国連パネル「北朝鮮が暗号通貨3億ドル窃盗」等を報告

国連安保理制裁の履行状況を巡る国連パネルの報告書が出て来ました。これによると、北朝鮮は2020年を通じ、制裁決議に定められた上限である50万バレルの「数倍」の石油精製品を違法に輸入しているほか、約3億ドル相当の暗号通貨を盗むなどの犯罪を続けているのだそうです。やはり、北朝鮮に対する瀬取り監視を徹底的に強化するのが正解なのでしょう。

2021/04/02 16:40追記

記事タイトルが「3億円」になっていたのを「3億ドル」に修正しました。

北朝鮮から外国大使館関係者らが続々と撤収中

北朝鮮といえば、当ウェブサイトでもかなり以前から、「国連安保理決議に基づく経済制裁が行われているはずなのに、物価については安定している」という点に関心を払ってきたつもりです。

もちろん、安保理制裁が「まったく機能していない」というわけではなく、とくにさまざまな生活必需品の搬入が困難になっているためか、大使館閉鎖が相次いでいるという話題については、『ついにチェコが北朝鮮大使館を「一時閉鎖」へ=RFA』などでも触れてきた点です。

実際、これに関連し、こんな記事もありました。

北朝鮮から外交官が次々と脱出 残った大使は9人=厳しい制限に物資不足

―――2021.04.02 00:29付 聯合ニュース日本語版より

韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)によると、在北朝鮮ロシア大使館が1日、フェイスブックで「平壌(へいじょう)駐在の外交官が大量に国外脱出し、現在、9ヵ国の大使しか残っていない」などと伝えたそうです。

「新型コロナウィルスの貿易で厳しい制限措置が取られたことで、深刻な物資不足が発生している」というのがその理由だそうですが、これなどは先日の『ラジオ・フリー・アジア(RFA)』の報道と整合している話でもあります。

国連安保理専門家パネルレポート

ただし、北朝鮮に対する国際社会の制裁が効いているかどうかについては、また別問題です。

聯合ニュースやRFAの報道にもあるとおり、北朝鮮における大使館閉鎖ラッシュは、どちらかといえば新型コロナウィルス・武漢肺炎の蔓延に伴う一時的なものと見るべきであり、北朝鮮の核・ミサイル開発などに必要な物資の搬入については別問題だからです。

これに関連し、以前の『北朝鮮への制裁は不十分:二次的制裁、瀬取監視強化を』でも「速報」的に取り上げたとおり、どうにも看過できないレポートが出て来ました。北朝鮮に対する国連安保理制裁の履行状況を巡り、専門家パネルが先日、安保理に提出したレポートです。

レポート自体は2021年3月4日付けで、原題は “Final report of the Panel of Experts submitted pursuant to resolution 2515 (2020)” です(リンク先はPDFファイルで419ページという膨大な文書ですのでご注意ください)。

といっても、文書自体は膨大ですので、ここでは文書4ページ目の「サマリー」の記述を紹介しておきたいと思います(内容については意訳しており、また、原文の「朝鮮民主主義人民共和国」については「北朝鮮」と略しています)。

まずは、核・ミサイル開発です。

  • 北朝鮮は当報告書の調査対象期間において、依然として国連安保理制裁決議違反である核兵器・弾道ミサイル開発を継続している
  • 軍事パレードでは新たな短距離弾道ミサイル、中距離弾道ミサイル、SLBM、ICBMなどが確認された。同国はまた、ミサイルに搭載する新たな弾頭や戦術核などの開発、実験などについて予告した
  • これに加えて同国は核分裂性物質の生産、核関連施設の維持、弾道ミサイル基盤の強化などを行っている。同国は引き続き外国からそれらの開発技術や物資の搬入を継続している
  • なお、同国において核・弾道ミサイルの実験については報告されていない

レポートでは、北朝鮮の核・ミサイルについて、「報告対象期間において新たな実験は報告されていない」としつつも、開発自体は継続しており、これらが国連安保理決議違反であると断じています。

コロナによる国境封鎖と瀬取り

次に由々しき問題が、瀬取りです。

  • COVID-19のパンデミックに関し、北朝鮮は国境封鎖を行い、適法・不法を問わず、人々や物資の出入りを厳しく制限した
  • 当パネルの調査によると、同国は引き続き、石油精製品の違法な輸入を継続しており、それらの搬入手段としては直接運搬に加え、手の込んだ偽装船などを使用した瀬取りなども活用されている
  • 国連加盟国から提供された2020年9月1日から30日までの期間の画像やデータ、試算などに基づけば、2020年の1年間を通じた違法な搬入は年間の上限値である50万バレルを数倍超えていたと考えられる

パネル報告によると、北朝鮮は武漢肺炎の影響で国境封鎖を行い、これにより通常の物資の輸出入については厳しく制限したそうですが、それと同時に石油精製品などの違法な輸入を継続しており、それらは「手の込んだ偽装船」などを使った瀬取りにより搬入されているのだそうです。

また、国連制裁決議に基づけば、北朝鮮に対する年間の石油精製品の輸出量は50万バレルに制限されているはずですが、実際にはこの上限の「数倍(by several times)」に達する量が北朝鮮に搬入されていた、としています。

違法な取引の継続・暗号通貨の窃盗

また、同パネルによると、北朝鮮は制裁決議後もさまざまな制裁逃れを通じて違法取引を行っており、現金収入を得ていると指摘しています。

  • 当パネルの調査によれば、北朝鮮による船舶の購入、漁業権の売却、石炭の継続的な輸出など、経済制裁決議違反の事例を検出した。ただし、石炭の輸出自体は2020年7月後半には中断したとみられる
  • 当パネルでは、そのほかにもさまざまな経路を通じて制裁対象品目の移転がなされている事例を調査した。とくに、北朝鮮は海外代表部、合弁会社、仮装会社、オフショア・仮想資産の使用などといった、国際的な金融チャネルを使用していることが確認された
  • 当パネルは万寿台海外開発関連会社や朝鮮白頭貿易社、さらにはサハラ以南のアフリカ諸国での北朝鮮出身労働者による海外送金などの事案を調査した。当パネルは他にも、同国軍需産業局が派遣した労働者が海外での労働で収入を得ている事例などを調査した

一方で、私たちの国・日本にとって看過できないのは、暗号通貨の窃盗です。

当パネルの調査によれば、北朝鮮が悪意を持ってサイバー空間で制裁違反行為を行っている。これらの多くは北朝鮮の偵察総局が主導しているものであり、仮想資産やそれらのサービス業者、防衛産業などに対するサイバー攻撃が含まれる

とくに、レポートの本文(P56)によると、北朝鮮が2019年から2020年11月にかけて窃盗した仮想資産の額は3億1640万ドルにも達する、などとしています(原文は以下のとおり)。

“According to one Member State, the total theft of virtual assets by the Democratic People’s Republic of Korea, from 2019 to November 2020, is valued at approximately $316.4 million.”

ほかにも北朝鮮による制裁違反行為などがいくつか記載されているのですが、いずれにせよ、これらの記述が事実であれば、到底看過できないものばかりです。

北朝鮮に対する制裁は「正解」

ただし、見方にもよりますが、北朝鮮の「国連制裁決議違反」がなされているということは、言い換えれば、北朝鮮がこれらの違法行為により、何とか生きながらえている、ということでもあります。

おそらく専門家パネル報告書では言及されていませんが、搬入経路としては、陸で国境を接する中国ないしロシアが多いと想定されますし、また、海上瀬取り行為に関しては中国、ロシアに加え、韓国などにも協力者が存在する可能性は否定できません。

個人的には、2018年12月20日に石川県能登半島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内で発生した「火器管制レーダー照射事件」も、この瀬取り行為と何らかの関連があるのではないかという疑いを払拭し切れていません。

ただし、北朝鮮による制裁逃れが常態化しているということは、言い換えれば、北朝鮮に対する安保理制裁自体は北朝鮮にとって都合が悪いという間接的な証拠なのでしょう。

いずれにせよ、北朝鮮という国が存在していて、地球・人類にとって良いことは何もないという気がしてならない次第です。

読者コメント一覧

  1. 引っ掛かったオタク より:

    そう遠くないうちに
    とある半島に
    メテオストライクが御見舞いされるやもシレマセンなぁ

  2. PONPON より:

    コインチェック事件は北朝鮮による外部ネットワーク経由でのハッキングの可能性が大ということでしたが、暗号通貨取引会社の社員として北朝鮮スパイや協力者が入り込み、システム管理者権限を使って秘密キー等を盗難して楽々と暗号通貨を盗み取るという手口も考えられます。

    個人的には、内部協力者によるものが多いのではないかと推測しています。

  3. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    北朝鮮は、狡猾な手段で資金作りしてますね。

    「さまざまな経路を通じて制裁対象品目の移転がなされている事例を調査した」。また核弾頭、弾道ミサイルの改善、短距離〜中距離射程ミサイルは確実な運用が出来るでしょう。

    2019〜2020年に窃盗した仮想資産は3億1640万ドル。それだけあったら、骨と皮だけの国民に何も与えずとも、軍費は賄えるでしょう。これら一連の動きに韓国が絡んでるのは間違いない。日本は詳細な情報、不確実な動きも掴んでいると思う。北朝鮮を兵糧攻めにするなら、まず韓国を落とす。

    あんまり泳がさず、そろそろ韓国を輸出管理のグループDに落としても良いと思う。イラク、イラン、中央アフリカ、北朝鮮らと一緒に名指しされたら、また火病起こすナ(笑)。

  4. 農家の三男坊 より:

    韓国、中国、ロシアから制裁のがれの物品が流れ込んでいるのは確かでしょう。
    ただ、日本国内にもこれら三国を経由して北朝鮮にモノや金を流している輩が居ると思います。

    以前も別のコメントでお知らせしましたが
    日本のザル法に対する古川勝久さんの警告記事を貼っておきます。

    https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57117?imp=0

  5. 愛読者 より:

    中国とロシアは北朝鮮支援を宣言していますが、北朝鮮のほうがコロナ対策のため中国、ロシアとの国境を閉ざしているのが現状です。でも、中国とのパイプラインは動いていて、物資も国家の管理するものは貿易されているはずです。経済制裁は、そこが抜け道になっています。暗号通貨だけでなく、いろいろな金融の穴をねらって、国のエリート集団によりハッキングを行っているはずです。
    ついでに言うと、中国、ロシア、北朝鮮は全部、国家が作ったエリート集団組織によって、日本政府や民間企業の情報にハッキングを常時仕掛けています。法学部中心の日本の官僚組織では、それを阻止するのは不可能だと思います。気づいていないか、気づいていても隠蔽しているか、とちらかでしょう。
    中国とロシアがバックにいる限り、アメリカも北朝鮮に手を出すのは難しいと思います。

  6. 匿名29号 より:

    北朝鮮の正式国名は「朝鮮民主主義人民共和国」だったことを思い出させられました。北朝鮮国民も含めて誰も北朝鮮が民主主義でかつ人民のための国だとは思っていない筈なのに不思議な国名です。名乗るのは自由だけど。
    もともと共和制は君主制に対する言葉なので、中華人民共和国も皇帝を廃した現在は共和制であると言えなくもないですが、自らも共産党独裁を宣言しているので人民共和国というには違和感があります。 むしろ”人民”も”共和国”も付かない中華民国の台湾の方に民主主義が根付いたことは皮肉です。
    因みに我が国は”日本人民共和国”ではなくあっさりと日本国(英語正式名もJapanのみ)であり、これはこれでシンプルでよいと思います。国旗も世界で一番シンプルで覚えやすいし。

    1. 阿野煮鱒 より:

      > 日本人民共和国
      あのー、皇室を否定なさるような例はお控え頂きたく。

      > 英語正式名もJapanのみ
      それでいうと、中華民国の英語正式名も“Republic of China”でして、立派に共和国が入っております。

      1. 匿名29号 より:

        それならば、英国式に”United Kingdom of Japan” ですか。 おっと、これでは日王になってしまうので、”Empire States of Republic Japan”ですね。

        なおWiki先生によると、「台湾は1971年に中華人民共和国が全中国を代表する主権国家として承認された後は、中華民国(Republic of China)を使うことがなくなり、スポーツ大会や国際機関においては、Chinese Taipei(チャイニーズタイペイ、中華台北)という名称が使用されている。」そうです。

        1. 阿野煮鱒 より:

          > Empire States of Republic Japan

          あのー、republicの定義は先のご自身のコメントで明確にしていらっしゃいますよね。それでいてどうしてEmpireと並列なさるのですか?

          > Chinese Taipei
          後出し。

          1. 匿名29号 より:

            国名は難しいですね。やっぱり「日本国/Japan」がすっきりとシンプルかつベストと思います。

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