「日本のリーダーシップ」に期待するウクライナ大統領

ごく一部のジャーナリストが「国民は許さない」などと怪気炎を上げたわりに、ゼレンスキー大統領の国会演説は実現しました。内容は大変すっきりと良くまとまっていて、私たちの国・日本に対する感謝の強さ、期待の高さがうかがわれるものでもありました。しかも、「日本のリーダーシップで国連に代わる新しい国際的な仕組みを作ってほしい」とのメッセージ付きです。

ゼレンスキー演説が実現!

早いもので、ロシアによるウクライナ侵攻が開始してから、本日でちょうど1ヵ月が過ぎました。「すぐに降伏する」との観測もあったにも関わらず、ウクライナは現時点でもまだ持ちこたえています。ウクライナの人々の無事を祈らざるを得ませんが、それでもウクライナの人々の勇敢さには驚きます。

こうしたなか、日本時間の2022年3月23日午後6時、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が外国国家元首としては初めて、国会でオンライン演説を行いました。調べた限りだと、議会で演説するのは英国、カナダ、米国、ドイツ、イスラエル、イタリアに続くもので、アジアではもちろん初めてのものです。

最初に細田博之・衆議院議長が冒頭の挨拶を行い、続いてゼレンスキー大統領がオンラインで演説を行い、山東昭子・参議院議長が締めの挨拶を行いました。

その具体的な内容については、衆議院インターネット審議中継をもとに、『【資料集】ゼレンスキー大統領の国会演説・文字起こし』で原文(同時通訳)を書き起こしています。

日本に対する感謝の強さと期待の高さ

このゼレンスキー演説、端的に言えば、日本に対する感謝の強さ、期待の高さがうかがわれるものです。

「日本がすぐ援助の手を差し伸べてくれた」、「日本はアジアで初めてロシアに圧力をかけてくれた」などとする日本への感謝もさることながら、日本の発展の歴史、日本の文化、日本の調和能力への絶賛に加え、「日本とウクライナは価値を共有している」との発言も印象的でした。

それだけではありません。

今回のウクライナ危機で国連がまったく役に立たなかったことを踏まえ、ゼレンスキー大統領は「既存の国際機関に代替する新しい予防的な手段を作る必要がある」としたうえで、そのような仕組みづくりに対し、「日本のリーダーシップ」に強い期待を寄せているのです。

わかりやすくいえば、「国連に代わる国際的な仕組みづくりに、日本が主導権を取って主体的に関わってほしい」、というリクエストでしょう。

日本国内には、「日本国憲法第9条を守っていれば外国に侵略されない」とする教義を盲信する、「ケンポーキュージョー教」という宗教を信奉している者たちがいますが、ゼレンスキー氏の演説を聞いた多くの人が、こうした教義が単なる戯言に過ぎないことを強く感じるはずです。

あるいは、「日本が再武装したら外国を再び侵略する」などと喧伝している国が、日本の近隣には少なくとも約3ヵ国存在していますが、ゼレンスキー氏の演説は、こうした3ヵ国のしつこい主張が、国際社会ではむしろ少数派ではないかという仮説を確信を変えかねないものでもあります。

その意味では、ゼレンスキー氏の演説で日本の役割に対する高い期待感が示されたことについて、隣国のメディアなどが本日以降、どう報じるのか(あるいは報じずに黙殺するのか)については、非常に気になるところでもあります。

いずれにせよ、ゼレンスキー氏の発言は、冗長さも無駄もなく、現在、ウクライナが置かれている困難な状況を端的に言い当てており、大変に優れたものではないかと思います。

両議長の挨拶も大変に立派だった

これに加え、細田、山東の両議長の発言も、国会議長として大変立派なものであると思います。

細田衆院議長は「ウクライナの平和を取り戻すため、今後も国際社会と一致結束して協力していく」、「危険を顧みず首都に留まり、国際社会に支援を訴え、国民を鼓舞し続けている大統領の勇敢さに敬意を表する」などと述べました。

また、山東参院議長は「ゼレンスキー大統領やウクライナの人々が命を顧みず祖国のために戦っている勇気に感動している」、「わが国はウクライナと常に心はひとつにある」などと強調し、「一日も早くウクライナの平和と安定が取り戻されるよう、日本の国会議員も全力を尽くしていく」と締めています。

ゼレンスキー演説で垣間見える日本の歩みの正しさ

さて、立憲民主党や日本共産党が当初難色を示し、ごく一部のジャーナリストまでもが「国民が許さない」などと強硬に反対していたにも関わらず、結果的にゼレンスキー大統領の国会演説は実現しました。

そして、私たち日本国民のなかにも、ゼレンスキー大統領の演説を聞き、ロシアによる現在進行形の侵略に苦しむウクライナの人々に寄り添う気持ちが芽生えたという人は、かなり多くいたのではないでしょうか。

なにより、ゼレンスキー大統領の日本に対する強い感謝と高い期待感は、国際法を守り、国際社会に貢献しようとするこれまでの日本の歩みそのものでもあります。我々は、もう少し自信を持っても良いのかもしれませんね。

いずれにせよ、ウクライナの人々の無事を祈りたいと思う次第です。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. 理系初老 より:

    おはようございます。
    昨日は急ぎ帰宅して(こういう時は仕方がないので)あのNHKでライブで見ました。過激なところは全くなく、原爆がー、抑留がー、不可侵条約破棄がーと一人いきまいていた自分がやや恥ずかしくなったくらいでした。
    ただ、「故郷に帰りたい気持ちは日本の皆さんなら理解してもらえるはず」は、(天災による福島ではなく露災による)北方領土のことだと、心のくもった私(どなたかの言い回しのパクリです)には思えました。

    1. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

      当たり前の話だが、ソ連による侵略や北方領土については直接的には言わなかったね
      もっと「武器よこせ」とか「制裁参加しない国への追加制裁」と言ってくると思っていたのに、だいぶ拍子抜けした
      「アジアのリーダー」=「アジアの国々にも日本の責任でロシア制裁させて欲しい」だから間接的には「追加制裁も視野に入れて」と言っているようなものだが
      「リーダー」と持ち上げた上に「間接的な表現で」、「視野に入れて」だから、ドイツと比べてもだいぶマイルドですね

    2. 匿名 より:

      ウクライナは旧ソ連なのでww2に触りすぎるのは逆効果と判断したんじゃないかなあ、と推測しました。
      お隣さんも日本と一緒に戦ったはずなんやけどな?

  2. カズ より:

    岸田政権には、「慎重に ”聞く力”」だけではなく、「着実に ”効く力”」も発揮して欲しいと思います。
    原理原則に沿った判断を崩すことなく、期待と落胆の大きさが比例しない未来の実現を願います。

  3. 匿名 より:

    林(リン)害務デージンの足組、大あくびは外交儀礼を著しく欠き国恥ものでした。即刻更迭でもおかしくない所業でした

  4. 攻撃型原潜#$%&〇X より:

    イギリス等で行った演説に比べて、
    あれと、これと、これは話題にしないでねと事前に誰かが秘密裏に釘を差したのかと疑われるほど、思ったより内容が穏やかでした。
    そこで核アレルギーが強い日本人に対してチェルノブイリ原発をロシア軍が蹂躙して核物質を飛散させていると言うのが限界だったのかもしれません。

  5. 匿名 より:

    「津波」や「サリン」など、過去に日本が直面した重大事に関する言葉が入っており、ウクライナの現状に共感を覚えさせる、それでいて日本人を煽ることのない素晴らしい演説でした。
    怒ると去っていく、同調すると親切にしてくれる、日本の国民性をよく理解されてますね。

  6. 205eleven より:

    細田衆院議長、ゼレンスキー大統領、山東参院議長、お三方の演説・スピーチは大変良かったと思いました。オンラインとはいえ、この演説が日本の国会で行われ、それが全世界に発信されるのは非常に感慨深いです。

    残念な点は、冒頭の細田氏のスピーチにおいて、ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議について触れられておりましたが、”全会一致で”非難を決議した、と言えなかったところが非常に残念です。こういう場面で単に非難決議したと言うのと、”全会一致で”非難決議した、では重みが全然違うと思いました。全世界に発信されているわけですからなおさら残念です。

    決議に反対した当該政党はそんなこと微塵も考えていないでしょうが。

    1. NARUPON より:

      細田氏は、ポーランドのピアニスト・作曲家・政治家・外交官だったイグナツィ・ヤン・パデレフスキを顕彰する日本パデレフスキ協会の総裁。パデレフスキはウクライナの出身だから、また、思い入れが強いかもしれません。

  7. 不動産屋 より:

    国際間のリーダーシップを発揮するには、軍事的プレゼンスは不可欠かと。
    この点で、現状では日本には荷が重いのではないかと危惧します。

    政権選択選挙ではありませんが、先の参議院選挙では是非、「国防」を争点の一つにして欲しいです。

    1. 不動産屋 より:

      申し訳ございません。

      「先の」ではなく、「次回の」ですね。
      訂正いたします。

    2. より:

      リーダーシップうんぬんの箇所は、リップサービスと思っておいたほうが良いと思います。
      各国との比較では、日本の軍事力はけして小さくはないのですが、周囲を軍事超大国(ロシアはちょっと馬脚を現しましたが、依然として核大国ではあります)に取り囲まれている以上、相対的にはけして大きいとは言えず、軍事超大国からの侵略を独力で撃退できるかどうかも危ういという状況では、域外への影響力も限定的であらざるを得ません。
      経済面での日本の存在感は依然として強大と言っても過言ではないとは思いますが、それだけで国際政治を動かすのは難しいと思います。それでも、「新しい国際秩序」の構築に向けて、積極的に協力していくことは可能でしょう。日本としては、防衛力の強化を地道に進めるとともに、国際政治の新しい潮流を作り出すことに貢献するくらいの姿勢で臨むべきだろうと思います。

  8. はるちゃん より:

    議会での演説は、今のところ英国、カナダ、米国、ドイツ、イスラエル、イタリア、日本です。
    国連でのロシア非難決議に賛成した国を選んでいるようです。
    G7ではフランスがまだですが。
    また、中国やインドなど棄権した国には演説の要請はしないのでしょうか?
    多分断るでしょうけど。
    特に中国とウクライナとの今後の関係に注目したいと思います。

    1. より:

      ウクライナは一帯一路構想に積極的に参加していました。確か、上海(だったかな?)とキエフを結ぶ列車の運行も先年開始されていたはずです。つまり、中国としては、一帯一路構想による陸路物流網のヨーロッパへの入り口としてキエフを想定していたのでしょう(これもプーチン氏の癇に障っていた可能性もあります)。だから、中国としては、現在の状況はかなり居心地の悪い状況なのではないかと想像されます。対米戦略上、ロシアとの関係は悪化させたくないが、一帯一路構想の要衝であるキエフが蹂躙されればヨーロッパへの陸路連絡に支障をきたしかねません。どちらか一方に過度に肩入れしたくてもできない状態なのではないかと思います。そう考えると、演説実施の依頼を受けても中国は応諾できないでしょうね。なに、全人代が閉会中なのでなど、言い訳はいくらでもあります。
      インドはロシアとの関係を悪化させるつもりが皆無であることは最初から示されていますので、演説実施依頼をすることもないでしょうし、たとえされてもインドは応諾しないでしょう。ある意味、インドのスタンスは明確です。

      そういえば、演説実施依頼があったかどうかも分からないのに、国内ですったもんだの挙句「いや、我が国では依頼に応じない(キリっ)」という国がどこぞにありましたねえ。

      1. はるちゃん より:

        ウクライナに関しては、人道支援は積極的に支援すべきと思います。
        ウクライナでは政治の腐敗が酷く、ポピュリスト的なゼレンスキー大統領が政権を握ってしまったという批判もあるようですが、ウクライナ国民の悲惨な状況を見過ごすわけにはいきませんので。
        但し私としては、今回の事態はゼレンスキー大統領を選んでしまったウクライナ国民にも責任の一端はあるとのではないか思っています。
        他に良い候補者が無かったのかもしれませんが。
        民主主義の原則として、結果責任は最終的に国民が背負うべきものであると思いますので。
        日本国民も他山の石とすべきでしょう。

        今回の事態が落ち着いた後の復興支援に関しては、時の政権にはあくまでも日本の国益に沿った対応を心掛けて頂きたいと思います。
        中国寄りのウクライナにはしたたかな一面もありそうですので、中国からの支援と天秤にかけられる可能性も大いにあると予想しています。
        お人好しに見える岸田さん始め平和ボケの自民党の方々には、くれぐれも日本の国益に沿ったウクライナ支援、今後の状況の展開によってはロシア支援を心掛けて頂きたいと思います。

        半島の方々は、ウクライナから国会演説の要請があれば、ウクライナ非難決議を棄権している宗主国様の手前大変困った事態になりますので、要請がある前にあらかじめ予防線を張ったのでは無いでしょうか?
        盲腸半島の方々は、「国格が上がって世界から注目されているウリには絶対ゼレンスキー大統領から国会演説の要請があるはずニダ!」、多分そう思っていると思います。

      2. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

        一帯一路はシベリア鉄道に対する挑戦だからね

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告