コロナウィルス騒動が続いています。当ウェブサイトでは先週の『【読者投稿】新型肺炎、日本は「いつもどおり」で良い』で、医師としての視点からの冷静な議論を紹介しましたが、その一方で金融市場という視点からは、先週末ごろから、韓国の通貨・ウォンなどの「一人負け状態」が続いています(『市場ではあたかも韓国が「一人負け」の様相を呈する』等参照)。個人的には、現段階の通貨安局面はコロナウィルス問題による一過性のものであると考えており、これが収束すれば自然に通貨安局面も収束するとは思っているものの、「コロナウィルス発の通貨危機」という可能性については、まだ排除できていません。
コロナウィルス蔓延騒動は続く
先週から新型コロナウィルスの蔓延という話題がさまざまなウェブ評論サイト、ブログサイト、大手メディアなどを賑わせています。
非常にありがたいことに、当ウェブサイトの場合は読者のなかに医療関係者も多く、先週は「りょうちん」と名乗るコメント主様から、医師という視点からの非常に冷静な議論をご投稿いただいた次第です(『【読者投稿】新型肺炎、日本は「いつもどおり」で良い』参照)。
コロナウィルス関連の健康被害を巡っては、ウェブ評論サイト、ニューズサイトなどでさまざまな見解が出ていますが、個人的にはこのりょうちん様が寄稿して下さった「新型肺炎対策、日本は『いつもどおり』で良い」とする説明が、最も腑に落ちると思います。
こうしたなか、「政治経済評論」を標榜する当ウェブサイトでは、コロナウィルスに関連し、おもに経済、金融の視点から追いかけようと考えているのですが、ここで気になっているのが、①サプライチェーンという問題点と、②市場の反応という問題点です。
このうち①の問題点については、先ほどの『コロナウィルス蔓延で見えた、日本の入管法制の問題点』でも予告したとおり、できれば一両日中に、貿易統計などに基づいて数値面でその影響を確認していきたいと思っています(もうすでにデータは持っているので、あとは私自身の作業の進捗状況次第ですが…)。
有事の円買い・ウォン売り
一方、②の問題点については、じつは当ウェブサイトではすでに何度か取り上げています(たとえば『市場ではあたかも韓国が「一人負け」の様相を呈する』『コベナンツで読み解く、韓国がウォン安を恐れる理由』等参照)。
あらためて、コロナウィルス騒動が「勃発」する以前の1月20日の時点と、先ほど(つまり2月3日午前11時過ぎ)のアジア主要国の為替市場について、マーケットデータをチェックしておきましょう。
図表 アジア主要通貨に関する1月20日と2月3日の為替相場比較(対ドルレート)
通貨 | 相場変動 | 騰落率 |
---|---|---|
韓国ウォン | 1159.61→1198.5 | +3.35% |
タイバーツ | 30.36→31.23 | +2.87% |
オフショア人民元 | 6.8673→7.0108 | +2.09% |
シンガポールドル | 1.3466→1.3675 | +1.55% |
台湾ドル | 29.969→30.374 | +1.35% |
マレーシアリンギット | 4.0595→4.1071 | +1.17% |
人民元 | 6.8669→6.9367 | +1.02% |
インドネシアルピア | 13621→13715 | +0.69% |
香港ドル | 7.7693→7.7764 | +0.09% |
日本円 | 110.18→108.5 | ▲1.52% |
(【出所】WSJの市況欄を参考に、1月20日終値と2月3日午前11時過ぎのデータを比較)
(※もっとも、上記図表については動いている市場データから手作業で転記しているため、厳密に同じ時間の同じ瞬間を切り取ったものではなく、不正確である可能性がありますので、この点についてはご了承ください。)
いかがでしょうか。
この図表に列挙したなかでは、日本円以外の通貨はすべて米ドルに対して下落していることが確認できるでしょう(いずれの通貨も「コンチネンタルターム」で表示しているため、「プラス」になっていればその通貨が下落している、という意味です)。
まさに「有事の円買い」、「有事のアジア通貨売り」という状況に見えますね。
ただし、この図表を眺めてみて、「意外と大きく動いていないな」、と思う通貨もあります。たとえば、香港ドルの場合は米ドルに対して1米ドル=7.8香港ドルを中心に、上下0.05香港ドルの「バンド」に固定されており、今回の値動きも誤差の範囲のようなものでしょう。
また、シンガポールドルの場合は通貨バスケット制度を採用しており(※どの通貨にどう連動しているかについては非公開)、正直、今回の新型コロナウィルス騒動との関連は軽々に結論付けられませんし、さらには、インドネシアの通貨・ルピアが大して売られていない理由についてもよくわかりません。
しかし、それら以外の通貨については、だいたい「アジア諸国通貨(除く日本円)」が米ドルに対して1%から3%ていど、下落しているということが確認できるでしょう。
とくに、人民元(※オフショアの方)については先週木曜日以降、しばしば「心理的節目」とされる1ドル=7元台を超える元安・ドル高となっており、また、韓国ウォンについても「心理的節目」の1ドル=1200ウォン台をうかがう勢いです。
なぜタイバーツと韓国ウォンが売られているのか
さて、図表のなかでもとりわけ大きく売られているのが、韓国ウォンとタイバーツであり、とくに韓国ウォンについては3%を超える下落率を記録していて、この下落率はコロナウィルスの「震源地」であるはずの中国人民元(※オフショアの方)を大きく上回っている状況です。
韓国とタイの通貨が「震源地」よりも大きく売られている理由としては、2つの仮説が成り立つと思います。
ひとつめは「資本規制説」、つまり、「そもそも人民元自体の値動き自体が厳しく規制されていて、比較的自由に取引されている香港などの市場でも、中国の通貨当局による為替介入が常態化しているからだ」、という説明です。
ふたつめは「通貨危機説」や「経済危機説」、つまり、韓国やタイの通貨当局の危機対応能力を市場参加者が試しているという仮説や、あるいは中国経済とのつながりが深すぎて、今回のコロナウィルスショックで両国の経済の動向に対して不安が広がっている、という仮説です。
このうちひとつめの仮説については、部分的には正しいと思いますが、すべての理由をここに求めるのは少し行き過ぎでしょう。
なぜなら、中国の通貨当局がオフショア向け通貨の供給をある程度コントロールすることは可能でしょうが、実際には大っぴらに為替介入をすると、昨年8月みたいに、また米国財務省に目を付けられてしまうからです(『米財務省、中国を為替操作国に認定』参照)。
したがって、現実には、中国のコロナウィルス騒動で韓国やタイの経済が打撃を受けるとの観測から、市場参加者によるこれらの通貨の売りが入っている、と見るのが自然な見方ではないかと思う次第です。
マレーシアとの通貨スワップどころではない?
さて、コロナウィルス騒動がなければ、『韓国とマレーシアの通貨スワップはどうなったのか』についての「続報」を調べようと思っていたのですが、現実には、コロナウィルス蔓延を受けて、どうも韓国ウォンの「一人負け」が明らかになって来ました。
おそらく、韓国の通貨当局にとっても、現在は「マレーシアとの通貨スワップどころではない」というのが実情なのだと思いますし、コロナウィルス騒動が収束すれば、今回の通貨安局面についても無事に収束するという可能性は十分にあるでしょう。
ただ、韓国ウォンは為替相場の「ハビタブルゾーン」が極端に狭い通貨でもあります(『コベナンツで読み解く、韓国がウォン安を恐れる理由』参照)し、コロナウィルス騒動が収束するよりも前に通貨が暴落するという「コロナウィルス発の通貨危機」という可能性については完全に排除することはできません。
いずれにせよ、金融市場の動きについては、予断を許さずに慎重に見守る必要があることは間違いなさっそうです。
View Comments (14)
貴重な情報ありがとうございます。
タイバーツと韓国ウォンが売られている理由について、流動性というか取引量はどうなのでしょうか?
日常的な実需の取引が少いほど、思惑での取引に振り回されそうな気がします。
この辺りは詳しくないので、ご存じの方にお教えいただければありがたいです。
まだ、ウォン、コスピとも踏みとどまっている様ですね。
ウォンは、時間外取引の攻防戦が、見られるでしょう。
マーケットは、弱い所からハゲタカさんに、狙われて行きますので、中国は凌いでも韓国は凌げない事が、あるでしょうね(ニヤッ)。
韓国の経済ニュースも、車の部品が無いだ、中国便が欠航だとか、良い話は有りません。
丁度良いニュースが、現代ビジネスから、出ています。
新型コロナウイルスが「韓国経済」に与える、深刻すぎる打撃
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200203-00070202-gendaibiz-kr
ドイツもやばい様に、書いて有ります。
また、北朝鮮でも物価が上昇しつつ有るとのニュース。
<速報 北朝鮮>中国国境封鎖で物価急騰、住民に動揺拡がる 中国産品の輸入全面ストップ 新型肺炎対策で
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200203-00010001-asiap-kr
日本にも、確実に悪影響が有ると思いますが、満更でも無い状況になって来た様に思います。
日本(経済)が、元々一番健康で体力が有るという事だと思います。
かつて「米国がくしゃみをすると日本は風邪を引く」と言われましたが、
「中国が風邪を引くと(コロナウィルス感染は本来風邪で括られる)、韓国は危篤になる」
といった塩梅ですね。
ハンギョレ新聞が、割と分かりやすい記事を書いています。
「暗礁」に遭遇した韓国経済、内需・輸出への同時打撃を憂慮
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200203-00035639-hankyoreh-kr
以下引用します。
現代経済研究院は先月31日に出した「新型コロナウイルス感染症の韓国経済への影響」という報告書で、第1四半期の国内消費が最大0.4%ポイント減少するものと予想した。年間経済成長率も最大0.2%ポイント落ちかねないと展望した。研究員は「二番底(経済が回復されたように見えてから再び停滞する現象)に陥らないよう、MERS当時スーパー補正予算(11兆5千億ウォン=約1兆460億円)編成のような段階ごとの政策対応を講じなければならない」と提言した。
引用ここまで。
これでもかなり甘い見込みだと思いますが、韓国政府は補正予算を決めていない様子です。
日本政府が、補正予算を決めて、また真似をするのでは無いかなと思います。まあ、この金額では足りないだろうし、表に使うお金が、そろそろやばいと思います。
鬼(新型コロナ)は外ぉっ!鬼(新型コロナ)は外ぉっ!
いろんな情報がありますが、今回の収束には長くかかりそうです。何故って、各国はいち早く入国停止などの緊急措置を取りましたが、もう笑うしかありません、日本はまだです。
また、果断な判断に踏み切った各国も、その先が続かない。発生源の中国からの情報が無いからです。(偽情報は情報とは呼びません。)中国がこのまま情報隠蔽を続け、止む得ない各国が中国封じ込めを続ける限り、収束には時間がかかると思います。
新型コロナの収束が見えないなか、観光以外の産業活動にも影響が見えてきました。
前にも申し上げたことがあるのですが、危機管理とは、想像力の可能の限り、あり得ないことに準備することです。私たち日本人は、阪神大震災、東北大震災で、これを学ぶチャンスを与えられたハズですよね。
私が勤めていた小さな会社でも、情報の分散化や、在庫、供給の分散化を検討しました。(泥縄ですけどね。恥)トヨタやホンダといったそうそうたる企業にその準備がなかったとしたら、絶望です。
まあ、そうはいっても、今回の騒動が中国だけに留められるのかも分からない状況ではあります。
この感染が、まさかの、まさかで、アジア全域。いえ、スペイン風邪のように地球全域?などとなってしまったら、なすすべが見えません。
そこで、やっとお題です。よく分からないのですが、日本の総理大臣と違って、強大な権限を与えられているハズの隣国の大統領ですが、今回の新型コロナウイルスの対策については、日本に追随した対策です。北朝鮮以外、何も考えていない政権の条件反射?
雇用を支えている国内の中小企業も危ない、大企業の中国工場も止まる、観光収入も激減、非常に良いことです。ジリ貧になって、通貨危機が来て、どうするんでしょうね文は。本音は、多くの国民(白丁と認識している可能性大?)がどうなろうとどうでも良いと考えているかもしれませんね。マサカ、日本に助けて?想像するだけでも腹が立ちます!無論協力禁止ですが!
本当に何を考えているんでしょう、セイカダイ含めて。
彼は、他人とあまり合/会わないようですね、選挙関連以外の嫌な情報は上がって来るのでしょうか。一方、安部さんその他は国会開催中は出ずつぱりですよ、見たくも無い面も見なければならないし、腹に据えかねる事も分からないことも発しなければならないし、菌も貰う確率も上がるし。
普段は同じ内容の読書でしょうか・・信念の理想郷達成?高麗?(まさか李ではないでしょうが)王朝達成?についての?自分達の身の安全にも関わる4月の選挙に関わる検察総長等の事でしょうか?
追:火の人はなにを思っているのかと、いつもカイカイ反応通信を観てますが、日本に関係しそうな内容がありました。(下記に記載)
感染者が、本当は、日本の何倍?何十倍?いるかは分かりませんんが、またやって来そうで、対策が必要なのではと思っています。
熊本の近くなのですがマスク完売らしく、義理の母の高齢者施設も入口のマスクが切れかかっている様です。福岡、大阪、東京とかの施設関係者や該当家族の方は、出来ることがあまり無く、本当に大変だと思います。マスクなんかここ何年もした事もない私でも、準僻地の実家の地域には高齢者の親戚達がいるのですが、マスク越しなぞ失礼なので顔見せにも行けない状況になって来ました。
インドとタイ発の、ウィールスが人工的なエイズ菌もどきでワクチンが効果を発したnews、確かであれば良いと本当に願っています。
マスク供給の確保、韓国人入国による二次三次感染防止(特に高齢者)、分かり易い情報発信等に関しては、官邸にお願いもしました。
では、長々と失礼しました。
⚫︎カイカイ反応通信記事
⚫︎今頃やってますが、本当の感染や死者状況はどうなっているのでしょう。
・久しぶりにコメント1万を超える内容「湖北省訪問外国人、4日から入国できない…初の入国禁止措置(総合)」
コメント例 1. 韓国人
大韓民国の民心を見てみましょう!
中国全域を対象に入国禁止にしなければならない=積極共感ボタン
湖北省だけでも良く、残りは受け入れてあげよう=非共感ボタン
共感:13467|非共感:526
8. 韓国人
大韓医師協会は1月26日「中国人入国禁止」措置を考慮することを勧告しました
政府はこれを黙殺しました
大韓民国の医療陣は現在、マスクも人材も不足しています
覚えておいてください
共感:5146|非共感:923
⚫︎保菌者がまた多勢来るのでしょうか?
「中国に向けていた機首、新型コロナの勢いで再び日本に」
2020.02.02
KFフィルターのマスクを作れば売れますよw
まあ今から増産しても売り時を逃しそうですが。
更新ありがとうございます。
まさしく、『コロナウィルス蔓延を受けて、韓国ウォンの一人負けが確実』です。17時過ぎ、各国の通貨レートを見ましたが、ドルウォンは1193.58、タイバーツが31.100、オフショア人民元が7.0188、日本円が108.60。
少し下がりましたが、米国市場、欧州市場でまた高騰するでしょう(笑)。武漢発のウイルスで、国内大騒ぎが想像出来ます。ついでに中国は一部でなく、全体を日本入国禁止。韓国からも日本への入国禁止をして欲しいぐらいです。
「U-1速報」より
【ソウル聯合ニュース】
韓国銀行(中央銀行)は3日、マレーシア中央銀行と結んだ通貨交換(スワップ)協定を3年間延長すると発表した。
春節休暇明け、市場再開時点でのこの発表ですが、本当なんでしょうかね?
なお、1,200は超えていないもよう。
CB223 様
コメントを拝見して初めて知りました。
韓国側からそういうニュースが流れているようですね。
マレーシア側からの発表は見つけられませんでした。
いつもの「そんなことは言ってない」案件のような気もしますが、どうなんでしょうね。
今日のスレの中だと、ここかなと思います。
韓国の経済副首相が、おかしな事を言ってます。
韓国経済副首相「2月の輸出、プラス要因強い…新型肺炎の追加補正予算検討していない」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200203-00000036-cnippou-kr
今の韓国政府が経済音痴な事は、皆さんご承知の事と思います。以下引用します。
「この3~4カ月間の指標を見ると、景気回復の流れが現れている」と話した。また、今月の輸出は回復傾向に転じるものと予想した。
洪副首相はまず韓国経済の回復の兆しに言及した。昨年11月と12月に同時上昇した全産業生産と小売り販売、設備投資の3大指標を例に挙げた。輸出も肯定的に評価した。先月の輸出は前年比6.1%減った。これについて洪副首相は「1月の輸出絶対規模はマイナスだったが、1日当たり輸出規模はプラスに反転したことが重要な要因。昨年輸出を厳しくした半導体DRAM固定価格が1月に前月比1.1%上昇した側面を見れば肯定的にみることができる」と話した。彼は「2月の輸出は昨年より操業日数が増えプラス要因が強い。3月の輸出がどうなるかが重要だ。大きな座標になるだろう」と説明した。
引用ここまで。
既に2月は楽勝で、3月が問題だと考えている様です。
主要な輸出先の中国が新型肺炎で、今まで通り輸入出来るとでも思っているのでしょうか。
国内には、他にも悪いニュースが沢山有る中、値上がりしたマスクの売上で、補正予算も組まずに乗り切れると思っているのでしょうか。
まあ、日本にとっては、悪い話じゃ有りません。
経済にm非常に疎いので、この副首相の言っていることまったく理解できません。
その上で、素人目ですが、来る総選挙に向けての地ならしの一環かと。
3月の統計が出た頃には、選挙が終わっているのではないですかね?
だんな様
事務方にすぐに補正予算案つくれと指示したら,
これ以上赤字国債発行したら,マジやばいっス,と返答された
ってのが真相では?
韓国製品が中国に売れないという話だけで無く、逆の流れもあるようです。
https://japanese.joins.com/JArticle/262187
現代車、韓国内のすべての工場をシャットダウン…新型コロナで部品調達に滞り
https://japanese.joins.com/JArticle/262113
中国製部品が底をつく…現代・起亜自動車オールストップの危機
311の時に日本製の部品が止まったときも全世界で似たような話が起きましたね。