韓国ウォン2年ぶり安値水準:原因は「セルコリア」か
韓国メディアで「新興市場諸国通貨が軒並み下落している」かのように読める記述があったのですが、これについて簡単なファクトチェックをしてみました。その結果、「すべての新興市場諸国通貨が等しく売られている」わけではなく、下落している通貨にはそれぞれ下落する理由があるのではないか、との仮説に行き当たりました。また、韓国ウォンは昨日、1ドル=1288.60ウォン前後で取引を終えていますが、これは2020年3月以来の安値水準です。
目次
「テキーラショック」記事に覚えた違和感
『ウォン急落受け「テキーラショック」再来懸念=韓国紙』でも紹介したとおり、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に昨日、『20年ぶりに最強のスーパードル…新興国に「テキーラ危機」再来するか』と題する記事が掲載されていました。
「テキーラ」はメキシコを代表するとされる酒であり、転じて中央日報の「テキーラショック」は米FRBの利上げをきっかけに1994年にメキシコで通貨危機が発生し、それが新興市場諸国にも飛び火した、というケースをさすのに使われているのだそうです。
ただ、この記事を読んだ際に、多少の違和感を覚えたことも事実です。なぜなら、各国の通貨が等しく下落しているわけではないからです。
たしかに下落している通貨もあるのだが…下落するには「理由」がある
この点、国際決済銀行が週に1回程度のペースで公表している、世界61通貨の米ドルに対する為替レートのデータがあるのですが、61通貨それぞれに対して調べていくと、最近、たしかに極端な変動を示している通貨がいくつかあります。
その代表例が、アルゼンチンペソ(USDARS)、スリランカルピー(USDLKR)、トルコリラ(USDTRY)、そしてロシアルーブル(USDRUB)の4つです(図表1)。
図表1-1 USDARS(アルゼンチンペソ)
図表1-2 USDLKR(スリランカルピー)
図表1-3 USDTRY(トルコリラ)
図表1-4 USDRUB(ロシアルーブル)
(【出所】 the Bank for International Settlements, US dollar exchange rates を参考に著者作成)
アルゼンチンといえば、2014年に米ドル建ての国債のテクニカル・デフォルトを発生させて以来、慢性的な外貨準備不足に苦しんでおり、先月25日には政策金利をこれまでの44.5%(!)から47.0%(!)に引き上げるなど、非常に苦しい金融政策運営を余儀なくされている国です。
一方のトルコは、「金利は悪」とみなすレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の圧力もあり、「インフレ下の利下げ」という、世界的にも非常に変わった金融政策を採用しているのですが、3月には消費者物価指数(CPI)が前年同月比61.1%(!)という、非常に高いインフレ率を達成してしまいました。
さらにスリランカといえば、先月、外貨準備が払底し、エネルギー危機などに陥ったことでも知られていますが(『一帯一路で知られるスリランカが外貨建債務デフォルト』等参照)、デフォルト以降、為替相場がまさに「暴落」と呼んで良いほどの水準に達していることがわかります。
そのうえでロシア・ルーブルについては『市民生活の犠牲において成り立つルーブル「通貨防衛」』で指摘したとおり、ウクライナ侵攻直後の3月中旬には史上最安値水準にまで売られたものの、その後は金融引締めと強引な資本規制により、なんとか為替相場を人為的に落ち着かせている状況です。
ただ、もしもロシアの通貨が市場で自由に売買可能な状況ともなれば、やはりスリランカやアルゼンチン、トルコなどと同様に暴落ルートを辿るのではないか、という気がしてなりません。
以外とアジア通貨は安定
その一方、意外な話ですが、このBISの為替相場に関するデータを眺めていると、ウクライナ危機と資源高などの状況にも関わらず、意外とアジア通貨は安定していることがわかります。
たとえば、東南アジア通貨に関しては、マレーシアリンギット、インドネシアルピア、フィリピンペソ、タイバーツ、シンガポールドルなどは、いずれも小幅でドルに対して下落しているケースもありますが、少なくとも為替相場だけで見る限りは、さほど極端な資本逃避などが発生している兆候はありません(図表2)。
図表2-1 マレーシアリンギット(USDMYR)
図表2-2 タイバーツ(USDTHB)
図表2-3 インドネシアルピア(USDIDR)
図表2-4 フィリピンペソ(USDPHP)
図表2-5 シンガポールドル(USDSGD)
(【出所】 the Bank for International Settlements, US dollar exchange rates を参考に著者作成)
メキシコペソ、ブラジルレアルも安定/香港ドルは下限ギリギリに
また、中南米通貨といえばアルゼンチンペソの「暴落」というイメージが強い人もいるかもしれませんが、現実には、たとえばメキシコペソ(USDMXN)、ブラジルレアル(USDBRL)などの中南米通貨に関しては、意外と(?)落ち着いています(図表3)。
図表3-1 メキシコペソ(USDMXN)
図表3-2 ブラジルレアル(USDBRL)
(【出所】 the Bank for International Settlements, US dollar exchange rates を参考に著者作成)
ただし、個人的に少し興味深いと思う通貨があるとすれば、それは香港ドルです(図表4)。
図表4 香港ドル(USDHKD)
(【出所】 the Bank for International Settlements, US dollar exchange rates を参考に著者作成)
香港では、発券銀行(香港上海匯豐銀行有限公司など3行)が1米ドルを香港金融管理局(HKMA)に預託することで7.8香港ドルが発行されるという、カレンシーボード制を採用しており、為替相場も基本的には1米ドル=7.8香港ドルでペッグされています。
ただし、厳密に1米ドル=7.8香港ドルではなく、上下0.05香港ドルのレンジで動くことが認められており、したがって香港ドルは最も高いときには1米ドル=7.75香港ドル、最も安いときには1米ドル=7.85香港ドルに下がります。
香港ドルは平時には1米ドル=7.75香港ドルに張り付いているときもあったのですが、雨傘革命のあたりからでしょうか、1米ドル=7.85香港ドルに張り付き、これが最近になって再び7.85香港ドルを付けているようなのです。
現在のところHKMAは4600億ドルを超える外貨準備を保有しているようですが、万が一、HKMAが外貨準備不足に陥った場合には、香港ドルがカレンシーボード制を放棄するという可能性もゼロではありません(まさかとは思いますが…)。
USDKRWが1ドル=1290ウォン前後に!
いずれにせよ、今回の米FRBの利上げ局面では、一部の国にはそれなりの影響を生じているものの、「全世界に等しく影響を与えている」というわけではなく、国によっては大きな影響を与えている場合もあれば、そうでもないというケースもあります。
こうしたなか、昨日はUSDKRWの相場が、一時、1ドル=1290ウォンを突破しました。WSJのマーケット欄を眺めていると、瞬間的に1ドル=1291.50ウォン前後にまで売り込まれる局面が見られたのです(引けにかけて買い戻され、昨日午後3時半時点で1ドル=1288.60ウォン前後で取引を終えています)。
ちなみに韓国銀行のデータによると、この水準はコロナ禍が始まったばかりの2020年3月19日時点における日中最安値水準(1ドル=1296.00ウォン)に並ぶものです。もしウォン安の地合いが続き、今後、引けで1293.00ウォンを超えれば、2009年7月14日以来の13年ぶりの安値水準となるかもしれません。
ところで、韓国では現在、いったい何が生じているのでしょうか。
これに関し、韓国メディア『ハンギョレ新聞』(日本語版)には昨晩、こんな記事が出ていました。
ウォン-ドル為替レート、1280ウォン台突破…年最高値を再び更新
―――2022-05-12 19:58付 ハンギョレ新聞日本語版より
ハンギョレ新聞の記載によれば、USDKRWが急落した理由は「米国発の利上げ懸念」に加え、現地時間11日に発表された米国の消費者物価指数(CPI)もこうした利上げ観測に拍車をかけたためだ、などとしているのですが、これだとあまり理由になっていません。
なぜなら、ほかのアジア新興市場諸国通貨については急落しているという事実が確認できないからです(※もっとも、国によっては資本規制もあるため、自由に利用可能な通貨ではないというケースもありますが…)。
下落の正体は「セルコリア」なのか
もっとも、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)に昨日掲載されていたこんな記事を読むと、なんとなく、「なぜアジア主要新興市場諸国のなかで最近、韓国だけが売られているのか」に関するヒントが見えてくるかもしれません。
海外投資家の株式資金 3カ月連続で純流出=韓国
―――2022.05.12 15:48付 聯合ニュース日本語版より
聯合ニュースによれば、韓国銀行が12日に発表した資料で、韓国の株式市場からの海外投資家資金は3ヵ月連続で純流出となり、しかも規模が拡大したことが判明した、などとしています。
具体的には、純流出額は2月が18.6億ドル、3月が39.3億ドルで、これが4月には42.6億ドルと、いわば順調に拡大している格好です。しかも債券とあわせた証券市場全体に関しても2ヵ月連続の資金流出で、4月の流出額は37.8億ドルだった、などとしています。
まさに「セルコリア」、あるいは資本逃避・キャピタルフライトの兆候そのものです。
何のことはない、韓国ウォンの下落も「セルコリア」の一環であるという可能性はそれなりに高そうです。そして、ウォン安が続けば、韓国の通貨当局としては、しばらくはウォン買い・外貨売りの為替介入オペレーションを実施するのだと思いますが、外貨準備が枯渇してくれば、こうしたオペレーションを継続するのは難しくなります。
『韓国議員「韓日は感情抜きにスワップで助け合うべき」』でも述べましたが、米韓為替スワップ再開論と並び、おそらく今後、韓国側で日韓通貨スワップ再開論が(一方的に)強まる可能性が高いことは間違いなさそうです。
もちろん、日本の側にそんな協定を再開するインセンティブは皆無ですが…。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
韓国だけならCMIMでつまんできたり、米国に米国債を担保にして借りてきたりでなんとかなるかな。ぜひ中国とのスワップを発動させてみてほしいところだけど。
セルコリアの拡大だけではなく、外貨預金の残高も拡大してるのでは?
相場のウォン安傾向を鑑みて自国の輸出企業が意図的に貿易代金の両替を遅延(ウォンの買控え)させてる側面もあるのかと思います。
アメリカドルが金利を上げましたので、安全で金利が高い通貨に預けかえようというのは、普通の考えだと思います。ただ円は、それ以上の動きをしていますが原因不明。ウォンは、必死に防衛しているようですが、政権変わったけど政策内容は変わらない、など良い材料ありませんのでさらに動く可能性あると思います。
ジム・ロジャーズを思い出しました。
彼、今どうしてるんでしょうね。韓国買い推奨だったと思いますが。(笑)
南北統一に賭けていた風で。ハノイの会談前後で結論は出てると思いますけど。
今回のロシアの狼藉はトドメかも知れません。
コロナバブルの終焉で手仕舞い出来てればトントンくらいにはなってるかな?
予想というより、「こうなって欲しい未来」を盛んに語ってましたねー。(笑)
Forbes
2019/1/18 「投資の神様」ジム・ロジャーズが北朝鮮に投資したいと断言する理由
https://forbesjapan.com/articles/detail/24976/1/1/1
2019/11/6 現代ビジネス 飯塚 真紀子
ジム・ロジャーズ「韓国と北朝鮮が統一されるとき、日本は……」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68076
▼「文在寅大統領には、彼が大統領になる前に一度お会いしました。私の印象としては、非常に頭がいい人物だと思いました。
人を見る目に問題があるのは致命的だと思いました。w
ジム・ロジャーズはどうも意図的に「大嘘」をついているのではないのか、
と言う疑惑を抱いています。
どうせもう余生には困らない程金は持っているだろうし、自分の様な老人に
「ロジャーズ様お願いします、日本を叩いてください!」とすがってくる相手を
おちょくるのを楽しんでいるのでは、と言う疑惑です。
いわゆる”日銀砲”で大損させられ、その屈辱を恨んでいるなどと言う説も
あるみたいですが……これ、デマともデマでないとも判断し辛いんですよね。
ジョージ・ソロスと
手下のジムロジャースは
韓流と日本の偏向メディアでは
「投資の神様」(笑)と
繰り返し紹介されてます。
ただ、
金融マーケット正統派の世界では
かつて未発達だった国際協調の虚をついて
ポンドで空売り逃げして大金得て
後の世界通貨危機を招いた
過去の大悪党さんでしかありません。
今ではG7国際決済通貨国は相互に
無制限のスワップで結ばれており
もし悪党ソロスがどっかの国に
空売り仕掛けても、
それは全G7中央銀行に
宣戦布告したことになり
あっという間に ソロス ワロス
即お陀仏さんになってしまいます。
そんなわけで、
今はほそぼそと、南北朝鮮の
おかかえ用心棒さんとして
しがない口銭稼いで見える
ソロスさんとロジャースさんなのです。
お二方へ。
ジム・ロジャースが韓国北朝鮮は買いだ、と言ってた頃は、売り抜けのための買い手探しをしてたのだろうとも思います。
株バブルの終末期には週刊誌に株特集が組まれるとか、そういうやつで。
新興国、途上国一般に起きている現象だとしてもセルコリアだとしても同じですが、アメリカが韓国を助ける可能性はゼロです。他の困った国も全部助けなければいけなくなるからです。
日本が韓国を助ける可能性は最近ほとんど消えました。それは日韓関係の悪さによるものです。案外粘り強い日本の外交、内政の成果かもなと思ったりします。
アメリカが裏に回って韓国を助けさせる可能性。これは一応今のところ一番危惧されるパターンです。アメリカは直接手を下せばエコ贔屓批判をされますが、そういう批判も日本に押し付ける形です。
ただ、これも以前と比べだいぶ可能性が減ったように感じます。アメリカにとって韓国を守らなけらばならない価値が暴落し、日本が韓国を守ることに対する負荷も暴騰しています。両者暴落、暴騰の言葉が言い過ぎではないと確信します。
とりあえずアメリカ、日本とも韓国と会話することは拒みません。ウンウンと話だけは聞きます。
ちなみに韓国側もたいした話はしません。友好だのこれからも定期的に会おうだの、まあ差し障りないことを話して一致した見解を得る。基本それだけ。たまに必要に応じて懸案事項も話しますが、基本お互い壁を向いて一方的にしゃべって記録させるだけ。「平行線を辿った」ってやつです。
じゃあ韓国はどうやって日本に無理難題を押しつけてきたのか。有能?な日本外務省に勝手に察しさせて対応させてきたのです。冷静に考えると今までの展開みんなそれなんですよね。韓国自身は密室でも全然ハードネゴでもなんでもない。
例の輸出管理強化が不思議に大打撃を韓国に与えられたのは、察する外務省を通さなかったからじゃないかなと推察してます。
株の配当て、4月やったと思うのです。
外国人が株の配当を、ウォンがもっと安くなる前に損切りで投げ売りしてるのでは?と勝手に想像してます。
その量が多くて、韓銀の介入が間に合わないとか。