慰安婦合意で振り返る「岩盤支持層を敵に回すリスク」

「慰安婦合意の当時、官邸には抗議が殺到していた」=朝日新聞

当ウェブサイトで数日前、姜昌一(きょう・しょういち)氏の駐日韓国大使としての信任状捧呈式を話題として取り上げました。この問題点は、日本の国民感情に照らし、この人物を天皇陛下の御前に立たせることの是非にあったわけであり、こんなことを続けていれば、菅義偉政権に対する岩盤支持層が離反していく事態も懸念されます。ただし、似たような事例は安倍政権下でもありました。それが、2015年の日韓慰安婦合意です。

総合的な見方こそが大事

安倍政権の2822日をどう見るか

普段から当ウェブサイトで申し上げているとおり、何事も大切なのはバランスであり、そして一面的ではなく総合的な見方です。

安倍晋三総理は2012年12月26日に再登板して以来、2020年9月16日に辞任するまでの間、じつに3回組閣し、連続で2822日間在任しました。これは、1964年11月9日から1972年7月7日まで、3階の組閣で2798日連続で在任した佐藤栄作政権を抜き、史上最長です。

また、安倍総理は2006年9月26日から2007年9月26日までの366日間、第1次内閣を組閣していましたので、この366日を合算した連続在任日数は3188日で、これも桂太郎の2886日を抜き去り史上最長です。

正直、現代の日本でここまで長期間、安定して内閣総理大臣を務め続けたこと自体、快挙と言って良いでしょう。しかも、メディア各社が全力で安倍政権を倒そうと、「もりかけ問題」を含めたさまざまな冤罪をでっち上げてきたにも関わらず、です。

ただ、残念ながら、安倍総理自身は昨年春先以降、連続して休みなく執務し続けなどのコロナ禍の対応が祟ったのでしょうか、持病の潰瘍性大腸炎が再度悪化したとして、昨年秋に内閣総理大臣を自任してしまいました。

これについては、あえて批判を覚悟で申し上げるなら、機が到来するならぜひ、5度目の組閣を願いたいものだと思っています。

外交・安全保障分野での顕著な事績、経済失策

ただし、当ウェブサイトとしては、この8年弱の安倍政権について、100%、是認するつもりはありません。

安倍政権下では、外交、安全保障などの分野において顕著な業績があったことは事実であり、とくに安倍総理が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)は、いまや米国やインド、オーストラリアやG7(除く独伊)などを動かし、日本の外交的な地位を飛躍的に高めています。

その反面、2度に及ぶ消費税等の増税は、現在に至るまで日本経済を大きく痛めつけていますし、財務省が「目標」と騙っている「財政再建」とやらも、却って遠のいています。

当たり前でしょう。

消費活動が委縮し、経済が大打撃を受け、そのことが国民の所得、企業の業績などを押し下げることを通じ、所得税や法人税などの税収にも悪影響を与えるのですから。

あるいは、家計、企業などの経済主体がカネを使わなくなるため、経済を下支えするためには国債を発行して財政支出を繰り返すしか方法がなくなるわけです。

その意味で、現在の日本経済は、雪山で遭難し、凍傷になりかかっている人の体を、「熱を出したら困る」という理由で一生懸命冷やしているようなものでしょう。

ただし、2013年に日銀総裁に任命された黒田東彦氏が始めた異次元緩和の影響で、失業率が史上最低水準にまで下がった効果については、安倍政権の間接的な功績にカウントしなければ不公平でしょう。

(※なお、「なぜ金融緩和をすれば失業率が低下するのか」については、専門的にはフィリップス曲線の議論と関わってくるのですが、詳しくは拙著『数字でみる「強い」日本経済』などでも議論しましたので、ご参照くださると幸いです。)

ただ、「国民の敵の総本山」である財務省をやっつけることができず、消費税の2度にわたる増税も阻止することができなかった時点で、安倍総理は「アベノミクス」で意図された「日本経済を取り戻す」の公約において、十分な成果を上げることができなかった、と(暫定的に)結論付けて良いと思います。

(※もっとも、これには、副総理兼財相として安倍政権下で力を保持していた麻生太郎総理の責任も非常に大きいのだと思いますが…。)

「1かゼロか」ではなく…

こうしたなか、自戒を込めて申し上げたいのは、「1かゼロか」という議論の危険性です。

上述のとおり、当ウェブサイトなりの主観的評価に基づけば、安倍政権は外交、安全保障などの分野において、歴代政権が成し遂げられなかったほどの顕著な事績を上げた反面、アベノミクスは金融政策一本足打法で、じつに中途半端なものに終わりました。

では、安倍政権は「不合格」なのでしょうか。

安倍晋三総理は万死に値する人物なのでしょうか。

「100点満点を取ることができなければ不合格」という立場を取る人であれば、間違いなく、安倍政権は不合格です。しかし、「50点でも合格」という立場の人からすれば、安倍政権はもしかしたら「合格」なのかもしれません。

個人的に、「合格」だ、「不合格」だというデジタルな表現を使うのは嫌いですが、敢えてこの「合格」「不合格」という表現を使うなら、安倍政権は間違いなく「合格」でしょう。外交・安全保障面での事績が顕著である、というのがその最大の理由です。

また、こんな見方もできます。

現在の日本が抱えるさまざまな課題のなかから、最も喫緊のものを選び、それに全力で対応したのが安倍政権だった」。

どんな政権であっても「全方位を敵に回す」ことはできません。中国や北朝鮮などのの国際的な脅威に対処しつつ、国内的に財務省を敵に回すというのは、非現実的でもあります。

なにせ、財務省は国のサイフの入口(国税庁)と出口(主計局)を同時に握り、官庁の中でもトップクラスの政治的権力を握る組織です。その実質的権力は並の国会議員を遥かに上回っていますし、ちゃんと理論武装しなければ、国会議員といえども勝つことはできません。

このように考えれば、(やや安倍政権に甘い見方をすれば)麻生総理が財務省をしっかりと掌握し、財務省の代弁人のふりをして、消費税の増税を可能な限り延期させつつ、安倍総理は得意の外交分野でしっかりと国益の確保に尽力した、というのが安倍政権の事績だったのかもしれません。

(※余談ですが、外務省『総理大臣の外国訪問一覧』のページによれば、安倍総理の外国訪問は80ヵ国・地域、延べだと176ヵ国・地域に達し、訪問回数も81回だったそうです。)

もし鳩山由紀夫政権が8年続いていたら?

安倍政権に対する評価はさまざまだとは思いますが、安倍政権下で日本の国益がどう「最大化」されたのかを思い出すならば、安倍政権の8年弱は決して日本にとって悪いものではなかったというのが総評ではないかと思うのです。

あるいは、別の見方をしてみましょうか。

もし2012年12月26日から2020年9月16日までの2822日間、内閣総理大臣を務めていた人物が、同じ自民党でも安倍総理ではなく、石破茂・元自民党幹事長だったら、日本はどうなっていたでしょうか。

あるいは、民主党政権が継続し、鳩山由紀夫元首相が8年弱、首相を務めていたら、日本はどうなっていたでしょうか?菅直人元首相なら?野田佳彦元首相なら?

その答えは、あえて提示しません。

選挙に関する誤解

この点、普段から申し上げているとおり、日本の政界を「寂れた商店街」にたとえるならば、自民党は品揃えも品質も悪くて値段も高い小売店舗のようなものでしょう。

いちおう、「自民党スーパー」のチラシには「雇用の拡大」だ、「ニッポンを取り戻す」だの目玉商品も印刷されているのですが、「セクシープラスチック」のように、どう考えても「目玉」ではない商品を押し付けて来ることもあります。

これに対し、「立憲民主党スーパー」は店頭ののぼりでも配布するチラシでも、自店の「目玉商品」ではなく、「自民党の悪口」ばかりを印刷して配っている、典型的な「ダメスーパー」でしょう。

少なくとも自民党スーパーに行けば、高くても最低限、生活に必要なものは買えますが、立憲民主党スーパーでは欠品や不良品ばかりで、しかも返品もできないという状況だと考えてみましょう。自民党スーパーに不満はあっても、結局、人々は自民党スーパーで買い物をするしかありません。

そして、選挙とは、「素晴らしい候補者たちのなかから、自分の理想とする候補者を選りすぐって政治を託す手続」ではありません。「生ごみの中から一番マシな生ごみを選ぶプロセス」だと考えていただいた方が正確です。

こんなことを書くと、決まって「そんな生ごみを選ばされる有権者の立場にもなってくれよ」、といった反応も出てくるわけです。

こうした不満は当然のものではありますが、これも結局「鶏と卵」の関係であり、有権者がちゃんと投票しないからこそ、組織票に強い政党などから国会議員らが選ばれてしまうのです。

だからこそ、有権者が立ち上がり、数年単位、いや、数十年、下手をすると百年という単位でちゃんと「よりマシな候補者」に票を投じ、本当にどうしようもないゴミ政党のゴミ候補者を落選させ、少しずつ、少しずつ、政界を浄化していくしか方法はないのです。

こうした視点から再評価するならば、安倍晋三総理大臣は間違いなく、現在の日本が生み出せる最高の総理大臣だったと、個人的には信じている次第です。

岩盤支持層を敵に回す

なぜ姜昌一氏を大使として接受したのか

さて、先日の『【速報】姜昌一氏が天皇陛下に信任状捧呈、正式大使へ』では、韓国の姜昌一(きょう・しょういち)駐日大使の天皇陛下への信任状捧呈式が「行われてしまった」という話題を通じ、菅義偉総理大臣に対する失望を表明しました。

あたりまえです。

この姜昌一氏という人物は、韓国の現職国会議員として初めて、北海道国後島に(日本政府の許可を得ず)ロシア政府の許可を得て上陸したという、いわくつきの人物だからです。

しかも、上陸した時期は2011年5月24日、日本が東日本大震災の後遺症から癒えていないなかで強行され、上陸した名目は「独島」(※韓国が不法占拠中の島根県竹島を韓国側が勝手に呼ぶ名称)の実効支配の確保、などとしていました。

これだけでも、日本政府は姜昌一氏にアグレマンを付与すべきではありませんでしたし、日本国民の1人としては、今からでもさっさとペルソナ・ノングラータを発動して追放してほしいと思うほどです。

また、この姜昌一氏は私たちの大切な天皇陛下や上皇陛下のことを「日王」などと蔑んだことでも知られています。しかも、後日、その点を問われた際にも、次のとおり、なかなか驚異的なことを述べています(『「姜昌一大使が関係改善意欲の証拠」?噴飯物の主張』等参照)。

大学教授時代から私は、日本の国王は世俗的な政治権力の意味よりも宗教的側面があるため、日本語の通り『天皇(てんのう)』と呼ぶべきだと主張しており、実際に今もそのような立場だ。ただし政治家であるため、日王と呼んできた」

これは、『朝鮮日報』(日本語版)の昨年12月2日付『【独自】駐日大使内定の姜昌一氏「態度変えたのではなく、日本の偽ニュースに釈明」』という記事に掲載されていた、姜昌一氏の言い分だそうですが、本当に怒りを堪(こら)えるのも辛いほどの発言です。

こんな人物を、あろうことか、私たちの大切な天皇陛下の御前に立たせた外務省には憤りを感じてなりませんし、それを許した菅義偉総理や茂木敏充外相らは、いったい何を考えているのかと問い詰めたい気持ちでいっぱいになります。

これも是々非々の判断の積み重ねの結果である

ただし、これも先ほど申し上げた「1か、ゼロか」という論点と同じでしょう。

菅総理が少なくとも内閣の一員として、姜昌一氏の天皇陛下への信任状捧呈を許可したことは事実であり(※ちなみに大使の接受は閣議決定事項です)、この点については強い失望を感じる部分であっても仕方がありません。

しかし、それと同時に、ひとつ気に食わない点があったとして、それをもって全否定するというのは、明らかに行き過ぎです。このあたり、冷静にならなければならないのは、むしろ私たち国民の側、というわけです。

私たち日本国民は民主主義社会に生きており、その分、私たち日本国民がヒート・アップしてしまい、2009年8月のような選択をすると、今度はそれこそ本当に取り返しがつかないことになりかねません。

実際、民主主義国では有権者がヒート・アップし、過激な極論を唱える政党に多数を与えたことで、かえって国家存亡の危機を招いた事例はいくらでもあります(最近だと2010年代のギリシャやイタリアなどがわかりやすいでしょうか、機会があれば、いつか当ウェブサイトで詳しく議論したいと思っています)。

サイト主も人間ですので、姜昌一氏の大使接受に対しては強い憤りを感じていますが、少なくとも菅総理や茂木外相が辞職に値するかといえば、今回の件についてはそこまでではないと考えています(だからこそ先日の記事でも「菅(氏)は辞めろ」「茂木(氏)は辞めろ」とは書きませんでした)。

いずれにせよ、政治はきれいごとでは動きません。だからこそ、「あれはあれ」「それはそれ」で、我々は冷徹に判断を下さねばなりません。

おそらく今回の事例も、日韓外交について、是々非々で総合的に判断した結果の決断であったのだと信じたいと思う次第です。

「政権が国民感情を無視して良い」、という話ではない

ただし、やはり私たち国民にも、感情というものはあります。

頭では理解していたとしても、感情が受け付けない政策というのもは、いくらでもあるでしょう。最近だとワクチン接種を巡る混乱の影響で、国民のやり場のない怒りが菅政権に向けられているフシがありますが、これもその典型例だと思います。

(そして、一部の新聞、テレビについては、むしろこうした感情を積極的に煽っているフシがありますが、これについては「マスメディアの偏向報道」の一環という視点から、今後も機会を見て、積極的に問題提起していきたいと思っている次第です。)

このあたり、正直、難しいところでもあります。

政権としては、ときには国民が嫌がる政策をなかば強引に飲ませなければなりませんし、その過程でさまざまな社会的摩擦も発生せざるを得ないことがあります。

しかし、そのことは「国民感情など無視して良い」、という話ではありません。

国民感情に寄り添いつつも、その国民感情を逆なでせざるを得ない政策を押し付けるときこそ、その真価が問われるのです。

だからこそ、政権としては国民との対話にこそ心血を注ぐべきであり、この点が現在の政権にできているのかどうかについては微妙です(もっとも、政権と国民のコミュニケーションの仲介役が期待されているはずのマスメディアが、その役割を果たしていない、という点こそ、本来の問題点といえるのかもしれませんが)。

岩盤支持層を失望させた慰安婦合意

そして、「その政策について国民に向けてちゃんと説明せず、かつ、国民の多くを落胆させた」という事例がほかにもあるとすれば、個人的にはまっさきに、2015年12月28日の「日韓慰安婦合意」を挙げたいと思います。

日韓慰安婦合意は、安倍総理の指示に基づき、当時の岸田文雄外相が、当時の韓国の朴槿恵(ぼく・きんけい)政権下で外交部長官(※外相に相当)を務めていた尹炳世(いん・へいせい)氏と口頭で交わした合意であり、当ウェブサイトの文責で要点を抜粋すると、次のとおりです。

【参考】いわゆる「日韓慰安婦合意」(2015年12月28日)のポイント
  • ①慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感し、安倍晋三総理大臣は日本国を代表して心からおわびと反省の気持ちを表明する。
  • ②韓国政府は元慰安婦の支援を目的とした財団を設立し、日本政府はその財団に対し、政府予算から10億円を一括で拠出する。
  • ③韓国政府は在韓国日本大使館前に慰安婦像が設置されている問題を巡って、適切に解決されるように努力する。
  • ④上記②の措置が実施されるとの前提で、日韓両国政府は、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されたことを確認し、あわせて本問題について、国連等国際社会において互いに非難・批判することを控える。

(【出所】外務省HP『日韓外相会談』より著者作成)

この①の部分にある、「当時の軍の関与の下に」、の部分は、1993年8月4日に、当時の官房長官だった河野洋平が勝手に出した「官房長官談話」(いわゆる『河野談話』)にも含まれていた表現であり、べつに日本政府が新しく慰安婦問題で何らかの責任を認めたものではありません。

ただ、日韓関係に詳しくなく、何も事情を知らない外国人がこの記述を読むと、「ああ、そうか、日本政府は総理大臣の名前で謝罪したんだね」、「だから日本は戦争中に、悪いことをしていたんだね」、としか思わないでしょう。

事実、欧米では現在でも、「いわゆる慰安婦」(socalled comfort women)は「第二次大戦中に皇軍により性的奴隷とされた女性」(those women who forced into sex slavery by the Japanese Imperial army during World War II)とするウソが堂々と報じられています。

岸田文雄氏の①の発言は、まさにこの「慰安婦=性的奴隷」というウソを日本政府自身が払拭する機会を失わせたという意味で、極めて重篤でもありますし、また、こうした文脈で②を読めば、「日本が悪いことをしたから10億円を払うんでしょ?」と受け取られても仕方がありません。

文在寅政権に鉄槌を加えていないでしょ?

しかも、問題はほかにもあります。

まず、2017年5月に発足した文在寅(ぶん・ざいいん)政権は、同年12月にこの慰安婦合意を巡る外交交渉記録を、「日本政府の許可なく」、勝手に公表してしまうという暴挙に出ました。

次に、それだけでは飽き足らなかったのか、文在寅政権はこの合意に基づいて設立された財団を、日本政府の許可なく一方的に解散してしまいましたし、日本政府が拠出した10億円のうち残余部分については宙に浮いた状態が続いています。

そのうえ、③の部分、つまり韓国の側が負った、日本大使館跡地前の公道上に慰安婦像が設置されている問題を「適切に解決する義務」については、いまだに履行されていません。この点については、日本政府の国際社会に対する訴求が弱すぎる点でしょう。

あるいは、日本として韓国に対し、下すべき鉄槌を下していない、という言い方もできます。

そして、④については、韓国の康京和(こう・きょうわ)前外交部長官自身が堂々と破り、国連当国際社会の場で何度も何度も「日本軍性奴隷の問題」を提起していた事実を忘れてはなりません。

このように考えると、日韓慰安婦合意は結果として、安倍総理の謝罪と10億円を韓国に「食い逃げ」された合意だった、という見方もできます。

慰安婦合意の「本当の教訓」

朝日新聞「官邸に抗議が殺到」

いずれにせよ、「新宿会計士」自身を含めた古参の韓国ウォッチャーは、2015年12月の時点でこの合意を交わしてきたことに対し、ずいぶんと深く失望しましたし、安倍総理や岸田元外相らにも意見を伝えるためだけに、フェイスブックにアカウントを作って意見を書き込みました。

その失望は、姜昌一氏を天皇陛下の前に立たせた菅義偉総理に対するものの比ではありませんでした。

文在寅政権下で韓国がこの財団を解散してしまったときにも、正直、「そらみたことか」と思いましたし、韓国が慰安婦合意を破ったことに対する日本政府としての「目に見える制裁」が加えられていないことについても、本当に煮え切らない思いがしてならないのです。

さて、こうしたなか、当ウェブサイトに最近、読者コメントを寄せてくださる「ぬくぬく」様という方から、こんな記事を教えていただきました。

慰安婦合意、警戒した安倍氏 前夜も念押し「大丈夫か」

―――2021年5月21日 7時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より

これは、朝日新聞に先週金曜日付で掲載された記事です(ただし、有料読者限定版のため、有料契約をしていない場合には、途中までしか読むことができません)。

無料で閲覧できる部分には、こんな趣旨のことが書かれています(原文の意味を変えない範囲で、記述、順序等を変更しています。なお、登場人物の敬称が略されている点については原文ママ)。

  • 慰安婦合意当日、米国の大統領補佐官のスーザン・ライスはこれを歓迎する声明を発表し、国連なども歓迎した
  • だが、みずからの支持基盤である保守層からの抗議が官邸に次々と寄せられた
  • 12月28日の当日、安倍晋三は周囲に「官邸に抗議のメールが大量に届いているんだ。こんなことは、官邸始まって以来だよ」とこぼした

…。

報じたメディアがメディアだけに、この記述を100%信頼して良いのかについては、やや慎重に判断すべきかもしれません。ただ、「官邸に抗議メールが続々と届く」という点については、この朝日新聞の報道だけでなく、ほかにいくつかの証言なども存在しているため、事実と考えて良いでしょう。

当時の仮説と結果論

ここで、当時の手元メモをベースに、「なぜこのような慰安婦合意が交わされたのか」に関する3つの仮説を振り返っておきます。

  • ①首相官邸内に裏切り者がいた
  • ②安倍総理なりのかなり深い考え方があった
  • ③米国の圧力

このうち①について、「裏切り者」とは過激な表現ですが、要するに、「安倍総理を騙し、この合意ですべての問題が解決するかのように入れ知恵をした者」、という意味でしょう。当時の手元メモによれば、「首相官邸内に『裏切り者がいる』」などの見方を示していた人もいました(その情報の真否はともかくとして)。

また、③についても、実際にそのような動きがあったことは間違いありません。事実、この約半年後、当時の副大統領だったジョー・バイデン氏(現大統領)が「私が日韓の離婚調停役を務めた」などと語っているのがその証拠でしょう。

ただ、①のような「裏切り者」(?)とやらがいたとしても、③のような米国の圧力があったとしても、最終的に決断したのは安倍総理本人であるはずです。(個人的主観に基づけば)安倍総理自身、入れ知恵や圧力で考えを決める人物ではないことは間違いないからです。

やはり、②が真相に近いのではないか、というのが、「新宿会計士」の2015年12月28日時点の見解だった、というわけです。

「結果的には大成功」という側面も「あるにはある」

結論的に言えば、おそらくこの②の考え方が正解に最も近かったのではないでしょうか。

つまり、後講釈ですが、2015年12月の日韓慰安婦合意は、その後の2016年7月8日の在韓米軍への高高度ミサイル防衛システム(THAAD)配備決定、同年11月23日の日韓GSOMIA(※)署名に連なっているからです。

(※「日韓GSOMIA」の正式名称は『秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定』)

余談ですが、個人的に少しだけ後悔している点があるとすれば、日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏の論考を、当時から読み込んでいたならば、もっと早くその見解に辿り着いていたはずなのに、という点です。

ただ、安倍総理がこの合意を推進したことで、結果的に「日米韓3ヵ国連携」がうまく回転し始め、米国の信頼を獲得することもできたことは間違いない事実でしょう(といっても、朴槿恵氏の弾劾裁判が始まったことで、「うまく回転」し始めた状態は、たった1年少々で頓挫してしまった格好ですが…)。

そして、韓国がこの合意をいとも簡単に破ったことで、日本はいわば、「せっかく国内の反発を押し切って交わした合意を破られた『被害者』」というポジションを得た、という言い方もできます。

韓国は今後も、この問題を何度も蒸し返そうとするでしょうし、今年1月8日の「主権免除違反判決」もその蒸し返しの試みのひとつといえるかもしれません。しかし、日本としては「まずは合意を守れ」「話はそれからだ」と言い返すことができます。

その意味で、結果論かもしれませんが、韓国が今後、慰安婦問題を巡って何を言ってきたとしても、「まずは合意を守れ」と言い返せば済むようになったからです。あるいは、慰安婦問題を韓国の「国内問題化」することに成功した、と言うべきでしょうか。

説明が何より大事

以上より、この日韓慰安婦合意、あらためて振り返っておくと、当ウェブサイトとしては次のように総評したいと思います。

日本の名誉と尊厳を傷つける慰安婦問題が虚偽であると日本政府自身が主張する機会を喪失させた反面、短期的には日米韓3ヵ国連携を機能させるとともに、結果的には韓国自身がこの合意をいとも簡単に破ったことで、日本は『合意を破られた被害者』のポジションを得た」。

とくに、最後の部分、「どうせ韓国は約束を破る」と見越して合意を仕込んだのだとすれば、安倍総理はそれなりに老獪な人物、という評価もできるでしょうが、個人的にはこの部分についてはあくまでも「結果論」に過ぎないと考えています。

しかし、政治は結果がすべてです。

ある政策について事後的に評価する際にも、「どのような効果を意図していたのか」という視点だけでなく、「結果的にどうなったか」という視点も重視しなければなりません。

そのような観点からは、慰安婦合意は結果的には「韓国のウソを日本が丸呑みした」という負の側面もさることながら、「日本が誠意を尽くし、米国が重視する『日米韓3ヵ国連携』のために骨を折った」、「韓国がその誠意を踏みにじった」という実績を作ったという意味もあったのです。

くどいようですが、当ウェブサイトとしては「ありもしない慰安婦問題を日本政府が認めてしまった」かに見える日韓慰安婦合意を全面的に評価することなどできませんが、その後のさまざまな展開も踏まえるなら、「全否定」すべきものでもないと考えているのです。

ただし、慰安婦合意の前後における首相官邸からの「説明のなさ」、「配慮の足りなさ」については、やはり大きな問題だったと考えられますし、このような行動を続けていけば、岩盤支持層を敵に回すような事態も生じていたかもしれません。

その意味で、慰安婦合意の本当の教訓とは、難しい問題であればこそ、総理大臣自身がちゃんと国民に対し、その意図を説明して理解を求めることが極めて大事だ、という当たり前の結論に帰結するのでしょう。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 愚塵 より:

    慰安婦合意の意図が「米国が重視する〔日米韓3ヵ国連携〕の為に誠意を尽くして骨を折れば、韓国がその誠意を踏みにじる結果になる」ことを見越してだと説明すれば、誠意を疑われて、『合意を破られた被害者』のポジションを得ることができなかったように思われますが…
    https://shinjukuacc.com/20210526-01/#i-16

  2. はにわファクトリー より:

    未来を見通せる為政者、あるいは最終責任者、が不人気間違いなしの決断をしないといけないこともあります。事態はラウンドツーの段階に入ったと考えます。

  3. 名無しさん より:

    これは私の手落ちで初めて拝見しましたが「「大学教授時代から私は、日本の国王は世俗的な政治権力の意味よりも宗教的側面があるため、日本語の通り『天皇(てんのう)』と呼ぶべきだと主張しており、実際に今もそのような立場だ。ただし政治家であるため、日王と呼んできた」。(『朝鮮日報』)」
    これって日本国民よりも韓国国民をバカにした発言ですよね。或いは日本(≒学問)と韓国国内(≒世間)の使い分けで方便を駆使して来たと公言すると言う方便の告白。韓国で政治と言うのは大衆愚民にウソを吐く事だと(まぁ「宗教の役割」も言い方がおかしい。外来文化と帝国主義への抵抗の仕掛けとしての独立自尊の国家権力の権威づけなのですが。そして朝鮮人が民族意識に目覚めた時に渇望したのが日本の天皇の様な独立自尊の国家権力の権威で、朝鮮半島のどこを見ても歴史的に何処を遡っても内なる権威が無い。それで日本の天皇を貶めてみようとするわけなのですが)。
    こんな政治と学問の使い分けを韓国国民が許すのか?それとも「韓国国民の総意として天皇陛下を戴きたい」みたいな本音と「自国に天皇陛下が居ないから悔し紛れで天皇を貶める」と納得してやって居る事なのか? 【曲学阿世】と言う言葉が浮かびました

  4. トトちん より:

    いつも新宿会計士様の論説で納得して怒りを少し抑えることができました。
    韓国駐日大使の件で内閣府に何度もメールして抗議しました。無力感いっぱいのところ、昨日内閣府より御意見受領が久しぶりに来て、見てくれてはいるのかと感じたところです。これからも色々な視点での論説をお願いします。

  5. だんな より:

    >、この合意ですべての問題が解決するかのように入れ知恵をした者

    記事に当時の岸田外相が、解決すると言ったと書いてありませんか?
    そして、不可逆的に解決したとの文言を加えて、ゴーサインを出したのが安倍前首相でしょう。

    慰安婦合意は、朴槿恵政権が日米側に擦り寄るための三点セットの一つです。
    結果としては、慰安婦合意は中朝工作員に利用され、朴槿恵氏の弾劾、逮捕、文大統領の誕生となりました。
    日米が韓国を中国側から引き戻そうした結果が、逆効果という事です。
    韓国は、国内問題を解決出来ず、周辺国に解決してもらおうとします。しかしながら、韓国国内の葛藤の一方の解決は出来ても、もう一方の解決は出来ずに悪化する事態になり収拾する事が出来ない好事例です。
    今でもワクチンスワップに代表されるように、周辺国に解決を求めます。米韓首脳会談の結果として中国から制裁されれば、アメリカに補償して欲しいというでしょう。
    これを相手にしても、韓国国内の問題は一時的な解決にはなれど、本質的な解決になりません。
    理由は、韓国人の価値観に有り、それを問題視する事は無いので、問題は悪化する事こそあれ、解決する事は無いのです。
    という事で、関わる限り損をしますので、非韓三原則が重要だという事で、ここまでは、理解してくれる人は多いと思います。
    それに加えて朝鮮人は助けられても感謝せずに、「恨」が増えるという特性が有ります。
    日韓併合時代の日本からの投資を「日本から収奪された」と主張するのが、典型的な例でしょう。
    多くの外国は、この「恨」を理解出来ずに韓国と関わり、不利益を被ります。唯一宗主国様は、「恨」を理解し、適当な距離をとった朝鮮との関わりで、利益を上げる事が出来ていると思います。

    変な話になってしまったニダ。

  6. めがねのおやじ より:

    姜氏を何故大使に承認したのか、また何故後回しになったのか、怪我以外での説明ぐらいは事務方トップの方で、していただきたかったです。

    慰安婦合意は姜氏に比べるも無く、日本政府として取るまじき行動と思いました。「やはり日本は折れたか」と。情けなく思い、特に石田外相に対しては憤りを覚えました。

    結果として、韓国側がそれ以後何度も合意を踏みにじり、逆に日本が被害者として逆転出来た事は、相手が調子こき過ぎたからです。

    私も大使認証当日はハラが立ちましたが、菅義偉総理を非難したり、退陣を要求したりはしません。選挙で投票しないとも言いません。トータルで日本の進路が間違っていなければ良いです。

    朝鮮は日本にまとわりつく死神です。何百年もやってます。直接関わらず、でも干上がるように、出来れば貧国になり、モノを言えないほど痛めつけるべきです。

  7. 農民 より:

     慰安婦合意で憤ったのが日本国内の岩盤支持層であるように、慰安婦合意を喜んだ海外の人間もまた”岩盤反日層”なのだと思います。それ以外はそれほど興味を持っていないような。
     私は当時から慰安婦合意肯定派です。勿論、日本が悪いから謝ろう!などではなく、履行しようがしまいが、アメリカを引き込んだ上で”所謂慰安婦問題”自体を無力化させられると思ったからです。”実用的だから”と言うところでしょうか。
     新大使ににしても、心底不快な人物ではありますが、明らかに能力もなく日韓関係を”進めて”くれそうなので、むしろコレも良いかと思っています。
     日本国の名誉、公式見解の外部から受け止めという点を重視するならば外交敗北とすら表現できるのは理解しますが、実害はそこまであるのか。日本国の評価が下がったというならば、FOIPまわりの現状が、それらを埋め合わせるに足るに思います。逆に言えば、慰安婦合意や新大使受け入れによって「日本国は信用できぬ」となって、ハシゴを外されるような事態にでもなれば=実害があったとすれば、大失策であったと判断します。

    1. 農家の三男坊 より:

      農民 様
       >「日本国は信用できぬ」となって、ハシゴを外されるような事態にでもなれば=実害があったとすれば、大失策であったと判断します。

      まだ、「日本国は信用できぬ」とは成っていませんが、下記例を見ると「日本国に無礼・不義理を働いてもどうとでもなる」となっていると感じています。
      ・中共の数々の振る舞い
      ・韓国の数々の振る舞い
      ・北朝鮮の数々も振る舞い
      ・ロシアのサハリン2油田PJ反故、北方四島問題への対応
      ・インドネシアの高速鉄道PJの中国への乗り換え
      ・ミャンマー軍事クーデターでのノーグリップ

      これ等の国(除く北朝鮮)へのODAはドブに捨てたようなもの。

      これに、ミャンマー国民の期待に応えられない今の状態は
      「日本国は頼りにならない」国になりつつあります。
      今後FOIPにも悪影響が出る、と懸念しています。

      1. 農民 より:

        農家の三男坊 様
         挙げられた例の連中は元々がそういった振る舞いですから、昨今の日韓でのやり取りに起因するものではないと考えます。ODAの性質も大本から問題ありですしね……
         ただ話を戻しますと、慰安婦合意はアメリカが梯子を外せない構造をとった部分を評価しています。もとの発言の趣旨としては、クアッドや英仏といった主要国を引き込んでいる現状こそが悪影響の低さを示し、”これ”を崩される要因にでもなれば問題だ、という方向性です。
         ただ、仰るようにミャンマーに関連した事態というのは悪い要素になりえますね。日本国にどこまで責任があるのかというところはありますが、外交は綱引きもありますし……

      2. 農家の三男坊 より:

        日本のミャンマー外交に関してとんでもないことが起きているようです。
        https://agora-web.jp/archives/2051634.html
        問題の論文の原文はこれです。
        https://thediplomat.com/2021/05/on-myanmar-japan-must-lead-by-example/
        なんかとんでもない亡霊が出てきたようです。もしこれが本当なら(日本ミャンマー協会に大使が入っているので多分本当)日本の外交はとんでもない状態と思います。

  8. パーヨクのエ作員 より:

    いつも知的好奇心を刺激する記事の配信ありがとうございます。

    日韓関係は米中関係及びアメリカの世界覇権戦略に従属しており、アメリカの世界覇権戦略はダブルスタンダードでご都合的な稚拙なモノですので、日本をアメリカに復讐できない様に成長を抑えてかつ中国の成長を抑制しつつ中国からの多大のお金をアメリカが一人勝ちで得たいというアメリカの要求にどう応じるかを真剣に検討し無くてはいけません。

    日本が国力のより一層の衰退を加速するように消費税率を何倍も引き上げる必要があるでしょうし、アメリカが日韓まとめて核兵器の炎で焼き尽くせるように韓国を優遇し、韓国の下から抜け出し不可能にして序列が上がったと誤解した韓国がアメリカが必要な時に挑発に乗る様に彼らをホルホルさせないといけません。

    以上皮肉を書いて見ましたが、ガースーもミスタープレジデント殿も前任者と異なり何か戦略がある様に見えないのですよ。

    最悪両者中国に踊らされて上記の状況のように進んだ挙げ句、強大な中国と対峙してアメリカは「金の卵を産む鶏を殺してしまった」と後悔するかもしれないと思います。
    アメリカの都合でぼろぼろにされる日本は災難ですが(笑)。

    以上です。駄文失礼しました。

  9. より:

    2015年の合意については、合意発表当初から評価していました。最大のポイントは「最終的かつ不可逆に解決した」との文面を盛り込み、韓国に認めさせたという点にあります。
    もちろん、この案件を含め、過去の韓国との外交交渉に鑑みれば、この合意で韓国が静かになるなどと考えるナイーブな輩は外務省内にすらいなかったでしょう。しかし、この合意がアメリカの圧力の下で行われ、そして「最終的かつ不可逆的に解決」の文言がある以上、日本としては、韓国が合意を遵守すれば良し、例のごとく韓国側が合意を”反古”にしたとしても、アメリカの裏書があるので「合意を守れ」というだけで良いというポジションを得ました。日韓関係が日米関係の従属変数であるのと同様、韓国にとっても日韓関係は米韓関係の従属変数です。この図式が有効である限り、韓国は日本側の「合意を守れ」という要求に対して、合理的な反駁はできません。「国民感情ガァー」と言ったところで、「そちらの国内事情など知ったことか」と返されれば、それでオシマイです。
    このようなポジションを得ることができたのであれば、2015年の合意は日本の外交的勝利であると当時も考えていましたし、現在でもそう考えています。

    現在、欧米諸国などで、韓国製デマが広く浸透していることは、残念ながら事実でしょう。いくつかの要因があり、一つには宣伝戦の敗北があることに異存はありませんが、もう一つの要因にも目を向けるべきであると思います。
    それは、欧米諸国には、日本を貶めるような情報を歓迎し、信じたがる人々が少なからず存在するということです。直近では、昨年のダイアモンド・プリンセス号をめぐる欧米各紙の報道を思い起こしてください。欧米主要メディアは嬉々として「日本の失態/失敗」を報じていました。その直後からイタリアを皮切りにCOVID-19感染大爆発が欧州全域からアメリカにまで広がったためにそれどころではなくなりましたが、当時の欧米メディアは執拗に「日本の失敗」や「後進性」を報じていました。あの報道合戦を見て、欧米知識層の深層心理に今なお潜むある種の「エキゾティズム」を感じざるを得ませんでした。

    以上のように考えると、欧米諸国に浸透したデマを払拭するのは相当に困難であると言わざるを得ません。彼らは「暴虐な日本」を信じたいのですから。彼らが殊更に日本を標的にするのは、日本が欧米以外で初めて先進工業国になったことなどなどがあると思いますが、もっと精緻な議論が必要になるので、ちょっと先送りにします。
    なお、韓国製デマが浸透した要因の一つとしてはもう一つ、特に欧州諸国から見て、韓国はアフリカの小国並みに「遠くにある小国」でしかなく、「暴虐な日本」に虐げられた「可哀そうな国」という視点が寄与しているのではないかと考えています。

    1. だんな より:

      龍さま
      欧米は、植民地からの収奪、奴隷、戦時の性犯罪など、全てにおいて日本より悪質だったと認識しています。
      欧米でも、韓国流の「日本は悪。それを叩く自分は善。」の流れは有るように思います。
      この話は、長くなりますし、個人毎の認識の差異も有ると思いますので、機会が有ったら、またコメントします。

  10. edobay より:

    当時、日韓合意については保守層の多くが否定的であったと記憶してます。青山繁晴さんは事前に察知し強く反対していたことを虎8で言及されていました。その青山さんが常々sex slaveという表現がいかにアメリカ人の心を傷つけるか、ということも聞いていたので、当時外務省と韓国外交部のHPでどんな表現がされているか確認しました。麻生政権時にテレビ新聞を完全にやめて以来、できるだけ一次ソースを確認するようにしてます。韓国の英文プレスリリースを見た時、だいぶ印象が変わりました。従来では、sexual slavery victimやforced to be drafted by japanese armyと表現が常套句でしたが、日韓合意では、comfort womanの一言で片づけられていました。この合意は言葉狩りなんだと、あとは、主として欧米のメディアが不適切な表現を使えば、その都度大使館や領事館がクレームを入れていけばいい、思っていたものです。20年間自ら世界に偽の情報拡散したわけですから、それを正常化するにはそれ相当の期間を要し、モグラ叩きを続けるしかないと考えてもいました。残念ながらこの5年間外務省が果敢に戦ったという印象はありません。結果的には、個別問題としては失敗ということになると思いますが、韓国という国家が無法国家であるという事実を世界に知らしめるきっかけになったという意味では成果があったと思います。その他に、先人の名誉を傷つけたという指摘もありましたが、防疫のための軍の関与であることを確認し、見舞金は例えcamp followerであっても同じ帝国人民であり、正当な継承国家としてやむを得ない対応だったと思っています。
    余談、極論になりますが、隣接国(5か国)と政府間の国交を絶ったほうがよいのではないかと考える今日この頃です。むしろ国交のない台湾と一番うまくいっているという現実を見るとなおさらです。駄文失礼しました。

    1. より:

      > 韓国という国家が無法国家であるという事実を世界に知らしめるきっかけになった

      そもそも、「欧米先進諸国」は韓国なんぞにほとんど興味もないし、知ろうともしていないのではないかと思いますよ。そんな彼らにすれば、「韓国は無法国家」と聞かされても、極東の野蛮な小国だからそんなもんだろうくらいにしか感じてないのかもしれません。
      多くの日本人がマルタ共和国がどうなっているかなんてほとんど関心を持たないのと同様なのでは? 実際には、マルタ共和国は地中海の軍事的要衝なんですけどね。

    2. 阿野煮鱒 より:

      > 韓国という国家が無法国家であるという事実を世界に知らしめるきっかけになった

      龍様の二番煎じですが、言いたいので言います。

      日本が韓国の非道ぶりを積極的に世界に知らしめる努力をしていないのに、世界が極東の二国間のもめ事に関心を持ってくれるとか、あり得ません。

      そもそも、世界が韓国を正しく認識する意思と能力を有していたならば、慰安婦=性奴隷という認識が世界の常識なんぞになっていません。

      「お天道様は見ている」式に、自分からは周知の努力を一切しないくせに、周囲は自分のことを良く観察している、良く理解していると思い込むのは日本人の悪癖です。

      こまめに日本のことを悪く言いふらし続ける韓国人の勤勉さを、日本人は見習うべきです。これは大真面目に言っています。

      1. 門外漢 より:

        阿野煮鱒 様

        >「お天道様は見ている」

        これが通じるのは日本国内だけなんでしょうねえ。最近つくづくそう思います。
        韓国だけでなく、欧米だって、日本が何も言わなければ自ら認めてるんだ、と思います。
        言葉が通じないからこそ、言葉で伝える努力をしなければならないと思うんです。
        男は黙ってサッポロビールなんか呑んでちゃあだめなんですね。

    3. りょうちん より:

      >その青山さんが常々sex slaveという表現がいかにアメリカ人の心を傷つけるか

      近代まで大々的にリアルスレイブを使っていたからですね。
      建前上、江戸時代になってからは奴隷制を廃止した(まあ年期奉公という形態で存続してましたが)日本は、その辺の機微に疎い。
      異世界転生もので女奴隷があったら買う主人公の多いことw

      1. より:

        ピンクのもこもこ髪の女奴隷を……

  11. たい より:

    慰安婦合意がなされてから今に至るまでの顛末を知ることで、日本人の多くが韓国について呆れ果てた意味は大きいです。
    韓国ウォッチャーからしたら自明の事でも、そうでない方には韓国人の日本人に対する感情はなかなかわかりにくいところ。
    いくら謝ろうが、いくら金を出そうが何の意味もない。いや、むしろ彼らを増長させる。
    実際にやってみて、周りに示したのですから一般の日本国民に対する「韓国はこういう国である」という宣伝効果はこれ以上のものはないと思われます。
    「最終的かつ不可逆的な解決」は韓国や他国に示しただけではなく、日本国民にも、日本政府としての決意を示したものです。

  12. 名無しの権兵衛 より:

     日韓慰安婦合意は、安倍総理が当時の次のような情勢を踏まえて下した「最善の決断」だったと思います。
    ➀日本政府としては、「河野官房長官談話」を否定することはできない。また、河野官房長官は、談話発表後の記者会見で、「強制連行があったということで結構です」と発言した。
    ➁その後も、国連人権委員会「クマラスワミ報告書」や米国下院外交委員会決議などにより、慰安婦問題について日本政府に不利な認識が世界各国に定着していた。
    ➂オバマ政権から「日米韓連携のために慰安婦問題の解決」を求められており、これを拒絶すれば、日本は国際社会で一層不利な立場に追い込まれる。
    ➃国と国との交渉である以上、日本政府の主張を韓国政府に100%認めさせることはできない。
    ⑤韓国政府が造成した基金に日本政府が10億円を拠出し、慰安婦問題を「最終的かつ不可逆的に」解決する約束を韓国政府が守れば儲けもの、破っても十分に元が取れると判断した。
     当時の安倍総理の政治判断を批判することは誰にでもできると思いますが、日本の政治家や国民の中で、「当時、自分が総理であったら、より日本の国益を大きくする日韓慰安婦合意を交わすことが出来た」と自信を持って言える人は果たしているでしょうか。
     私は、当時の安倍総理の心境は「他策なかりしを信ぜむと欲す」(陸奥宗光)だったと思います。
     また、世界的戦略家のエドワード・ルトワック氏が、安倍総理を「稀代の戦略家だ」と評価したのも、正当な評価だと思います。

  13. りょうちん より:

    雑談スレで紹介しましたが、「テロール教授の怪しい授業」という漫画の三巻で、ネトウヨに染まった岩盤層の話が題材になっていて爆笑しました。

  14. IVD より:

     ちょっと話題から逸れますが。。。
     安倍政権の功績として、集団的自衛権行使容認と安保関連法案の成立が一つの分水嶺であったと思います。あれで周辺事態に対する日本の覚悟を米国は試したと思いますし、民主党政権時代に失われた米国からの信頼を取り戻すきっかけになったのではないでしょうか。
     その後、ご存知の通り日韓慰安婦合意を経て日韓GSOMIAを締結し、米国の求める日米韓の連携は強化されました。また安倍元総理の米上下両院演説、オバマ前大統領の広島訪問と安倍元総理の真珠湾訪問を経て、日米の信頼を確固たるものにしていったと思います。もし集団的自衛権行使容認と安保関連法案の制定がなければ、今頃QUADの一角を担えていなかったかもしれませんし、FOIPも共感は得られなかったかもしれません。

     それにしても、当時の野党の過激な反対パフォーマンスとマスコミの印象操作は見るに堪えませんでした。

  15. だんな より:

    >慰安婦合意で振り返る「岩盤支持層を敵に回すリスク」

    まあ、その後の選挙でも自民党楽勝だったし、韓国関係は投票行動に影響するかどうかは、はっきりしていませんよね。
    マニュフェストに「冷やし韓国始めました」と書く、全国政党はまだ有りませんしね。

  16. sey g より:

    河野談話の否定ですが、洋平氏が生きている間は無理では無いでしょうか?
    もし、政府が、あれはこれこれこういう意味でしたと否定しても、マスコミが洋平氏に直接聞いてそれを否定されたら終わりです。
    河野談話は象徴です。キッチリ否定出来るちゃんすを待つべきです。

    1. 引きこもり中年 より:

      sey g様
      >洋平氏が生きている間は無理では無いでしょうか?
       確かに、自民党としても、総理になれなかった自民党(元)総裁に、気を使わなければならない点もあると思います。
       駄文にて失礼しました。

  17. Naga より:

    国民感情は、それだけを考慮することはできませんが、大事ですよね。
    彼の国からがイチャモンをつけて来た時、あちらの国民感情を考えてなどと言われることが多かったように思います。
    彼の国の人間だけでなく、日本の方にもそういうことを言う輩がいましたが、日本の政治家や官僚、ジャーナリストなら日本人の感情を考えろと言いたいものです。

    1. 引きこもり中年 より:

      Naga様へ
      >日本の政治家や官僚、ジャーナリストなら日本人の感情を考えろと言いたいものです。
       (個人的見解ですが)彼らにとって、自分たち以外は愚民で、愚民の感情なぞ配慮していたら、自分たちの村の関係がぐちゃぐちゃになる、と思っているのでしょう。
       駄文にて失礼しました。

      1. より:

        いや、特に(自称)ジャーナリストという人種は、愚民どもの感情なんぞ好きなように操作できると思っているのですよ。何しろ、彼らは「正しい」のですから。

  18. 名無しのPCパーツ より:

    まあ、結果としては合意(+破棄)のおかげで
    「条約すら守れない国とどう合意しろと?」と反論できるのは大きい。
    欧米は契約社会なので東アジアに興味ないからこそ契約破棄という説明がわかりやすい。

  19. ぬくぬく@日米合同委員会解散 より:

    第一次安倍晋三内閣では岩盤支持層がそっぽを向いた感じでしたね。

  20. 農家の三男坊 より:

    新宿会計士様の主張にはほぼ同意ですが、2点ほど異なる点があります。
     1点目は河野談話も、慰安婦合意もどちらも米国の圧力によって不本意ながら行ったものと思いますが、その責任は時の首相である宮澤喜一(意図的に呼び捨てです)と安倍さんにあります。
     河野洋平が談話後のQ&Aで事務方の努力を無にする発言をしたことは責められるべきですが、それ以上に、それを放置し、追認した責任があります。

     なので、慰安婦の件の責任は宮澤喜一>河野洋平>>外務省(反対したと聞いています)、慰安婦合意の責任は安倍総理>岸田外相>外務省とその職責に応じてあるとすべきと思います。そしてその大元を作った宮澤喜一が最も悪いと思います。その間の自民党代議士も其れなりにわずかであっても責任はあると思います。

    2点目は、
     ”一部 を取り上げて全否定は如何なものか”は同意しますが、
    ・財務省文書改ざん事件、
    ・検察官定年延長事件、
    ・カジノをめぐる秋元司議員贈収賄事件、
    ・河井夫妻選挙違反事件 、
    ・吉川元農水相収賄事件、
    を見ると、長期政権党の弊害としてタガが緩み、昔の自民党(金権汚職体質)に戻りつつある気がします。
    ・これに、韓国利権屋がまた、うごめき始めたとすると、
    この辺りで一度気を引き締めてもらう必要があると思っています。

    共産や民が政権取ったらどうするって?
    そんなことはあり得ません。

    1. より:

      > 韓国利権屋がまた、うごめき始めた

      現時点で「韓国利権」なるものが存在するのかはちょっと疑問です。これは「中国利権」についても言えることですが、かつてのようにODAその他で日本の公的資金が大量に流れ込んでいた頃であれば、「口利き→キックバック」という構図が成立し、それは確かに利権と呼ぶべきものでしょうが、現在ではそのような金の流れは存在しないと思われます。
      また、民間企業に無理矢理投資させ、現地に落ちた金の内から幾許かを還流させるなんて芸当ができる政治家も今はいないでしょう。そのように考えると、今や「韓国利権」「中国利権」なるものは、もはや存在していないのではないかと思います。

      しかしながら、今なお韓国や中国に必要以上に肩入れしたがる政治家が存在することは紛れもない事実です(誰とは言いませんが)。ある意味、その動機が「利権」であるならば、まだわかりやすく、対処のしようもあるでしょう。しかし、「利権」がもはや利権として機能しないのであれば、何が彼らを動かしているのでしょうか?
      あくまでも想像の域を出ませんが、「利権」よりももっと悪質な動機を疑わなければなりません。金か、女か、あるいはもっと別のものか、広い意味での買収工作に乗せられている可能性も考えるべきでしょう。

      もちろん、日韓友好とか、日中友好などといったことを唱えている政治家全てが工作に乗せられていると考えるのは行き過ぎでしょう。それでも、国益を損ないかねないレベルで「友好」を唱える政治家には警戒が必要と思われます。

      余談: ジャーナリズムの在るべき姿を考えれば、そのような勢力をあぶりだすことこそがジャーナリズムの使命であると思いますが、わが国の幾つかの報道機関は率先して工作に乗せられているように見受けられるあたりが、実になんともはやというか……

      1. 農家の三男坊 より:

        龍様

         コメントありがとうございます。仰る通りと思います。

        人の欲には、金だけではなく、名、色、弱み等々いろいろあり、龍様の仰るようなものを含めて広義の意味で“利権”と言っています。

        例えば、パチンコ業界の顧問等、政治資金、選挙資金、選挙運動の支援などの便宜供与です。また、韓国政府の工作資金が韓国企業の日本(在日含む)企業への発注に上乗せされ、その企業から政治献金として流れることもあるでしょう。

        >韓国利権屋がまた、うごめき始めた

        これで言いたかったのは、
         出していなかったアグレマンを最近出し、危惧した通り、天皇陛下を侮辱した輩をその御前に前に立たせた。其れも、他1名として閣僚をだます形で奉呈式の閣議了解を得た。
         これは、外務省単独で出来る事ではなく、政治家の圧力があったと推測したからです。

         “理は100%此方にあるにもかかわらず”、この程度のこと(アグレマン拒否)が、さっさとできないようでは、戦時売春婦問題や自称元徴用工問題で“約束を守らせることも、国際法を遵守させることもできない”と思われます。

        事の本質は、“再発防止”、“予防措置”が講じられていないこと。即ち、“制裁せず、宙ぶらりんで放置している”、且つ、“時間を味方に出来ていない”ことです。

        戦時売春婦問題や自称元徴用工問題にしても、尖閣問題に関しても、拉致問題に関しても、その話より、おいらの生活の方が大事、今はこの選挙が問題だという自民党議員も多いと思います。その証左が、上記タガの緩んだ議員の増加で、事故統計で類推すれば、この裏には10倍以上のその手の議員が存在すると思われます。
        これ等の議員は簡単にエサに釣られ、そのながれで、行きつく先は、”戦時売春婦問題の上塗り、自称元徴用工への支援金の支払い”ではないかという危惧です。 

  21. 裏縦貫線 より:

    岩盤支持層って、有権者の何%位なんでしょうね。
    ふつう、選挙に勝って議席を得ないことには政策は実現できませんので、自党軟弱支持層>他党支持層(軟弱+岩盤)>自党岩盤支持層ならば、岩盤支持層を敵に回してでも軟弱支持層を取りにいくのは有りでしょう。
    立憲民主党や社会民主党のほうが、よっぽど、かれらの岩盤支持層のほうを向いて発言・行動しているように感じます。

    1. 名無しのPCパーツ より:

      まあ、一つの政策でそっぽ向くようなら岩盤じゃなくて軟弱地盤ですな。

      1. 裏縦貫線 より:

        確かに…
        「慰安婦合意」に不満を持ちつつも自民党に投票してくれるなら岩盤支持層になり得ますし、この一点が不満で他党に投票するなら岩盤とはいえないですね。
        では岩盤支持層とは?業界団体などの枠組みでなく純粋に政策への賛否で考えると『自衛隊が派遣されている地域が非戦闘地域だ』みたいな禅問答チアーになるかもです。

    2. へちまはたわしのみに非ず より:

      興味があったのでちょっと調べてみました。
      ごく単純に各内閣の支持率、不支持率を並べただけですが、岩盤支持層が支持率ミニマムを指すとすれば、自民党政権で15%、民主党で19%といったところです。

      ただ、支持率モンスターの小泉内閣は別として、民主の悪夢以降、第二次安倍内閣に限ればミニマム38%をみると岩盤の厚みが増した可能性もあるかもしれません。

      それはそれとして、民主党3政権の支持率マックスは75%→71%→67%でした。
      当然どれも急落したのですが、今から考えると、信じ難いものがありますね。

      総理大臣   平均支持率   平均不支持率
      #2安倍 晋三 53 ( 76 – 38 )  36 ( 53 – 16 )
      菅 義偉   52 ( 74 – 42 )  38 ( 50 – 17 )
      小泉 純一郎 51 ( 85 – 41 )  34 ( 46 – 6 )
      #1安倍 晋三 49 ( 71 – 28 )  39 ( 63 – 17 )
      鳩山 由紀夫 48 ( 75 – 22 )  43 ( 69 – 17 )
      福田 康夫  39 ( 59 – 21 )  47 ( 68 – 27 )
      菅 直人   36 ( 71 – 19 )  54 ( 73 – 22 )
      野田 佳彦  36 ( 67 – 20 )  52 ( 69 – 21 )
      小渕 恵三  33 ( 46 – 17 )  39 ( 57 – 28 )
      麻生 太郎  29 ( 53 – 15 )  63 ( 80 – 40 )
      森 喜朗   21 ( 36 – 15 )  60 ( 71 – 32 )

      ※支持率順、括弧内は支持率・不支持率それぞれの最大値-最小値

      日経世論調査アーカイブ
      https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/cabinet-approval-rating/

  22. ラスタ より:

     韓国によるイアンフ合意否定は、当然ながらイカれた行為で、これが日韓外交に大きな影響を与えたことは間違いないと思います。
     (出稼工員はひとまず措きます)

     私は、日韓関係を現状のごとく破壊した、韓国側による致命的な行為は、ロックオン事件の顛末と思っています。
     日本のEEZ海域内で、海自哨戒機をロックオンするという戦闘行為を行った。この事実は重大です。
     しかも、その後世界に向けてインチキな自己主張を繰り返した挙げ句に被害者を装って、幼稚なプロパガンダを展開する始末で、ことの重大性を認識できていない。

    仮にその1:現場の跳ね上がりが調子こいてやってしまった。
     軍の統制上、まずは厳重に処分しなくてはならない。
     そうしないってことは、韓国政府は韓国軍を統制できていない。
    仮にその2:韓国政府の指揮においてロックオンした。
     事後のプロパガンダ活動から納得できる。
     これは、韓国政府が日本に対して軍事攻撃を実行したことになる。

     韓国政府が、「韓国軍を統制できていない」または「統制下で攻撃行為を行った」のいずれかであることは間違いないでしょう。
     どちらにしても、日本にとって韓国は「平時の日本EEZ海域内で敵対的軍事行為を仕掛けてきた国」となったわけで、韓国がこの問題を真摯に解決しない限り、事実上の敵対国と見なすのが当然。
     もはや友好国ではなく準敵国であるとこの時点で確定。
     外交も対話もその前提でしか成し得ないのだから、二国間協議などには応じず国際法下において国際社会の面前で処理するよ、というのが、その後の日本の韓国に対する姿勢ではないでしょうか。

    1. より:

      > 日本のEEZ海域内で、海自哨戒機をロックオンするという戦闘行為を行った。この事実は重大です。

      全くその通りです。この一件とその後の展開により、少なくとも自衛隊は韓国軍を全く信用しなくなったであろうし、世界中の軍事関係者にその実態をさらけ出すことになってしまいました。結果として、自爆行為で韓国の国益を大いに毀損したことになります。

      本来、この案件はそれほどの重大事項に発展しなくても良いものでした。裏事情はともあれ、事実を認めて陳謝し、誤操作だったとして担当者と艦長あたりを訓告処分くらいにしておけば、とりあえず表面的にはそれで治まったはずです。自衛隊側としても、内心疑念は残しつつも、それを受け入れざるを得なかったでしょう。
      ところが、韓国側では「いかなる事情があろうと、絶対に日本に頭を下げてはいけない」という思い込み、または呪縛に囚われていたため、事実そのものを否認するという暴挙に出てしまいました。事実を糊塗するために嘘に嘘を重ね、支離滅裂になっても頑強に否認し続けました。自衛隊側がこれ以上の折衝は時間のムダとして打ち切ったのも当然です。韓国側は「日本に頭を下げたくない、絶対に下げてはならない」という一念だけだったのですから。どれだけ事実を突きつけても、韓国軍は嘘で塗り固めた「真実」を堅持する以外にできることはなかったのです。
      そして、青瓦台も韓国国民もその「真実」を信じ切り、疑おうなどとは微塵も思っていません。こうして韓国軍は国内向けに体面を維持することには成功しましたが、対外的な信用を全く失ってしまいました。それが意味するところを韓国軍がどの程度理解しているかは分かりません。ただ、青瓦台が全く理解していないことだけはほぼ確実です。

      1. はるちゃん より:

        私は、ロックオン事件は「知られてはいけない事がバレそうになった」ので韓国軍が焦った結果起こった事件、だと思っています。
        つまり韓国政府は北朝鮮の要請で韓国軍を動かしていたのでは無いかと。

        ロックオン事件の背後には大きな闇を感じます。

        1. 農家の三男坊 より:

          はるちゃん 様

           >ロックオン事件の背後には大きな闇・・

          同感です。
           本件を外務省が的確に把握し、外交に生かしてくれればよいのですが。

      2. 阿野煮鱒 より:

        > 世界中の軍事関係者にその実態をさらけ出すことになってしまいました。

        恐らく、どこの国であっても軍関係者であれば、事の次第を把握し、韓国軍の嘘を見抜いたと思われます。よって、韓国は何らかの/いくばくかの国益毀損があったことはあったでしょう。しかし、私はそれは微々たるものだったと見ています。何しろ、日本を除けば最もあの事件に関心を寄せてしかるべき米国軍が大した動きを見せなかったからです。

        米国の場合は、もっと大きな東アジア戦略、つまり米中新冷戦の中に現在の米韓同盟をどのように位置づけるかを見ており、日韓の軋轢は元より承知の上で、どの程度日本に忍耐と譲歩を迫るか、日本の対応を見つつ、対応の頃合いを見ていたのではないかと思います。

        ところが日本は年明け早々に手仕舞いにしてしまいました。米国としては「お前等(日本)がそれでいいならいいんじゃね?」です。米国以外の国際社会も、「日本が納得して折れた」と見たことでしょう。

        韓国は頑なに嘘を突き通した。
        日本はあっさりと追求を止めた。

        どう考えても韓国の勝利です。日本に対しては、どんな酷い事(哨戒機をロックオン)しても許される、どんな嘘をついても許されるという成功体験を重ねただけだったと思います。

        話にならない相手とは話をしないという行動は私もしますが、それは敗北を意味することも承知しています。

        1. 農家の三男坊 より:

          阿野煮鱒 様
           韓国外交部の金泰珍(キム・テジン)北米局長らが日本にある国連軍司令部の後方基地を訪問
             https://jp.yna.co.kr/view/AJP20190129001400882
          で、米軍からお灸をすえられた気がします。

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