一般読者から「ブーメラン政党」と指摘される立憲民主

「批判ばかり」「自分に甘く他人に厳しい」「ダブルスタンダード」「ブーメラン」…。これらはいずれも立憲民主党に一般読者から寄せられた指摘ばかりです。新聞、テレビを中心とするオールドメディアが立憲民主党などの野党の行動をあまり積極的に報じようとしないにも関わらず、一般の読者・有権者は、政治のことを本当によく見ていると思わざるを得ません。

国会議員の本職は「法律を作ること」

政治家の本職とは、いったい何か――。

一般に、政治家の役割とは、「法律などを作り、社会をより良い方向に変えていくこと」にある、といえば、多くの人にご賛同いただけることと思います。

とくに日本の場合は議院内閣制を採用していて、志を同じくする人たちが参加する政党が国会で多数を取り、多数決で法案を通すほか、政権を取り、行政権を行使することを通じて政治責任を取る、というのが基本的な考え方でしょう。

また、残念ながら議席が足りなければ政権を取ることはできませんが、もし自身が所属する政党が政権に参加していなかったとしても、衆院だと20人以上、参院だと10人以上の会派には、基本的には法案の提出権があります(国会法第56条第1項)。

国会法第56条第1項

議員が議案を発議するには、衆議院においては議員二十人以上、参議院においては議員十人以上の賛成を要する。但し、予算を伴う法律案を発議するには、衆議院においては議員五十人以上、参議院においては議員二十人以上の賛成を要する。

いずれにせよ、志を持って国会議員となった以上は、国会議員の本職であるはずの「法律を作ること」に専念していただきたいと思いますし、国会議員は社会が必要としている法律を作ることで、この社会に貢献していくことができるはずです。

これに加え、日本では憲政の慣習上、野党に対しては与党と比べて多くの質問時間が割り当てられていますし、国会議員は「法律を作る」という重要な任務を遂行するうえで、国政調査権を持っており、また、証人の出頭や証言、記録などの提出を要求することができるなど、非常に大きな権限を持っています。

日本国憲法第62条

両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。

国会議員がこうした権限を正しく行使することで、現状の国政に関する問題点をきちんと突き詰め、私たち国民の生活をより良くすることに役立つことは、当然に期待される話ですし、野党の国会議員がときとして政府・与党の不作為を糺すなどすれば、国会、国政の場に緊張をもたらすことが期待されます。

MKSが大好きな立憲民主党

正しく使われていない国政調査権

ただ、こうした原則はそのとおりなのですが、非常に残念なことに、わが国にはこうした権限を正しく使っていないのではないかと疑われる人たちがいます。その典型例が、「MKS(森友学園問題、加計学園『問題』、桜を見る会疑惑)」などのスキャンダル追及に汲々としている、最大野党・立憲民主党でしょう。

「MKS」のうちの「森友学園問題」が、最初に朝日新聞に報じられた2017年2月以降、当時の民進党時代から通算し、立憲民主党はじつに5年以上も「MKS」に代表されるスキャンダル追及を続けている(『時が止まった立憲民主「コロナより森友・公文書改竄」』等参照)のは、どう考えても異常です。

ちなみに『立憲民主党の前衆院議員のインタビューがなかなか凄い』でも述べたとおり、こうしたスキャンダル追及、批判ばかりという指摘に対し、昨年10月の総選挙で落選した立憲民主党の前衆院議員は雑誌『女性自身』のインタビューで、なかなか強烈な内容を語っていらっしゃるようです。

該当するインタビュー記事は下記リンクのとおりです。正直、読むだけで疲れる代物かもしれませんが、もしご興味があれば、どうか自己責任にてご一読ください(※「時間を無駄にしたじゃないか」、などと抗議されてもお受けできませんが…)。

「なんで野党は批判ばかりなの?」立憲民主党の前議員に聞いてみた

―――2022/01/17 06:00付 『女性自身』より

「国民がほれぼれする批判」というパワーワード

また、国会議員の役割が「相手を批判することにある」と勘違いしていらっしゃる事例は、それだけではありません。昨年11月の立憲民主党の代表選で、泉健太・現代表と代表の座を争った小川淳也衆議院議員が、「理想は国民がほれぼれするような批判だ」と述べた、という事例なども、その典型例でしょう。

それにしても、「国民がほれぼれする批判」、というのも、じつに強烈なパワーワードだと思う次第です。

正直、「批判だけ」の政治家が許されていたのは、「官僚−メディア−野党議員」という「負のトライアングル」が日本をガッツリと支配していた過去の時代の話でしょう。当時は、メディアが「報道しない自由」を使い、野党議員の行状を正しく報じず、結果的に野党議員がメディアによって守られていたからです。

ただ、現代社会はインターネット環境が急速に普及し、野党(とくに立憲民主党)の議員の行状は、インターネットを通じ、我々一般人の知るところとなっています。

また、各種ニューズ・メディア(たとえば『Yahoo!ニュース』)がなにか野党議員についての話題を取り上げたら、その読者コメント欄では、野党議員に対する批判の声が殺到するのが「世の常」となりつつあるようにも見受けられます。

「『批判』恐れず批判を」に読者コメント欄でツッコミが相次ぐ

さて、こうしたなか、昨日はその『Yahoo!ニュース』に毎日新聞がこんな記事を配信しました。

辻元清美氏 野党は「批判」恐れずに批判を

―――2022/02/07 07:14付 Yahoo!ニュースより【※毎日新聞配信】

これは、立憲民主党の辻元清美・前衆議院議員が『毎日新聞政治プレミア』に寄稿した文章で、「批判すべきは積極的に批判し、政権を監視する役割をきっちりと果たすべきだ」、「批判ばかり』という批判を恐れて萎縮してはならない」などと述べた、とする話題です。

ただ、興味深いのは、この記事に対して寄せられた読者コメントが、昨晩9時時点で約4000件近くにも達しており、その多くが立憲民主党など特定野党の「批判ばかり」という姿勢を強く糾弾するもので占められている、という点ではないでしょうか。

これらの読者コメント、要約すると、こんな具合です。

  • 批判することが悪いとは言わない。しかし、立憲民主党議員は批判ばかりで対案を示さないし、<中略>自分たちのことは棚上げして他人を批判する、他人に厳しく身内に甘い」。
  • 単純な批判には、単純な批判が帰って来るのが当然ではないか」。
  • まともな批判ならまだ理解できるが、低レベルのくだらない揚げ足取りに有権者が呆れているのではないか」。
  • 野党の仕事は▼与党の批判、▼発言の揚げ足取り、▼野次を飛ばす、▼辞任要求――だけであり、政策を出すのは仕事ではない」。
  • 他者や他党が間違っているときに、それらを批判するのは政治家の仕事のひとつであることは間違いない。しかし、問題は、批判にばかり偏ることと、他者を批判しておきながら自分で同じようなことをしでかしてそれを恥じない『ブーメラン』の姿勢ではないか」。

…。

読者コメント欄を眺めていて痛感するのは、新聞、テレビを中心とするオールドメディアがまともに報じないわりに、一般の読者というものは、本当に政治をよく見ている、という点です。

立憲民主党ブーメラン

立憲民主党は、逃げの一手

そのなかでも、やはり秀逸な指摘は、「ブーメラン」です。

そういえば、『無責任な「泉健太体制」立憲民主党は漂流の末に瓦解か』などでも指摘したとおり、立憲民主党を巡っては、年明け以降、「CLP/ブルージャパン疑惑」、「菅直人元首相のヒトラー発言」、「菅元首相らによるEU向けの虚偽書簡」などの問題が相次いで発覚ないし発生しました。

似たような問題が生じたときに、立憲民主党は国会審議を妨害・空転させるなどし、徹底的に自民党や安倍晋三総理らの責任を追及してきたことを思い出すならば、泉健太代表の、党としての説明責任から徹底して逃げ回る姿勢は、理解に苦しむものです。

この点、「ヒトラー発言」云々に関し、菅氏と、菅氏に直接抗議文を手渡しに行った馬場伸幸共同代表とのやり取りを眺める限りでは、個人的には「どっちもどっち」という印象も、ないではありません(『立憲「ヒトラー」騒動に対しダブル・スタンダード批判』等参照)。

ただ、もしももしも自民党あたりの議員が「立憲民主党や菅直人(氏)はヒトラーのようだ」、などと発言しようものなら、おそらく立憲民主党は烈火のごとく怒り、岸田文雄首相に対し説明を求めるなど、国会が紛糾するのではないかと思います。

おそらく有権者としても、こうした「立憲民主党ブーメラン」を見透かしているのではないでしょうか。

内閣支持率は減少局面に?

さて、こうしたなか、当ウェブサイトではこれまで6つの世論調査(読売新聞、朝日新聞、時事通信、共同通信の4社のものに加え、産経・FNN、日経・テレ東の2つの合同調査)を「定点観測」しているのですが、今週はこのうち読売新聞の世論調査が出てきています。

図表1 内閣支持率(2021年1月~2月、カッコ内は前回比)
メディアと調査日支持率不支持率
時事通信(1/7~10)51.7%(+6.8)18.7%(▲5.3)
産経・FNN(1/22~23)66.9%(+0.5)26.8%(+0.6)
共同通信(1/22~23)55.9%(▲4.1)25.2%(+2.5)
朝日新聞(1/22~23)49.0%(±0)22.0%(▲1.0)
日経・テレ東(1/28~30)59.0%(▲6.0)30.0%(+4.0)
読売新聞(2/4~6)58.0%(▲8.0)28.0%(+6.0)

(【出所】各社報道より著者作成)

前週の日経・テレ東の合同世論調査に続き、読売新聞が2月4日から6日にかけて実施した調査では、岸田内閣に対する支持率は8ポイント下落し、不支持率は6ポイント上昇しています。オミクロン株の蔓延と、ブースター接種が遅延していることなどが原因でしょうか?

政党支持率で「維新>立憲」の構図がクッキリしてきた

ただ、それよりも興味深いのは、やはり政党支持率でしょう。

図表 政党支持率(2022年1月~2月、カッコ内は前回比)
メディアと調査日自民立憲維新
時事通信(1/7~10)25.6%(▲0.8)4.0%(▲1.0)4.3%(▲0.6)
産経・FNN(1/22~23)40.3%(+1.7)6.0%(▲1.2)6.7%(▲1.4)
日経・テレ東(1/28~30)46.0%8.0%10.0%
読売新聞(2/4~6)40.0%(▲1.0)5.0%(±0)7.0%(+1.0)

(【出所】各社報道より著者作成)

少なくともここに示した4つの調査では、いずれも、日本維新の会が政党支持率で立憲民主党と逆転している、という状況が続いています。今回の読売調査では、立憲の支持率が横ばいの5%にとどまる一方、維新の支持率は前月比1ポイント増え、7%でした。

まさに、政党支持率で「維新>立憲」の構図がクッキリしてきた格好です。

「膿を出し切ったらそれは立憲民主党じゃなくなる」?

そういえば、『今夏参院選の投票先でも維新・立憲「逆転」=日経調査』でも指摘したとおり、いくつかの世論調査では、「今夏の参院選の投票先」について尋ねたところ、やはり維新と立憲の逆転が生じ始めている状況にあります。

こうした状況で、「批判ばかり」批判を擁護する発言が立憲民主党関係者から相次いでいること、菅氏の「ヒトラー発言」、福山哲郎・前幹事長が関わった可能性がある「CLP/ブルージャパン疑惑」などが相次いで浮上していることは、立憲民主党にとっては決して良い材料ではありません。

やはり、「泉健太体制」で立憲民主党が持ち直すためには、膿を徹底的に出し切るより方法はないのではないでしょうか。

(※なお、読者コメント欄やツイッターなどで、「膿を出し切ったら政党自体が消滅するのではないか」、などとする心ない書き込みがあったことは、ここだけの話、というわけです。)

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

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読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    >野党に対しては与党と比べて多くの質問時間が割り当てられ

    もう、最低質問時間(例えば3分)+議席比例配分でいいんじゃないですか?

  2. だんな より:

    誤)「膿を出し切ったらそれは立憲民主党じゃなくなる」?

    正)「膿を出し切ったらそれは立憲民主党が、なくなる」

    1. 匿名 より:

      爆笑しました。
      飲んでいたスープが鼻に入って痛い(苦笑)
      昔々、某巨大掲示板で東亜とハン板は飲食禁止だったのだが、新宿会計士さんの読者コメント欄もそうなっているのか…。

    2. にゃ様 より:

      もともと、全てが膿で構成されてるなら、出し切ってしまうと、消滅しますね。

  3. 新聞を読まない高齢者 より:

    >ブースター接種が遅延していることなどが原因でしょうか?

    昨日、暇つぶしに3回目の接種予約サイトに訪れたら即接種予約が出来ました。
    ブースター接種が遅延しているというのは、急いで接種したいと思う人が居ないだけでは?
    予約サイトでは来週の月~金のほぼ全ての時間帯が予約可能でした。

    1. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

      いたずらで予約したら犯罪にならない?

  4. 迷王星 より:

    興味深い記事を有難うございます.ですが,

    >読者コメント欄を眺めていて痛感するのは、新聞、テレビを中心とするオールドメディアがまともに報じないわりに、一般の読者というものは、本当に政治をよく見ている、という点です。

    これは必ずしも正しくないと考えます.

    そう考える理由は,Yahoo!ニュースの読者コメント欄は一般読者の性向を知るためのサンプリング手段として偏っているからです.

    Yahoo!ニュースを読みコメント欄にコメントを投稿する人々は,日本国民全体に比べてニュースを知る手段としてのインターネットを重視している(逆に言えばコメント欄に投稿していない人々はコメント欄に投稿する人々に比べて古典的マスメディアを重視している比率が高い)と考えられるからです.

    そういう人々(多くの場合に高齢者)はインターネットを余りあるいは全く見ないが故に,古典的マスメディアが立民や共産や社民など左翼の「批判ばかりの政党」の国会での審議姿勢を批判しないのを信じて,それら批判ばかりの左翼政党に対する信頼度がヤフコメ欄に投稿する人々よりも高くなる訳です.

    政治・社会関連のニュースの場合,それぞれのヤフコメ欄に投稿されているコメント達は,対応する個々のニュースの内容に依って,今回のエントリで挙げられているような左翼政党批判的な人々がコメントの殆どを占めたり,逆に左翼政党が普段から主張している類の日本社会の安定性を揺るがしかねないかなり急進的なリベラリズムを支持する人々によるものが圧倒的多数を占めたりと,両極端のどちらかに振れているケースが多いので,日本国民全体の意識を推測するためのサンプリングの場としては不適当である,私はそのようにヤフコメ欄を認識しています.

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