G20が露追放できぬなら、いっそG7が脱退しては?
クレムリンの報道官は昨日、「G20諸国は独立した国の多国間フォーマットだ」としたうえで、米国で議論されている「ロシアG20追放論」を牽制しました。ただ、G20がロシアの追放で合意できないのであれば、考え様によっては、G7や豪州、EUなど、「基本的価値を共有している国」がG20の枠組みからいっせいに脱退する、というのも、選択肢としては「アリ」なのかもしれません。
ウクライナ侵攻から1ヵ月が経過
早いもので、2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻から、本日でちょうど1ヶ月が経過します。
当初の観測では、物量でウクライナ軍を圧倒的に上回るロシア軍が短時間でウクライナ全土を掌握し、ウクライナ側は早期に無条件降伏を余儀なくされ、ゼレンスキー政権は除去されて親ロシア政権が樹立される、といった見方もありました。
実際、『ロシアのウクライナ侵攻の目的は「キエフ公国回復」?』などでも取り上げたとおり、ロシア側が「うっかり」公表してしまった記事などから考えて、ロシア側が当初、このウクライナ戦争を48時間以内に終わらせる算段だったのではないか、といった可能性も指摘されています。
ただ、現実には少なくとも日本時間の昨晩の時点において、首都・キーウを筆頭に、ハルキウ、マリウポル、オデーサなど、ウクライナの主要都市はほとんど陥落していません。
それどころか、ウクライナに対し、対戦車ミサイル「ジャベリン」を含め、さまざまな武器が西側諸国から供与されているためでしょうか、数多くの戦車を含め、ロシア側はさまざまな損害を被っている様子です。
「ロシア軍はほとんど進捗できず」=英国防衛省
実際、英国防衛省がツイートしている『インテリジェンス・アップデート』によれば、昨日時点においてもロシア軍はほとんど進軍できていない、などとしています。
Latest Defence Intelligence update on the situation in Ukraine – 23 March 2022
Find out more about the UK government’s response: https://t.co/PCEfBZMADk
🇺🇦 #StandWithUkraine 🇺🇦 pic.twitter.com/gmDkmzjI7F
— Ministry of Defence 🇬🇧 (@DefenceHQ) March 23, 2022
The illegal and unprovoked invasion of Ukraine is continuing.
The map below is the latest Defence Intelligence update on the situation in Ukraine – 23 March 2022.
Find out more about the UK government’s response: https://t.co/lKqHBP2NQ7
🇺🇦 #StandWithUkraine 🇺🇦 pic.twitter.com/7kKkqkY8aJ
— Ministry of Defence 🇬🇧 (@DefenceHQ) March 23, 2022
もちろん、英国などの情報を100%、鵜呑みに信じて良い、という話ではありませんが、開戦から1ヵ月経ってもあまり戦況が変わっていないという点に関しては間違いなさそうです。
(※なお、「西側は政府もメディアも全面的にウソを報じている」、「ウクライナ人のツイートもウソだ」、「正しいのはロシアの情報だ」などと述べている人もいるようです。どんなことを主張するのも自由ではありますが、もしそのように考えるのであれば、くどいようですが、そう判断できる具体的な根拠を教えていただきたいと思う次第です。)
ロシアによる大量破壊兵器使用の危険性も
ただ、ロシア側が思うように進軍できていないということは、同時に、ロシア側による「禁断の兵器」――化学兵器や核兵器など――の使用の可能性を高めることにつながるのではないか、といった懸念があることも間違いありません。
このあたり、個人的には今回のロシアによるウクライナ侵略が、ロシア側の全面的な敗北で終わることを心の底から願っていますし、ウクライナにおける犠牲者が少ないことを祈っているのですが、それと同時に、ロシアが大量破壊兵器を所持している国である、という点については、甘く見るべきではありません。
そういえば、ウクライナのウィロディミル・ゼレンスキー大統領は日本の国会での演説で、ロシアが核兵器、あるいはサリンを含めた化学兵器などの攻撃を準備しているとの趣旨の発言をしていました(『【資料集】ゼレンスキー大統領の国会演説・文字起こし』等参照)。
もちろん、ロシアが本当にこれらの兵器を実戦投入するかどうかについては、わかりません。ただ、ウクライナがそのような脅威にさらされていることは事実でしょう。
独裁国家に核・ミサイル・生物化学兵器を持たせることが、どれだけ世界平和に挑戦的であるかという点を、いい加減、国際社会も理解しなければなりませんし、危険な国から危険な武器を取り上げることを、そろそろ真剣に検討すべき局面なのかもしれません。
いずれにせよ、人類は独裁者とは共存できないのです。
タス通信「G20は米国の言いなりにならない」
さて、こうしたなか、ロシアの国営メディア『タス通信』(英語版)に昨日、なかなかに興味深い記事が掲載されていました。
US pressures G20 on Russia, but number of states retain independent positions — Kremlin
―――2022/03/23 20:04付 タス通信より
クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は23日、米国がG20諸国に対しロシア制裁への同調を要求している点に関連し、「G20では多くの国がロシアに対し独立した立場を固守している」と述べたのだそうです。
具体的には、ペスコフ氏は米国が「わが国による包括的な抵抗に対し、すべての国に露骨で非外交的な圧力をかけている」としつつも、「G20は多国間フォーマットであり、さまざまな意見がある」などとして、G20加盟国は米国の圧力に抵抗し得るとの立場を示したのだとか。
この点、米国側ではロシアのG20からの追放も議論されているそうですが、その一方で中国外務省の報道官(氏名不詳)が「ロシアはG20の重要な加盟国」としたうえで、「加盟国を追放する権利はない」と述べた、というのがタス通信の報道です。
いわば、「G20は米国の言いなりにならないぞ」、という宣言のようなものです。この点については、たしかにタス通信の指摘が正しいかもしれません。
G20といえば、基本的価値を共有しているG7(日米英仏独伊加)や欧州連合(EU)に加え、アルゼンチン、豪州、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、南アフリカ、サウジアラビア、トルコの各国がメンバーとして加わっています。
G7・EU以外だと、「自由、民主主義、人権、法の支配」といった基本的価値を共有している国といえば豪州くらいなものでしょう(いちおう、「クアッド」の立場からすれば、インドもこれらの基本的価値を共有していることになっていますが…)。
正直、アルゼンチン、ブラジル、韓国あたりは、基本的価値を共有しているそぶりを見せているにせよ、その実態は極めて怪しい限りですし、サウジアラビアやトルコ、中国に至っては、価値観が異なり過ぎています。
仮に米国を含めたG7諸国が「G20からのロシアの追放」で見解が一致したとしても、それに中国、インド、韓国、ブラジル、アルゼンチン、サウジアラビアなどが反対すれば、G20としてのコンセンサスを得ることができません。
タス通信の記事からは、「どうせG20はロシアを追放できまい」とタカを括った姿勢が透けて見えるのです。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ただ、もしそうであるならば、アプローチを変えるのもひとつの手でしょう。
具体的には、G20から「G7+豪州+EU」がゴソッと抜けてしまう、というやり方です。あるいは、昨年の英国でのサミットでG7に豪州、インド、南アフリカ、韓国が招かれたように、「G7プラス」のような枠組みを立ち上げても良いかもしれません(※ただし、メンバーについては厳選する必要がありますが…)。
こうした「G20解体論」、意外と遠くない将来において、国際社会において出てくる可能性があると思う次第ですが、いかがでしょうか?
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
ソ連はフィンランドに侵攻して国際連盟を除名された前科があります。
今回はG20からの追放、国際連合からの除名を考えては?
ロシアがUN安全保障理事会に提出した「市民保護のための人道措置」案は却下されたとの報道が出ています。
・棄権=13国
・賛成=ロシアおよび中国
賛成票を投じた中国の言い分は Reuters によればこうだそうです。
『Ambassador Zhang Jun said Beijing had a “strong expectation” that there should be an immediate ceasefire, but that while pushing for a halt to the fighting, the council should “also respond to the humanitarian crisis in a positive, pragmatic and constructive manner.”
連投すみません。
ロシア提案の対して、カナダは侵略者が誰であるかが明記されていないとして提案を修正「添削文面」を公開して反論したそうです。
BBC / 2022-3-19
Russia has accused Canada of “kindergarten-level” diplomacy in a Twitter tiff over a social media post by Canada’s United Nations mission.
https://www.bbc.com/news/world-us-canada-60745569
赤ペン曰く
『これを挿入せよ
which we have caused a result of our illegal war of aggression.
『これを挿入せよ
because we are the primary cause.
『書き替えよ
for the Russia to end the illegal war of aggression, to cease hostilities and (strictly observe international humanitarian law)
そもそもG20なんて、自国の利益を追求するだけの無意味な集まりかと。
ロシア云々の前に、サイト主ご提案のように先進国+アルファで抜けりゃいいんですよ。
>「西側は政府もメディアも全面的にウソを報じている」・・・くどいようですが、そう判断できる具体的な根拠を教えていただきたいと思う次第です
くどいようですが、論理的にそれに尽きると思います。w
それを満たさない二次情報や分析は、接するだけ時間の無駄ですので私はフィルターします。
情報が溢れる時代の基本動作じゃないですかね。
プロパガンダの手口の研究のために接するなら、ロシア大使館とかを見たほうが役に立ちそうな気がします。
話は変わって。
大量破壊兵器の懸念はありますが、国債の債務不履行を宣言(ブラフ)しながら、実際には履行を続けています。そもそも開戦の判断がどうかとは思いますが、電撃戦の失敗(見込み違い)を受けて、プーチンには戦争終結時のコストを高めないインセンティブが生まれているような気もします。まあ、わかりませんけどね。
市街地の大量爆撃はコストを高めますけど、ロシア軍の通常行動の範囲だと思います。
大量破壊兵器の使用の判断はプーチンが関わると思います。
国連があまりにも役立たずを繰り返したものだから、新たな国際機関が
求められているのはひしひしと感じますね。
ただ、国連と違って実行力のある機関にしようとするのならば
(ルールで”骨抜き”を予防するのなら)、いわゆる”価値観が違う国家”は
入ってこなくなりそう。そうなると、新たな冷戦時代が始まるかも知れません。
まずはロシアが負けてウクライナが勝つ、と言う展開になるとだいぶ都合が良いのですが、
さてさてどうなる事やら……
ウクライナが勝ったらウクライナが新しいロシアになるかもよ
今回のロシアによる「特別軍事作戦」の目的について、優先順位を付けるとこんな感じだったのだろうと考えています。
1. ウクライナの中立化(=NATO加盟絶対阻止)
2. ウクライナ南東部のロシア語話者の保護
3. クリミヤ半島に繋がるアゾフ海沿岸の「回廊」の確保
「ゼレンスキー大統領排除と親ロ派政権の樹立」は、上記の目的達成の障害となるようであればそれも辞さないということであって、それ自体が当初からの目的だったとは考えていません。もしそれ自体が最大の目的であったとするならば、最初から全戦力をキエフに向けていたことでしょう。
このように考えると、1はすでに達成されたと見做すことができ、2も同様です。また、3についても、軍事的には達成しつつある状況にあります。ならば、ロシアがクリミヤ半島を含む全占領地から撤退し、かつウクライナのNATO加盟を黙認するという状況にでもならない限り、ロシアの「敗北」はないということになります。今後の停戦交渉の成り行きによっては、2と3については、ロシアも譲歩を余儀なくされる可能性がありますが、1については絶対に譲歩しないでしょう。ならば、プーチン氏は、少なくともロシア国内に向けては「今回の特別軍事作戦には多くの困難を伴ったが、最も重要な作戦目標の達成には成功した」というプロパガンダを打つことが可能になったということになります。
さて、G20という枠組みですが、元々価値観その他が全く違う国々寄せ集めであり、船頭が多すぎて山に登ったり、漂流したりしている枠組みであって、何か実効性のある取り組みや発表があったという記憶はありません。その意味では、ロシアをG20から排除しようがするまいが、象徴的な意味以上のものはないのではないかと思います。
そうかといって、国連安保理の改組は、安保理での決議と国連総会での承認が必要と思われるので、これまた非常にハードルが高いです。例えば、国連憲章あたりに、「自国が当事者である件については、常任理事国の拒否権行使を認めない」という条項を盛り込もうにも、おそらくはアメリカも中国も絶対に反対することでしょう。
ならば、いっそのこと「新国連」を作り、後腐れをなくすというのも一つの案だと思いますが、これも容易ではありません。少なくとも、日本が音頭取りになることはないでしょう。
ロシアのプーチン大統領は、最初はG20会議出席するなどと言うかもしれませんが、最終的にG20会議に出席することは出来なくなるでしょう。
その理由は、一つには巷間でいわれている大統領の肉体的、または精神的な病気のことです。それが本当ならばロシアは最終的には屁理屈を作って、「出席したいのだが欠席する」といことを正当化することになります。彼の病気を隠すために。
また、もしも、彼に病気などなくて、本当にG20に出席することになったら、その時は、アメリカ、日本、欧州などの多くの国がG20をボイコットすることになって、G20は開催されなくなるでしょう。従って、この場合もプーチン大統領は、G20に出席できなくなるのです。
アバター用いたリモート参加に一票
プーチン氏の健康状態や精神状態について、いろいろな憶測が飛び交っていますが、あまり真に受けないほうが良いと思います。本当に何らかの異常をきたしている可能性はもちろんあるのですが、それを前提として議論を組み立てるのは、希望的観測に陥りかねません。
同様に、ロシア国内で反戦機運が高まっているというお話についても、それ自体はおそらく事実なのでしょうが、それによってプーチン政権が倒れるかもしれないというのも、今のところ希望的観測でしかありません。「真実」を知らされていないロシア国民に「真実」を広く教えれば、ロシア国民も目覚めるに違いないという一部の見方についても、個人的には非常に懐疑的です。
ふと思ったのですが、ロシアや中国、韓国の独裁体制を西側諸国が保証?した上で覇権を諦めさせれれば良いのかも?と。
第二次世界対戦の経験で
「民主主義国にしないと覇権を諦めない」と世界が学習したのだろ