのときに大火砕流が発生し警察官2名、消防団員12名の方の命が失われました。
マスコミの被害者数は合計16、同行したタクシーの運転手さんも4名の方が亡くなられています。
消防団員が避けるように警告していた危険な地域でも取材していたと聞きました。
多くの地元関係者が無理な取材のために犠牲になった人災でもあったことになります。
その後マスコミが自然災害だけを報道し被害者ヅラしていたのは、
同じ県民として許せませんでしたし、いまでも絶対に許せません。
今回の東洋経済の「真っ先に事故現場に駆け付けた報道陣」と言う表現は本当に強い憤りを感じます。
実態はこんなこととは知りませんでした。当時ネットはありませんでしたから。
報道被害についてウィキペディアで調べました。にニュース・オブ・ザ・ワールド紙の事例が挙げられていました。・・・<一連の人権侵害が発覚すると国民の怒りが爆発し日曜版としては発行部数一位であったニュース・オブ・ザ・ワールド紙は広告主が次々と契約を打ち切る中で廃刊。>
結局 広告主 国民の意識とアクションが重要と感じました。昨今話題になっている広告の仕切り屋である電通自体が問題ありの状態では 日本は英国よりももっと深刻。
皆さんが挙げている例は私にとっても記憶に残る事件でした。さらには秋葉原の事件の犯人の弟が自殺しています。母親は精神疾患を発症し離婚。まあ親のことはどこまで因果関係があるかは解りませんが、弟は事件のため会社を退職し、その後職場を変えても犯人の弟とバレると解雇されたり、居づらくなって転々としたそうです。恋愛なんかもできず、身バレすることを恐れてビクビクしながら暮らしていたそうです。凶悪事件を起こした犯人が社会的に糾弾されるのは当然だけど、マスコミの報道を手掛かりに家族のプライバシーや写真までネット晒されて自殺に追い込まれてしまうのは報道被害のひとつではないでしょうか?もちろんこうした個人情報を晒すネットの問題も重大ですが。