対話も協議も拒絶した韓国が今さら政府高官を対日派遣

本日の「小ネタ」です。韓国メディア『中央日報』(日本語版)の報道によると、韓国の朴智元(ぼく・ちげん)国家情報院長が自称元徴用工問題や対韓輸出管理適正化措置などの「韓日間の懸案を議論するため」に来日中だそうです。正規の日韓政府間の協議を無視しておきながら、ノコノコと政治家がやってくるというあたり、現在の韓国政府の外交センスは絶望的に悪いと言わざるを得ません。

韓日関係改善に向けた動き

最近、韓国側で「韓日関係(※)の改善」に向けた動きが相次いで報じられています(※「韓日」は「日韓」を韓国側から表現したもの)。

たとえば、日韓関係における最大の懸案のひとつである自称元徴用工問題を巡っては、朝日新聞が10月31日、「先に日本企業が賠償すれば、韓国政府が補償する」とする構想を報じました(『朝日新聞「日本企業が賠償し、韓国政府が後日補償」案』等参照)。

あらためて、朝日新聞の報道を振り返っておくと、次のとおりです。

日韓両国政府関係者によると、韓国大統領府は今年に入り、『徴用工』への賠償に応じた場合に、のちに韓国政府が全額を穴埋めするという案を非公式に日本政府に打診していたが、日本政府はこの提案を拒絶していた」。

この朝日新聞の報道が事実なのかはわかりませんし、また、韓国大統領府は後日、この朝日新聞の報道を「事実ではない」として否定しています。ただ、普段の韓国政府関係者の言動を見ていると、「さもありなん」と思ってしまいます。

この提案自体、韓国政府がちゃんと約束を守るのかという点も疑問ですが、自称元徴用工裁判が、2018年10月の新日鐵住金(現・日本製鉄)や同年11月の三菱重工に対する大法院判決以外にも、韓国国内で数十件、下級審で同時並行的に提起されているという事実を無視しています。

いずれにせよ、「約束破りは韓国の特徴」です。こんな提案、応じる必要などありません。

朝日報道は韓国政府の「観測気球」?

ただし、ここでひとつ気になるのは、なぜこのタイミングで、こんな報道が出て来たのか、という点でしょう。

敢えて当ウェブサイトの主観的な見解を述べるならば、これは韓国政府なりの「観測気球」という可能性があります。つまり、日本で9月に菅義偉政権が発足したことで、安倍政権下で膠着していた「韓日交渉」が進むのかどうか、朝日新聞に流して日本側の反応をチェックする、というわけです。

そして、なぜ日本側の反応を見る必要があるのかといえば、先週の『韓国側で相次ぐ「日韓関係改善」に向けた動きへの警戒』でも報告したとおり、朴智元(ぼく・ちげん)国家情報院長の来日に向けた布石という役割ではないでしょうか。

そして、これに続報がありました。朴智元氏は本日、日本にやってきたのだそうです。韓国メディア『中央日報』(日本語版)の報道を紹介しましょう。

東京で「朴智元-二階」チャンネル稼働…徴用問題の解決法を議論

韓国の朴智元(パク・ジウォン)国家情報院長が徴用賠償問題、輸出規制など韓日間の懸案を議論するために日本を訪問した。<<…続きを読む>>
―――2020.11.09 15:50付 中央日報日本語版より

中央日報によると、朴智元氏は8日午前にすでに日本の成田空港に到着していたそうであり、滞在期間中に「菅首相に最側近の二階俊博自民党幹事長(※原文ママ)」や滝沢裕昭内閣情報官らに会う方針なのだそうです。

(※ちなみに中央日報では「徴用被害者問題」、「輸出規制」などの用語が出て来ますが、これはそれぞれ自称元徴用工問題、対韓輸出管理適正化措置のことであろうと思われます。)

政治家同士の会談でどうにかなる局面ではなかろうに

二階俊博氏が菅義偉総理の「最側近」とは存じ上げませんでしたが(笑)、韓国メディアに言わせれば河村建夫・日韓議連幹事長も「菅総理と近い」ことになってしまうようですので(『自称元徴用工問題から漂う韓国側の「被害者利権」』等参照)、このあたりはあまり気にしないことにしましょう。

また、朴智元氏が二階俊博氏と会う予定だというのは、両氏の個人的な関係にあるのだそうです。具体的には、朴智元氏が北朝鮮送金事件で収監された際に、二階俊博氏が手紙だの、肌着だのを送って慰労した、というエピソードが紹介されています。

ただ、二階俊博氏はあくまでも自民党幹事長であり、外相でも官房長官でもありません。両者が会ったところで、パイプとしての機能を果たすかは疑問でしょう。

それに、輸出管理適正化措置に関しては、日本の経産省はこれまでにくどいほど、「担当官庁同士での政策対話が必要だ」と述べ、政策対話の再開を求めているにも関わらず、これに応じていないのは韓国政府の側です。

わざわざ正規ルートを無視して日本にノコノコやってくるという時点で、どうもこの朴智元氏という人物、あるいは文在寅(ぶん・ざいいん)大統領らに「輸出管理政策」への理解があるようにも思えないのです。

また、自称元徴用工判決問題にしても、結局、日韓請求権協定に従った外交的協議や仲裁手続を一切無視したのも韓国政府側です。朴智元氏がいまさら日本にやってきて、いったい何をするつもりなのかと呆れてしまう次第です。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ただし、韓国側から来日するのは、朴智元氏だけではありません。

朴智元氏の訪日に続き、今週12日から14日にかけて、韓日議連に所属する与野党の国会議員も日本を訪問し、日本の日韓議連の議員らと「韓日関係」とやらを議論するそうです(まぁ、好きにすれば良いのではないかと思いますが…)。

これについて中央日報は、朴智元氏、韓日議連関係者らはともに菅義偉総理への表敬や会談を希望している、と報じていますが、個人的にはこれも理解に苦しむ姿勢だと思います。

基本的に日韓関係の破綻が避けられるかどうかについては、韓国が約束を守るかどうかという一点にかかっているのであり、相手国の政治家との会談で何かが解決するという局面ではないからです。

いずれにせよ、来日したければ好きにすれば良いと思ってしまう次第です。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. イーシャ より:

    公式発言は相手にされず、相手にされる解決方法では政権が持たない。
    だからキムチ臭い、もとい、いや間違ってはいないか、うさん臭い裏取引でなんとかしたいのでしょうが、もうその手にはのりません。
    議連も、売春婦が行き来できない現状では動かせないでしょうね。

  2. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    一体、日本にどのツラさげて来るの?と言いたいですが、二階氏に会っても何の進展も無い。菅総理に会う?(爆笑)そういう下衆なところが日本人には合わないんよ。イキナリ来て、着いてからアポ取るの?アポ!

    手土産は徴用工判決無効と日本企業資産現金化中止が最低ライン。でないと、話にならん。来ればいいってもんではない。今の日韓関係は議論なんて必要ナシ!すべてが韓国による不当・不正行為です。韓国が不正を止めたら良いのだヨ!

  3. だんな より:

    電波少年は、書いちゃったしな。

    役に立たない政治家と会って、「ウリは日本に言うだけ言って帰って来たニダ」と韓国国内で、自慢する為に来るんです。
    第一野党の党首とか、民主党の党首とか、えだのんとかね。会わないとなると、いよいよ韓国も見放したか?となるんだけどな。

    1. 匿名 より:

      TBSによれば、明日(10日)総理官邸を訪問し菅総理を表敬する方向で最終調整しているとのこと(14:29)。事実なら文在寅の特使として訪日した可能性もあります(二階他はカムフラージュ。)。

  4. 引きこもり中年 より:

     独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (なにしろ、希望的観測なので)
     「ソウルで日中韓首脳会議を開催して、アメリカに3か国の友好をみせつけ、あわよくば、日米間で疑心暗鬼を生じさせる」ために、中国が韓国に「菅義偉新総理を参加させろ」と圧力をかけたと考えるのは、考えすぎでしょうか。
     駄文にて失礼しました。

  5. 伊江太 より:

    特別な狙いなんてな~んもありゃせん、としか思えないですね。

    纏わりつけてる間は、まだ安心、みたいな。
    アチラにとっては、二階氏は今や数少ない精神安定剤(笑)。

  6. HNわすれた より:

    二階は問題意識がないですからひやひやします。韓国議員が大挙して来日するので、すぐに返礼として200人ぐらいの政財界人を連れて韓国訪問すると約束するでしょう。

  7. 名無しの権兵衛 より:

     来日した朴智元氏は、2000年に開催された初の南北首脳会談(金大中:金正日会談)直前に、首脳会談受諾料として、金正日氏に約5億ドルを不正送金した罪で、懲役3年の実刑判決を受けました。送金された5億ドルは、北朝鮮の核開発費用に使われたといわれています
     このような経歴を持つ朴智元氏を、アメリカのCIA長官に相当する「国家情報院長」に任命したことに加えて、このような大変な時期に日本に派遣する文在寅大統領の政治感覚は、狂っているとしか言い様がありません。
     菅総理がこのような人物と面会するとは思えないのですが。
     

  8. sey g より:

    韓国は、会話をしません。ただ、ひたすらに自分の願望をぶつけるだけです。
    ただ、相手が会話をしようとするなら、嘘や言い訳で誤魔化せますが、相手が会話を拒否すれば、韓国にそれらを覆す力はありません。
    所詮、口だけの詐欺師民族なので、口車に乗りさえしなければ、それ以上何も出来ないのです。
    故に、向こうは同じ土俵に乗せようとしてきますが、約束を守るまでは会話無理というだけで済みそうですね。

  9. 世相マンボウ より:

    三権分立どころか政権が主導して
    最高裁が国際法違反を犯した文政権の
    よこしまな勅使のような朴智元は、
    どこの国でも
    昔の時代なら斬り捨て対応で、
    今の時代だと入国拒否かペルソナノングラータが
    一般的なものなのでしょう。

    寛容な日本政府としてはそこまでしないまでも
    慇懃無礼に相手にしないことです。
    こうした役回りにうってつけのワタミさんが
    今はいないので、権限のない外務省新人さんが
    相手ぐらいが適切で、二階さんが会ってあげるのは
    不相応な接遇かと思います。

    まあ、ほっといても水面下で
    立憲民主党や朝日新聞や赤いお旗などのお仲間には
    会うのではないかと思われますが
    そこは忙しいでしょうけど
    公安警察さんに、しっかり調査を
    お願いしたいと思います。

  10. しきしま より:

    かなり焦ってますね。
    「下手な鉄砲数撃ちゃ」式で次々人を送れば誰か一人くらいはそのうち突破口を開くかも、という稚拙な作戦にしか見えません。
    そうじゃないんだってば。「約束守れ。」

  11. ななっしー より:

    新宿さんの懸念が現実のものに。
    とはいえこれは冨田大使の婉曲表現というよりは…

    10月22日「(輸出管理政策対話)環境を韓国側で作ってほしい」
    11月6日「(首脳会談)環境にない」

    …冨田大使に正論で勝てないので国情院長(大統領府)や国会議員が外交チャンネルの頭越しに来日するのだと思われます。
    あ、韓国ではスペシャリストより門外漢でも格上ならやりたい放題なので。
    もっとも、そもそも日本自体を格下とみなしているので、手ぶらで来るのは確実です。
    あ、韓国では手も頭も働かせないのが格上の証しなので。
    そして国際法や貿易管理に疎そうな議員をおだてれば何とかなると思っているのでしょう。
    あ、韓国では国会議員になれば官僚にやりたい放題なので。
    (そういえば日本でも某民主とか)

  12. だんな より:

    2つ朝一ニュースが、出て来ました。
    ハンギョレから ソースはTBS
    パク・チウォン国家情報院長訪日、菅首相との面談を最終調整中
    https://news.yahoo.co.jp/articles/df2cbf0833b7ca55e40a59ceec7af7d0478d93fc
    中央日報から ソースは外交消息筋
    訪日した朴智元、自民党に「韓日首脳共同宣言」提案

    現時点で事実なのは、二階氏が朴院長と会談した事です。
    元歯医者さんのブログからは、日韓首脳で共同宣言や、徴用工問題で韓国政府が賠償して日本が補填する案が、韓国国内で報道されているようです。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

世相マンボウ へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告