立憲民主議員「理想は国民がほれぼれするような批判」

「理想は国民がほれぼれするような批判」。これは、「立憲民主党は批判ばかり」と批判されていることに対する、立憲民主党議員からの回答だそうです。そもそも論ですが、多くの国民が求めているのは「ほれぼれするような批判」ではなく、「ほれぼれするような提案」ではないか、などと思う次第ですが、もっと大きな問題点は、こうした点を当事者の皆さんが理解していない可能性がある、ということではないでしょうか。

話題に事欠かない立憲民主党

選挙を食堂に例えてみた

当ウェブサイトでは常々、民主主義社会では「選挙は理想の候補者を選ぶ手続ではなく、ダメな候補者を落とすための手続だ」、といった持論を提示してきたつもりです。衆院選の公示直前のタイミングで、『衆議院解散で問われる有権者の見識は「最大野党選び」』のなかでも、こんな「たとえ話」を述べました。

現在の国政政党は「寂れた食堂街に出店している、さえない食堂」のようなものだ」――。

つまり、現在の国政政党のなかでは、マトモに食べられる料理を出してくれるのは、高くてマズいという評判の「自民党食堂」くらいしかありません。しかも、この「自民党食堂」も、ときどき消費税の増税、レジ袋の有料化など、不要かつ有害で高くつく政策が実行される、という、とんでもない代物です。

ただし、「自民党食堂」のライバルを名乗る「立憲民主党食堂」に入ると、メニューには「自民党食堂」の悪口しか書かれておらず、肝心の料理のメニューがいっさい掲載されていないという、さらにどうしようもない食堂、というわけです。

しかも、「立憲民主党食堂」で、無理やり食事を注文したとしても、立憲民主党食堂では料理人がひたすら「自民党食堂」の悪口を言うばかりで、料理を作ろうともしないし、店員さんもお茶や水すら持ってこないため、呆れて店を出ようとしたら、(食べてもいないのに)食事代金を請求されるようなものでしょう。

こうした「高くてマズい食堂」、「ダメな食堂」などが並んでいたとしても、やはり、私たち有権者は我慢して、少しでもマシな店を盛り立て、ダメな店には「入店しない」(=投票しない)ことを通じて、少しずつでも食堂街を良くしていくしかありません。

ただ、ダメな店が潰れ、その跡地に少しでもマシな食堂が入れば儲けものです。

つまり、選挙とは「一番ダメな食堂」に立ち退いてもらうための、消費者としての選択のようなものだと考えれば良いのではないかと思うのです。

立憲民主党ブーメラン

そんな立憲民主党といえば、「話題」の提供には事欠かない政党です。

ただし、ここでいう「話題」は、必ずしも良い意味であるとは限りません。やはり、その醍醐味は「ブーメラン」にあります。

直近、私たち一般人の多くを驚愕させた話題といえば、年明けすぐに「炸裂」した「CLP問題」でしょう。

これは、立憲民主党が『Choose Life Project(CLP)』というメディアに対し、総額で約1500万円の資金を渡していたとされる問題のことです(『ブーメランの名手?立憲民主党巡る広報業務委託費疑惑』)。

ここでポイントは2つあります。

1つ目は、立憲民主党自身が「Dappi問題」、すなわちツイッター上で立憲民主党などに対し批判的なツイートを繰り返していたアカウントが「自民党によるネット世論工作の一環だ」とする疑惑を追及してきた立場にある、という点です。

立憲民主党自身が「メディア」に対し、何らかの資金を渡していたという事実が判明した時点で、立憲民主党が「Dappi問題」を偉そうに追及する資格があるのか、極めて疑問でもあります。

その意味では、まさにこの「CLP問題」は、「立憲民主党ブーメラン」が健在である証拠に思えてなりません。

闇深きダブルスタンダード

ただ、この「CLP問題」から次に、2つ目が「ダブルスタンダード問題」でしょう。

このCLP問題自体から派生し、立憲民主党が提出している政治資金収支報告書の記載を調べていくと、「ブルージャパン株式会社」という、世間ではあまり知られていない会社に対し、「広報業務委託費」名目で、総額約9億円という広報業務委託費を支払っていた、などの疑惑も出て来ます。

それなのに、泉健太代表自身は14日の会見で、このCLP問題を巡って、「党としての説明は終了している」と述べる(『CLP問題巡り「党として説明は終了」=立憲・泉代表』参照)など、ろくに調査もせずにっさと幕引きを図っているという点でしょう。

もしも同じことを自民党がやれば、立憲民主党はそれこそ国会を空転させてまで、この疑惑を追及し続けるはずです(現実に、立憲民主党がコロナ禍の折、「もりかけ・桜」の追及で貴重な国会の質疑時間を潰したということを思い出しておく必要があります)。

このように考えていくと、立憲民主党には「自分に甘く他人に厳しい」、「自分で投げたブーメランが自分自身に突き刺さる」、といった特徴があると言わざるを得ません(『徹底して自分に甘い立憲民主党、政党支持率下落も当然』等参照)。

泉健太氏は昨年11月に立憲民主党の新代表に選ばれたばかりであり、当選直後に「原点は国民の皆さまに何をお届けするかということが大事」として、国民に対する説明、発信を強化すると述べたばかりです(『さっそく難しい舵取り迫られる立憲民主・泉健太新代表』等参照)。

これで立憲民主党が良い方向に変わるのかと、ほんの一瞬でも期待したことについては、正直、お恥ずかしい限りでもあります。

問題が多いインタビュー

小川淳也氏のインタビューがなかなか強烈

こうしたなか、代表選で泉氏と競った候補のひとりが、小川淳也・元総務政務官です。

その小川氏を巡っては先週、『ABEMA TIMES』がこんな記事を配信していました。

小川淳也議員「理想は“国民がほれぼれするような批判”」 立憲の立て直しに言及

―――2022/01/20 17:59付 Yahoo!ニュースより【ABEMA TIMES配信】

これがまた、なかなかに強烈です。

新たに代表となった泉健太議員も指摘する、国民の『批判ばかりの政党でうんざり』だという声。ただ、小川議員は『批判すること自体を恐れてはいけない』と語る。『野党の仕事の本質は“批判的立場から権力監視すること”なので、そこでひるんだり手を緩めたりするようでは野党の存在意義に関わります。野党も国民のために存在しているわけですから』」。

…。

このあたり、立憲民主党が国会の場でスキャンダル追及をしているという点への批判に対する同党の川内博史・前衆議院議員のインタビュー記事(『立憲民主党の前衆院議員のインタビューがなかなか凄い』参照)を読んだときと同じような衝撃を感じます。

まさかとは思うのですが、小川氏を含めた立憲民主党の議員は、国会議員の本来の仕事のひとつが「法律を作る」ことにある、という点を、きちんと理解していない可能性があります。

いや、もちろん、国会議員には国政調査権がありますし、政府のさまざまな政策に関し、批判的立場から検証することが期待されていることは事実です。しかし、あくまでもそれは「より良い国家を作るため」の権限であり、スキャンダル追及、揚げ足取りで終わってしまっては困ります。

財務省の増税原理主義や、総務省・NHKの電波利権、文科省の私立大学許認可利権など、本来、「批判的に」追及していただきたい論点はいくらでもあるのですが、大変残念ながら、著者自身には「野党が批判的追及を通じて具体的な法案提出に至った」という事例は、あまり記憶にありません。

「理想は国民がほれぼれするような批判」

ただ、こうした点もさることながら、『ABEMA TIMES』の記事の続きを読むと、思わず開いた口がふさがらなくなる、という経験をすることができます。

最低限、相手に対する敬意は失わないように、礼節を守ったうえで(批判したい)とは思っています。理想は“国民がほれぼれするような批判”。動機の部分もそうだし、内容もそうだし、礼節やルール、マナーもそう。不快さや不愉快な感じがする批判はできるだけ軌道修正して、“国民がほれぼれするような批判”をしてこそだと思います」。

「国民がほれぼれするような批判」!

これもまた斬新な表現です。

正直、立憲民主党に対して向けられている、「批判ばかりで具体的提案がないこと」、「他人に厳しく自分に甘いというダブルスタンダード」という批判に対する答えにはなっているように見えません。

実際、『Yahoo!ニュース』の読者コメント欄を見ても、「国民がほれぼれするような提案をしてほしい」、といったツッコミが複数の読者から寄せられているほか、「国民がほれぼれするような批判をするなら、福山前幹事長や、彼を処分しなかった泉代表に対して批判したらどうか」、といった反論も寄せられているようです。

野党共闘は有権者の選択肢を奪う行為

こうしたなか、この「国民がほれぼれするような批判」というくだり以外にも、この記事には「見どころ」がもう1箇所あります。

それが、日本維新の会が(小川氏の地盤である)香川1区への候補者擁立を決めた際、小川氏が維新の幹部らに候補擁立を取り上げるよう直談判した、という行動に関するものです。記事によると、この直談判を巡り、小川氏は次のように述べたのだとか。

そうはいっても、維新から共産党まで野党は一本化すべき。一本化することが望ましい。なぜなら、それが自民党にとって一番の脅威となるから。そういう野党であるべきだし、“ありたい”という思いが強いんです」。

これ、先ほどの「食堂街理論」に基づけば、消費者から食堂という選択肢を奪う行為そのものです。つまり、野党の選挙協力は、正直、私たち有権者にとっては選択肢を奪いかねないものでもあり、その意味では民主主義を破壊しかねない行動でもあります。

小川氏のいう「自民党にとって一番の脅威となるから、維新から共産党まで野党は一本化が望ましい」という発想は、まさに「有権者の選択肢を保証する」という視点が完全に欠落したものだと言わざるを得ないでしょう。

ただ、そもそも論ですが、選挙協力自体が有権者から嫌気されている、という可能性はないのでしょうか。

実際、昨年10月の総選挙で選挙協力を行った野党のうち、議席を増やしたのは「れいわ新選組」くらいなものであり、社民は横ばいで立憲民主党や日本共産党は議席を減らしたのに対し、野党の選挙協力から距離を置いた日本維新の会、国民民主党が議席を伸ばしました。

また、連合は選挙前に、芳野友子会長が「日本共産党との選挙協力はあり得ない」と述べ、立憲民主党を強く牽制していた(『連合新会長が立憲民主に「共産と閣外協力あり得ない」』等参照)ことも思い出しておく必要があるかもしれません。

このように考えていくと、「選挙協力」には、「野党の共倒れを防ぐ」という効果もあるのかもしれませんが、選挙協力をすれば支持母体や有権者の反発を招くという副作用もあるのかもしれません。

あるいは、「貧すれば鈍す」、でしょうか。

時代の変化に気付かない人たち

現代社会はインターネット環境の普及により、新聞、テレビを中心とするオールドメディアの社会的影響力が急速に弱まっています。そして、インターネット化社会では、私たち一般人は情報を「受け取る」だけでなく、「発信する」こともできるようになりました。

昨年の衆院選は、オールドメディアに深く依存した立憲民主党が勢力を後退させたという意味では、まさに画期的な出来事だったと思いますが、今夏の参院選では、こうした傾向がさらに続くのかどうか、気になるところでもあります。

そして、小川氏のインタビューを読む限り、既得権益にドップリと浸かっている人たちは、「時代の大きな変化」に、まだ気づいていないのかもしれない、などと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. だんな より:

    これが代表になっていれば、もっと面白かったでしょう。

  2. 元ジェネラリスト より:

    左巻の界隈が食べて行けている構造には関心があるので、ブルージャパンと秋元氏の話が怪情報として出てきたときには、おっと思いましたが、大手マスコミの支援なしにどこまで迫れるでしょうかね。

    小川淳也氏はプライムニュースで2回ほど喋ってるのを見ましたが、質問をはぐらかして自分の言いたいことをいうだけで、相手の知りたいことに答えようという姿勢はなかったですね。シタリ顔でいかにも分かってる風に喋る技術ばかり磨いてきた「痛い人」の印象です。マジメな表情がキモいです。
    その点では泉氏はまだマシでしたが。まあでも言っていいことと悪い事の区別がつかなのでダメですけどね。

    以上、予断と偏見に満ちたしょうもないコメントでした。

  3. より:

    「国民がうんざりするような質問」「国民から嘲笑される質問」しかしたことのない政党の人間が「理想」を語ったとて、それ自体が嘲笑の種でしかないことにすら気づかない/気づけない人たちの集まりなのだからこそ現状があるということを、小川氏が理解する日はけしてこないのだろうななどとしみじみ思う今日この頃なのでした。
    かつて、55年体制などと呼ばれていた頃、自社両党は表面的には激しく対立しているようなフリをしながら、裏では手を握り、なあなあでやっていましたけれども、現代のリベラルを詐称する連中はその程度の知恵すらないんでしょうね。

    1. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

      理想と現実が違うのはよくあること

      1. より:

        現実を省みない”理想”を妄想というのだよ。

  4. ナニガシ より:

    国民が惚れ惚れするような批判とは、立民の場合、自己批判だと思います。

  5. 七味 より:

    野党の仕事の本質かどうかはともかくとして、
    >“批判的立場から権力監視すること”
    自体は否定するものじゃないと思うのです♪

    ただ、彼らの批判が「非を認めろ」「そのための証拠を出せ」に留まってるから、真っ当な「批判」になってないと思うのです♪

    「総理が怪しげな行動をしても、言を左右して非を認めない」から「追求の手を緩めるわけにはいかない」とでも考えてるのかもだけど、だったら「怪しげな行動ができないようにするには、どうしたら良いのか?」ってことを提案、議論すれば良いと思うのです♪

    あと野党の方も議員である以上、間違いなく「監視されるべき権力」の側にいるのに、そのことを都合良く忘れまくってことが、ほれぽれできない原因のひとつだと思うのです♪

  6. 無病息災の男 より:

    彼らの目指しているのは、「二番じゃ、駄目なんですか」とか、「疑惑の総合商社ですよ」のような批判でしょう。
    つまり「国民がほれぼれ」ではなく、「マスメディアに取り上げてもらえる」批判でしょう。

    安倍政権の頃『有権者の多く、特に若年層は「森友・加計問題」のようなスキャンダルに関心が薄いので、いつまでも同じ様な批判を続けている野党に嫌気がさしている。そして「そんな野党には投票しない」と思っている人が増えて、野党の支持率低下を招いている』というようなことを書いておられる評論家がおられました。 
    立憲民主党は、過去に学ばず、変わることのできない政党です。

    立憲民主党に一句
    おもしろうて やがて虚しき選挙かな

  7. 犬HK より:

    さすが、政権批判することを党是とする立憲共産党らしいお花畑発言ですね。

    支援組織である連合から「共産と連携や協力をする候補者は支援しない」との方針を打ち出されるのも仕方ないですな。

  8. 通りすがり より:

    なぜ立件共産党にはこういう「議員云々以前に人としておかしい」輩しかいないのだろうか。
    ほぼ全員がいい歳こいたおっさん(小川は50過ぎ!)やおばさんばかりなのに、なにゆえこうも一般的な常識や規範が悉く欠落しているのか理解に苦しむ。

  9. 一之介 より:

    解ってはいましたが、この政治集団は、どこぞの国同様に
    本当に救いようが無いと思いますね。日本国にとって
    害悪以外の何者でもありません。最近、最高顧問とか言う
    人が平気でヒトラーを持ち出して公党を批判していましたが
    只々呆れるばかりです。恥を知らない姿勢もどこぞの国と同じです。

  10. カズ より:

    >「理想は国民がほれぼれするような批判」

    普通に考えれば、”批判と代案”はセットで提示されてこそ意味を為すものだと思うのです。
    国会議員の役目は「公共の福祉(みんなの幸せ)の実現」であって、倒閣なんかではないはずなんですけどね・・。(◞‸◟)

    *いつまでも「”口撃”が最大の防御」なんてのが地であってはいけないのに・・。

  11. 宇宙戦士バルディオス より:

    https://twitter.com/mi2_yes/status/1485498949478027266
    >【実態と合わない】立憲民主党・泉健太「もう敵基地攻撃能力なんて言う言葉はやめたほうがいい。実態と合わない。相手に打撃を与えたから沈黙する何てことはあり得ない、その後に総反撃を受ける」
     立憲共産党、本日も異状なし。

    1. 門外漢 より:

      >その後に総反撃を受ける

      だから、始めから頭を下げとけって、言いたいわけですね。お花畑的平和主義の実体をよく表していると思いました。
      敵基地攻撃能力とは、敵にそう思わせるのが抑止力になるという考え方なので、中朝韓に「日本に向けて打つと、その後に総反撃を受ける」と思わせる所に妙味があるんです。
      だから、持っているだけで実際に攻撃しなくても良いので、これこそ平和主義の目指すところじゃないんでしょうかね。
      立憲の立ち位置がどちらなのか、よく判ります。

  12. がみ より:

    極めて極端な裁定も伴う、ほれぼれするような自己批判なら喜んで聴いてやる。

  13. WindKnight.jp より:

    「理想は国民がほれぼれするような批判」なんて、芸人の仕事なんだけどねぇ。
    立憲民主党は自らが、芸人集団であることを認めるのでしょうか?

  14. りょうちん より:

    てか、まともな議員立法のひとつでもしてみろってんだよ…。
    まあ無理だろうけどwww

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