日本政府、対ロシア追加制裁への参加を半日遅れで表明

西側諸国によるロシアのSWIFT遮断・外貨準備凍結などを巡って日本が半日遅れで参加を発表しました。そして、これに対しホワイトハウスのサキ報道官は日本の対応を「歓迎する」との声明を出しているようです。その一方で、ウクライナ危機を巡っては米韓同盟という「意外なところ」に微妙な波紋も投げかけているようです。

ウクライナ情勢を巡るさまざまな進展

ウクライナ情勢を巡っては、次から次へとさまざまな進展が続いています。

欧米主要国は日本時間の昨日、ロシアの一部の銀行をSWIFTから遮断したうえで、外貨準備を凍結するなどの金融制裁措置を公表していますが(『欧米、共同声明で「ロシアのSWIFT排除」など発表』等参照)、これだけではありません。

今朝の『ウクライナの抵抗は想定以上?ロシアに3つの落とし所』でも取り上げたとおり、どうもロシアのウクライナ侵攻から5日が経過しそうになっているなかで、ロシア側はいまだにウクライナ全土どころか、首都・キーウ自体を掌握することができていない、という状況にあります。

こうしたなか、本稿では現時点で判明している、追加の情報をいくつか列挙しておきたいと思います。

「遅れではない」=岸田首相、ウクライナ大統領との会談も見送り

まずは、日本政府の発表です。

ウクライナ情勢に関する我が国の対応についての会見

―――2022/02/27付 首相官邸HPより

岸田文雄首相は昨晩の会見で、ロシアの特定の銀行をSWIFTから排除する措置などに、日本に、日本も参加すると述べました。

なお、「SWIFTに関して日本が欧米より遅れて声明を出すこととなった理由」について尋ねられ、岸田首相は次のように述べています。

遅れたとは認識しておりません。今回の事態に対して日本は、これまでもG7を始めとする国際社会と連携しながら対応してきており、そうした立場は変わりません。そして今回の声明については、欧州と米国の間で調整し、大西洋協力の枠組みで発出されたものであります。欧米諸国からこの声明への参加の要請が日本にもあり、日本もこの取組に加わっていくということを決定した次第であります。他のG7諸国からこれを強く歓迎する、こうした意向が表明されていると、今、申し上げたとおりであります」。

ちなみに岸田首相は、同日はウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談を行う予定だったものの、「先方から、現在、緊急事態となったため電話を別の日程としたい旨連絡があった」、などとも述べているのだそうです。

サキ報道官が日本の対応を「歓迎」

こうした日本政府の発表に対し、米ホワイトハウスのジェニファー・サキ報道官は日本の決定を「歓迎する」と述べました。

Statement by Press Secretary Jen Psaki on Japan’s Announcement to Hold Russia Accountable

―――2022/02/27付 ホワイトハウスHPより

サキ氏の発言の原文は、次のとおりです。

We welcome Japan’s announcement today that it will stand with the European Commission, France, Germany, Italy, the United Kingdom, Canada, and the United States to isolate Russia from the international financial system and our economies. Following Japan’s announcement, the entire G7 now supports disconnecting selected Russian banks from SWIFT, restrictions on the Russian Central Bank, and sanctioning key Russian leaders, including President Putin. Prime Minister Kishida and the Government of Japan have been leaders in condemning President Putin’s attack on Ukraine and we will continue working closely together to impose further severe costs and make Putin’s war of choice a strategic failure.

要するに、「日本がSWIFT制裁などに参加することで、G7が対露制裁で歩調をそろえた格好であり、歓迎する」、という声明でしょう(そもそもG7の一員である日本がSWIFT制裁の同時発表に参加せず、なぜ半日遅れたのかについてはよくわかりませんが…)。

欧米の措置と武器支援

一方で、西側諸国はさらに追加での支援を実施するようです。

英メディア・BBCによると、西側諸国はロシアの一部銀行のSWIFTからの除外、ロシア中央銀行の外貨準備に対する規制に加え、「ウクライナへの金融支援と武器供与支援も拡大する方針」を示したのだとか。

ウクライナ侵攻3日目、首都キーウの抵抗続く 西側の対ロ制裁とウクライナ支援拡大

―――2022年2月27日付 BBC NEWS JAPANより

BBCによると、ゼレンスキー大統領はキーウのほか、南部オデーサ、北東部ハルキウでロシア軍との戦闘が続いていると明らかにしたそうですが、これに対し米国、ドイツ、オランダ、フランスなどがウクライナへの武器供与を発表しているそうです。

さらには、英国や東欧諸国はロシア機の領空飛行を禁止する措置を導入したほか、フランス海軍は26日未明、サンクトぺテルブルクに向かっていたロシア船籍の貨物船を拿捕するなど、西側諸国によるロシア制裁・ウクライナ支援の動きが続いている、などとしています。

さらに、時事通信によると米国はウクライナにさらに武器を供与する方針を示したそうです。

米、ウクライナに武器供与 400億円相当を追加支援

―――2022年02月27日07時05分付 時事通信より

ウクライナ情勢は今後も常々変化すると思われるため、まだ予断を許さないところでもありますが、いずれにせよ、「ロシア軍が圧倒的に強いからウクライナがあっという間に制圧される」、という単純なものではないという点は間違いなさそうです。

あれ?米韓同盟は…?

さて、米国、欧州などが主導する格好で、現在、国際社会が次々と経済・金融制裁を仕掛けているなかで、少しだけ気になる記事もありました。

米国、ロシアへの制裁の参加パートナー32カ国発表…韓国は外された

―――2022.02.28 06:43付 中央日報日本語版より

韓国メディア『中央日報』(日本語版)に今朝掲載された記事によれば、西側諸国のロシア制裁という流れのなか、「韓国は国際社会の制裁に参加するとしながらも『独自制裁はない』と一線を画す矛盾した動きを見せている」、としています。

その例として、米国政府が現地時間24日にロシアへの半導体輸出禁止制裁を発表した際、米商務省が発表した資料に掲載されていた「該当規定から外されるパートナー国家」32ヵ国のなかに、韓国の名前がなかった、というのです。

これについて中央日報は、「ある外交筋」が27日、「米商務省の発表はまだ韓国を『制裁をとるという十分な意図がある国』と見なさないという意味に捉える余地がある」ものだと述べた、などとしています。

このあたりは非常に興味深い論点のひとつでもあります。もしかすると近い将来訪れるかもしれない台湾海峡危機の際に、米国がどの同盟国との関係を重視するかを予測するうえで、大変に参考になるからです。

いずれにせよ、ウクライナ危機はウクライナと関係のないさまざまな地域にも、微妙な波紋を投げかけているといえるのかもしれない、と思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    swiftは欧米主体の仕組みで日本は中心から遠いのも影響してそう
    何処まで言ってもG6と残りの1なのは否定できんからね
    この溝を埋めるのあと百年はいる

  2. だんな より:

    半日は、時差でしょう。
    さて、アメリカのロシア向け輸出規制について情報が入りました。
    説明出来ないので、簡単にさせてもらいます。
    1.Milltary end use及びMilltary end user向けの輸出は、米国政府の許可が必要。
    2.米国由来技術を使用して米国外で製造された貨物の輸出規制。
    ロシアは、グループD1となり、中国と同じ扱いになりました。
    米国政府の許可が必要となり、半導体等が含まれると思います。

    1. みったぁ より:

      >> 1. 別表1項のITAR/EAR化
      >> 2. ITAR/EARの厳格適用
      アメリカの場合、この処置は実質的に「ロシア向けはすべからく申請は出来るけど許可しないよ」でアメリカが絡むものは禁輸と認識して良いと思います。

    2. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

      時差が言い訳になるわけないだろ
      国際取引で時差を言い訳にしているから日本はダメなんだよ

  3. YT より:

    26日、英ジョンソン首相→EU/NATO会合でG7参加国に声掛け→(日本は深夜)→先行共同声明
    27日、日本の朝を待ち日本にも連携呼びかけ→岸田総理が連携表明→深夜のG7外相会合で林外相が連携を伝達
    28日、G7およびウクライナの政府機関が一斉に日本に謝意を表明

    の流れだと思いますが、何か疑問はありますでしょうか?
    現地の銀行や法人に多少は影響のでる金融制裁を
    岸田首相が深夜に徹夜で独断で決定しろということでしょうか?

    1. 匿名 より:

      何の話をしていますか?

      1. YT より:

        前の記事もそうですが、質問するときは「匿名」以外のハンドル名を使用してくれませんか?
        匿名さんが複数いるので返答できません。

    2. 匿名 より:

      流れとしては不自然なところは無いと感じます。
      いつからという話について、事前の協議というか根回しは無かったのかという気もしますが。
      どこから話が漏れるか分からないし、内容が内容だけに会合で急遽決定という展開も可能性としてありだと思います。

      疑問があるとすれば、それなら政府は素直にそう説明してくれてもいいんじゃないかという点くらいですかね。
      内情を明かすと起こり得る問題ってあるのでしょうか?

      1. YT より:

         この内閣はあまり無駄な情報発信をしない内閣なので、SNS 受けはよくないでしょうね。どちらかというと財界よりの内閣なのでしょう。それが SNS 受けはよくないのに高支持率の理由なのでしょう。
         それに、あくまでも遅いと言っているのはSNS内で、財界もマスコミも遅いという不満はないので特に説明もしないのでしょう。
         このあたりは、SNS インフルエンサーを桜を見る会に招待していた安倍元首相とは対照的です。

    3. 伊江太 より:

      YT様

      お説の通りだと思います。

      そもそもSWIFTというのは欧州にあった証券決済を仲介する組織が発展したもの。それに米国が乗り、さらに香港・シンガポールなどアジアの金融ハブが加わって、世界的ネットワークに発展したものと聞きます。日本の金融機関が加わったのはだいぶ後の話。

      加盟金融機関の協同組合という性格の非政府組織ではあっても、EUや米国にはこれを国家目的に沿うよう規制する法律があるようですが、日本にはそれがない。ロシアをSWIFTから排除する問題に日本政府が嘴を挟む余地はもともとないのだから、G7メンバー国+EUの協議の中に日本が入らなかったのは、当然ともいえるのでしょう。米国やEUから今回のSWIFTの問題に関する日本の理解に感謝の意が伝えられているのは、当然の配慮かと思います。

      SWIFTから外したからと言って、ロシアの経済が窒息してしまうわけではない。その他もろもろの国際的手立てのいくつかを、封じてしまおうというG7諸国間の合意に沿う形で、「独自」制裁という政策を打ち出している日本ですから、きちんと国際連携の輪の中にいるということは、少なくとも言えるわけで、発表が遅いのなんのは単なる時差の問題なんでしょうね。

    4. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

      バカも休み休み言え
      この非常時に深夜が言い訳になるわけないだろ

  4. だんな より:

    >「ある外交筋」が27日、「米商務省の発表はまだ韓国を『制裁をとるという十分な意図がある国』と見なさないという意味に捉える余地がある」

    行いの通り「十分な制裁の意図が無い国」に分類されるでしょう。

  5. 元ジェネラリスト より:

    岸田氏の場合は即答できない病の疑いがあるものの、日本は過去にウクライナに関わる外交問題に主要なプレイヤーとして関わっていないので、今回入っていなくてもあまり違和感はないです。
    イランの核合意で欧米諸国が声明を出すときに、日本が入らないのと同じだと思っています。
    (中国はそこにしゃしゃり出ましたが)
    逆に日本が名を連ねたなら、ある意味サプライズだと思います。
    ただ、過去に作られた日本の立ち位置を変えるなら、今は一つの機会だとも思います。

    1. より:

      現実問題として、日本はロシアに対して、軍事的にも経済的にも、実効性を伴う制裁措置を行う術がありません。何かできることがあるとすれば、ウクライナへの無償資金援助くらいでしょう。ただし、その場合でも、ウクライナが援助資金で軍需物資の購入に充てたならば、日本国内の左巻きの人々が「実質的な武器輸出だ。なんちゃら三原則に違反する」と言って大騒ぎする可能性はあります。
      現状では、国際的経済制裁に「参加することに意義がある」程度でしかありません。それでいいのかという議論はあるかもしれませんが、それはまた別の議論でしょう。

      1. 元ジェネラリスト より:

        制裁の評価は、実効性の観点も重要でしょうが、相手に意思を伝える観点も大事だと思います。
        実効性がないからやらないほうがマシという単純な結論にはならないと思います。

        バルト三国がなけなしの金をはたいてウクライナを支援していますが、とても意義あることと思っています。

        1. より:

          ああ、書き方が悪かったかな。要するに、実効性は期待できないけど、「参加すること」には大きな意義があると言いたかったのです。
          どこぞの国のように、「独自制裁は考えていない/行わない」などと明言しちゃったりするほど外交感覚が欠落しているわけではないといのは、ひとまずは良かったかな、と。

          1. 元ジェネラリスト より:

            私の読み誤りでした。すみません。

            日本の現状の立ち位置を変えるにはハードルはたくさんありますね。

  6. 匿名 より:

    対露制裁に注目しがちですが、ウクライナへの支援も大切です。
    微力ながら寄付させてもらいました。

  7. はにわファクトリー より:

    最後に喜捨をしたのはインドの街頭でした。
    さきほど当方もウクライナ大使館へわずかながら送金しました。

  8. ちょろんぼ より:

    マスコミがこれから騒ぐのは北方領土で行っている漁業問題ですね。
    影響を受けるのは、主にカニ様・鮭・昆布です。
    それと露が日本に報復すると言っているので、国境線近くで操業する漁船を
    拉致拿捕する事です。 国境線の日本側に漁船がいたとしても、露が
    日本漁船を拿捕するに理由は必要ありません。
    ん?北方領土返還交渉に支障が・北方四島交流事業に問題が生じるのでは?
    そもそも経済制裁するという事は、戦争をしかける事と変わりがないというか
    形の異なる戦争です。 どっちみち露は戦争以外で北方領土を返還する気はまったく
    ありません。 日米開戦も、米国の日本への経済制裁から始まりました。

  9. 匿名 より:

    歴史上、悪い意味でアメリカにとってロシアは重要な相手なのに、ここぞと言う時に半導体大国韓国との同盟が機能しないとは。

  10. ななっしー より:

    ベルギーの協同組合をアレコレするのは、
    すでに独自制裁している国(日本等)以外の国(韓国等)からのカネの動きも止めたいからだろうから、
    まあ日本にできることは無いかな(日本にあるのは日本スイフトユーザーグループ)。

    SWIFT理事会にロシアから一人、日本から一人いるけど、政治的な話し合いの場ではないのだろう(そりゃそうか)。
    SWIFTの「オーバーサイト」としてベルギー中央銀行とG10がある、つまり日銀もいるけど、これまた経済制裁は「監督」の内に入らないのだろう(つか日銀自体が政府から「独立」しているし)。

    共同声明に日本が無いのは…う~ん、ここかなあ。
    >(to) hold Russia to account(ロシアの責任を問う)
    しかも2度言ってるし。
    日本がそこまで出しゃばるわけにもなあ。

    最新記事のサキ報道官の発表を見ても
    >(to) make Putin’s war of choice a strategic failure(プーチンの繰り返す戦争を戦略的失敗に終わらせる)
    と、日本政府が言えるのは「矛を収めましょ」くらいまでのようだ。

    最後に26日夜テレ朝news
    「『ロシアは世界経済の一部』制裁の影響 早くも日本に」
    「カニ」w
    「ガソリンの価格は7週連続で値上がり」(7週前に制裁したか?)

  11. sey g より:

    これから、ロシアはかなり苦しくなると予想されます。
    限界に近づいた時に、日本が北方領土返還をエサに穴を開けるという交渉はありかなと思います。
    モチロン返還の約束だけでは、穴はあきません。日本の実行支配が確実にならないと無理です。
    もし、北方四島の支配が確実になっても 北方領土はまだあると穴はあけません。

    これは岸田総理なら、北方四島で穴を開けるとなめられてるから出来ると思うのですが、甘い考え方でしょうか。

  12. 迷王星 より:

    当然,欧米の6ヵ国(以後,G6諸国と呼びますが)がSWIFT遮断を決断した際には日本にも「G7として一致団結してSWIFT遮断をやろう」という誘いがあったのは確実でしょう.日本はその経済規模の割には欧米諸国ほどには対ロ投資が多くないでしょうから日ロ両国の銀行での決済額も欧米銀ほどには多くないとしても,G7で一致して遮断するというのは,善の西側の代表たるG7が悪の帝国ロシアを懲らしめるという象徴的な意味があり世界に発信するインパクトが日本が欠けた6ヵ国だけなのとは大きく違ってしまいます.

    欧米の外交を見ていると,象徴性とかその時の世界に与えるインパクト=アピール度をとても重視しているように思われますが,日本を欠いた6ヵ国だけ(G6)だと,単にソ連時代から延々と続いているNATOとロシアとの喧嘩に過ぎないんだなあとしか残りの世界の人々から見られない恐れが強い.

    ですから,G6による遮断発表前にはまず確実に少なくともアメリカ政府から(個人的にはそれに加えてイギリス政府とひょっとしたらフランス政府からも)日本に遮断への参加を求めて来たと考えるべきでしょう.

    ですが,日本政府はその時点で同調しなかった.

    日本政府がG6諸国と同時に遮断しなかったのは,恐らくロシアに展開している日本企業(とりわけ天然ガスなどの地下資源の開発輸入で)がロシアにある自社の資産や権利をロシアに接収されるのを恐れて日本政府に泣きついたからではないか,つまり岸田さんが常々言っておられる「聞く力」によるものだと(何の証拠もありませんが)個人的には推測しています.

    そこで,恐らくは最初の誘いの際に「国内での調整が済んでいないので」とか何とか言って誤魔化そう(出来れば遮断せずに済ませよう)としたのでしょう.出来るだけ何も決めたくない岸田さんの性格からして最もありそうな行動パターンだからです.

    しかしそれでは上に書いた通り,世界中からはNATOとロシアとの喧嘩でNATOがSWIFT遮断という弾をロシアに放ったようにしか見えず,欧米外交のキモであるインパクトに欠ける.何よりも欧米の銀行との決済送金リンクがしっかりしており国内に多数の金融機関を抱えて送金網も完備している日本のメガバンクと,日本国内でロシア企業との取引の大きい日本企業やその関係者の日本国内での口座と,メガバンクとは逆に日本国内でほぼ閉じている中小金融機関とを組み合わせて作り上げる日本国内での複雑な送金経路と,これらの巧妙な活用で欧米のSWIFT遮断を迂回できる決済・送金経路を構築することにより,G6によるSWIFT遮断を実質的に無効化されかねません.

    そこで,恐らくはアメリカ政府内部で上の迂回による無効化の危険性に気付き,バイデン大統領か財務長官かに日本が遮断に参加しないことの重大さを伝えた結果,アメリカ政府が岸田政権に向けて「さっさとSWIFT遮断しろ!さもなければ,日本を韓国と共にセカンダリー・サンクション(SS)対象国に指定するぞ!」(※)と恫喝して来たことで,決められない岸田さんも泡を食って(†)半日遅れのSWIFT遮断を発表した.

    以上が,何の証拠もありませんが,岸田さんの行動パターンや欧米の外交のやり方そしてアメリカ政府のやり口に照らして,日本が半日遅れてSWIFT遮断を発表した裏にあった流れとして,最もありそうだと推測している次第です.

    ※:楽韓Webさんが解説しておられる通り,自主制裁を発表しなかった韓国はアメリカが発表したSS対象からの除外国リストには入っておらずSS対象国になってしまいました.

    †:何しろ日本の政権が長く続くか短命で終わるかに関しては,時の米政権との仲が良くない日本の政権は短命で終わり,米政権との関係が良好な…典型は中曽根政権や第二次安倍政権など…政権は長寿を保つ,という明確な実績がありますから,岸田さんにとってこの恫喝は「決めないとお前は政治家として死ぬよ」と死刑宣告されたに等しく,流石の決めたくない岸田さんも総理の座に執着している以上,遮断を決心せざるを得なくなったのでしょう.

    ―――
    しかし,岸田さんや林さんは,今回の半日遅れがどれほど日本にマイナスになったかを理解しているのだろうか?

    当初の同調を求めて来たのに対して一致団結して遮断発表をしなかったことで,「日本もやはりチャイナやコリアと同じイエローで我々とは異質だったか.だからウクライナ事態の重大さを理解できないんだな」という欧米人(特に政界や官界などを占めるエリート層)に根強く残る差別意識を改めて呼び覚ましたことでしょう.

    そして岸田内閣だけでなく,日本という国全体さらには日本国民全体に対するG6やEUからの信頼感も今回の遅れで損なわれ,彼らの中に日本に対する疑念(この先も本当に日本を信頼して協調して重大事に当たれるのか?という疑念)が残りました.

    そしてその差別意識や信頼感の毀損は,例えば日本が周辺有事の事態に陥った時の欧米からの協力度の低下を齎すでしょう.例えば,在日米軍がどこまで防衛戦闘に協力してくれるか,とか.(自衛隊自身が戦闘しているという前提の下で,在日米軍も戦闘参加するのか,単に消耗した弾薬の補給でお茶を濁すのか,また戦闘参加するにしてもその程度は色々とある)

    本当に愚かにも無駄な半日を費やして同盟関係の信頼感を毀損してしまいました.鳩ポッポやイラカンに次ぐ愚かさだと思います.

    物事には曖昧にすべき時と旗幟鮮明にすべき時とがありますが,今は旗幟鮮明にすべき時です.特に国防に関して最低限の自立さえ出来ていない(法律面でも戦力面でも継戦能力面でも国民の意識でも)日本にとっては.

    1. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

      全くその通り
      半日遅れは岸田の致命的チョンボ
      これで日本有事で欧米が日本を助ける目が無くなったと言って良い

    2. より:

       喧嘩のできる総理大臣ではないですね。
       ため息が出る。

  13. ビトウ より:

     コメント失礼します。

     欧米に協力して制裁参加、岸田政権珍しく仕事してる。
     露との接点が少なく、自前の軍隊も無いから直接的な制裁が全然出来ないのですか。なら、

     ウクライナへの支援
     国連分担金の支払い拒否

     はどうでしょう?
     岸田政権に出来るかは置いといて、露と秦への牽制にはなりませんかね?

    1. 匿名 より:

      ビトウさん

      見落とされたのかも知れませんが、この記事の「ウクライナ情勢に関する我が国の対応についての会見」のリンク先にもあるように、ウクライナへの支援は既に政府は表明しています。

      「また、既に表明した1億ドル規模の借款に加え、困難に直面するウクライナの人々に対する人道支援として1億ドルの緊急人道支援を行ってまいります。」

      とのことです。

  14. カズ より:

    >米国、ロシアへの制裁の参加パートナー32カ国発表…韓国は外された

    特別な軍事作戦(覇権の回復?)を容認しちゃうんだろうか?
    中朝に同じことされても、望むところなんですものね・・。

    >「米国と欧州国家が制裁をとれば、われわれもつながっているため自然に参加するという意味」と話した。

    その通り。
    韓国はセカンダリー制裁のターゲットになるから参加せざるを得なくなる。
    * ”消極的参加” がロシアに対してのメッセージだったりするのかな・・?

  15. 匿名 より:

    対ロシア追加制裁に関する我が国の参加表明が半日過ぎてからだったのは計算尽くだと思います。理由は韓国の態度を見極め、日本のせい

  16. クロワッサン より:

    ホントにキッシーは弱腰と言うか日和見と言うか、ほぼ戦時状態の東アジア情勢の中では無益どころか有害に成り得る逸材ですね。。。

    チワワのイメージにピッタリです。

  17. より:

     日本には、戦争する準備が足りないって事が露呈した。湾岸戦争よりはマシかもしれないけど。
     半日早ければ、全く印象が違うのに。
     時差?

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