「徴用工」らが三菱重工の資産売却命令早期確定を要求

韓国メディアの報道によると、自称元徴用工は三菱重工側の大法院に対する申立書に反発し、むしろ資産売却命令の早期確定を要求したというのです。これは興味深い展開です。個人的に大法院が売却命令を19日までに確定させるかどうかを巡ってはやや懐疑的ではありますが、もしも本当に売却命令が出れば、日韓関係は「本当の意味で」正常化することになりそうです。

19日までに資産現金化命令か?

当ウェブサイトとしては、自称元徴用工問題を巡る資産現金化については、さまざまな意味において「あり得ない」と考えてきました。

そもそも特許権、商標権、非上場株式の売却は、実務上、とても困難であり、そもそも金銭債権などの換金が容易な資産ではなく、それらの換金困難な資産をわざわざ選んで差し押さえているあたり、自称元徴用工側に資産現金化の意思がないことは明白でもあります。

ただ、こうしたなかで少し気になる動きがないわけではありません。それが先日の『8月19日に法的基盤が覆る?日韓関係はどうなるのか』でも取り上げた、自称元徴用工問題を巡って、「早ければ8月19日までに日本企業の資産現金化の判決が確定する(かもしれない)」、とする話題です。

これは、「裁判所は事件を受理してから審理を続行するかどうかを4ヵ月以内に決定しなければならない」とする韓国の国内法上の期日が8月19日であり、この日までに裁判所は「審理不続行」、つまり「本案審理を行わず棄却」するかどうかを決めなければならない、というものです。

自称元徴用工側が「早く判決を!」

ただし、先日も指摘したとおり、この「8月19日」は、あくまでも「審理を続行するかどうかを決定する期日」に過ぎず、極端な話、韓国の裁判所が8月19日の時点で「審理を続行する」との判断を下せば、資産現金化命令は先送りされてしまいます。

この場合、韓国による資産売却「スルスル詐欺」は、裁判所を巻き込んだうえで、さらに延長戦に入る、というわけです。

こうしたなか、韓国メディア『ハンギョレ新聞』(日本語版)には今朝、こんな記事が出ていました。

強制労働被害者「裁判所は速やかに三菱資産の現金化を判決せよ」

―――2022-08-12 09:10付 ハンギョレ新聞日本語版より

記事タイトルにある「強制労働被害者」は、もちろん虚偽です。正確に表現しておくならば「自称元徴用工」、というわけです。

ただ、ここで注目しておきたいのは、その自称元徴用工らが「資産現金化のための法的手続」に関し、「大法院(※最高裁に相当)に速やかな判決を求めた」、とする記述です。

ハンギョレ新聞によると、三菱重工業の韓国国内での商標権2件、特許権2件に対する「特別現金化命令」において、自称元徴用工らの支援者団体などは11日の記者会見で、大法院は「勤労挺身隊被害者の特別現金化命令に対する再抗告審の決定を速かに行うべきだ」と要求したのだそうです。

これらの商標権と特許権は、2020年9月に地裁で特別売却命令が出ていたのですが、三菱重工側が控訴審裁判所、大法院とそれぞれ抗告・再抗告の手続を取っているのだそうです。

もしかして煽っていくスタイル!?

これまで自称元徴用工側は、基本的には三菱重工側の「謝罪や賠償」を求めてきたはずですが、ここに来て、「売却命令の確定」を求めるというのも、少し唐突感があります。

ではなぜ、こんな話になったのでしょうか。

そのヒントでしょうか、ハンギョレ新聞の続きには、興味深い記述があります。「三菱重工側の申し立て」です。

具体的には、韓国政府にて「官民協議体」が組織されたことを踏まえ、三菱重工側が先月20日、「判決を先送りしてほしい」という趣旨の上告理由補充書を大法院に提出したのだそうですが、これに対して自称元徴用工側が逆に、「判決が遅れてはならない」と反発したというのです。

もしも三菱重工側が「わかってやっていた」のだとしたら、なかなかに面白い戦略です。

連結・IFRSベースでの売上収益が4兆円近くに達し、1600億円を超える事業利益をたたき出している三菱重工にとって、1人あたり1000万円前後の損害賠償など、正直、経営の屋台骨を揺るがすことは、まずあり得ません。

同様に、今回の自称元徴用工判決問題における資産現金化が実現した場合、三菱重工は韓国内における特許権や商標権などの権利を喪失することになりますが、それで同社の経営が傾くということなども、まず考えられない話でしょう。

こうした前提を踏まえたうえで、三菱重工側が「資産現金化の決定をしないでほしい」と韓国の裁判所に要請したとする韓国メディアの報道を眺めるならば、その狙いはむしろ「自称元徴用工側を刺激し、資産現金化の決定を早めるために韓国国内の世論を喚起すること」にあるのではないか、などと思わないではありません。

みずから煽っていくスタイルでしょうか?

すでに始まっている:ステルス韓国離れ

というよりも、資産現金化の決定で瀬戸際に追い込まれるのは、日本企業や日本政府ではなく、むしろ韓国政府や韓国企業を含めた、韓国の側です。

金融・経済関連の統計を眺めていると、日本企業の韓国離れは、静かに進行しています。

たとえば『邦銀対外与信「5兆ドル」大台に』などでも話題として取り上げたとおり、日本の金融機関の韓国に対する与信総額が日本全体の対外与信に占める割合(※最終リスクベース)については、2012年9月の1.90%をピークに一貫して下がり続け、直近の2022年3月時点においては1.02%に低下しています。

また、『韓国の債券発行が2年連続ゼロ…サムライ債市場の現状』でも取り上げましたが、韓国の企業や銀行による本邦の債券市場における公募サムライ債の発行実績は、とくにコロナ禍以降激減していることが確認できます。

さらには、『貿易統計で見る、日本にとっての「台湾・韓国の逆転」』などでも確認したとおり、日本にとっての貿易金額において、台湾と韓国が逆転することも、徐々に増えているのです。

もちろん、「日本社会全体にとって、金融、貿易などの分野において、韓国が占める重要性が徐々に低下している」というのは、単なる統計的事実に過ぎませんし、統計だけで韓国における国際法違反判決などと因果関係があると決めつけることはできません。

しかし、日本の「韓国離れ」が、さまざまな分野で同時多発的に進行しているという事実を踏まえるならば、それらの事象については、「お互いに無関係である」、などと決めつけることにもまた無理があります。

日韓関係の本当の意味での正常化

いずれにせよ、19日までに資産現金化命令が下される可能性についてはゼロとはいえないのですが、個人的にはこの資産現金化命令をもって、日韓関係が本当の意味で「正常化する」、と考えていることもまた事実です。

日本社会において、韓国が名実ともに、北朝鮮や中国、ロシアなどと同等の無法国家である、というコンセンサスが成立するからです。

はたして、19日までの資産現金化命令の確定がありうるのかどうか。

心配のあまり、ハンバーガー評論家としては、これからの夜ご飯は、夜限定の倍サイズビッグ・ハンバーガーとポテト大盛り、ナックマゲット大盛りのセットくらいしか喉を通らない日々が続きそうです。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. ダージリン より:

    中国、北朝鮮、ロシアなどの国は韓国が自分たちの側である事を明確にすることは喜ぶでしょうから、圧力をかけて、先延ばしでなく、判決を確定させる可能性も少しはあるかもしれません。まあでも、韓国は偉大な国で米中間のバランサーですから、グダグダで先延ばしにするんでしょうけど。

    1. 匿名 より:

      中国の立場で考えれば 絶好の機会だ
      日米韓の経済安保に攻撃できるトリガーを放置するわけがない
      自称被害者団体も、活動資金源とかに中華の息がかかってんじゃない?
      工作員が裏から誘導しているなら、イイ線いってよ ホント 

  2. カズ より:

    現金化すれば、重工のみならずスリーダイヤ(特に三菱UFJ)は黙っていないと思う。
    発行した貿易信用状は引受けされず、輸入に支障をきたすんじゃないだろうか???

    信用ゼロなんですから、以降の取引は前払決済でヨロシク!

    1. sey g より:

      スリーダイヤにケンカ売るなんて、さすが韓国です。
      あのマークなくとも、三菱系の企業がどれだけあるのか。
      しかも、子会社 取引企業含めると。
      それらが全て現金先払いになると、韓国のお金回らん様なるかもですね。

  3. KN より:

    三菱重工は、自ら煽っていくスタイル?をとることで、今後どのような展開を狙っているのか興味深いです。

  4. taku より:

    いやあ、韓国は本当に予想通りの展開で、楽しんぱいなことこのうえない。
    私は、大法院は1年くらいは、韓国外務省の答弁書を尊重して、”現金化”を待つと、予想します。
    でもね、たとえ1年待っても、日本が譲歩する訳もなく、韓国世論が変わる可能性も少ないでしょうね。そうなるといよいよ現金化です。日本もカウンター制裁に踏み切ります。ルビコン河を先に渡ったのは韓国、ということになるでしょう。
    米国としては、中国を利するだけでそのような事態は避けたいのはやまやまながら、慰安婦問題の経緯もあり、介入は見送るでしょう。その他の国は、韓国は訳の分からぬ国だな(国益に基づき行動しない国だな)、と思いつつも静観でしょう。日本の世論も、60%がカウンター制裁に賛成、10%が反対でしょうか。そしてさすがの朝毎東やサンモニも、「破局は避けよ」くらいは言うかもしれませんが、日本の制裁に反対はしないでしょう。
    韓国が譲歩するのがベストシナリオでしたが、この決着もセカンドベストで、想定の範囲内と評価します。(ワーストシナリオは、決裂を恐れて日本政府が中途半端な妥協に動く、日本政府は一貫した立場を固守するが日本の世論が割れる、とかです)。

  5. 元一般市民 より:

    以前、スライスするサラミが無くなるぞ、と投稿したのですが、ちょっと考えを改めました。
    仮に、差押え資産の現金化が裁判で確定しても、今度は、資産価値を調査するぞぉ、とか、その次は、競売するぞぉ、詐欺に変わるだけなのかなぁ、と。

    1. KN より:

      北の無慈悲なチャーハンシリーズを彷彿とさせますね。
      https://yukawanet.com/archives/5204547.html

  6. G より:

    あぁなるほど。。。

    8月19日がデッドラインになるように誘導したのは三菱重工自身かも知れませんね。

    そもそもなんで素直に現金化されず、地道に抗告とかするのだろう?と思ってました。冷静に考えると、権限のある最高裁のところまで持ち込んでもう一度判断させようということだったのかも知れません。

    原判決は全く不当なものではあるものの、その確定判決に基づく差押え、現金化ですから、本来ならなんの支障もないはずです。単独の判断とすれば「問題なし」として抗告を却下すれば済む話です。

    この本来の「4ヶ月」で結論が出せなかった場合。「問題なし」ではない、何かしらの形式的でない裁判所の判断が必要になります。「(原審に)問題あり!」と最高裁自身が認めたと捉えることも可能です。再審議をお願いしたい三菱重工としては「延期」を求めるのも自然な流れです。

    この一連の流れで韓国は致命的なミスをしました。8月19日の期日をやたら大きく捉えて、騒いでしまったことがミスです。こんなもんさらりと最高裁に抗告却下させて、あとは現金化の段階で原告に時間稼ぎさせれば良かったのです。

    裁判所が却下すれば「制裁」。裁判所が判断を引き伸ばせば「再審理」。どっちにしても韓国には厳しいです。

    そもそも現金化したら制裁が日本の立場だとして、民間である原告の行為がきっかけになるとは考えにくいです。国同士のやり取りですから国家機関の行動がトリガーになるべきです。最高裁による現金化の許可は十分日本としてトリガーになります。だから韓国も慌ててるのでしょう。

  7. 宇宙戦士バルディオス より:

    >そもそも特許権、商標権、非上場株式の売却は、実務上、とても困難であり、そもそも金銭債権などの換金が容易な資産ではなく、それらの換金困難な資産をわざわざ選んで差し押さえているあたり、自称元徴用工側に資産現金化の意思がないことは明白でもあります。

     最近、私は、あるいは原告代理人の弁護士が低能で、差し押さえ資産の性質を良く知らなかったのではないかと考えているのですが。

  8. 迷王星 より:

    >三菱重工側が「資産現金化の決定をしないでほしい」と韓国の裁判所に要請したとする韓国メディアの報道を眺めるならば、その狙いはむしろ「自称元徴用工側を刺激し、資産現金化の決定を早めるために韓国国内の世論を喚起すること」にあるのではないか、などと思わないではありません。
    >みずから煽っていくスタイルでしょうか?

    流石にそれは穿ち過ぎでは.要するに将棋で言うところの形作りをやってるだけでしょう.

    つまり現金化が行われて日韓が破綻した時に,現金化を避けるために三菱重工として打てる法的手段は全て打っておくことで「弊社としては現金化を避けるための法的手段は全て尽くしたにも拘らずそれらを無視して韓国側が現金化を行ったのだから,日韓破綻に至ったのは決して弊社の責任ではない」と言い訳できるように,形を整えているのです.

    韓国人は自分の行為の結果として災厄が自らに降りかかっても,他者(日本など)を逆恨みするのが普通にありますからね.

  9. 元日本共産党員名無し より:

    「日韓間には異常な事態が次々と起こり韓国相手にビジネスをやる事は外国との取引としても特に注意を要する」と言うイメージが不可逆の進行で広がりますね。で、対日本ほどではないにせよ、チョロチョロと小狡くダマシの手口や責任取らずに高跳びなど韓国からは聞こえてくる。そう言う事が韓国の国家ブランドの摩滅に繋がります。
    これこそ韓国に降りかかる対日本での一番のダメージでは無いか。人権ガー謝罪ガー賠償ガーと日本との間で二国間限定でやって居るだけでも日本国内の企業からの信頼は激減します。韓国の一部が日本の一部に慰謝料と言うことでは無く、何やら日韓併合自体が違法で不法でその慰謝料は代を継いで全朝鮮半島住人が無限お代わりしながら言い募る事ができる。そしてそれは千年経っても変わらない、と言う話が広がる。【日本はエヴァ(女)の国で韓国はアダム(男)の国で日本の穢れたカネは韓国に貢がなければならない】はカルトな1宗派の妄言では無く韓国国民の総意なのだと。そう言う事が広がって行くわけです。国民全員がカルトの邪宗と何も変わらない(韓国で統一協会はごく普通の信仰宗教らしい)。韓国大法院やら韓国憲法裁判所も教祖文鮮明も大して変わらない。

    1. 裏縦貫線 より:

      >> 韓国で統一協会はごく普通の信仰宗教らしい

      さすがに当該国でも異端かと思っていましたが、”新興”どころか”信仰”とは、すくいようがないですね。すくわれてる(巣喰われてる)のは日本ですが。
      特定の一人だけ嫌がらせをしているうちは他国からみていい子でいられますが、全方位に悪評が漏れ広まり、もう当該国固有の問題と知れ渡ったら…それでも「日本ガー」「ニッテイガー」「強精徴用ガー」を叫びつづけるのでしょうか。

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