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【読者投稿】データで読む武漢肺炎「第4波到来せず」

「データで読み解く議論」、もっと知られるべき

当ウェブサイトでは読者投稿を歓迎しており、読者投稿要領等につきましては『【お知らせ】読者投稿の常設化/読者投稿一覧』にまとめているとおりです。さて、例の「武漢肺炎」を巡り、これまで合計11本の読者投稿を寄せてくださった「伊江太」様というハンドルネームの読者様から、今回は「第4波なんか来ちゃいない~データで読み解く武漢肺炎」という、大変な力作をご投稿いただきました。

読者投稿につきまして

当ウェブサイトでは、2016年7月のサイト開設以来、「読んで下さった方々の知的好奇心を刺激すること」を目的に、おもに政治、経済の分野から話題を選んで執筆した論考を、日々、原則としてすべての方々に無料で提供しております。

こうしたなか、当ウェブサイトをお読みいただいた方々のなかで、「自分も文章を書いてみたい」という方からの読者投稿につきましては、常時受け付けています(投稿要領等につきましては、『【お知らせ】読者投稿の常設化/読者投稿一覧』等をご参照ください)。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

さて、本稿では、「伊江太」様というハンドルネームの読者様からの12本目の投稿を掲載したいと思います。ちなみに伊江太様からは、次のとおり、過去に11本の論考をご投稿いただいています。

伊江太様から:「データで読み解く武漢肺炎」シリーズ

第1稿によると、伊江太様は某国立大学医学部の微生物関係の研究室での勤務経験をお持ちで、実際に、ウイルスを扱っていたそうです。そして、これまでの投稿でもわかるとおり、どの論考も力作ぞろいで、とくにデータで解明するプロセスは、いつもながら圧巻です。

若干数式が出てくるため、見た目は難しいのですが、豊富でわかりやすい図表が理解を助けてくれるでしょう。さっそく、読んでみましょう(なお、原文については文意を変えずに修正している箇所もありますのでご了承ください)。

第4波なんか来ちゃいない

利権としての検査

【利権の特徴】
  • ①利権は得てして理不尽なものである。
  • ②利権はいったん確立すると、それを壊すのが難しいという特徴を持つ。
  • ③ただし、利権を持っている者の強欲や怠惰には非常に弱い。

この文は、このサイトで先月28日に掲載された、『部数と広告のダブルパンチに悩む新聞社のリストラ事情』のタイトルが付された記事の中にあったものです。

新聞社の経営事情などと本稿は何の関係もないのですが、今回書いたことを突き詰めていくと、結局こういうことになるのではと考え、拝借いたしました(小心ゆえ、自分ではなかなかこうとまでは言えないので)。

どう繋がるのかは、以下をお読みいただければ分かると思います。

それでもまだ検査を増やしたいというのか!

わたしが過剰な数の検査を目の敵にしていることは、これまで散々書いてきました。

もちろん、「必要な」検査ならやるのが当然です。

武漢肺炎の感染を疑わせる患者が来院したとき、医師が診断確定のためにPCR、あるいは抗原検査をオーダーするのは、もちろんそう。感染が確実となった患者について、保健所がその濃厚接触者を調査し、未受診の感染者を掘り起こすためにおこなう検査もまた、流行抑制には必須です。

それ以外については、無益どころか、はっきり有害とわたしは断じます。

検査に偽陽性、偽陰性はつきものですが、両者の発生率はトレードオフの関係にあります。感染を見逃さないために。偽陰性が出るのを極力低めに抑えたければ、偽陽性の発生にはある程度目をつぶらざるを得ない。

だから大抵のウイルス疾患の場合、最初にやる検査はスクリーニングが目的です。間違いなく感染しているのか、また感染しているのが事実だとしても、本当にそれが焦眉の病態に関係しているのか、などを確定するにはさらなる別種の検査が必要です。

PCRあるいは抗原検査一発で感染確定とする今のやり方は、たとえて言えば、集団検診のX線間接撮影で陰影が見えたら、即結核患者として扱うようなものです。そんなことをすれば、保健所の濃厚接触者調査を柱とする日本の結核サーベイランス体制はたちまち崩壊してしまうでしょう。

「結核対策のために構築された体制をそのまま利用する形でおこなわれている、武漢肺炎に対する保健所の感染拡大抑止機能が、徒に数を膨らませた検査、そしてそれに伴う偽陽性症例の増加のために、台無しにされてしまった」。

そのことが、昨年7月以降の感染拡大の第2波、そしてそれが十分収束しないままに迎えた第3波を招いた最大の原因だろうという議論を、一連の論考の第8報『【読者投稿】「検査数と感染者数は比例する」は本当か』で展開しています。

検査数過剰の弊害は他にもあります。流行の実相を見誤らせかねないことです。

今年年頭に起きた感染数の急拡大のほとんどが、偽陽性数が急増しただけのものではないかという疑いについては第9報『【読者投稿】これだけある!「検査至上主義」への疑問』に書いたのですが、本稿はその続編とも言えるものです。

これらの「弊害」なるものが、バイアスがかかったわたしのアタマの中でつくられた虚構という可能性も、否定はできません。しかし、「ひたすら検査数を増やせばそれだけ感染終息に近づく」などという馬鹿げた考えからは、いい加減卒業してほしいものです。

1日に20万件ものPCR検査をやっているのが自慢のフランス(※1)、週100万件だと豪語するドイツ(※2)、その現状がどうなっているかを見るだけで、検査を増やせば武漢肺炎の患者が減らせるなど、幻想に過ぎないことに、気が付きそうなものだと思うのですが。

(※1)今井佐緒里氏『感染者数の拡大で「欧州は危険、日本は大丈夫」は本当か:新型コロナウイルス問題』(2020/10/16付『Yahoo!ニュース』)

(※2)川口マーン恵美氏『ドイツに帰ってやっと分かった「日本のコロナ感染者数が少ない理由」』(2020/07/31付『現代ビジネス』)

3月に緊急事態宣言を解除するに当たって、感染拡大第4波の襲来を何としても避けんがために、「積極的な攻めの検査」、「検査の深掘り」をやる、などと政府が言っているのを聞くと、暗澹たる気分になります。

仮に1日の検査人数が10万人という状況にでもなった暁には、毎日の全国の検査陽性者数2~3千人、東京なら1千人を下回らない事態になりかねない。いつ果てるとも知れない自粛生活を強いられ、これまで以上に沈滞した社会がやって来るのは必定という気がします。

無駄な検査の結果を無視したら

本題に入る前に、過剰検査が保健所の潜在感染者の発掘機能を損なっているという仮説を、サポートしてくれそうな結果が出ているので紹介したいと思います。

前に、あまりの数の検査陽性者に対応できなくなったせいでしょうが、神奈川県では保健所による濃厚接触者調査を入院患者の周辺に限る方針に転換したという記事を紹介しました。要するに春頃やっていた方式に戻したわけです。

図表1は、首都圏一都三県で2月以降に報告された検査陽性者数と死亡者数の推移です。

図表1 首都圏1都3県で1日に発生している検査陽性者数と死亡者数の推移

(【出所】NHK特設サイト『新型コロナウイルス』のオープンデータをもとに投稿者作成)

※検査陽性数、死亡数のいずれも、毎日の報告数から7日間移動平均値を計算して表示している。グラフは対数表示としている。神奈川県の死亡数の推移について、直線近似(赤色点線)をおこない、グラフ上の傾き k から半減までに要する日数を、下式によって求めている。

T 1/2 = log0.5 / k = 0.302 / -0.0152 = 19.8(日)

人口比にすれば東京を上回っていた神奈川県の死亡の発生が、上記の方針転換からちょうど1ヵ月、感染から死亡発生までのタイムラグに相当する期間を経て、減少し始めたことがわかります。減少は20日で半減するペースで進んでいますから、それまでの増加速度がそっくりそのまま反転していることになります。

一応期待していたとはいえ、神奈川県と東京都の間にこれほど画然とした差が出たのは、正直意外でした。人の移動の面で両都県はもっと一体化していると思っていたからです。

ただ、神奈川からさらに1ヵ月の遅れで、千葉、次いで埼玉でも死亡数の減少が始まったのには、こう言っては語弊がありますが、やや戸惑っています。両県でも神奈川でのやり方をならったのかも知れませんが、そうだと言える情報は持ち合わせていません。

神奈川県にしても、検査数自体を絞ろうというところまで意識が進んでいるわけではないので、相変わらず1日100人前後の検査陽性者が出つづけています。その年齢分布を見ると、高齢者の割合がとくに低下しているわけではありません。

死亡者数の減少を考え合わせれば、神奈川県では今では検査陽性者の7割方は偽陽性という状態に至っているのではないかと考えられそうです。

検査報告に紛れ込む偽陽性の数

緊急事態宣言解除となった途端に、繁華街、行楽地の人出が急増したとの報道が相次いでいます。

「わざわざ飲み屋街にカメラを持ち込んで、酔客の醜態など撮影してまわる」。

感染再拡大の事態到来を手に唾して待ち望むかのごときニュースに接する度に、マスコミ連中まだ懲りずにやってるのかと、少々うんざりしていた中、ここに来て、いくつかの自治体で検査陽性判定数の急増が報じられるようになってきました。

思わせぶりなことに、いち早く宣言を解除した大阪で真っ先に増加が露わになり、次いで、兵庫、沖縄。意外にも、ノーマークに近かった宮城、新潟、愛媛、長野といった県でも異常な数の感染報告が相次いでいます。

何が起きているのかと思っているうちに、ついに本丸(?)の東京でも足元に火が付いたと言われるまでになってきました。果たしてそうでしょうか?

図表2は、毎日の検査数と陽性判定数のデータを過去に遡って取得できる4都府県の推移をグラフ化したものです。

図表2 「4都府県」で行われた武漢肺炎PCR/抗原検査の件数、および陽性率の推移

(【出所】大阪府:『新型コロナウイルス感染症患者の発生状況について』、東京都:『都内の最新感染動向』のページにリンクするオープンデータ、兵庫県:『新型コロナウイルスの検査・陽性者の状況』、福岡県:『福岡県内での発生状況』を参考に投稿者作成)

※検査件数は、結果が陽性であったもの(濃緑色)と陰性であったもの(淡緑色)に分け、積み重ね棒グラフとして示している。目盛りは左軸。陽性率はオレンジの折れ線グラフで表し、目盛りは右軸に示されている。東京都のグラフには、都管掌の検査のうち「医療機関」経由とされるものが占める割合を示した、折れ線グラフ(青色)を重ねて、表示している。

これまでしばしば使ってきた7日間移動平均値ではなく、日ごとの表示としていることに注意してください。濃緑色の陽性、淡緑色の陰性、それぞれの判定数を積み重ね棒グラフで表し(左軸目盛り)、陽性率をオレンジの折れ線グラフ(右軸目盛り)にしてあります。

一目で気付くのが、検査の陽性率が基本的に1週間の周期で大きく変動することです。大きな値が出るのが(土)日、祝日。このときには、平日に比べて検査数は極端に少なくなっています。それが意味することは、あまりに明白でしょう。

出所が公的機関や大手民間検査会社以外のデータがくせ者。

休日にも報告を出している検査機関、おそらく一般の検体採取の依頼を受け付けている小規模クリニックと契約している検査センターだと思われますが、そこから出てくる結果に、実は偽陽性である陽性判定が、他の機関のものより数倍高い割合で含まれている、そうとしか考えられません。

そうしたデータは当然平日分にも混じっているでしょうから、全体の陽性判定率も、その分引き上げられているはずです。こうしたデータに言及するたびに、いちいち長ったらしい形容を付けるのは面倒なので、以後は、シンプルに「悪玉」とよぶことにします。

大阪府のグラフを見ると、昨年から今年1月半ばまで、陽性率は平日と休日の間で極端な差をもって上下するのですが、それ以後はさほど振幅が目立たなくなっています。つまり、以前は「悪玉」の存在感は、おおよそ休日の報告に限定だったのが、最近では平日分にまで影響が浸透してきているということです。

3月に入って、大阪府の検査陽性者の数は増加に転じました。

最近では増加幅がとみに顕著になっています。ちょうどこの時期、検査数も急増しており、1ヵ月で2倍になっています。それに応じて、判定結果に含まれる偽陽性の数も増えているでしょうが、それだけではないかも知れません。

一体どうやってこれだけの検査が実施できる能力を、短時間に増強できたのか。

わたしは、せっせと「悪玉」データを出し続けている検査機関への依存度を増した結果が、あの大阪での異常なほどの陽性報告数増加の原因ではないかと疑うのです。

東京都保健福祉局が公開している過去からおこなわれてきたPCR・抗原検査に関するデータには、感染状況の報道発表には含まれている大手検査会社からの分が入っていません。

そのため、全体の3割くらいにあたる検査の実態は図表に掲げたグラフに反映していないのですが、反面、都の公開データには他自治体の資料では得られない貴重な情報が含まれています。

都の機関である2施設と、保健所を経由して報告されてくる「医療機関」分をカテゴリー分けして実施数が記録されているのです(ただし、それぞれの陽性率が掲載されないのは、画竜点睛を欠くというものです。わざとでしょうか?)。

東京都のグラフには、全検査に占める「医療機関」分の割合を重ねて表示しています。

期間中ほとんどの日で、その割合は9割を超えるのですが、やはり休日には平日より高くなっています。検査陽性率の変動と対応させてみれば、「悪玉」の出所がこの「医療機関」と区分されているデータであるのは明らかでしょう。

検査全体のたかだか10%くらいの範囲で変動する比率が、ときに検査陽性率を1%以上も上下させる効果があるのですから、「悪玉」判定には1割くらい偽陽性が含まれることがあっても不思議ではないと思います。

「医療機関」由来のデータが占める比率は、2月頃から漸増傾向にあります。都の検査陽性報告数に含まれる偽陽性の割合はその頃から少しずつ増えていたはずです。

それが、2月以降「真の」感染の急減によって帳消しにされていた。感染減少が減速、あるいは頭打ちになってくるにつれ、今度は偽陽性数の増加が表面に現われてきた。

最近東京で陽性判定の数が増えてきたことを、このように説明することができるのではないかと考えます。

福岡県の検査陽性率の変動パターンも、「悪玉」の影響が平日の検査値にまで相当及んでいることを示していると思います。ただし、最近の検査の数が安定していることと、「悪玉」の割合に特段の変化が見られないことから、東京、大阪とは異なり、感染拡大の様相は見せていない。そういうことだと思います。

これら3自治体に比べると、兵庫県のパターンは複雑です。

たしかに休日ごとに陽性率は上昇するのですが、平日にもときおり陽性率の高い日があるため、1週間ごとの周期性が乱れています。そのときどきで報告値に「悪玉」データが混入する割合が異なる、何らかの特別な事情があるのかも知れません。

兵庫県で観察された検体の陽性率は、3月に入って急上昇しています。これが感染爆発前夜をも思わせる状況と捉えられているのですが、グラフを眺めて気が付くのが、2月後半には比較的小さかった検査陽性率の変動幅が、その上昇傾向と同期するように3月以降拡大している点です。

これを「悪玉」の関与の度合いが増えていると解釈するならば、「まん防」適用対象ともなった同県の感染増加も、あるいは偽陽性が生んだ人為的産物という可能性も排除できないのではないでしょうか。

感染拡大がいま問題になっている自治体(宮城県、沖縄県など)についても、同じような分析をやってみたいところですが、残念ながら過去の検査の実際が分かるようなデータソースを公開しているところは、図表2の4都府県以外には見つかりませんでした(※探し方が不十分だっただけかも知れませんが)。

しかし、図表3に転載した宮城県のHPに公開されている図は、非常に面白いです。

図表3 宮城県で急増した検査陽性数と実施検査数との関係

(【出所】宮城県『新型コロナウイルス感染症対策サイト』記載の図を転記。第14週分の陽性率がゼロになっているのは、グラフ作成上のミス)

この図が意味するところは一目瞭然。検査から得られる陽性率が、ほぼ完全に検査数に比例しているということです。当たり前に考えれば、こんなことはまずあり得ない。

もし宮城県でおこなわれている検査が、無作為抽出標本調査のようなものであれば、検査数がどうであれ、陽性率は大体同じになるはずです。

また、特定の属性をもった標本、つまり武漢肺炎の感染が疑われる人を狙った検査なら、対象を限定するほどに高い陽性率が期待され、大きく網をかぶせるつもりで対象範囲を拡げる=検査数を増やすことをやれば、陽性率は下がる。結果はまったく逆になるべきなのです。

図表3に表われたパターンを説明しようと思えば、わたしにはひとつの可能性しか思いつきません。それは宮城県が自前でやれる検査能力が限られているため、大きく増えた検査分はすべて「悪玉」が占めているということです。

もしそうであるなら、これは恐ろしいことを意味します。「悪玉」は軽く10%を超える偽陽性判定を含んでいるということになるのですから。

検査陽性数の増加は本当に偽陽性で説明できるのか?

検査で陽性と判定されるものの中に、実は感染などしていない症例が紛れ込むのは、あって当然という前提で、ここまで議論してきました。

しかし、個別の事例ごとに「これは偽陽性」とするためには、その検査より精度に於いても感度に於いても、確実に優れる別種類の検査によるダブルチェックが必要です。その手段が現われない限り、武漢肺炎のケースでは「偽陽性」の存在は、あくまで想定に留まります。

現行の検査に偽陽性などないという物的証拠が示されたなら、その時点でわたしの論考などたちどころに消し飛んでしまうのですが、足元の不確かさを多少なりとも補強しようというのが、図表4です。

図表4 全国の武漢肺炎検査陽性者数と死亡者数の推移

(【出所】厚生労働省『新型コロナ感染症について』をもとに投稿者作成)

※実数表示のグラフ。検査陽性数、死亡者数とも、7日間移動平均値を表示している。3月3日~20日、3月21日~4月7日の期間に相当するグラフ上の領域を、ブルーとグレーのシャドウでそれぞれ示してある。

検査陽性数の増減パターンが18日の間隔を置いて死亡数の変動に反映されるという一種の経験則を、これまで度々述べてきました。

今から35日前から18日前までの陽性報告数の動向は、理想的には、「死亡率の分だけ縮小して直近18日間の死亡動向に一致する」、となります。図表4のグラフでブルーとグレーのシャドウで示しているのが、それぞれの期間に相当します。

対応する期間に、検査陽性数はそれまでの減少傾向が止まり、あきらかな増加に転じています。他方、死亡数は一貫して減少を続けており、その速度が低下する兆候は見られません。

これをもって、いま世上で喧しい感染拡大のすべてが偽陽性によるとまで言うつもりはありませんが、少なくとも3月半ばくらいまでは、武漢肺炎流行の第4波が襲来する気配など見られていないと、わたしは考えます。

誰も気付いていないのか?「悪玉」の存在

本当の感染実態を知りたければ死亡者数の動向を見ていくしかないなら、現時点で分かるのは3月半ばくらいまでの状況。

陽性報告数の増加がいよいよ本格化してくる3月末あたりは、まだ視程に入っていないのですから、『第4波なんか来ちゃいない』などとキャッチーなタイトルを付けた文章を投稿するのは、実は時期尚早です。

下手をすれば看板に偽りありになってしまう危険も、十分自覚しています。

本来なら、あと半月は寝かせておくネタではあるのですが、急いでこの稿を書いたのは、図表2に示した陽性率の周期的変動パターンがもつ意味について、つい最近気付いたのが理由です。

月曜日になるとニュースで、前日の感染者数が減少したことを伝えられますが、これにはいつも「休日で検査数が少なかったせいで」という枕詞が付くのは周知のことです。しかし、併せて「検体の陽性率も顕著に上昇している」というのは耳にしたことがありません。

皆さんにしたところで、初めて知る話じゃないでしょうか。

図表2は、表示上の工夫を施してはあるものの、自治体が公表している数値データをただそのままグラフ化したものです。この事実に対して、これまで表だって配慮された形跡がないことを、どう考えればいいのでしょうか。

日々おこなわれている検査の成績は、われわれの目に触れる前に少なくとも4段階のチェックを経ているはずです。

まず、検査を実施し、結果を提供している検査機関。それを集約し整理する各自治体の担当部局、そしてそれが厚労省に伝達され、担当部局の手で全国の状況がとりまとめられ、最後に政府の推進対策室や分科会メンバーに伝えられる。

その間やりとりされるデータは、一般に公表されるものよりはるかに詳細なものでしょう。

休日ごとに現われる奇妙な傾向などというよりもっと直裁的に、どの検査機関から異様に高い陽性率が出てくるのか(もしあればですが)、それが把握されていないとしたら、その方が不思議というものです。

「悪玉」の出所にしてみれば、感染の見落としを防ぐために検査感度を最大限上げているんだという、言い分もあるかも知れません。しかしそれなら、他の検査機関から出てくるデータとの整合性はどうなるんだと、苦情を呈さなければならないでしょう。

武漢肺炎の蔓延状況を実際よりひどいと見せかける」。

営利目的で検査をやっている会社にとっては、ひょっとしてそれは、検査依頼がより増え、そしてより儲かることになるという意味で、インセンティブになりうるのではないか。

そんな疑いが捨てきれません。ワクチンの普及が目前に来ている今ならば、なおさらそうかも知れません。

これに対して、かつて「検査数が足りない、足りない」と攻め立てられて、「何とか検査機器の設備投資を」と民間に頼んで回った政府としては、咎め立てするのは気が引けるという弱みがあるのかも知れません。あるいはよもや、早くも腐れ縁みたいなものができているのでは…

などと考え始めると、「検査利権」という言葉さえ浮かんできます。ということで、話は冒頭の「利権構造」

の文章に漂着するのです。<了>

読後感

当ウェブサイトの「利権構造」についてご紹介いただき、大変ありがとうございました。

個人的な読後感を申し上げるなら、「何とも恐ろしい仮説」です。最近だと街中で日本共産党の「PCR検査拡充」というポスターを見かけることもありますし、また、民間事業者が「PCR検査やります!」などと謳っているのを頻繁に目にします。

また、最近だと某大病院が人間ドックなどの際に付帯サービスとして「新型コロナウィルスPCR検査」なる検査項目を付け加えているようです(たしか費用は1万円少々だったと思います)。人々の不安心理に付け込むかのようなビジネスはいただけません。

ただし、『「立憲民主党への政権交代」が発生し得ない理由とは?』などを含め、先日より報告しているとおり、「ゼロコロナ」だ、「全量検査」だといった主張に対しては、一般国民は薄々その非現実性に気付いているようでもあります。

当ウェブサイトでは、安倍晋三・菅義偉両政権の経済政策には強い不満を抱いている次第ですが、外交・安全保障分野と並び、コロナ対策に関しては信頼に値するものと考えています。

このあたり、伊江太様が執筆してくださっているような「データに基づく客観的な議論」の存在が、もっと世の中に知られてほしいと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (29)

  • 非常に腑に落ちる記事でした。ありがとうございました。
    我が国のPCR検査は感度の設定が非常に鋭敏で擬陽性を出しやすい、と聞いていますが事実でしょうか?また検査で陽性が出ることと「感染」は別物、区別すべきという意見も聞きますがいかがでしょうか?

  • 感染者数の統計の取り方については、研究者のほうが、行政上やその他の影響を回避して考察する方法を知っているので、検査の問題とか既得権益の問題とかは、統計上はあまり心配しなくて大丈夫です。いずれにせよ、今回は首都圏より地方における変異株の流行で、3月中旬には完全に予想されていた事態で、この第4波の収束まで、諸外国の流行曲線から大体予想はできます。
    日本より注目しているのは、インドの第2波とか、イスラエル、イギリス、フランスやドイツのほうです。インドに注目するのは、ワクチン接種が国民全体にいきわたった後、コロナの流行がどうなるかがわかるからです。今のところ言えそうなのは、1度コロナに感染したり予防接種を受けても、変異株が出てくるとまた感染爆発が起きそうだ、しかし、死亡率はあまり高くならないであろう、ということです。たぶん、毎年のインフルエンザのように、繰り返し結構大きな感染爆発が何回も起きるけど、死亡率は下がっていく、という状態に収束していくと思います。

  • 伊江太様

    いつもシロウトにも分かりやすいコロナ禍の解説、ありがとうございます。偽陽性も含むとか、我々には「なるほど」と思い当たる事が辻褄が合いました。

    月曜日になると前日の感染者数が減少したと伝えられますが、確かに「休日で検査数が少なかったせいで」という枕詞が付きます。都合の良い数値だけ切り取りしているような報道です。

    しかし、ここ数週間、大阪府、兵庫県の感染者数が異常な勢いです。とうとう大阪府は800人超え、兵庫県は300人超え(とうとう北海道を累計で超えました)。第3次より多く、全国的には低減しているのに、奈良県、宮城県、沖縄県を含む5府県は、何故こんな数値になるのか、今だけの事なのか、やはりよく分からないです。

  • 伊江太様
    ご指摘の事項は十分ありえます。また納得もします。ただ 変異種(英国型など)との関係を分析しないと誤判断につながるかもしれません。ただ そういったデータが開示されていないのでないものねだりですが。全てのデータを扱える人が科学者の心得が有ることを期待します。へんな政治的思惑に影響されないと言う意味で。

  • 偽陽性者の処置をどうするのかの問題を抜きにして、害魚を駆逐するために池の水全部抜く作戦のように1億人同時検査すれば全数検査もありかもしれない。
    同時検査できないのなら検査の順番は?優先順位は?
    しかし、たくさんの網を使ってとしても時間差でさらっていてはさらった場所に害魚が寄り付かない保証はない。
    検査で陰性が出たとしても検査場や検査帰りに感染する可能性もある。
    更には陰性者が安心を安全と勘違いして感染対策を疎かにするかもしれない、偽陰性者は免罪符とばかりウイルスをバラ撒く行動をとってしまうかもしれない。
    魚を取るには魚影の濃い場所に集中して網を投じるのが一番効率が良い、むやみやたらと網を投じるのは素人の浅はかな考え方だ。

  •  ここまで解説頂いても、PCR狂信者に読ませても「ほら見ろだからこそ全数検査をやってあぶりだすんだ!」となるので、彼らの改宗は無理に思えてきました。

     世田谷モデル(すでに初期設定崩壊済み)を推進する保坂区長曰く、

    「私たちは、高齢者施設で感染を拡げているのは、若くて元気な職員の方々と想像していた。ところが、Ct値20以下のスーパースプレッターの方が78人中10人いたが、そのうち9人が入居中の高齢者だった。無症状の感染者を見いだし、感染拡大を封じる社会的検査の必要性がますます明らかになった(原文ママ)」

     だそうです。彼のいう世田谷モデル「誰でも、いつでも、何度でも」を彼らに適用するのだと主張したいためにもってきた情報なのでしょうが。高齢者施設関係者に適用するのは正当化できても(というか元々必要分なので妥当)、誰でも、なんなら希望すれば区民全員でも!という当初の構想を自ら否定しているのに気付いているのか。

     「ここに絞ろう」と提案すると、「じゃあそこを守る前段階のために全数検査だ!!」と返ってくるので……ましてや「利権」も絡んでくれば、こんなザマも納得できてしまいます。

     あとSuper Spreaderだと思うので、そもそもスプレッターなどと書く方の言う事は信用なりません。

    • ケンサーズの論法を拡大先鋭化していくと「人間は新型コロナを媒介拡散している!人間を守るために人間を駆逐しよう!!」なんてAIが出てくるD級SF作品を想起シテシマイマシタ

      • 健康マニア「健康を害するなら死んだ方がマシだ!」
        平和活動家「平和を乱すヤツには火炎瓶だ!」

         などは極端な例ですが。
         医療側以外で度々アゴラにコロナ対応を寄稿している方は、対象を的確に絞れば良いのに経済全体を殺す発想に対して「指先の止血をするために頸動脈を括って失神」と例えたりしています。数兆円で全国民を検査したとして、結果実際に救われるであろう人数の1人あたりに換算したら治療費数百億円、なんて例示も。
         事実は小説よりも奇なり、D級SFもあながち冗談でもないのがイヤデスネ。

  • 伊江太様
    >しかし、個別の事例ごとに「これは偽陽性」とするためには、その検査より精度に於いても感度に於いても、確実に優れる別種類の検査によるダブルチェックが必要です。

    行政による検査機関ごとの精度の把握と指導。優良機関における再検査(偽陽性チェック)を継続するしかないのかもですね。

    *解りやすい論考を、ありがとうございました。

  • 伊江太さま
    毎度読者投稿、ありがとうございます。
    検査利権については、官民の検査比率を調べてみる必要が有ると思います。
    官民とも新しく追加される仕事で、現場の負担になっているのは、医療機関と同じ事だと思います。

  • PCRじゃない核酸検出法も増えてきたんですけど、みんなPCRって呼ぶんですよねえ。
    一回刷り込まれると訂正不能なのか。

  • 面白い投稿ありがとうございます。

    私も偽陽性に関しては思うところが多々あります。
    まず、なぜPCRで偽陽性が出るのか?ですが、これは極めて簡単に言えば、原理上仕方ありません。なぜなら、PCRが検出対象としているのはSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)由来の核酸(RNA)であるからです。
    Q:なぜ核酸だと偽陽性が出るの??
    A:核酸は生体内で分解作用を受けてぶちぶちに千切れるのです、その千切れた粉々になった
      核酸断片さえも検出してしまうからです
    Q:核酸断片でもコロナはコロナだから危険なのでは?感染のリスクは??
    A:核酸断片にはウイルスを新たに産生する能力はありません。したがって危険ではありません
    Q:じゃあ、PCR陽性≠感染ってこと??
    A:ざっつらいと!その通りです、PCR陽性は必ずしも感染性を伴う陽性を拾っているわけでは
      ないのです
    Q:へ~なぜこのことを皆知らないの?
    A:PCR信者はここぞとばかりに国の予算でPCR装置を入れたいわけですよ、
     だから専門家は知ってて敢えて言わないのかもしれません
    Q:じゃあ、感染性をみる検査はないの?
    A:その意味では抗原検査が適している可能性も否めません。勿論、抗体のエピトープ認識能力にも依存するので一概には語れませんが、スパイクやNPの立体構造認識能力を有した抗体であれば感染性と関連付けられるかもしれませんね。このあたりは小難しいので又別の機会に。

    Q:じゃあ、PCR検査をする限りこのお祭り騒ぎは収まらないってこと?
    A:そうですね、そうならないためにも一応国側の措置としても指定感染症から、インフルエンザ等の感染症に分類を移行しましたね。
    Q:どゆこと??
    A:簡単に言えば、偽陽性⇒即座に隔離、が医療崩壊を招くことにようやく気づいたのでしょう。陽性であっても即座に入院隔離とならないようにした、ということです。ただ、現状ではまだまだその感は拭えませんが、大分医師の判断に任せられる部分も出てきたと聞いています。
    Q:ふーん、良く分からないけど、この先どうなるの??
    A:第四派は来ていると思います。この言い方が適切でないにしろ、そりゃCOVID-19は増えますよ。風邪を一生引くな!!というようなもんです、多くの人はこの先、罹患する可能性はあるでしょう。ただ、99%以上の人は重症化を経ず回復しますし、残念ながらの1%の人は基礎疾患をお持ちの崖っぷちの老齢者です。それがために経済を封鎖することのリスクの方がよほど怖いです。それを助長するPCR検査とマスコミ、国を壊す気でしょうかね。
    個人的には予想に反してRNAワクチンが機能しており、おそらく今年の冬までには大多数の国民が摂取しているでしょう。(*それまでに某ワクチンのように被害者団体が幅をきかせなければ)そしたら、このお祭り騒ぎも終焉を迎えるのではないでしょうか。

    蛇足ですが、九州からRSウイルスが爆発的に増えてまいりました。そして、これは専門家の間ではインフルエンザも遅れて流行するのではないか?との見立てがありますので、お気をつけください。

    • アルコール消毒に頼り過ぎて石鹸や水洗による手洗いが疎かっちまってるせいでしょうかね?

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