大統領演説でプーチン氏が「怒り心頭」?何を今さら…

ゼレンスキー大統領の演説を日本の国会が認めたことで、プーチン氏が「怒り心頭」なのだそうです。ゼレンスキー演説により日本がロシアの敵対国となり、北海道に侵攻されるリスクも増しているのだとか。じつに面妖な、と思ってしまいます。対ロシア制裁に同調した時点で、日本はすでにロシアの敵対国ではないかと思ってしまうからです。

プーチン氏が「怒り心頭」

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の演説に関しては、昨日の『【資料集】ゼレンスキー大統領の国会演説・文字起こし』や今朝の『「日本のリーダーシップ」に期待するウクライナ大統領』などでも取り上げたとおりです。

こうしたなか、『NEWSポストセブン』というウェブサイトに本日、こんな記事も掲載されていました。

ゼレンスキー大統領の国会演説にプーチン氏怒り心頭 日本がロシアの敵対国に

―――2022.03.24 11:00付 NEWSポストセブンより

「ウクライナ大統領の国会演説に、プーチン氏が怒り心頭」!

なんだか、じつに恐ろしい話ですね。

NEWSポストセブンによると、NATO加盟国以外で国会演説を行ったのは、イスラエルに続き日本が2例目であり、これに関連しプーチン大統領の研究の第一人者である大学教授が次のように指摘した、というものです。

  • プーチン氏から見れば、日本は戦闘中の敵国の大統領に国会で演説させたわけで、ゼレンスキー氏を讃えていると捉えられかねません」。
  • かつてないほど苛烈な経済制裁を科した西側諸国に、プーチン氏は怒り心頭。日本はその一員と見られ、怒りの矛先は確実に日本にも向いているのに、演説はその火に油を注ぐことになるでしょう」。

…。

日本はすでにロシアの「敵対国」

この点、たしかに2月26日のG6の対ロシア制裁声明では日本は半日遅れるという醜態をさらし、岸田首相は「時差の都合」などと言い訳にならない言い訳をしています(『日本政府、対ロシア追加制裁への参加を半日遅れで表明』等参照)。

ただ、国際的に見れば、日本はすでに対ロシア経済制裁に踏み切ったことで、ロシアから見れば準交戦状態にある、という言い方もできるかもしれません。

こうしたなか、この大学教授の方は、こうも述べます。

ロシアは非常に強い圧力を日本に加え始めています。プーチン氏から見れば、同じ“隣国”でも日本はウクライナより格段に攻めやすい。もはや日本はロシアの敵対国とみなされている」。

正直、「何を今さら」、という以外に何も言い様がありません。

また、とある「国際ジャーナリスト」の方は、プーチン氏が2018年12月、「アイヌ民族をロシアの先住民族に認定する」という考え方を示したと指摘。「アイヌ民族の保護を名目にロシア軍が北海道に侵攻するというリスクは、プーチン氏のこれまでの手口からして、まったくあり得ない話と簡単に切り捨てられない」と述べます。

しかし、そのようなリスクについてはもとから存在しているものであり、「ロシアが日本を敵視」というのは日本が対露経済・金融制裁に踏み切った時点で避けられないものでもあります。今回のゼレンスキー氏の国会演説が実現したことで、そのようなリスクがとりわけ増幅されたとは言えません。

むしろ西側諸国の連帯の方が重要では?

むしろ、ゼレンスキー氏の国会演説が、英国、カナダ、米国、ドイツ、イスラエル、イタリアに続いて日本で実現したことの「効果」をどう見るかが重要です。日本も西側諸国の一員として、相互信頼関係をさらに深めることに寄与した効果は決して軽く見るべきではありません。

この点、現在のロシアの状況を見るにつけ、個人的には、かつての日本が中国、ソ連、米国をいっせいに敵に回し、敗北した過去を思い出してしまいます。

第二次世界大戦の敗戦は米国の物量に弱体化していたところ、ソ連の参戦が決め手になったという側面もあります(※余談ですが、その反面、日本は過去において、中国ともロシアとも、1対1の戦争をして勝った経験を持っている国でもあります)。

現在のロシアも、国際的に孤立しつつあります。中国を除く国連常任理事国がすべてロシアに制裁を加えており、また、G7諸国に加え、「永世中立国」でもあるスイスを含めた各国がロシアへの制裁に参加したほどです。

もちろん、日本としてもロシアから攻め込まれるリスクから自由ではありませんが、逆に、ロシアが国際的に孤立の度合いを深めつつある状況で、ウクライナに加えて日本をも敵に回すという「二正面作戦」を展開する余力が、現在のロシアに存在するというものでもないでしょう。

こうしたなか、『ゼレンスキー氏国会演説を「華麗にスルー」する人たち』では日本の一部メディア、一部ジャーナリスト、さらに韓国メディアがゼレンスキー演説をどう取り扱ったのかについて概観しましたが、やはり日本国内にはロシアの代弁者のような方が相応にいらっしゃる、ということなのかもしれません。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. 元ジェネラリスト より:

    私も「プーチン怒り心頭」のタイトル詐欺にあって読んでしまった口です。

    ちょっと思ったのは、キッシーは自分の選択が日本をロシアの敵国にしうるって認識はあるんでしょうかね。そこを聞いてみたいです。

    ところで、
    >プーチン氏から見れば、同じ“隣国”でも日本はウクライナより格段に攻めやすい
    >一部では想定外の苦戦を強いられるウクライナを諦め、“代償”として北海道に侵攻する可能性を指摘する専門家もいる。

    ロシア軍の渡洋能力はそれほど充実しているわけではないそうですし、そうでなくても陸続きのウクライナと比べて、海を隔てた日本が攻めやすいってのはちょっと・・・
    だいたい、今のロシア軍はウクライナ侵攻でヘロヘロの状態なのに、ここから軍を東に移動して日本侵攻って、まあ現実的では無い気がします。
    「専門家」って何の専門家なんでしょうね。

    1. より:

      ロシアはこのところ極東方面から戦力を抽出してウクライナに振り向けているという情報もある中、日本をわざわざ攻める余力なんぞあるはずがありません。腹立ちまぎれにミサイルを撃ち込むにしても、日米安保条約にはアメリカの自動参戦が規定されていますので、否応なくアメリカを相手にすることになります。与太を飛ばすにしても、もう少し現実性のあるものでないと、失笑されるだけでしょう。

      > 「専門家」って何の専門家なんでしょうね。

      戦争シミュレーションゲームの専門家だったりして。

      1. 元ジェネラリスト より:

        「ぼくは大戦略に詳しいんだ」
        とか。
        大戦略でも地続きより海を渡る方が難しいっす。(笑)

      2. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

        戦争シミュレーションゲームの専門家なら
        ロシアの海を超えての侵攻能力に疑問を呈するだろ

    2. りょうちん より:

      冷戦崩壊後、全盛期のソ連ですら北海道を攻められるほどの揚陸能力が無かったというネタバレがあったのですが、ましてや今?!www

  2. ピーターパン より:

    もうやめてあげて
    安倍ちゃん悲しんでるよ

    1. だんな より:

      ピーターパンさま
      何を言ってるのか、良くわかりません。

      1. 匿名 より:

        名前通り、夢の中なのでしょう

      2. 匿名 より:

        安倍が親露てことを言いたいんだろう。

        1. りょうちん より:

          Jinroでもヤってたんですかね。

    2. 通りすがり より:

      まーたお前かw

  3. 雪だんご より:

    確かに「今更何を」な記事ですね。一応間違った事は言っていないのですが、
    ”アメリカと同盟している日本がウクライナより攻めやすい”と言うのは
    極めて説得力に欠けます。

    そして面白い事に、最後のコメントではこの中村と言う教授ではなく
    ”国際ジャーナリスト”とやらがコメントしています。

    「プーチンが怒ってる!もしかしたら日本も攻め込まれるかも!」と繰り返すくせに
    ”結論”や”総論”らしきものが無い記事なのは、この中村と言う教授が
    あまり都合の良いコメントをしてくれなかったのでやむを得ず
    ”国際ジャーナリスト”とやらにお茶を濁させたのでは……と邪推したくなりました。

    1. 引っ掛かったオタク@ミルメガナイトヨクイワレル より:

      メディアで散見するに中村氏はロシアについて「解説しよう」とはしても「代弁しよう」とはしていない印象はアリマス
      「解説者」と「代弁者」ではビミョーにニュアンスも違って受け取られたりする(カモシレナイ)ので、記者の「結論」に充てるべく「国際ほにゃらら」の出番!と相成った…ノカモシレヤセンねェ

  4. 七味 より:

    >アイヌ民族の保護を名目にロシア軍が北海道に侵攻するというリスクは、

    このリスクを考えると、今だったらロシアは二正面作戦になるし世界中がロシアの動きに注視してるから、ウクライナ情勢が落ち着いたあとに攻められるよりも、良いんじゃないのかな?
    って思ったのです♪

    それとも、元記事の教授は、「リスク」といいつつ、下手に突かなければ、それが実現することはないとでも考えてるのかな??

    1. とある福岡市民 より:

      > 「リスク」といいつつ、下手に突かなければ、それが実現することはない

       雉も鳴かずば撃たれまい、ですね。
       でも他に大した事書いてませんね。この記事、鳴かず飛ばずで終わりそうです。

      > ウクライナ情勢が落ち着いたあとに攻められる

       これはあり得そうです。

  5. 愛読者 より:

    プーチン政権が,そんなに長く続く気はしません。事態を認識して,共倒れを恐れたプーチン氏側近が逃げ出し始めているので,だんだん,回りに守ってくれる人がいなくなってくるような気がします。予想が付かないのは,次の政権がどうなるかです。

  6. 匿名2 より:

    こういう人たちにとって、そしてマスコミにとって今はかきいれどき。こうなればああ言う。ああなればこう言う。逆張り師の橋下に、占い師の佐藤優。そしてムネオやマキコなんかもでてきて、にぎやかでいいですね。

  7. 匿名 より:

    マスゴミはバカの集合体としか言いようがない。ウクライナ侵略ですら制空権を確保できず、補給も上手くいかないのに、対日本戦でどのように制空権、制海権を確保するのか?軍事音痴ばかりで、読む価値のある記事がほとんどない。与太話で無知な読者ね不安を煽るだけの連中は必ず淘汰されるだろう。

  8. クロワッサン より:

    プーチンがプッチンしちゃったんですね(*´ω`)♪

  9. j より:

    お疲れさまです。
    ユーチューブで、生きたまま人間をドラム缶に入れて焼き殺した日本の事件の被告人に、死刑が執行されたという動画を見ました。
    悪人を野放しにする社会では、いけないと思いました。
    まず正しい方につく、そして悪人に対する力も必要であると思いました。
    悪党に気に入られる自分は、それで良いのか?
    良い訳がない。

  10. 世相マンボウ . より:

    それにしても
    『”国際ジャーナリスト”とやら』って
    誰なんでしょうねえ?

    名前を出せないのか、
    出せば鼻で笑わられるのか?
    三文週刊誌の中の人なのか?
    まあ、どっちしても
    ろくなタマではなんでしょうなあ。

    1. 世相マンボウ 。 より:

      今の平和を願う世界の人の合言葉は
      『#くたばれ プーチン』なのですが
      それに真っ向から異を唱えるなら
      むしろそれはそれで歓迎です。
      ところが、日本社会打倒のため
      敵の敵は味方で、
      ならずもの国家とは友愛(?)結ぶ
      ミスター民主党鳩ポッポさんや
      その残党の人たちは正直に主張をされないのは
      台所の赤黒い住人サンと同じ狡猾さで
      むしろやっかいだと感じます。

      私も地味にウクライナカラーを付けてますが
      一方で、朝の清新な空気を汚しての
      オウム真理教と同じ日本共産党さんのアジ演説で
      どさくさで票欲しさに大きな
      ウクライナ国旗を掲げているのには
      なんとも複雑な思いです。
      もちろん、
      くたばれプーチン!頑張れウクライナ!
      に賛同までは、ほう、よくできましたで
      いいのですが、続く演説の内容は
      いまだに『戦争法案レッテル貼り』と
      ロシアやどっかの半島さんが
      小躍りして喜ぶ
      同盟国米国の核での日本の防衛を
      丸裸にしたいがために
      核廃絶条約批准とやらを
      言葉たくみに誘導するという
      あまりに見え透いたまた
      言ってる人の立ち位置生き様透けて見える
      お話にならない主張です。

  11. 大陸老人 より:

    私は日露戦争は痛み分けで、まあ当時の弱小国日本がロシアと対等に戦った、というか日本海海戦など直接ぶつかった戦いでは日本が勝った、ので日本が勝ったように伝えられている、というのが実態だと思っているのですが、今回のウクライナ侵攻を見ると、ロシアあるいは旧ソ連は強くなさそうですね。ナポレオンもヒトラーもロシア領内に攻め込んで、極所戦では勝ったけれど全体としては負けた、と。となると小村寿太郎というか当時の明治政府は自らの力をよく知っていて、多少勝ったからといってロシア領内に攻め込まなかったのはえらかったと。でももう少しやったら本当に勝っていたのかも。いずれにしても兵站など考えるとロシアも中国も攻め込む相手ではなさそうですね。でもう一つ。ウクライナより日本を攻めるのが楽つてどんな根拠でしょうね。かつて同じ領土だったウクライナに攻めても兵站に問題があるのに、シベリアを越えて日本に攻めてくるつて、何を考えているんですかね。もちろん陸軍だけの話でないのは分かりますけど。だから日本も軍備が必要、という結論を出したいなら、ロシアのやることを見ていれば普通に分かりそうなものだけど。

    1. sqsq より:

      >というか日本海海戦など直接ぶつかった戦いでは日本が勝った、ので日本が勝ったように伝えられている

      じゃあなんで南樺太を割譲したのかな。

  12. 農家の三男坊 より:

    このゴシップサイトのピンボケ具合がいいですね。
    対象読者をどのあたりに置いているんでしょう?

    >国際的に見れば、日本はすでに対ロシア経済制裁に踏み切ったことで、ロシアから見れば準交戦状態にある、という言い方もできるかもしれません。

    会計士様が仰る様に既に準交戦状態にあります。

    何しろ”ロシアの外貨準備を凍結”しているんですから。
    これは明確な戦争行為です。

    ゼレンスキー大統領の演説どころの話ではありません。

    不謹慎な言い方ですが、今のロシアには北海道にミサイルを撃ち込むぐらいのことしかできないと思います。が、その時は日米で倍返しで、手薄となったサハリンと占守島以南の千島列島を制圧することになると思います。ウラジオストック迄手を出すと泥沼化するのでそれは自重。

    ウクライナ戦争が終結した後も、韓国程度の経済力&経済制裁下では、軍備回復はかなり困難
    で、北海道を攻めることはできないと思います。

    でも、油断は禁物。特に、今の日本は実際の戦争が出来る体制及び準備状況(特に法整備、燃料・弾薬)にはなっていないと思われるので。

  13. 月長石 より:

    「ウクライナにも責任」 維新・鈴木氏、ロシア侵攻めぐり
    https://www.jiji.com/jc/article?k=2022031300405&g=pol
    >>「日本には国益の問題として北方領土や平和条約交渉の問題がある。米英と立ち位置が違う」と述べ、欧米に足並みをそろえて制裁に踏み切った日本政府の対応に疑問を呈した。講演後、記者団に「日本からパイプを閉ざした感じだ」と語った。

    パイプなんて最初からなかったような。。。と言うか自分の懐に直結するパイプのことかしら。

  14. 匿名 より:

    >プーチン大統領の研究の第一人者である大学教授

    和田春樹かと思った_

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告